藤岡陽子のレビュー一覧
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小さな笑みを積み重ね幸せに生きたいものですが、人生はそう思う様にはいかない。
この七つの短編も、大きな『波風』が立った家族・夫婦・親友の物語。決して腐らず、諦めず一歩を踏み出す人々。爽やかな勇気と安堵感をもらえました。
デビューするきっかけとなった、第四十回日本文学賞選奨作でもある『結い言』が収録されています。
期間は十日間の着付け教室で出逢った年老いた男性、倉嶋さんの凛としたたたずまいに女性たちは「アルコールランプの炎のような人だ」と称し魅せられます。
「みんな、倉嶋さんへの最後の言葉は「さようなら」ではなく、「ありがとう」だった。私もまた、喉の奥でそう呟いていた。」
果たして私は人生最後周りの人達に「ありがとう」と言ってもらえる生き方をしているのだろうかと、居住まいを正したくなる美しいお話でした。
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「自分の頑張りに星をくれる人がいる。それだけで人は生きられるのかもしれない。」の『満天のゴール』でファンになりました。
『トライアウト』は二冊目です。どちらも感動をくれました。
新聞記者の平久可南子、息子の考太を取り巻くほとんどの人(一部ずるい人はいますが)が善良で温かい。特に担任の先生の台詞は、ちょっと素敵でした。
シングルマザーとして不器用なほど懸命に生きてきた可南子は、妹・柚奈に「人生を楽しまないと」と励まされ、また、崖っぷちのプロ野球選手・深澤翔介との出逢いにより、人生を大きく動かされてく、魅力的なストーリーです。そして、読後は
希望が湧き、爽やかです。
「ひとは気持ちのある限り、どこまでも強く挑めるのだという想いが伝わってきたからだ。そうした想いは周囲の人間をもまた強くする。」
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良かったです!
助産師という「命」に関わるお仕事について。
生まれてくる命はどれも尊い命に違いはないけど全てが喜びにあふれて迎えられるわけではない。悲しい現実も命の選別に苦悩する場面もある。
妊婦さんに寄り添い「命」を預かる「助産師」という職業の重みみたいなものを改めて感じました。
出産のリアルな現場だけじゃなくミステリー要素も楽しめます。
身勝手な男に気分の悪い思いや医療の闇の部分を見た気もしますが、今後も追っていきたいと思わせてくれる作品でした。
シリーズ化して欲しいなぁ♪
『仕事をするって、生きることなのよ。真剣に働くってことは、真剣に生きるってこと』
『真実を知って、ようやく動き出す時間がある。それはきっと、誤魔化したまま堆積していく時間よりも本人にとっては重要なはずだ』 -
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思いがけないことが我が身に降りかかったら、どうする?
主人公可南子は新聞社の記者。野球選手と不倫をして、別れた後に妊娠が分かる。しかも、不倫相手ではない人が不倫相手だと思われ、その人が野球の八百長で世間を騒がせてしまう。
そんな状況になっても、彼女は子どもの父親が誰かを誰にも言わない。仕事も辞めない。でも、シングルマザーで勤務時間の不規則な状況で子どもを育てることはできない。だから、息子を仙台で新聞店を営む両親に預ける。
可南子は自分を守るために肩肘を張って、依怙地になって、子どもを犠牲にしているように見えた。どうしてそこまで頑ななのか。そんな可南子が初めは好きになれなかった。何を甘えているのかと。子どもを放っておいていいのかと。
そんな可南子が、戦力外通告を受けても、現役でプレーすることに挑戦し続けている深澤と出会い、また、息子のこと、父親の急逝で、可南子は変わっていく。
読み終わって、思い返していて、深澤と出逢えたこと、彼女自身が逃げなかったことが、可南子が変われたポイントでもあるのかなと思った。回り道をしすぎたかもしれないけれど。
息子の孝太は小学二年生ながらとてもできた息子。その孝太がこんなことを言っている。
野球の実力はあるけれど、監督に好かれていないから、試合にあまり出してもらえない。でも、みんなが自分のことを認めてくれているから、そんなの我慢できると言った後に、
「辛い時はその場でぐっと踏ん張るんだ。そうしたら必ずチャンスはくる。チャンスがこない人は辛い時に逃げている人なんだ。」
この「辛い時にぐっと踏ん張って逃げなかった」から、そして、本当に大切にしなければいけないのが何かがわかった。だから、可南子は変われた。 -
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佳作を連発しているアベレージヒッター。どれもこれも外れが無くもれなく面白いです。
そしてアベレージヒッターつながりで野球を題材にした小説です。
シングルマザー、親子の確執、愛情。あきらめない、あきらめられない心。誰にでもある過去の傷、自分だけではないという気づき。いつまでも小さい子供ではない、成長していつか自分を追い抜いて行くという寂しさと喜び。
色々な要素が内包されていてとても奥深い本だと思いました。
主人公の父がとても頑固なおやじなのですが、孫との信頼関係が見ていてとてもうらやましかった。自分はほぼ祖父の記憶ありませんが、かなりのダメ男だったようなので頼りになる男が周囲に皆無だったので、こういう関係はとても萌えます。
そして野球少年と落ち目の野球選手との邂逅。自分も少年の目線になれるし、この歳になると野球選手の目線も想像が出来てしみじみいいなあ・・・。 -
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看護師を目指す男性看護学生のお話です。いつもながら、お見事です。厳しい医療の世界を描きながら、決して暗くはならず、とは言え甘くもなく、現実的な厳しさも交えながら、希望を失わないお話。だから、安心して物語に身を委ねることができます。
主人公は父親を事故で亡くし、同じ事故で歩けなくなった弟と暮らす看護学生です。仕事で忙しい(?)
母親の分まで、家事と弟の世話もする、いわば、ヤングケアラーです。母親に対して、大変なのはわかるけど、息子にそこまで負担させるなよ、と言いたくなる。彼の人生、未来を、あなたはどう考えてるの?と、言いたくなる。難しい話で、本当に辛い。
応援してるよ!みんな、頑張れ! -
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オーディブル。ホイッスルを聞いて、藤岡さんの小説をもう少し聞きたくなった。短編七つ。家族との関係を描いた話が多いかな。友達に過去彼に会いに行く付き添いを頼まれる(波風)、母の再婚相手が気に入らない(鬼灯)、幼いころ、おばさんに預けられ、育った姉と弟(月夜のディナー)、たった一人、着付け教室に通ってきているおじいさん(結い言)、オタ活を生きがいに介護施設で働く青年(真昼の月)、夫に恋人ができて別れることになり、もういない母の田舎に越してきた女性(デンジソウ)どれも抉ってくる。野球の天才で、テンと呼ばれていた少年の生涯を描いた「テンの手」は、ちょっと、小説をわかっていながらも、苦しくて、トラウマ級に心に棲みついてしまう話だった。