永田和宏の一覧
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ユーザーレビュー
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「歌に私はなくだらう」は、歌人河野裕子がなくなってまだ生々しい1年後に夫永田和宏によって書かれたもので、哀切きわまりない。同時にすさまじいというか凄い内容です。
癌になってから、河野は 薬の影響もあったのか、精神の変調をきたし、「なぜ自分だけがこんな目に合う」と家族、特にご主人を詰問し、えんえんとな
...続きを読むじることがあったそうで、それが続くとご主人も逃げ出したくなる、それがまたよけい河野を傷つける、特に乳がんということで妻として女性として夫に捨てられるのではないかという恐れがあったかもしれなくて、嫉妬が病的になり、ついには娘にまでのろわしい言葉をはくようになったそうです。連日の妻のののしり、ぶちまけられる不満に耐えきれなくなった永田が 椅子を振り上げて窓ガラスを割る、娘が、父永田が迢空賞受賞のための外出先のエレベーターの中で狂ったような母親に「張りて」をかませるという状態。家出騒動もあったそうで、 およそ闘病記らしくない闘病記かもしれません。しかし、そういう時期を経て、癌の再発後、河野は精神の高みに達したかのように違う面を歌にみせ始め、
みほとけよ 祈らせ給へあまりにも短きこの世を 過ぎゆくわれに
手をのべて あなたとあなたに触れたきに 息が足りない この世の息が
という歌を口述筆記で残しています。
亡くなる前日には、高熱の中で、
「今晩、ごはんは? 何食べるの?」と 夫に聞いています。
永田が
「魚の味噌漬け いただいたのがあるし、きゅうりも漬けようか」
と答えると、
「それでいいね」
と安心したようだったそうです。亡くなる前日も夫の食事を気にするなんて、と違和感を覚える方もおられるでしょう。
歌人であり、妻であり、夫に対して母親的側面もあった昭和の女性。その恋人であり夫だった人との激しい関係に圧倒されます。
Posted by ブクログ
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妻の遺した日記に、夫の日記、回想、双方の手紙を挟みながら、二人の出会いから結婚に至るまでの出来事、心の動きが、その時詠まれた歌とともに綴られていきます。稀有な才能の二人の真摯な青春の実録であり、叙情性に満ちたサスペンスのようでもありました。何より河野裕子さんの著者を愛し抜こうとする気持ちに心を打たれ
...続きを読むました。
Posted by ブクログ
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永田和宏は、歌人であり、生物学者である。有名な歌人である河野裕子と1972年に結婚したが、河野裕子は2010年に亡くなる。河野との最後の日々を綴った著書に「歌に私はなくだらう-妻・河野裕子 闘病の十年」がある。本書は、主に、河野裕子との出会いから結婚までを、河野の日記や短歌を用いながら描いたものであ
...続きを読むる。
読後の感想は2つある。1つは、若い頃の著者・永田和宏の情けなさ。そして、もう一つは、当時から現在に至るまでの永田和宏の正直さ・誠実さ。
京大生であった永田和宏は、京都女子大の河野裕子とつき合い始める。それは、軽いつき合いではなく、お互いの魂を求めあうような激しいつき合いである。3年生になった頃から永田は悩み始める。河野裕子、および、彼女の両親が、早く結婚したがっていることに。もとより結婚することに否はないが、早すぎると永田は考えている。それは、永田が学者としての道を歩むために、大学院に進学を考えていたこと、また、歌人としても身を立てたいと考えていたこと。結婚・進学・歌の道の3つをどのように両立させるかを悩んでいたのである。悩み過ぎて、大学院進学の勉強に身が入らず、大学院受験に失敗してしまう。そして自殺を試みる。その後、働き始めた河野裕子を妊娠させてしまい、中絶させてしまう。そして、その時には知らなかったことであるが、河野裕子をも自殺未遂に追い込んでしまう。結局、永田はいったん就職をし、河野と結婚する。その後、再び大学に戻り研究者の道を歩むと同時に、短歌でも身を立てることに成功し、河野も有名な歌人となる。追い込まれて自殺を図る、そして、河野を妊娠させてしまう永田は格好悪い。
しかし、そのようなことの詳細を、赤裸々に、詳らかに永田は本書にしたためている。河野の当時の日記や短歌、自分自身の当時の短歌や記録を用いながら書かれている。このような記録を書く作業は、とんでもなくつらい作業であったはずである。自分がとった行動に対しての後悔や恥ずかしさ、また、それが河野を傷つけたことに対しての悔恨の念。そのようなものを感じながら書いていたはずである。そこから逃げずに、最後まで書ききった永田和宏は、正直で誠実な人であると信じることが出来る。
永田と河野の短歌には、このような激しい感情が表されていたのだということを知ることが出来たこと、というか、短歌というものが、そのように出来ているものだということを知ることが出来たことも、本書を読んだからこそ。
Posted by ブクログ
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言葉の力はすごいなと思う。
「あなたらの気持ちがこんなにわかるのに言ひ残すことの何ぞ少なき
手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」
Posted by ブクログ
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河野裕子の情熱的で一途な熱い生き方に感動する。
そしてひいては二人の恋愛を通じて人間の愛の深さに心が震えた。
Posted by ブクログ
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