香魚子の作品一覧
「香魚子」の「後宮の烏」「屍介護」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「香魚子」の「後宮の烏」「屍介護」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
「あゆこ」と読む。2005年『Us, you and me』でデビュー。作品に『さよなら私たち』、『隣の彼方』、『シトラス』などがある。
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Posted by ブクログ
物語はいよいよ“結び”に差し掛かっていく。
(念の為――ネタバレではないものの、概要含め核心部に触れる記述もあり。前回同様ご容赦を)
それにしても今巻、シリーズ中最も緩急の激しい回であったかのように思える。いわばジェットコースターのような感覚。一気に空気が張り詰めたかと思えば、不意に弛緩と共に感泣を誘うような場面へと展開もする。
これがクライマックスへの序章かと言葉もない。
これまで「烏妃」として関わるべくもなかった者たちの存在――かつて禁忌と断じられていた他者との“つながり”。それらが一連の騒動(これが緩急を生むのだが)の狭間にあってより意味を深め、予期せぬ感泣を誘う。
寿雪を愛おしく想う者たちとの“つながり”。それが“日常”の尊さ、その価値をより高めていく。
それは無論、当の寿雪の心にもそれ以上のものとして宿りゆくのかもしれない。それを思うからこそ感慨もより深まっていくのだろう。
「烏妃」である寿雪が予てより強いられてきた禁忌。それを葛藤の中で破りながらも、培ってきた――寿雪当人としては“図らずも”と言わざるを得ないところもあるのだが……――人々との“つながり”。その“つながり”が、今此処で“寿雪を必死に救い守るため”にと人々を動かす源泉になっている。
「因果応報」――寿雪の心根がもたらし撒かれた種。それらが芽吹き様々な形をもって花を咲かせ、その豊潤な色香を伴って寿雪の元に還るさま。それを見て心が波立たぬは嘘であろう。
例を挙げればキリはないが、とりわけ“束の間の日常を取り戻した”寿雪に対しての「花娘」の振る舞い(心遣い)には、殊の外鳥肌が立つほどの感情に“身悶え”もした。
更にはそれらの様を綴る筆致だ。こと更押し売るでもなく“さらり”としているあたり、品と共に妙を感じさせるのだが、この品と妙がいわばこの巻での肝にもなるようだ。
また“結実”という意味では、一貫して物語の隅々に至るまで丁寧かつ緻密に描くことを徹してきた手法が、ここにきてより功を奏し“効いて”いると感じさせる。
物語が大きく動き出す中にあって、登場人物の人柄/為人、そして心情の機微などを子細に描いてきたことが、各々の“行動原理”を読みやすくしている。つまり、彼らが寿雪のために『なぜ』“動く”のか。その『なぜ』、行動を促す“背景”=根源/原動力が明確に見えてくるからだ。
手に取るようにその“なぜ”が分かるからこそ、感情移入もしやすくなるし、感慨深さも一層増す。
まさに描写の緻密さが生む功績だ。
いよいよ物語は最終局面を迎えていく。
Posted by ブクログ
遂に5巻だ。
軽重にかかわらず、此処まで悲喜交交の経験/経緯を経て、「烏妃」を背負う寿雪、そして彼女に関わる人々の命運が、いよいよ佳境へと誘われていく。
物語は最終局面へと。大きなうねりを伴って動き出す。
『取捨択一』――何かを選ぶということは何かを捨てるということ。全てをもっては征けぬ。その覚悟を持たなければならない、と……。
ひとりであること――人と関わらぬことを余儀なくされてきた「烏妃」としての寿雪ではあったが、否応なく人との関わりを知ることになる。それによりこれまで“ひとり”であった頃には有りもしなかった類の「苦悩」「不安」「喜び」「慈しみ」「憤り」「悲しみ」「淋しさ」「嫉妬」そして「愛」を知ることになる。ただそれらの感情は「烏妃」としてではなく彼女自身の内面と向き合うことに他ならない。それはつまり芽生えゆく“自我”を意味する。
更にはそれが“世”に変化をもたらすトリガー(銃爪)にもなること(それは懸念/憂慮でもあった)を、いよいよこの5巻では語っていく。
彼女の中に生まれた「感情」や「想い」。それらは蓄積された“経験”の中で育まれたものだ。
ただし、そのことが「寿雪」だけに関わる事柄ではないのもこの物語の要。世の激動をも意味している。
とりわけ寿雪、そして彼女を“想う”高峻――「冬の王」と「夏の王」であるふたり――に課せられた宿命(もしくは“責務”とも言えるのかもしれない)に係るからこその“えにし”である。
作者の筆致はなおも丁寧で、ともすれば“細かい”。ただそれこそがこの“ファンタジー”――中華幻想譚――をより確かな、リアルなものにしている。
作者が懐き、事の始まりより秘めるべく“理”が、物語に生きる一人ひとりの意志を介してより明白なものに、そして物語をより肌身に触れる感覚で震撼させていく。
さて物語は遂に終焉に向かっていく。楽しみと淋しさを、今、私は心の中に宿している。
Posted by ブクログ
※予め断わりを。毎回「ネタバレ」はしないようにと心掛けてはいる。ただシリーズも重なると中々難しいものだとも感じながら書いている。
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シリーズ4作目。
無論、3作目を受けての続編であることは言うまでもないが……
例えばシリーズ全体で見るなら①②が「起」、それに継ぐ③④は「承」という雰囲気を醸す。ただ同じ「承」であっても“緩急”で分けるなら③に対し④は“緩”に相当するだろうか。だからと言って“中だるみ”を意味するものでは当然ない。物語の構成として“あるべき”―より効果的かつ意義深い―道筋という役割(重要性)は充分なほど感じられる。そしてこれを境に物語は大きく動くだろうことも予感させる。まさに「転」への架け橋だ。
緊張と緩和。それが程よい配分で描かれているという感覚の中、とりわけ今回は「寿雪」のよりパーソナルな部分―心情であったり性格であったり―に重きが置かれ、寿雪の人柄という点で特に楽しませてもらったという印象が強い。
勿論、寿雪に関わる重要な出来事―事件―も起こる。そのことを通して “「烏妃」とは” という大きな命題にも一歩踏み込むことにもなる。ただ事の重大さを測るように、寿雪の揺蕩う想いにも大きな変化が生まれ、その絶妙な描写に深い共感/共鳴を覚えていく。
個人的な話にはなるが、恐らくここまで―シリーズ中、一番笑った回かもしれない。それは偏に寿雪が本来持つ「烏妃」ではなく一人の少女としての人間性―“本質”に魅せられたということに他ならないとも言えるのかもしれない。
寿雪が経験していく、「烏妃」としてこれまで有り様もなかった他者との関わり。その機会が質量共に増すたびに、緩やかに綻ぶ“宿命の殻”。
ただ一方で寿雪が「烏妃」として抱き、抱かれる“恐れ”“不安”“悲哀”或いは“憤怒”そして“憂い”もまた、望まれる“願い”と共にまろび動き出す。
第4巻。キレ味を増す筆致―心の内にみせるその微細な動きすらも逃さず丁寧に、そしてよりきめ細やかな表現で捉えていく―が、寿雪のそして係る人々の運命の導きを彩り豊かに描き綴っていく。
Posted by ブクログ
そもそもはTVアニメから嵌ったこの「後宮」シリーズ(1巻〜2巻までの内容は放送回として配信中)。原作を①〜⑦まで纏めて“箱買い”するほどの心酔――入れ込み様ではあったが、結果として原作小説はアニメ以上の質感。ここ(3巻)まで一気に(実質4日で)読み切ってしまった。
前作までの感想でも書いてはいるが、①〜②に関しては主人公である烏妃「寿雪」を中心とした、彼女に関わる人たちの為人を、後宮内で起こる摩訶不思議な事件に絡めながら、或いは切っ掛けに、寿雪との関係性も含め緻密に描き切っていく譚。つまるところ「紹介」を踏まえた“序章”、と言えなくもない。
彼女たちの諸々の素性や気質に触れ、深く知るたびその魅力に気付かされ、そして惹かれていく。
それはまさにこのシリーズを更に読み進めていく上で必要不可欠な“下地”を、読者に積ませているという感覚でもあろうか。無論この3作目を即座に手にした時点で、かく言う私もしっかりと“地ならし”――完全に魅了――されてしまった証なのだろう。
さて肝心の今作だが……少しばかりテイストが変わったと感じさせる。それは決して悪い意味ではない。謂わば新たなフェーズに差し掛かったという印象だ。
例えば「寿雪」とは何者――本来のあるべき姿、どうあるべき者なのか。なぜ“烏妃”として選ばれたのか。幾多の謎めいたものが彼女にはいまだ秘められている。それらを穿ち、解き明かすべく物語も進んでいくだろうことを期待させる――このままでは終われない。留まり続けることは不可避であることを予期させ、意味し、新たな段階に入ったという布石を匂わせる。
まさに物語の“スケール感”が変わったという感覚だ。
そして勿論、“面白さ”はそのまま変わることなく、作者が拘る“理”に従い、神秘的かつ圧倒的中華幻想譚は綴られていく。