あらすじ
その出現は突然だった。真夜中、主人公の前に顕れたのは「イデア」だった。イデア!? 一度は捨てたはずの肖像画制作に没頭する「私」の時間がねじれ、旋回し、反転してゆく。不思議の国のアリス、上田秋成「春雨物語」、闇の奥でうごめく歴史の記憶、キャンバスの前に佇む美しい少女。多彩な登場人物とともに、物語は次々と連環し、深い魂の森の奥へ――。
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免色というモデルを触媒にして、自分の中にもともと埋もれていた物を探り当て、掘り起こしただけなのかもしれない。石の塚を重機でどかせ、格子の重い蓋を持ち上げ、あの奇妙な石室の口を開いたのと同じように。そのような二つの相似した作業が並行して進行していた。
主人公は真夜中の鈴の音や免色の登場をきっかけにして肖像画(=?)を描けるようになるのか。
目に見えるものが現実だ。しっかりと目を開けてそれをみておればいいのだ。
ねじまき鳥クロニクルよりストーリーが現実にぎゅっと結びついていて私の好み。
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スバルフォレスターの中年男は何なのか?
私との関係をどう考えればいいのか?
騎士団長(イデア)はどう絡んでくるのか?
秋川まりえの肖像画はどうなっていくのか?
免色と秋川まりえの距離はどうなっていくのか?
秋川まりえと妹の魂はどんどん絡まっていくのか?
ユズは今の流れのまま宿痾に負けて去っていくのか?
フォレスターの男に殺されるのか?
雨田具彦が騎士団長殺しに込めた本当の思いはわかるのか?
第二部が楽しみ。
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肖像画家である「私」の生活する家に騎士団長が出現。荒唐無稽なようでいて違和感がないところが村上春樹ワールドの真骨頂。謎の隣人の免色の爽やかな奇人変人ぶりが明らかになっていくくだりも面白い。
高橋一生が声色と口調を使い分けて見事に全ての登場人物を演じ分けている。
素敵
長編を今まで文庫版のリアルな本で購入していた。
引っ越しするたびに持って行き、日焼けや経年劣化のたびに買い換えたり、文庫にしたりしていたが、
こうして電子書籍で、村上さんの好きな本をいつでもどこでも持ち出せるのは、とても幸せ。
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鈴の音の謎を解くため前巻の最後に土を掘り返した主人公と免色。その後のある夜、主人公の前には騎士団長の姿を模した「イデア」という存在。
不思議な喋り方をする不思議な存在の「イデア」。
さらに免色は主人公に自分の娘かもしれない女の子の肖像画を描いて欲しいとお願いをする。
「イデア」が出てきたことによりファンタジー感が出てきた今作。この後どういう風に展開されていくのかがとても楽しみ。
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騎士団長殺し第1部下巻。
裏山にある穴をみつけ、掘り起こしたところから始まる。本書で追求されているのは、イデアという言葉で表現されているけれど、ぼくのことであり本質といってもいいだろう。それが絵を描くということで表現されていて、その人がその人であることを理解するために主人公はデッサンし、時にはクロッキーを使い、チョークで黒板に描き、油絵で描く。絵を描くという行為が何かをそこに止めようとする行為であり、それは動画や写真より時にその人そのものを掴むことができている。ただし、絵とは目にみえたものそのものであって、その背後にあるものであったり、それが意味しているものでもない。それがイデアからのメッセージだ。一方で、「騎士団長殺し」の絵はメッセージ性を持った絵とされていて、それは何かを伝えようとしていると主人公は考えている。
物語は何かに誘導されているような形で、進んでいく、それは免色の過去、雨田氏、スバルフォレスターの男、イデア、あるいはその総体としての歴史なのかもしれない。
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騎士団長、登場!
謎と予感をはらんだ世界が、一気に動き出す――
その出現は突然だった。真夜中、主人公の前に顕れたのは「イデア」だった。イデア!?
一度は捨てたはずの肖像画制作に没頭する「私」の時間がねじれ、反転してゆく。不思議の国のアリス、上田秋成「春雨物語」、遠い闇の中でうごめく歴史の記憶、キャンバスの前に佇む美しい少女――多彩な人物と暗喩とともに、物語はさらに深く、森の奥へ。
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不思議な免色さん。実際にいたらあんまり関わりたくなさそう…笑
免色さんの過去の話だったり雨田雅彦のウィーンの話だったり、村上春樹っぽいなぁと感じる内容が多くある続きだった。
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登場人物の人となりが少しずつわかってきて、騎士団長だけファンタジーだったりと、より不気味さが増し謎が深まってきてどう展開していくのかという面白さがあった。
免色渉が今後どのように主人公に携わっていくのか?
きっと大きな展開が待っている気がしてならない。
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猜疑心の強い読者なら
当然抱くであろう2つの疑惑がある
①妻を寝取ったのは親友の雨田政彦ではないか?
➁免色渉はただのロリコン爺じゃないのか?
もちろん主人公はそんなこと少しも考えなかった
それはお人好しだからというばかりではない
肖像画の制作を生業とする主人公には
人間の本質を見抜くことについて強い自信があるからだ
そんな自分が疑いを感じない以上
彼らの態度に嘘は存在しないのである
傲慢と言えなくもないが
そのような鈍感さを保てなければ
人間関係なんてやっていけないのだろう
そんな彼の前に「イデア」と名乗る騎士団長が現れたのは
夜中うるさい鈴の音の発生源を探り当ててのことだった
イデア、すなわち「本質」である
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騎士団長!まさかこういう展開になるとは。
でも、かわいくて現れるのを心待ちにしてしまう。
ガールフレンドが面倒くさくて苦手なタイプ。
免色も優しい老人のイメージだったけど、ちょっと恐怖を感じる瞬間もあったり。
この巻では急展開はなかったものの、まだまだ謎だらけ。
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免色さんが穴に入ってあっちとこっちの境界線のくだりとか、後半の雨田さんの戦争下で体験してきたであろうことが『ねじまき鳥クロニクル』を思い起こさせる。白いスバル・フォレスターの男(僕?)が女を絞め殺そうとする場面なんかは『ダンス・ダンス・ダンス』の五反田君を感じた。
今までの作品が色々と現れているのかもしれない。
免色さんの娘と思われる秋川まりえとどうなっていくのか、騎士団長殺しの意味などまだまだ分からないことだらけで続きが気になる内容でした。
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騎士団長はじめ、登場人物の背景が徐々に明らかになります。「肖像画を描いて欲しい」から始まった免色氏の企ては一体どこへ向かうのか、離婚が決まった元妻ユズとの関係はどう進むのか、次巻の展開に期待です。
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主人公と免色との仕組まれた不思議な縁から物語は不思議な展開へと繋がっていく。例えばそうしたストーリーテリングであったり「騎士団長」の正体であったり、なぜそういう発想になりそうした表出になるのか摩訶不思議。ほか作品と比べると事象の説明が丁寧で早い段階で諸々回収しながら進んでいる気がするが、第2部に続く。
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第1巻で、これからきっといつもの村上春樹のように非現実的に展開していくんだろうな、と予想したところが意外と現実的な展開を見せた第2巻。
ファンタジー要素はあるけれど、不気味さを漂わせながらまだ地に足が着いているという感じ。
免色という人物は、ごく普通の人間なのかもしれないと思い始めた。
このまま現実的な方向性で行くのかもしれないと思いつつ、さらなる飛躍した展開を期待。
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石の下から見つけた鈴から顕れたのはイデアの小さい騎士団長
免色は自分の子どもだという子を見るためにが引っ越し、一目見ようと肖像画を依頼する
免色の子どもが若くして亡くした妹の記憶が蘇る
離婚してから行く場所を探していた時に出会った白色スバルフォレスターの男についてどうしても忘れることが出来ない
イデアは何のために顕れ、雨田具彦が戦争により日本画へなった理由、また免色・まりえ・フォレスターの男はこれからどう関わっていくのか⋯
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上巻P121で「騎士団長殺し」と名札の付いた絵が屋根裏から偶然に発見された 真夜中の裏庭から聞こえる鈴の音の正体が騎士団長そっくりのイデアと分かる ホラーから一転ファンタジーなところがやっぱり村上春樹だった そして下巻でも官能小説ぽさは抜けず 最後には主人公36歳と女子中学生13歳の下の会話を読ませられることになるとは~キモくてエロぃ 2部では白いスバルフォレスターの男周辺に期待大
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自分の生き別れの娘を眺めるために家を買った免色。僕は自分が失った妻に対して同じことをするなら、と想像して拷問のようだと考える。免色は井戸に入った時は主人公が自分を助けないことを考えて死に隣り合う生を実感した。一連の事件を見るに表面的には免色がマゾヒストなのではと見えるが、「白いスバル・フォレスターの男」に主人公が触れることで物語が少しずつ前に進む。主人公にとってこの男は自分の中に眠る「暴力性」の象徴であり、免色自身にその意図があるかは別として、彼との関わりが主人公にとって自分の本性を知るための基盤になっている部分が物語を奥深くしていると感じた。
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まだまだ謎だらけ。画家さんが妻に急に離婚を言い渡され、旅にでた先にたどり着いた場所でみつけた「騎士団長殺し」の絵。この絵の謎は?怪しげな隣人の要求の真意は?長いけど飽きることなく読める。
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騎士団長がまさかの出現。中学生の女子が中年の男に向けて胸が小さいと相談するところがとても違和感あって、なんだか気持ち悪かった。どんな絵が仕上がるかは楽しみ。
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主人公は白髪の紳士・免色の”肖像画”を完成させたが、それは依頼主の免色もかなり満足の出来栄えだった。
そんなある夜、主人公は家の中で鈴の音が鳴っていることに気付く。意を決してスタジオに行った彼が見たものは『騎士団長殺し』の絵の中の人物、60センチばかりの騎士団長の姿だった。騎士団長は、自分は騎士団長の形体を借りた「イデア」であり、石室に閉じ込められていたが、あの穴から自由になったのだと言う。
また主人公は、ある事情から美しい少女秋川まりえをモデルに肖像画を描くことになる。
「騎士団長殺し」を描いた雨田具彦に起きた戦前のウィーンにおける出来事を巡る事実が徐々に明らかになったり、不思議なイデアが登場したりと、正に村上ワールド。果たして次はどのようなことが起きるのか、先に進むのが楽しみ。
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あらない。
この話し方を英語を含めた多言語でどのように訳すのか気になった。
鈴の音から始まる肖像画家の自分を探す物語なのか?10代の少女が出てくる、なんだか達観した女性が出てくるいつもの感じ。
気に入ったフレーズはない。最後の方でイデアの世界に行く場面が雑な気がして。
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肖像画家の「私」は、友人の父で、有名な日本画家の別荘に住むことになる。しかし、夜中になると外のほこらから鈴の音が聞こえるようになる。
そこで、同じく山の中に住む免色(めんしき)さんと一緒にほこらを開けることになった。
開けてみると、そこには何もなかった。ただ鈴があるだけだった。
免色さんの絵。とうとう書き終わった。しかし不思議な声がした。その声のおかげで白髪を加えて書き終えた。緑色で素敵な絵だと思うけど、声が聞こえるなんて怪しい。
免色さんは石碑の中に入り蓋を閉めてほしいと言う。どうかしている。それを本当にする主人公もどうかしている。
「私」が放浪していた時。20代の女性と肌を重ねあった。こんな都合の良い人なんかいるもんか。男性の勝手な希望や想像や欲望が書かれているように感じる。
不思議な声の正体は、騎士団長殺しの団長の姿をした小さな生き物だった。自分は「イデア」だという。時間の感覚もない。自分を免色の食事会に連れて行って欲しいという。
免色さんの絵の完成を祝い、夕食に招かれる。素晴らしいカクテルや食事。本当に素敵で、私もいただいてみたいと思うほど。
そこで、新たにお願いごとを受ける。絵画教室のあきかわまりえは私の子供かもしれない。家に呼んで肖像画を描いて欲しい。そこに立ちよりたいという依頼だった。高精度な双眼鏡を持ってのぞいていることも知る。そんなことをされていると知ったら、もうでていくけど!
次巻に続く。
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(以下、全4巻通じてのレビュー)
過去作との共通点というか、焼き直しのような点が少なくない。
雑木林の石室は『ねじまき鳥クロニクル』の井戸を彷彿とさせるし、地下の世界へ迷い込む件りや、第二次大戦での暴力、夢の中での性行といった要素もいくつかの作品で出てきている。
秋川まりえのキャラクタは、『ねじまき鳥…』の笠原メイと『1Q84』のふかえりのブレンドのようにも思えるし、「免色」は『色彩を持たない多崎つくる…』をどうしたって連想してしまう。そもそも、彼のような、どうやって暮らしているのかわからないとんでもないお金持ちってキャラも、村上作品には必ずといっていいほど登場する。
この小説で、新規性があってユニークなのは、主人公が絵描きを生業としていて、絵を描くプロセスや絵描きの頭の中を、小説の表現として見事に結実させているところ。これには感心させられた。
特に前半部分のオカルトっぽさの発揮も村上春樹にしては珍しい。深夜に鈴の音が聞こえるあたりは背筋が冷たくなる肌触り。「白いスバル・フォレスターの男」のサスペンス性も印象深い。