【感想・ネタバレ】遠い太鼓のレビュー

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Posted by ブクログ 2024年03月24日

村上春樹のどの作品よりも何度も読み返した。
ヨーロッパ旅行記、というイメージと異なり、全体の雰囲気は暗い。純文学作家として順調にキャリアを伸ばしながら、連載や短編の執筆に追われ、40歳になる前に変わらなければならないという強迫観念めいた衝動で経済的には不安を抱えてイタリアにたどり着くところから始まる...続きを読むこの話だが、最初から最後まで、自分が小説を書けば書くほど人に嫌われるのではないか、という不安に覆われている。ギリシアのシーズンオフの別荘や、シシリーの埃まみれの街並みやローマの地下室、ロンドンのフラットでの一人暮らし。美味しいものを食べ、誰にも煩わされずに生活しているはずなのに、悲壮感が拭えない。大ベストセラーをものしたのに日本を出ざるを得なくなったのはかわいそうと言いたくなる。それでなんとなく40を迎えたが、大したことも起こらないまま、旅の終わりと同時に物語も終わる。

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Posted by ブクログ 2024年03月18日

1986年秋から1989年秋までの3年間、村上春樹さんがギリシャ、イタリアで過ごした日々の記録。

村上さんの見たものを想像し、村上さんの感じたものを感じ、村上さんの紡ぐ言葉を味わえる、大好きな作品です。
久しぶりの再読。
奥様とのやりとりが好き。

時が経っても、その当時の村上さんの語りを聞いてい...続きを読むるかのように自然に私にしみいる文章たち。

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Posted by ブクログ 2023年08月24日

ちょうど新婚旅行でギリシャにいる頃に読み始めました。思わず声を出して笑うくらい面白いフレーズがあちこちに出てきて、愚痴っぽいけど全然不快にならない絶妙なバランスで本当に面白かったです。自分の思い出とも相まって、人生で何度も手に取る本になる予感。

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Posted by ブクログ 2023年06月05日

今ここにいる過渡的で一時的な僕そのものが、僕の営みそのものが、要するに旅という行為なのではないか、と。
そして僕は何処にでも行けるし、何処にも行けないのだ。

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Posted by ブクログ 2023年03月04日

1980年代の終わり、『ノルウェイの森』『ダンスダンスダンス』を書いた30代をしめくくり40歳ごろのヨーロッパを巡る旅。小説家になって10年くらい、物書きとして板につきながらも、さまざまな孤独や苦労や疲労感があり、憂鬱な秋の海や悲惨な嵐の描写から伺える。ヨーロッパの街並みや食べ物などの情報の合間に、...続きを読む何の変哲もないのに癖のあるおじいさんやおばさんとの出会い、夫婦げんかや車の故障などのトラブルにたじろく村上春樹さんがおもしろい。やれやれ。遠い太鼓が聞こえる。

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Posted by ブクログ 2022年12月10日

村上春樹の面白さがはじめてわかった気がする。そんな一冊だった。
彼が書いてあることが本当ならトスカナ地方に行ってみたい。外国の旅行記というと臨場感の感じられないものが多いが、『遠い太鼓』を読んでいると村上春樹の出会ったおじちゃん、おばちゃん、若者が目の前で話しかけてくるような錯覚を覚えた。

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Posted by ブクログ 2022年10月16日

いつ以来の再読だろうか、たぶん20年は経っているだろう。

読み直そうと思ったのは、ずばり超久しぶりの海外出張のお供に、と考えたからである。飛行機のゴーっという音。上空10000メートルの濃い青と眼下の白い雲、その静寂。
分厚いがちゃんと読み終わった。

村上春樹30代後半、今との最大の違いはユーモ...続きを読むアの質だろう。端的に言ってこの頃の方が断然おもしろい。イタリア、ギリシャ、そしてそのそれぞれの街や島々。こういうのは切れ味鋭い国民性洞察や地理的特性の偏見上等な観察眼が最高。

例えば北ヨーロッパ人のストイックなバックパッカースタイルについてひとしきり語ったあとはこうだ。
「・・・でもイタリア人はそうではない。彼らはとくにそういう風には考えないのだ。そういうのは彼らの生き方のスタイルではない。彼らは午後のパスタやら、ミッソーニのシャツやら、黒いタイト・スカートをはいて階段を上って行く女の子やら、新型のアルファ・ロメオのギヤ・シフトのことやらを考えるのに忙しくて、いちいち苦行なんてやっている暇がないのだ」(p277-8)。

私はこれを読んで大笑いしたが、もちろんこれが極論なことくらいはわかっている。村上春樹ももちろんわかっている。これはもう話芸の世界だけれど、今だと断片を切り取られてやれステレオタイプだ、やれ傷ついたと非難の大合唱になるだろう。

そんなユーモアと同時に、この本の底の方に流れている深い哀しみの感覚、これはなんなのだろう。別の旅エッセイで村上は「島には必ずそれぞれの哀しみがある」というようなことを書いていたが、おそらくそれと似たような何かだと思う。孤独感。死の気配。悲劇的な歴史と殺戮。
これはあるいはヨーロッパの持つ厚みそのものなのかもしれない。

3年の流浪の旅から戻った日本はまさにバブル真っ盛り。後書きを読むと、村上がその狂乱の行く末に対して暗い予感を抱いているのがよくわかる。

さあ旅行しよう、そんな気持ちになれる本。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年10月02日

ギリシャに来て次にどこ行くか迷ったので再読。
ちょうどクレタにいるので、「あーこのへんね〜」と思いながら読んだ。

ギリシャは各島にそれぞれ魅力があって、時期的にミコノスは微妙やしクレタから近いロードスに行こうと決めた!
が、読んでてギリシャ本土も魅力的。
結果、移動はだるいのでこのままクレタに滞在...続きを読むして旅行がてらに本土に行こうかと。


他にもイタリアの話はかなり良かった!
私も去年イタリアにいたので、最後に書かれてた「イタリアは記憶に残る国」的なことはほんまにその通りやなと!
現在では生活レベルとか民度?は当時ほどひどくないと思われる。
ただ読んでてやっぱりイタリア人たちは色んな意味可愛いというか愛おしいというか笑


またオーストリアについて書かれてて、8月にひと月滞在してたのでそれもまたタイムリー!
治安いいし、暮らしやすい国やけど確かに作中であったように面白味はないかもしれない。


村上さんの文章に癒されつつ、次に行く場所の参考になり良かった!

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Posted by ブクログ 2021年10月01日

日常に普通に起こることを、丁寧に見て書いており、そこにいるかのような映像や、寒さ、生暖かさ、温度まで伝わってきます。

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Posted by ブクログ 2021年07月18日

以前に単行本で読んだのですが、大好きな本で、また読みたくて文庫本を買いなおしました。
イタリアや地中海のあちこちを旅している様子が目に見えるようで、とても楽しめます。

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Posted by ブクログ 2021年05月05日

村上春樹のヨーロッパ旅行記。ギリシャとイタリアが中心となる。本人も書いているように、本書には特にお役立ち情報というものはないし、比較文化論を目的としているものでもない。どこに行って、誰と会って、何を食べたという日常のスケッチのようなもので、500ページ以上ある本のほとんどの部分を構成している。それを...続きを読む一気に読ませる筆者の文章力は、本書を執筆している時点で、キャリアの最高点に達しているように思われる。特に食事・ワインについての文章と、イタリアの悪口についての文章(郵便、泥棒、車の故障等まあいろいろある)が、よくもまあこれほど鮮明で生き生きとした文章を書けるなと感心するほど面白く、読ませる。そして最終章「最後に-旅の終わり」の数ページは、個人的には一番深く印象に残っていて、いろいろな折に読み返す文章である。エッセイとしての内容の面白さにおいては、筆者がアメリカに住んでいるときに執筆した「やがて哀しき外国語」の方が、様々な示唆に富んでいるように思われるが、純粋な文章力の極地を味わいたければ、本書を手に取るべきだと言えるだろう。

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Posted by ブクログ 2020年08月06日

まるで自分もギリシャ・イタリアを訪れているような気持ちになれる旅行記。なんか、「よく分かる」。

パトラスにて、おばさんが石ころで元気いっぱいクローゼットを虐殺するところなんかは、何回読んでも声に出して笑っちゃう

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Posted by ブクログ 2020年05月04日

旅先エッセイ。

1986年秋から1989年秋におよぶ、
ヨーロッパ滞在時のスケッチ的文章。

読後、ギリシャとイタリアに親近感がもてます。

ダンスダンスダンス がすきなので、
この旅行中に書かれたのかと思うと感慨深かったです。

"カヴァラからのフェリーボート"
"...続きを読むレスボス"

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Posted by ブクログ 2023年08月26日

手にしたのは1990年版のぶあっつい単行本。時間のある時、ペラペラ頁を捲り易かった。
1980年代どん詰まりの時間、ハルキ氏は翻訳、エッセー、そして創作と7面六臂の多面的活躍を実行していた時間。

日本を離れて、ギリシア・ローマ滞在の四方山話がでるわでるわ。
ちらちら、フィンランド、オーストリア、英...続きを読む国、一時帰国の日本も入ってくる。
食べ物、宿泊先とそこの親父と妻、たまに猫も、車、風景。。まさにこれもてんこ盛り。
いつもながら比喩の宝庫の扉が開けっ放し。
よくも、まぁ、こんな表現を持ってくるもんだと苦笑したり、仰天したり、くすっときたり。

イタリア人とギリシャ人の人類学的比較~生物学的に・芸術的に・心理的に・下世話的にあちこちで語っているのがフムフムである。
だから住んでいる町の国の情勢や倫理観が笑える。you tubeで語られている「明るく、楽しく、何度でも行きたい」イタリアの裏に蠢くそれを語るハルキ氏が太鼓の音のように響き渡って最後まで笑わせる中で考えさせてくれた。

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Posted by ブクログ 2023年08月08日

小説以外の村上作品を読んだのはこれが初めて。旅行記ということであまり期待していなかったが、面白かった。むしょうにまたヨーロッパに行きたくなった。

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Posted by ブクログ 2023年07月09日

ギリシャのことが書いてある本を探してたら、なんとあの村上春樹さんがギリシャで生活していたときの滞在記を書いているというので読んだ。けっこう分厚い本で読み応えある。かなりまえのことだがおもしろい。住んでなければわからないことがいろいろ書かれておりかなり興味深い。私にとってはこの人の作品は小説よりもエッ...続きを読むセイのほうがおもしろい気がする。

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Posted by ブクログ 2023年01月06日

あまり村上春樹の本を読んだことがないのですが、旅行記ということで読んでみました。
イタリア、ギリシャを中心に国として、地域の特徴を上げつつ、様々な個性豊かな人物が登場します。

時折文中の主語が国となり、いささか大げさに聞こえるものの、1つの国でも様々な人物が出てくるので結局国で判断はできないという...続きを読むことを暗に示しているように感じました。

とりあえず、ワインやホットブランデーを飲みたくなります。

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Posted by ブクログ 2022年10月10日

「村上春樹」の紀行『遠い太鼓』を読みました。

「小田実」の紀行『何でも見てやろう』に続き、旅の本で現実逃避です… 「村上春樹」の作品は2年半前に読んだ紀行『雨天炎天 ―ギリシャ・トルコ辺境紀行―』以来なので久しぶりですね。

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ある朝目が覚めて、ふと耳...続きを読むを澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきた。
その音を聞いているうちに、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ――。
40歳になろうとしていた著者は、ある思いに駆られて日本を後にし、ギリシャ・イタリアへ長い旅に出る。
『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』を書き上げ、作家としての転換期となった、三年間の異国生活のスケッチブック。
1986年秋から1989年秋まで3年間をつづる新しいかたちの旅行記。
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「村上春樹」が1986年(昭和61年)から1989年(平成元年)にかけて、ギリシャ・イタリアを中心をしたヨーロッパへ長い旅に出た内容をスケッチブックを描くように綴った作品、、、

既読の作品ですが、もう一度読みたくなったんですよね… この時代に名作『ノルウェイの森』や『ダンス・ダンス・ダンス』が執筆されたそうです。

 ■遠い太鼓──はじめに
 ■ローマ
 ■アテネ
 ■スペッツェス島
 ■ミコノス
 ■シシリーからローマに
 ■ローマ
 ■春のギリシャへ
 ■1987年、夏から秋
 ■ローマの冬
 ■1988年、空白の年
 ■1989年、回復の年
 ■イタリアの幾つかの顔
 ■オーストリア紀行
 ■最後に──旅の終わり
 ■文庫本のためのあとがき

「村上春樹」作品って、小説の方はなかなか理解できず感情移入がムズカシイ面があるのですが、、、

紀行やエッセイは大好きです… その場の空気感や匂い、周囲の人の感情等等、目に見えないけど感じる部分が伝わってきて、その場に居るような気がしてきて、著者の目線に共感できるんですよね。

本書を読んで、一度も訪れたことのないイタリアやギリシア、イギリス、フィンランド、オーストリア等に、まるで行ってきたかのような感覚が残りました、、、

そして、感じたのは、物質的な豊かさは、心の豊かさには比例しないってことかな… そもそも、物質的な豊かさって、一人ひとり物差しがバラバラだし、統一的な基準はなく、環境や文化、習慣に依存することなので、比較は難しいんですけどね。

七輪で魚を焼き、タコを食すギリシアには好感を持ち、
郵便がキチンと届くことが期待できず、泥棒が多くて(特にローマ)、責任をバケツリレーして受け取らないイタリアのイメージが悪くなり、
『サウンド・オブ・ミュージック』で観て抱いていた好天が続く爽やかな青空と森の緑のイメージを、雨が多いオーストリアの実情に崩され… と、新しい発見のあった一冊だったなぁ、、、

そして、「村上春樹」が長い旅に出た理由… その「ある日突然、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。」というシンプルで説得力を持った理由にも共感しましたね… 600ページ近いボリュームで、分厚くて重たい文庫本でしたが、愉しく読めたので長く感じませんでした。

「村上春樹」が37歳~40歳で経験した長い旅、、、

私は、その年齢は随分と超えてしまいましたが… これから「ある日突然、どうしても長い旅に出たくなる。」ことがあるかもしれないなぁ。

その時は、どこに行こうかな… 想像すると、ちょっと愉しみです。




以下、旅の軌跡です。

【イタリア】  ローマ
【ギリシャ】 アテネ、スペッツェス島、ミコノス島
【イタリア】  ローマ、パレルモ、ローマ、メータ村、ブリンディシ
【ギリシャ】  パトラス、アテネ、ミコノス、クレタ島
【日本】
【フィンランド】  ヘルシンキ
【イタリア】  ローマ、アテネ、テサロニキ
【ギリシャ】  レスボス島
【イタリア】  ローマ、ボローニャ、ローマ
【イギリス】  ロンドン、バース
【イタリア】  ローマ
【ギリシャ】 ロードス島、ハルキ島、ロードス島、カルパトス島
【イタリア】  キャンティ地方
【オーストリア】  ザルツブルク、ロイッテ

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Posted by ブクログ 2022年09月25日

自粛中の年末年始に一気によんだ。
村上春樹は小説はすきだけど紀行ものははじめて。
イタリアの空気がぶわっとかおってくるような紀行文。とてもよい。
ひとつひとつの都市がそれぞれの顔をもってる。
たまに笑わせてくる。
全然ちがう地図の上にキスをしたイラストと、鍵が壊れて、戸棚ごと壊した下り、妻とのちょっ...続きを読むとした喧嘩が笑えて心に残ってる。
午前三時の文かな?死がちかくにやってきた文も心に残っている。

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Posted by ブクログ 2022年06月04日

以前ギリシャ旅行をした時のお供として、友人の勧めで。
東京でセカセカと仕事を終わらせて旅立ったギリシャの島。
嘘みたいに静かで蒼く美しい海をたたえていて、人々はのんびりとしていて、重たいスーツケースもどこからか現れた少年達が隣町まで歩いて運んでくれるような…素朴な雰囲気がヨーロッパとは思えない、世界...続きを読むの裏側感を感じた。

春樹さんが80年代バブルまっさかりの日本を離れてギリシャを点々としていた事は、彼の中でかなり大きなことになっているのだろうと思った。
石垣が嵐で倒れても、また倒れるだろうことは予想できるのに、また同じ場所に石垣をみんなで作る
効率優先、無駄な事と認識されるものが排除されていく現代において、無駄に見えることを一生懸命にやる人達。
税金を払わず美味しいものをたっぷりと食べて、ワインを呑んで人生を謳歌する人達。
春樹さんは、まいったな、という感じで愛すべき(ときにはウンザリしながら)彼らと付き合いながら異国で日本人として淡々と生活を送る。
そんな春樹さんも登場するギリシャやイタリアの人達も私は好きだなと思った。

また再読したい一冊。





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Posted by ブクログ 2021年11月23日

村上春樹作品。37歳から40歳になるまでの約4年間(ノルウェイの森やダンス・ダンス・ダンスを描いていた頃)、イタリアやギリシャなどヨーロッパ各地に住みながら、小説を書いたり翻訳をしたりしつつ、各地を旅した旅行記のような一冊。いつものような春樹節は少なく、独特な旅行記として楽しく読める。所々で紹介され...続きを読むる奥さんとのエピソードや美味しい料理、コンサートのコメントなどが楽しい。村上春樹の小説はどれを読んでも僕には難解で距離を置いていたが、この本はとてもシンプル。こうくるとかえって物足りなくなる。人ってないものを欲しがるものだ。たとえそれが不自由であってもね。やれやれ。

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Posted by ブクログ 2021年10月13日

何度読んでもいい。ヴァンゲリスと港 という章が特に好き。こういう経験を30代にしているかどうかは大きいと思う。描写が細かく情景が目に浮かぶところも良い。

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Posted by ブクログ 2021年09月15日

数十年前に発売。その当時はこの本が旅行記とは知らずに買ってしまい最初のほうを読んでつまらなくてそのまま放置していた。先日何の気無しに手に取って読み始めてみるととても面白かった。若い頃は旅行記なんて退屈だと思っていたのに歳を取るとこんなにも興味深いものになるとは。
クラシックやワインのくだりは自分には...続きを読むわからないのでちょっとウンチク的に受け取ってしまったけれど(笑)
村上春樹さんの旅行記は他にもあるようなので旅に出たくなったら読んでみようと思った。

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Posted by ブクログ 2020年05月28日

結構前に単行本で読んだのを文庫版で再読。
春樹の小説が全然読めなかった…とガックリしていた自分に友達が勧めてくれた1冊。
結果として小説は正直苦手だけど、春樹のエッセイはめちゃくちゃ好きになるというきっかけになってくれた大事な1冊。
やっぱり積読してみても面白い!
読む度に旅をしたい気持ちになるし、...続きを読む遠いヨーロッパ事情を垣間見れるのも楽しい。

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Posted by ブクログ 2018年09月15日

1986−1989にかけてのイタリア・ギリシア滞在記。この間にノルウェイの森とダンスダンスダンスの2つの長編小説が書かれている。所々、声が出るくらい笑ってしまう箇所がある。現代の著名な作家の日常を垣間見ることのできる、興味深いスケッチ。
2018.9.15


こんな風に自分の体験をスケッチで文章に...続きを読むできる技術があるってうらやましい。たまに日記を書こう!とするのだけど、何か文章にすると感じた感覚とずれてしまって上手く書けない歯痒さのみが残ってしまう。
2021.4.9

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年02月22日

1980年代の頃、著者が37〜40歳の間にヨーロッパで暮らした日々を書いた旅行記。
拠点に縛られずにイタリアはローマ、ギリシャの島々、イギリスロンドン、オーストリアなどを転々と旅する海外生活。とても疲弊してしまいそうだけれど、この間に『ノルウェイの森』や『ダンス・ダンス・ダンス』『TVピープル』を書...続きを読むき上げ発表しているという。
著者のエッセイは初めて読んだが、描写が面白くて笑ってしまう場面も多くて、良い意味でイメージが変わった。
どんな人物なのか、どんな基準で生活をしているのか、その一端が見えてきて興味深い。
特にイタリアの話は面白いというか、恐ろしかったな。ちょっと想像を超えてくる。イタリアの郵便事情や犯罪事情は、日本人の基準からしたらあり得ないことの連続だった。ローマへの悪口の熱量が凄いので笑ってしまう。国によって色んな国民性が見られるのがまた面白かった。
奥様との会話も力関係が伝わってきて微笑ましい。

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Posted by ブクログ 2022年12月01日

敢えて(どころが決して?)ギリシャにもイタリアにも行きたいと思わなくなった。
それでも旅に行きたいと思う、不思議な旅行記。

ローマでの路駐はかなり興味があるけど。
ダンスダンスダンスをまた読みたくなる。

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Posted by ブクログ 2021年02月07日

3年間のヨーロッパの旅行記。
港があって、それを取り囲むようにダウンタウンがある、それからすぐに、山の斜面が、はじまって家が港を見下ろす、っていうカヴァラの風景が印象的でした。

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Posted by ブクログ 2020年04月29日

村上春樹が40歳になるまでの3年間をヨーロッパで過ごした旅行記。
各地での楽しみや苦難が日記形式で書かれており読み応えがあった。日本がいかに住みやすく勤勉な国民かが垣間見えた。

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

村上春樹氏がギリシャ・イタリアに定住して小説を書いていた時期に書き留めていたという文章をまとめたもの。エッセイというほどきっちりと整理されている感じではないし、旅行記というには、あまりに普段の生活の記録という部分が多いので、なんとなく、手帳に書かれたメモを読んでいるような気分になる。
小説とはまた、...続きを読むまったく違った調子で、楽しく読ませるユーモアや毒舌がたくさん含まれていて良い。やっぱり、すごい観察力だと思うし、その表現の仕方も見事なものだと思う。

冬、オフシーズンのギリシャの島々の様子など、観光ガイドブックや雑誌では決して掲載されないような描写があったり、外国の体験記としても面白いのだけれど、それよりずっと面白いと思ったのは、「小説を書く」ということについての思想やポリシーが、ところどころに表れている部分だった。特に、「午前三時五十分の小さな死」という章は、とても良かった。

この文章が書かれたのは、「ノルウェイの森」の執筆に専念していた前後の時期で、小説を書くという作業の前や、最中にどういう心構えになるのか、そこにはやはり独自の哲学があって、その、メイキングともいえる過程をかいま見ることが出来るというのは、読んでいてとても興味深い内容だった。

僕はこう思っていた。40歳というのはひとつの大きな転換点であって、それは何かを取り、何かをあとに置いていくことなのだ、と。そして、その精神的な組み換えが終わってしまったあとでは、好むと好まざるとにかかわらず、もうあともどりはできない。試してはみたけれどやはり気に入らないので、もう一度以前の状態に復帰します、ということはできない。それは前にしか進まない歯車なのだ。僕は漠然とそう感じていた。(p.16)

歳を取ることはそれほど怖くなかった。歳を取ることは僕の責任ではない。誰だって歳は取る。それは仕方のないことだ。僕が怖かったのは、あるひとつの時期に達成されるべき何かが達成さないままに終わってしまうことだった。それは仕方のないことではない。(p.16)

「君らどこから来たかね?」とイッツ・オーライトのおじさんが訊く。
「イーマステ・アポ・ティン・ヤポニカ(僕らは日本から参りました)」と僕は白水社・エクスプレス現代ギリシャ語・荒木英世著の22ページにある用例通りに答える。
するとおじさんは「ヨコハマ・ムロラン・センダイ・コーベ」と無表情に列挙し、<さて下の句は?>という風にじっと僕の顔を見る。
「ははは、よく知ってますね」とかなんとか僕は答える。一般的に言って、ギリシャ人が日本について知っていることの殆どは港と会社の名前だけである。だからおじさんの台詞に下の句をつけるとすれば「ソニーにカシオ、ヤマハ・セイコー・ダットサン」となるはずである。(p.106)

エーゲ海はグアムやハワイのような常夏常春の島ではない。大抵の日本人はエーゲ海の島は赤道近くにあると思っているみたいだが、地理的にいえばミコノス島と東京はほぼ同じ緯度上に存在している。要するに、誰がなんと言おうが思おうが、冬はやはり寒いのだ。(p.160)

この文章を今あらためて読みかえしてみると、その当時自分の心が少なからず凍りついていたことがわかる。書いた時にはそんなことには気づかなかったのだけれど。
文章というのは多かれ少なかれそういうものだと思う。書いている時にはそれがあまりにも自然であり当然であるので(何故なら原則的に我々はその折々の自らの心の動きにぴたりと寄り添って文章を書くわけだから)、自分の書いた文章の温度や色やトーンをその場で客観的に見定めることが往々にしてできないものなのだ。
でも、僕は思うのだけれど、心は時にどうしようもないほど凍りつくものなのだ。特に小説を書いているときには。(p.186)

毎日小説を書き続けるのは辛かった。ときどき自分の骨を削り、筋肉を食いつぶしているような気さえした(それほど大層な小説ではないじゃないかとおっしゃるかもしれない。でも書く方にしてみればそれが実感なのだ)。それでも書かないでいるのはもっと辛かった。文章を書くことは難しい。でも、文章の方は書かれることを求めている。そういうときにいちばん大事なものは集中力である。その世界に自分を放り込むための集中力、そしてその集中力をできるだけ長く持続させる力である。そうすれば、ある時点でその辛さはふっと克服できる。それから自分を信じること。自分にはこれをきちんと完成させる力があるんだと信じること。(p.209)

長い小説を書くというのは、僕にとっては非常に特殊な行為であると言っていいと思う。どのような意味あいにおいても、それを日常的な行為と呼ぶことはできない。それは、たとえて言うならば、深い森の中にひとりぼっちで入りこんでいくようなものだ。地図も持たず、磁石もなく、食料さえ持たずに。樹木は壁のごとく密生し、巨大な枝が重なり合って空を被い隠す。そこにどのような動物が生息しているかも僕にはわからない。
だから長い小説を書いているとき、僕はいつも頭のどこかで死について考えている。(p.242)

すごく不思議なことなのだけれど、小説が10万部売れているときには、僕は多くの人に愛され、好まれ、支持されているように感じていた。でも『ノルウエイの森』を百何十万部も売ったことで、僕は自分がひどく孤独になったように感じた。そして自分が多くの人々に憎まれ嫌われているように感じた。どうしてだろう。表面的には何もかもがうまく行っているように見えたが、実際にはそれは僕にとっては精神的にいちばんきつい時期だった。いくつか嫌なこと、つまらないこともあったし、それでずいぶん気持ちも冷えこんでしまった。今になってふりかえってみればわかるのだけれど、結局のところ僕はそういう立場に立つことに向いていなかったのだろう。そういう性格でもないし、おそらくそういう器でもなかった。(p.402)

もしこの本を読んで、長い旅行に出てみたい、この著者がその目でいろんなものを見たように、自分は自分の目でいろんなものを見てみたいと思われた方がおられたとしたら、それは著者にとっては大きな喜びです。旅行というのはだいたいにおいて疲れるものです。でも疲れることによって初めて身につく知識もあるのです。くたびれることによって初めて得ることのできる喜びもあるのです。これが僕が旅行を続けることによって得た真実です。(p.569)

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