あらすじ
緑濃い森の小径の向こうから、肖像画のモデルとなる少女と美しい叔母が山荘を訪れる。描かれた4枚の絵が複雑なパズルのピースのように一つの物語を浮かび上がらせる。たびたび現われる優雅な白髪の隣人、奇妙な喋り方で「私」に謎をかける騎士団長。やがて山荘の持ち主の老画家をめぐる歴史の闇が明らかになる。真夜中の鈴は、まだ鳴り止まない――。
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騎士団長に感情移入してしまいファンになった。
登場人物(?)の中で最もコミカルで最もストレートな言葉を持っていると思う。
ああ、でも不倫相手もそういう意味ではコミカルでストレートかも…。
本作は会話が特に印象に残っている。秀逸かと。
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まりえの魅力が詰まったパートだった。“おじさんに、性的な意味を介さず純粋に守りたいと思わせる少女性”についての話を何かの映画で見た気がするが、その少女性を持ち合わせているのがまりえだと思った。
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試練は人生の仕切り直しの好機なんです。
最初に依頼を受けて免色の肖像画を描き、それから白いスバル・フォレスターの男を描き(中断)、秋川まりえの肖像と雑木林の中の穴を並行して描いている。その4枚の絵はパズルのピースとして組み合わされ、全体としてある物語を語り始めているようにも思えた。
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あるところでは真相が明かされてきて、またあるところでは謎が深まっていく話であった。
それにしても主人公の「私」はどこまで渋い人物なのだろう。こういう包容力や余裕があり知的な人物が大人と呼ばれるのだと思う。
随所に出てくるお酒や料理や音楽を調べながら読み進むと、より内容に引き込まれる。
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免色はついに秋川まりえと対面する。
雨田具彦の過去がかなり明らかになる。弟の死が関係していそう。彼はなんでスタジオに現れたのか?主人公は雨田具彦と会うのか?会ったらどうなるのか?
ユズの懐妊と主人公の夢との関係は?空間を超越した移動はあるのか?
秋川まりえの肖像画、スバルフォレスターの男の肖像画、雑木林の中の穴、そして騎士団長殺し、どう絡んでくるのか?
まりえのお父さんの変な宗教が今後絡んで来るのだろう。
村上春樹の小説によく出てくる壁とか穴が、今回はなんの象徴となるのか?
第一部のプロローグで出て来た、肖像画を描いてほしいという、顔のない男が持っていたお守りのプラスチックのペンギンがついに出て来た。まりえの携帯に付けていたものだった。
どのような終わりになるのか?楽しみ。
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第2部上では、秋川家、免色、雨田具彦の過去がだんだんと明かされ始めた。
なかでも印象に残っているシーンは大きく2つ。
1つ目は「私」が秋川まりえをモデルに肖像画を描くシーン。
「何かを与えると同時に何かを受け取る。」まりえを描くことを通して、『肖像画を描くという行為=限られた時間に限られた場所でしか起こらない生命の交流』なのだと気づく。
第1部までの「私」は、『肖像画を描く行為=モデルの内部に埋もれていたイメージの発掘』と捉えていた。ギバーとテイカーではないが、画家→モデルという一方通行の関係から、画家←モデルへと相互的な繋がりを感じた...?
穴に関しても、第1部では肖像画同様の解釈で『内なる無意識のメタファー』として捉えていた。しかし肖像画を描くことの意味合いが上記のように変化したことで、『内と外と相互に作用するもの』的な意味合いも持ち始めそう。そしたら、「私」が最終盤に立てた、穴は実は色々な場所に繋がっているという仮説も成り立ってきそう。現実と非現実の間と
か....
もう1つは、肖像画を描きながら「私」が芸術について考えを巡らせるシーン。限られた時間に限られた場所でしか起こらない生命の交流はやがては薄らいで消えてしまう。しかし、その記憶は残り、時間を温めてくれる。そして芸術はその記憶を、温もりを、形に変えてそこにとどめることができる。
私自身、絵を見てその絵を描いた時の気温や風の強さ、周囲の音を想像するのが好きだからとても腑に落ちた描写だった。言語化すると、この感覚はこう表されるのかと感動した。だから絵画は時代を超越して心に語りかけてくるのかと
胸に迫るものがあった。
どんどんまとまらなくなっていくが、「私」と免色が人生について語る場面も考えさせられた。人生における退屈な時間や遠回りを無駄と捉えるか、欠くことできない人生の一部と捉えるか。人生観が違うと、何を第一義に生きるかも全く異なると思うからとても奥が深い問題だと思った。
そわそわするので早く下巻読む!
やはり、村上さんが一番
こんなに人生に寄り添って、作家さんの作品を読み続けてきたことはあるだろうか。
ノルウェーの森を母が読んでいて、緑と赤の表紙が鮮烈で借りてはまって、
それからずっと読み続けている。
読むたびに村上作品はその時々の感動や気づきがある。
それを電子書籍で本をしまう重さや場所を考えずに保管できるのも嬉しい。
電子化になって本当によかった。
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主人公が見つけた「騎士団長殺し」の絵。そして、主人公が描いた免色の肖像画、雑木林の中の穴、さらには少女の肖像画。
これらの絵画を描いたのは主人公だが、描き終わってしまうと、それらは何かを訴えてくる。
果たして、その訴えとは?そしてイデアとは何か。さらには失踪してしまった少女の行方や出生の謎。ユズの子供は誰が父親か。など、最終巻に向けて次々と問いかけてくる形。
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物語が動き始める。
イデア的なものの存在、夢での交流、意思の強さ、穴、壁、宗教、オーストリア、クリスタルナハト、南京虐殺、霊的なものの存在、護符、絵画。
記憶が度々思い出されながら、人々が影響を受ける。名づけえぬものに左右される人々。
夢での交流や色を巡るあたり、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、を思い出す。
そして物語はいよいよ佳境へ。
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相変わらず独特の世界観を持った話。
彼の小説はいつも時間の流れがゆっくりに感じる。
今回もひたすら車で旅をしたり、庭から聞こえてくる音の招待を突き止めたり、書くとそれほど大したことない内容をハードカバー1冊の分量を使って紹介している。
その分詳細に丁寧に描かれていると感じた。
また、騎士団長殺しなどといかにもヨーロッパや西洋の話になるであろう期待をあっさりと裏切り、だからこそ面白い
ゆっくりと物語が動き出し先がどうなるのかが気になる小説。
下巻が楽しみになる話だった。
Posted by ブクログ
4枚の絵が、新たな謎を語り出す。
ユーモアとアフォリズムに満ちた物語の行方を、
まだ誰も知らない。
森の小径を抜けて、絵画教室の少女と美しい叔母が山荘を訪れる。そして、4枚の不思議な絵がパズルのピースのように一つの物語を浮かび上がらせる。たびたび現われる優雅な銀髪の隣人、奇妙な喋り方で「私」に謎をかける騎士団長。やがて山荘の持ち主の老画家をめぐる歴史の闇も明らかになる。真夜中の鈴は、まだ鳴り止まない――。
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様々な絵が出来たり出来なかったり。絵を描くときの主人公の描写も描かれていく絵の描写も繊細で、見てみたいと思わされる。
こんな話を実写化などはできないんだろうが、作家本人と画家の協力でぜひ絵に起こされないかな。
Posted by ブクログ
注文を受けて肖像画を描くからには
発注者…つまりモデルの満足する肖像を描かなければ
話にならないのである
人間の心には光と闇の両面があって
いずれも個人を形成する重要な部分であるが
できれば闇の部分は見たくない・見せたくないと
誰しもが考えている
闇の部分を率直に描かれては
大抵の人がイヤな気持ちになってしまうし
かといって光の部分ばかり強調されたのでは
なんだか嘘っぽくなるだろう
光と闇のバランスをうまく調整することが肝要である
この話の主人公は、そこの匙加減が絶妙だった
モデルが持っているセルフイメージの
バイアスをとらえるのが、天才的に上手かったのだと思う
しかし彼は妻と別れたことで
自らのセルフイメージに疑問を持ってしまったんだ
そこから、本当の自分を探すための創作がはじまった
あらゆる人間はバイアスを通じてモノを見る
それが争いのもとになるってのは
本作品をめぐるネット炎上を見ても明らかだ
けれども今じゃ「当時」の現場を知る人なんて誰もいやしない
両論併記したあとは、ウィトゲンシュタインの箴言にならって
沈黙するしかないだろう
イデアの掟とはそういうものだ
Posted by ブクログ
少しずつ少しずつ
不可思議の世界へ入り込んで行くから
そこが当たり前のように感じてくる。
穴は何処に繋がっているのか?
ラストはノンストップで読んだ。
はやく4巻を読みたい!
Posted by ブクログ
いろんなことが巻き起こりますねー。
秋川まりえの行方や、おばさんと免色の関係も気になるところ。
免色さんはおじいちゃんのイメージだったのですが、中年ということなのでもうちょい若いのかな?ダンディーな感じで確かにモテそうだけど、個人的には主人公の方が魅力的に思えます。
続きが気になるので急いで次巻へ!
Posted by ブクログ
物語が急速に動き始めて一気に読み切ってしまった。免色、秋川まりえ、主人公の3人の終着点も気になるが、それ以外にも雨田具彦の謎や騎士団長の役割など解明されていない部分が沢山ある。ようやく登場人物とそれぞれの背景が並べられたので、何かしらのイベントが起きるのが楽しみ。
Posted by ブクログ
第1巻に比べ集中して読めました。
でも村上本らしく独特な内容でしたね。思い出しました。イデアか?
ある意味ついていけない世界ですが、村上だから成立させるよですね。
でも完読できたことで、以前の読書付きの自分に戻れたかな?
Posted by ブクログ
イデアは屋根裏に隠されていた騎士団長殺しの絵を解放したせいで人間界に現れた 目に見える個々の物事の背後にある変わらない真の実在のことをイデアと言うらしい 哲学用語なんでしょうか 2部上巻では期待した白いスバルフォレスターの男もイデア周りもさほどの進展なし P94「すべての女性にとってすべての年齢はとりもなおさず微妙な年齢なのだ...」女性の描き方が片岡義男に似てると感じる
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雑木林の中の穴の不気味さがうまく描かれている。私や免色より前に穴の存在を知っていたまりえが姿を消したのが何故なのかわくわくする内容。私が穴を描き切った事実、白いスバルフォレスターの男は描き切らなかったし、白スバルと違って穴は写実的に描いたところも違う。穴が第一部で明るみに出て、第二部の前半で作品として完成してしまったことが悪しきものを引き寄せているのではないかと落ち着かない気持ちにさせる。免色が穴に受け入れてもらえなかった理由もまだ分からない。謎がたっぷり残っていて次を読みたい気持ちにさせる内容だった。
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いよいよ第二部へ。
主人公の画家の周りには何枚かの絵がある。依頼を受けた白髪の紳士免白の絵は寛政し既に依頼主の手元に渡ったが、現在は秋川まりえをモデルにした絵を描いており、また東f北のある町でほんの少し出会っただけなのに妙に印象に残った白いスバル・フォレスターの男を途中まで描いた油絵、そして「騎士団長殺し」。
「騎士団長殺し」を描いた雨田具彦とその弟に関する過去の闇も少しずつ明らかになってくる。それは村上春彦の作品で良く取り上げられる戦争に関連する悲惨な出来事であり、本作でも「騎士団長殺し」を巡る重要なモチーフであることが推測される。
そんなとき、秋川まりえの行方が分からなくなっていると彼女の叔母から連絡が入る。一体彼女はどこに行ってしまったのか。騎士団長の不思議なヒントを手掛かりに、何とか彼女を探し出そうとするところで、以下最終巻へ。
村上春樹の作品はそれなりに読んできたのだが、一体ここからどうなっていくのだろう、謎は深まるばかり。
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あらない。
この話し方を英語を含めた多言語でどのように訳すのか気になった。
鈴の音から始まる肖像画家の自分を探す物語なのか?10代の少女が出てくる、なんだか達観した女性が出てくるいつもの感じ。
気に入ったフレーズはない。最後の方でイデアの世界に行く場面が雑な気がして。
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肖像画家の「私」は、近くに住む免色(めんしき)さんの依頼を引き受ける。
まりえは叔母とやってきて、スタジオで2人きりでデッサンを始める。まりえが気にしていたのは、自分の身体的なことだった。そんなことを口にする少女っていないと思うけど。
妻のゆずから手紙が届く。離婚届にすぐに捺印をありがとう。妻も何を考えているかわからないわー。
叔母は免色に興味をもったようだった。車の話で意気投合する。まりえは警戒している。
まりえのお父さんは、ある宗教団体にのめり込んでいた。妻の死がきっかけ。なんてこと。
友人の雨田(あまだ)から、有名な日本画家の父の弟の話を聞く。戦地に連れて行かれ、壮絶な体験をして生きて帰ったけれども、自分を死に導いた。遺書にはそのことが克明に記されていたそうだ。
「かもしれない。」という描写が多いなー
免色と秋川のおばがつながった!まりえは気づいた。見られていると。
まりえがいなくなった!穴の絵が出来上がったから消えたのではないかと言う「私」の憶測。
免色さんとほこらの穴にいく。ペンギンのプラスチックが置いてあった。まりえのものだった。護符のために置いたのかもしれない。
騎士団長が出てきた。「〜あらない」という言い方が面白い。まりえを救い出すためのヒントは明日の午前中にかかってくる電話に必ず答えること。
次巻に続く。
Posted by ブクログ
第一部で起きた様々な出来事が少しずつゆっくり進んでいくという内容だった。
疾走した秋川まりえはどこに行ってしまったのか。免色の思惑は何なのか。
次で(第二部(下))果たしてこれらの謎めいたいものは収束するのだろうか。
それにしても秋川まりえは1Q84の「ふかえり」と似ているような気がする。
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(以下、全4巻通じてのレビュー)
過去作との共通点というか、焼き直しのような点が少なくない。
雑木林の石室は『ねじまき鳥クロニクル』の井戸を彷彿とさせるし、地下の世界へ迷い込む件りや、第二次大戦での暴力、夢の中での性行といった要素もいくつかの作品で出てきている。
秋川まりえのキャラクタは、『ねじまき鳥…』の笠原メイと『1Q84』のふかえりのブレンドのようにも思えるし、「免色」は『色彩を持たない多崎つくる…』をどうしたって連想してしまう。そもそも、彼のような、どうやって暮らしているのかわからないとんでもないお金持ちってキャラも、村上作品には必ずといっていいほど登場する。
この小説で、新規性があってユニークなのは、主人公が絵描きを生業としていて、絵を描くプロセスや絵描きの頭の中を、小説の表現として見事に結実させているところ。これには感心させられた。
特に前半部分のオカルトっぽさの発揮も村上春樹にしては珍しい。深夜に鈴の音が聞こえるあたりは背筋が冷たくなる肌触り。「白いスバル・フォレスターの男」のサスペンス性も印象深い。