Posted by ブクログ
2022年02月24日
『騎士団長殺し』は村上春樹のベストアルバム的な内容だ。今までの作品に使われていたモチーフが総結集している。妻の失踪、異世界への入口、謎の美少女、と盛りだくさんだ。また村上春樹が愛読する『グレート・ギャツビー』のモチーフも使われていた。最近の長編作品の中では久しぶりに一人称(私)が使われていて、雰囲気...続きを読むは最近の『海辺のカフカ』『1Q84』ではなく『ねじまき鳥クロニクル』や初期三部作に近い。僕は初期の方の作品が好きなので、最近の村上春樹作品の中では結構楽しめた。謎解き要素もあるけれど、『1Q84』ほど結末が投げっぱなしという訳ではない。第三部も出るのかなと思っていたけれど、なくてもある程度の幕引きはなされている。『騎士団長殺し』は、「とっつきやすい」という点で村上春樹初心者向けなのかもしれない。けれど、『騎士団長殺し』は村上春樹の総集編の意味合いが強いので、これまでの小説(特に『ねじまき鳥クロニクル』、『1Q84』、『世界の終りとハードボイルドワンダーランド』、初期三部作と『ダンス・ダンス・ダンス』)と村上春樹が翻訳した小説(『グレート・ギャツビー』)を読んでいるともっと楽しめる。『騎士団長殺し』から読み始めてもいいし、他の作品を復習してから読んでもいい。つまりはそういうことだ。