村上春樹のレビュー一覧
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この本は。
人類へのギフトてす。
度重なる戦争で、幾度美しい地球を台無しにしても懲りることなく破壊を繰り返す愚かな人類へのギフト。
どうか人類に、このギフトの意味を受け止める度量がありますように…。
この本が創刊されたのは第二次世界大戦が勃発したばかりの頃なのです。
そして、なんと。
この本の始まりは人類が第十二次世界大戦を起こした時の話。
戦争により世界が丸ごと破壊され、人々が愛や希望を失った時。
1輪の花が1人の心を救いました。
花は人の心に愛をもう一度灯し、やり直す勇気をくれたのです。
たった1輪の花が。
絶望からのやり直しはとても大変なことなのに、人々は愛と知力で復活させました。
それなのにどういうことでしょう。
文明からは再び邪悪な心や妬みが産まれ、またしても戦争に…。
いまだまさにそのループのただ中にいる私たち。
一輪の花も残らないほどに地球を痛めつけてしまう前に気づいてほしいと願わずにいられません。
人類はただの地球のいちメンバーにしか過ぎないことを。
訳者である村上春樹さんのあとがきにギュッと心がしめつけられます。 -
Posted by ブクログ
色彩豊かな片想いが錯綜する物語。
1930年代の大不況による貧困と差別が蔓延するアメリカ南部で暮らす人々。
主人公のミック、ジェイク、ブラント、コープランドを中心に様々な人が聾唖の白人、シンガーに心を寄せる。
シンガーが唖であるがゆえに理想の友人像を作り出し傾倒する。ただしシンガー自身はその友人たちのことを強く思っているわけではなく、心の中にはただ一人、精神病院に収容されてしまった友人アントナプーロスのみ。
理想の友人のおかげで日々の苦しい生活が救われていると感じている中、その一方通行は突然ドミノ倒しのように崩壊し、人々は孤独へと帰っていく。
こう書くととても重苦しい感じがするのだが、マッカラーズが描き出すこの悲劇はとても美しいのだ。
冒頭に「色彩豊か」と書いたとおり、世界を、そして登場する人々に色々な色を与え、80年前の人々の姿を生き生きと描きだし、決して古くさいと思わせることなく、全員を愛おしく感じさせる。
これは素晴らしい小説。600ページとなかなかの長編だけど、決してその時間は無駄にならない。
傑作。2023年の締めくくりがこの本でよかった。 -
Posted by ブクログ
これほど力強くも繊細な小説を読んだのはいつ以来だろう。海の向こうではファシズムが台頭しつつある暗い時代、アメリカ南部の貧困と人種差別が蔓延する小さな町に暮らすひとりの聾唖の男と、彼をとりまく4人の人びとの物語だ。
町にある夜流れ着いた大酒飲みのアナーキストは、この世の矛盾について多くの知識を蓄えはしたが誰にも理解されず、巨大な怒りを内に抱え込んで自己破壊的な暴発をくりかえしている。
一方、この町にただひとりの老黒人医師は、差別と暴力に虐げられる同胞たちへの大いなる愛とともに彼らの愚かさへの怒りに突き動かされているが、彼もまた、家族を含め誰ひとり理解者をもたない。
才気煥発な下宿屋の少女は、心の「内側の部屋」に豊かな音楽をあふれさせているけれど、これもその力を外に向かって表現する方法を知らぬまま、唖の男への慕情を募らせている。
そして彼らをじっと見つめる食堂の主人は、夜の深さと、そこでしか生きられない異形のものたちを、自らの隠された分身のように愛する男だ。
自らの内にある膨大なエネルギーを持て余し、ただひとり自分の魂を理解してくれそうな存在をもとめて、唖の男のもとを訪れる4人の人びと。彼がたたえる大きな沈黙と静かな微笑は、彼らがそれぞれ孤独に抱えこむ苦悩と希望とをすべて受けとめてくれるように見えた。しかし実は唖もまた、まったく受け取り手のいない巨大な愛を、その内に孤独に抱えこんでいたのだった…
理解し共感してくれる存在をそれぞれに渇望していながらも、決して互いに理解し共感しあうことのできない巨大な魂の孤独。その絶望とその希望を、これほどまでに繊細に描いた小説がほかにあるだろうか。おそらく少女ミックと食堂の主人ビフは最も作者自身に近い存在と思われるが、老黒人医師とアナーキストがついに正面から出会い、互いに共通する熱望を見出しながら罵り合い絶望して別れる場面の緊迫には読む側も息を詰まらせざるを得ない。一見、救いのない物語だが、戦争というより大きな暴力の予兆が満ちる中で、彼らは最後まで生き抜く希望を失ってはいない。
自分とまったく異なる人たちの心の深みに降りて行って、その最も柔らかい部分に触れるような小説を、裕福な家庭出身の若い白人女性であったマッカラーズはどのようにして書くことができたのだろう。愚かに傷つけあい共感を拒みながら共感を可能にする人間というものの可能性を指し示すこの小説、このような時代にあって、それはなんという希望であることか。 -
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ネタバレ1人でクスクス笑いながら読んだ本。
内容がどれも軽くて、重い話がなかったからスラスラ読めた。すごく面白かった。
「かなり問題がある」は、デビュー作「風の歌を聴け」がどのような気持ちで作られたのかが書かれていた。前にも球場で空を飛ぶボールを見ていると突然小説を書こうと思ったと言うのを見たのだが、やはり小説というのは突発的に書こうと思うものなのだろうか。
村上春樹の本は好き嫌いが分かれるし、ひどい言葉を言う人もいるがそう言う人は一度この「村上ラヂオ」を読んでほしいと思った。きっと村上春樹に対する思いが変わるはずだ。
「円周率おじさん」はおもしろすぎて、静かな図書室で一人で肩を震わせる変な人になってしまった。
老人になると600桁の円周率を覚えてしまうほど暇になってしまうのか。おそろしくもあるが、はやく歳を取りたいとも思った。 -
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ネタバレおもしろい!
初めて村上春樹のエッセイを読んだがこんなに面白いとは思わなかった。普段の小説からは考えられないシュールさやゆるさ、だけど文章はしっかりと村上春樹のものでとても新鮮だった。1つの話が2ページで終わるのも良かった。あっさりしていて、テンポ良く進めていけるのも好きだった。
安西水丸さんの絵がなかなか可愛らしくて、想像が捗った。
つけで本を買う話は、子供がツケ払いをすることが可能な町が存在すること自体が面白かった。今じゃ考えられないことであるからこそ、日本っていいなあと思う。
「千倉における朝食のあり方」を読んで、千倉に興味が湧いた。これを読むまで千倉の存在すら知らなかったが、肉屋がほとんどなくてサザエが大量に食べられる街 なんで面白いんだ。 -
購入済み
コラム集なので、短くて読み易い
紙の本も持っていますが、「老眼」で小さい字を読むのがつらいので、電子書籍を購入しました。執筆当時とは時代も価値観も大きく変わりましたが、読んでいてちょっぴり笑えたり、少し考えさせられたりする点は変わらないなと感じました。でも、日刊アルバイトニュースを覚えている人って、どの位いるんだろう?今はスマホでバイト探しだものね。
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村上春樹著「辺境・近境」の旅に同行したカメラマン松村映三による旅の写真集。
写真週刊誌のカメラマン、いわゆるパパラッチをしていたが、ある日その仕事の内容に耐えられなくなり、退職。
独立して、村上春樹の旅に何度も同行している。
村上が松村の腕を信頼してのことなのだそうだ。
「文章には文章のパーソナリティーがあり、写真には写真のパーソナリティーがある。それぞれに独自の視線があり、独自の文法がある。それにもかかわらず、それらがお互いにははじき合わず、あるいはまたもたれ合いもしないことを、僕としては嬉しく思う。
もちろん相性というものはあるだろう。でもそこでは、映三君の鉈が切り出す薪のまっとうな不揃いさが、大きな効果を発揮しているのかもしれない。そういう気がする」(「写真家との旅」村上春樹によるまえがきより)
Audibleで聞いた村上春樹の世界。
写真になって追体験が出来る。
二人の感性が響き合う。
四半世紀以上前の旅行記に心を奪われる。 -
Posted by ブクログ
オードリー・ヘップバーンがホリー役を演じる映画の方は観たことがなかったが、確かに彼女は小説版のホリーのような汚さやふしだらさ、危うさが感じられる人ではない。もしいつか映画をリメイクする際はホリー役をマーゴット・ロビーに演じて欲しいと思うのは私だけでしょうか(マーゴット・ロビー好きの一意見)。
この話は映画版『ティファニーで朝食を』でイメージされるような綺麗なストーリーではない。が、確かに名作であったと思う。イギリス文学とはなんとなく異なり、主人公やホリー、ジョー・ベルなど、様々な登場人物のその時々の感情が読み取りやすいものだったように感じる。
ホリー・ゴライトリーというこんなにも危うく愛らしい女性が身の回りにいたとしたら、誰しも叶わぬ恋をしてしまうだろうと思う。女の私でさえレズに目覚めてしまいそうなので。 -
Posted by ブクログ
これまで村上春樹の作品を読んで感じてたこと、例えば表層的なヘンテコな出来事の下層に通底するものに読者は共感するのだろうだとか、リアリズムにはフィクションやメタファーによってより迫ることができるのだろうだとか、そこらへんの漠然と抱いていた印象が、村上春樹の語る「地下二階」の話やコンラッドの引用などと符合して興味深く思った。
以前、海外の読者とのやりとりで以下のように書いたら、まったくその通りだと同意してくれたことを思い出した。著者と読者、読者と読者は、村上春樹という励まし、肯定で通底していて、それを確信している。
“Shadow” he mentioned in his speech reminds me of his work "Hard-Boiled Wonderland and The End of the World". "Dreamlike realism" is the very expression which explains his works in short. It is "his" realism that makes us readers connect through the bottom and share kind of agreement, even in his realm of dreamlike metaphors.
川上未映子のインタビューは、村上春樹が小澤征爾にしたインタビューくらいいい仕事をしたと思う。