Posted by ブクログ
2011年06月13日
思春期の女性を主人公にした四作品が収録された短編集。この作者の特徴として身近な少女たちを主人公に据えていることが挙げられる。いわゆる「少女漫画」的な「ドジだけど明るい」とか「引っ込み思案だけど可愛い」といった「記号的」なキャラクターではなく、その辺りにいそうな、ちょっと弱くて、汚いところも持ってい...続きを読むて、傲慢さもあり我が儘でもあるけれど、それでも愛しさを感じられるような、そんな少女たちを描くことが多い、そんな風に感じる。
そして、この作品集におけるもう一つの特徴は失われた——あるいは失われそうになる何かを巡る話が綴られているということだ。一話目は世界の終わりを告げられた少女の物語。二話目は三人の少女たちのバレンタインを巡る友情の物語。三話目は幼なじみだった男の子を巡るお話。そして、最終話は交換日記をしていた二人の少女のお話。
或いは失われ、或いは取り戻される何かを描くそのペンは細く、繊細そのものだ。
収録作の中にはいささか予定調和的なものもあって、もう少し突き抜けてくれてもと思う部分がないではなかったが、下手に触れると壊れそうな素材をきっちりと描ききったという点は十分に評価して良いと思う。