上野千鶴子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
社会学者の上野千鶴子さん、心理学者の信田さよ子さん、女性向けアダルトグッズの店をやっている北原みのりさんの対談本。テーマは「毒婦」(と呼ばれた女たち)。木嶋佳苗や角田美代子、東電OL、畠山鈴香など。
その事件だけにはとどまらず、女性を取り巻く社会について、さまざまな視点から描かれている。私が1番衝撃を受けたのはここ。
P143-144
『彼女たちは、誰かの性的対象になることで、自分のアイデンティティを復活させようとする。アイデンティティって言うのもおかしいんだけど、性的対象にならなければ自分というものが存在しないっていう自分、を持っている人たちが一定数いるわけですよ。…中略…自分が性的な女性としてセクシャルな身体をもつことによって、自分をボコボコにしていた父親が私を認めてくれるんだ、と感じる。こうやって、娘は性的な眼差しの中であれば自分も生きられるんじゃないかと思うようになるんです。』
私は父にボコボコにされていたわけではないけど、近いことが起こっていたのだと思う。そして母がそういうセクシャルな女性ではなかったから余計に、私はそちらに行きたかったんじゃないかな。 -
Posted by ブクログ
2023.1.2放送のものに、放送では伝えられなかった内容を加えさらに充実させた1冊です、とディレクター山田氏の「はじめに」弁。
「伊藤野枝」は番組では辻潤と大杉栄との関係と28歳までに7人の子供を出産、というのがとても印象に残ってしまってあまりいい印象は無かったのだが、加藤陽子氏の活字を読むと、思索の人ではあったのかもという印象が少し増えた。明治28年の生まれで生家は没落はしていても潤沢だったころの生活の名残があり、労働者の開放を思想しながらも、女工たちの生活との間には一線がひかれている、などのことが改めて分かった。
「侍女の物語」では筋書きや登場人物の意味付けが書かれていて、気づかなかった意味付けが分かった。また続編の「誓願」にも触れられていたので、やはり読むべきかな。
「男同士の絆」では、論理的な上野氏の文章で番組を再確認。改めてマネの「草上の食事」って、やな絵だなあ・・
男同士のお話で女性は相手の男からぶんどった戦利品だ。
またセジウィックは私たちが常識と思っているような性道徳は意外と歴史が浅く、ここ3世紀くらいのもの。それを「伝統」として頑なに守っているのが宗教保守。歴史的な変化が起きると、いままで当たり前だと思っていたことに亀裂が入る。その亀裂が見えた時に初めて、いままで当たり前だと思っていたことの起源に関する議論が成り立つ。始まりについて知ってみたら、終わりもまた見えてくる。・・歴史のある時点で始まったものには、必ず歴史のある時点で終わりがくる。なので、異性愛の男同士がホモソーシャルな集団を形成して、富と権力を独占するという今日の当たり前にだって終わりを予見することができる。「男同士の絆」はそういう、希望を与えてくれる本でもある。
2023.7.30第1刷 購入 -
Posted by ブクログ
紹介されている本はどれも興味深かった。
ジュディス・ハーマンの心的外傷と回復は、特に読みたいと思った。
・伊藤野枝の「階級的反感」にはめちゃくちゃ共感する。
正義に燃え、階級による格差や差別をなくしたいと思って活動しているのに、(活動による救済の対象である)労働者階級と仲良くできない。相手には拒まれてしまうし、相手のそんな振る舞いに自分も苛立ってしまう。
それを率直に認めて見つめるのは勇気がいるがとても大切なこと(今のリベラル知識人に足りていないこと)。
そして、上間陽子の「階層的な違いや壁は確かに存在する。でもそこからだけどな、そこからスタートすればいい」というのは説得力があった。
・アトウッド『侍女の物語』は、カズオイシグロのフェミニスト版みたいだなという印象。
フェミニズム的価値観が押し出された小説ってあまり読んだことがない気がするので未知だが、いつか読んでみてもいいな。
現代アメリカ批判も含んでいる作品。
・ジュディス・ハーマン『心的外傷と回復』、名前はもちろん知ってる古典的名著だが、内容を解説されたものを読んだのは初めてでためになったしさらに興味を持った。
第一章の研究史の概説も知りたいし、第二章の心的外傷からの回復の道筋を私も勉強したい。
PTSDはずっと女の「ヒステリー」扱いされていたのが、ベトナム戦争帰還兵が同じ症状を訴えてはじめて病気だと認定されたというのは、女性が社会に占めてきた地位を物語っていて興味深い。
・セジウィック『男同士の絆』、いかにも上野千鶴子らしいゴリゴリの理論書。ホモソーシャル空間成立にはホモフォビアとミソジニーが不可欠という、これ自体は聞いたことのある話。
ただホモソーシャル空間での競争関係があるために、そこで敗北した「弱者男性」は自分より弱い相手である女性が攻撃対象であるという指摘には確かにと思わされた。
最後に書いてあるように、男がホモソーシャル空間から半身抜け出さないと社会は変わらない。男がんばれ。 -
Posted by ブクログ
介護されること、死ぬことはどうせ避けては通れないのだから、早いうちから準備をしておいたほうがいい。いろいろな資金の準備というよりは「心づもり」という面で、こういった本はこれからもどんどん読んで準備したいです。
ジェンダー界隈で有名な上野さん。中国では彼女の本が売れまくってるらしい、ということを知り興味を持ちました。この本も女性に向けて書かれています。
前半の、「女一人がどこでどう暮らすか」は、うーん話半分といったところ。裕福な人が対象なのかな。「自分のささやかな夢をかなえるのに遠慮はいらない。とにかく早く始めよ」というメッセージは刺さりました。
後半部分の「介護・死ぬこと」に関しては、『介護される側の心得』『おひとりさまの死に方』が非常に参考になりました。
「孤独死」に関しても漠然と恐怖を感じていましたが、それなりにコミュニティに属し、準備していれば、いわゆる壮絶な孤独死とは無縁。せいぜい死の瞬間に看取る家族がいない、という程度。これはだいぶホッとしました。 -
Posted by ブクログ
流行り廃りの問題でなく、そこにある事実として捉えるべきフェミニズム。その一人者の手になる本書となると、興味を惹かれない訳に行かない。以下に気になった内容を引いておく。
・フェミニズム以前に前景化していた人種差別や階級差別があり、そのせいで、性別による差別に目が向きにくかった歴史。
・輸入品ではないウーマンリブ:新左翼運動で男性に失望した女性活動家から声が上がったもので、欧米のものとは本質を異にする。
・女性学の最大功績は、「問題は女の側にあるのでなく、社会の側にある」とした点。
・弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想。そうでないと、男性を目指すのが正解になってしまう。
男性の身からすると、ともすると勘違いしがちな部分だけに、身体化するまで繰り返し思い起こす作業が必要。 -
Posted by ブクログ
フェミニズムについて。対談形式なので分かりやすいし、田房さんもほぼ初心者だから分からない言葉は上野さんが解説してくれるし、入門書としてはとても読みやすい。
田房さんの父親が田房さんに「長男的な役割を求めていた」という部分で、私の父もそうだ!!と腑に落ちまくった。父は典型的な女性蔑視人間なのに、私を東京に行かせたのはそれが理由だったと思う。
それにしても女性を取り巻いてきた、今も取り巻いている環境は本当に劣悪で、おそらく多くの女性も何が問題なのか気づかないままでいるということを考え出すと気が遠くなる。
私の元夫は自分ではフェミニストと名乗っていたけどおそらくフェミニズムについて何にも理解してないし、何なら家事育児は女の仕事だし、私の仕事を見下していた。腹立つ。
「個人的なことは政治的なこと」
「男のミソジニーは女性蔑視で女のミソジニーは自己嫌悪」
「男を代表してごめんなさい、って言ってくるフェミに寄り添ってますアピールがすごいヤツは腹立つ」
などなど、名言が多かった。 -
Posted by ブクログ
とある会合で、男性の在り方を問い直す言説で最近売り出し中の清田隆之氏の講演を聞いた。なぜか中高男子校時代の同級生のお仲間を1人連れてきており(当初予定になかったそうだが、花粉症で話しにくいから急遽とのことだった)、講演の後半は2人の対談形式であった。
前半はマイノリティの生きづらさなどを(ちゃんと)話していたのだが、後半は2人の高校生時代の「楽しい」思い出、悪ノリなどの話で、何かとよく裸になったよな、なにかというと「走ろうぜ」となる、と言った男子校の思い出話をとっても楽しそうに披露。
夜中のDJ番組を聞かされているようで、だんだん苦痛になってきた。
(この話全然楽しくないんですけど!)心の声
全く気が付かない二人。笑いながら楽しそうにずっと話す話す。男ってバカっすよねー。ゲラゲラ。
(悪いけど本当にそう思う)心の声
長い。二人の世界。じっと我慢。
(マジョリティはマイノリティの辛さを分からないとさっきは言ってましたよね!どの口が!)心の声
女性ってこういう仕打ちに慣れているので、みんな黙って聞いている。寝ている人も多い。ただただ苦痛。
だって清田氏の講演の題は「『一般男性』の話から見えた生きづらさと男らしさのこと」なのだ…。
今この講演会で話されるべきなのは、今ちょうど面白おかしく披露されている男子集団から弾き出された生きづらいマイノリティの男子のことではなかったか?
男性集団の非言語的ノリをどう解消するかではなかったか?
じっと我慢を強いられる女性との共生についてではなかったのか?
清田氏も最初はおそらくそのつもりで話し始めたと思われる。確かパワポにもそう書いてあったし。
でも嬉々として語られる思い出話はまるで自慢話のように聞こえる。全く生きづらくなさそうだ。
なぜ彼は途中からすっかり会の趣旨を忘れて、聴衆(一人を除き全員女性)を置き去りにしてしまったのか?
そこで感じた違和感に答えをくれたのがこの本だ。
ようやく本題(笑)
通常の講演なら、多分日頃の著作で披露している表向きの話ができたのに、同級生を連れてきたことで、ホモソーシャルな世界が形成されたということ。(二人で語るうちに甘美な思い出が蘇り、ホントに楽しかったからね、二人でいつのまにか思い出話に花が咲いてしまったよ、てことだ。)
女性の聴衆より目の前にいる一人の男友達の方が彼にとって大切でもあったということ。
それほどホモソーシャルな絆は魅惑的だということ。男にとっては。
その魅力は抗いがたく、男は単体でなく複数になると、そこに引き摺り込まれてしまう。その現場を目撃したこと。それが違和感の正体だ。
「ホモソーシャル」とは性的主体同士の連帯を指す。
「おぬしできるな」と承認されることを良しとする強い絆だ。
「ホモソーシャリティ」は「ホモフォビア」によって成維持され、「ミソジニー」によって成り立つ。
「男と認め合った者たちの連帯は男になり損ねた者と女を排除し差別することで成り立っている」
この分節は、視界をクッキリさせてくれた。本来ならゼジウィックの著作を読むべきかもしれないが、上野千鶴子さんのわかりやすい解説がとても助けになった。
あースッキリした。
偶然これを読んでくださった(読んでしまった)方々すみませんでした。そしてありがとうございます。 -
Posted by ブクログ
フェミニズムが辿ってきた変遷を、簡潔に学ぶことができる一冊。
具体的には、19世紀末〜20世紀初めの第一波フェミニズムに始まり、第二波、第三波、そして現在の状況が第四波フェミニズムとなるのか、というところまで順を追ってカバーしている。
何も疑問を持たずにいた「男女雇用機会均等法」も、成立の時まで辿れば「女性運動の敗北」だったということには驚き。
フェミニズムについて概要を学びたくて手に取った本書。
短時間でさっと学ぶことができ、ありがたかった。
この出版社の「わかりやすく、簡単に」という縛りがあると思うので仕方ないが、参考文献や注釈がなく、上野先生のみの視点から書かれている記述が多いなと感じた。
セカンドオピニオン的に、別の人が書いた同じテーマの本も読んでみようと思う。
【関連図書】
『「女縁」を生きた女たち』上野千鶴子/著(岩波現代文庫)
『新しい女性の創造』ベティ・フリーダン/著(大和書房) -
Posted by ブクログ
こんな世の中にしてごめんなさいと言わなくてすむ社会を手渡したい
心にとめておきたい言葉。
愛されるっていうのは大事にされるっていう事だと思う。大事にされるっていうことはリスペクトされるっていうこと。女は自分をリスペクトしない男を選ばない。男性もリスペクトできる女を選ぶこと。
自分の時間とエネルギーにはかぎりがあるから、やりたいことに優先順位をつけなきゃいけない。
欲張らない、欲を出さない。小さい目標を立てて、それをひとつひとつクリアしていく達成感。
いまは育児や家事と仕事との両立、のちのちには介護と仕事との両立を考えなければならないとぼんやり思っていた。両立を考えなければならないのはいつも女性側。もやもやしていた気持ちが整理されていくような内容だった。上野さんの他の著書も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
数年前、上野千鶴子さんの東大入学式での祝辞に、ものすごく衝撃を受けました。
私自身、女であることを嫌だと思ったことはないけれど、女であることによる不自由や不利益を感じたことも多々あった中で、上野さんの祝辞から発せられるメッセージが心に残っており、たまたま見つけたこの本も手に取ってみました。(東大入学式祝辞もこの本に全文掲載されています)
この本は10代の女の子向けに書かれているものですが、女であるが故に感じてきた、様々な場面でのモヤモヤした思いを晴らしてもらった気がします。
女は女のままで、弱者は弱者のままで、自分の思いのままに、安心・安全に生きていけるようにすることが大事なのだという一貫したメッセージに励まされます。これって、結局みんなにとって大事なことなのではないかな。
フェミニスト、とか、フェミニズム、とかを、何か激しい主張のように考えている方にこそ読んでいただきたい一冊です。