村山由佳のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったが夢中になって読むという感じではなかった。直木賞を取るために執念を燃やすと言っても過言ではない作家と、その編集者が中心で話が進む。作家と編集者の距離が近くなり、それによって作品はよくなるが結果として行き過ぎた感じで関係は破綻した。
書籍出版されるまでのシステムや、作家と編集者の関係性、出版会社の仕組みや文学の賞レースについては大変興味深く読んだ。知らない世界の裏側のようで面白かった。しかし、気持ちをいれることができた登場人物がいなかったことがいまいち入り込めなかった要因かも。
本屋大賞3位まで来たが、本を売る人たちがその裏側を知って欲しいと思って票をあつめたのかな、と思ってしまった。 -
Posted by ブクログ
禁断の恋に悩む兄妹、他人の恋人ばかりを好きになってしまう末妹、居場所を探す団塊世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱えて――。愛とは、家族とはなにか。別々に瞬きながらも見えない線で繋がる星座のように、家族は、「家」という舟に乗って無限の海を渡っていく。心震える感動の短篇連作小説集、第129回直木賞受賞作。
**
決して心地よい物語ではなかった。
ただ、文章が綺麗だからか、読後に残るのは嫌悪や憎悪というよりも「切なさ」や「苦しさ」。
必ずしも優しさが人を救うとは限らないし、人生は正しいことばかりじゃない。
作中に描かれているような出来事も、現実にどこかで起きているのだと思う。
…そんな風に他人事のように考える自分に対しても、「自分にはこんなつらいことは起こらない」と高をくくっているみたいで、少し嫌な気持ちに…。
どんなに気をつけようと意識しても、なぜか同じような傷つき方や生きづらさを繰り返す人と、話に出てくるような理不尽とは無縁な人がいる。
作中にあった「隙がある」という言葉に引っかかった。
私には「生まれ持った性質」みたいな抗えないもののように思えてしまって、
そう思ってしまうことすらも、割り切れない不快感が残った。
不条理に傷ついたり苦しんだりする人が、一人でも減ってほしいと強く願わずにはいられない一冊。 -
Posted by ブクログ
一言でいえば、タイミングで結婚した夫婦の成れの果てを描いた物語。元彼や周囲のライバルへの当てつけで結婚した2人だから、案の定上手くいかない。表面上は仲良くして見せても、心と心が繋がれていなかったら、そんな夫婦関係なんて無い方がよっぽど幸せだ。
そしてこれは、プライドが満たされない男性の気持ち悪さを丁寧に書き綴った小説だとも思う。孝之は男性社会特有のマッチョイズムから上手く降りられなかった男性のように見えた。(降りちゃえよ)と思うけど、それは私が女性だからできることなのだろうな。
途中何度も苛立って離脱しそうになったけれど、物語の終盤、どうしようもない男たちと、敵同士でも理解を示したり、仲間同士で連帯していく女性たち、という対の構図が描かれていて、「女性って最高なんだよなぁ」とつくづく思った。この気持ちを抱くのは、人生で何百回目だろう。
社会が女でいることを嫌いにさせているだけで、本当はずっと美しく、素晴らしい生き物だと思う。 -
Posted by ブクログ
『ダブル・ファンタジー』の続編。
主人公の奈津の性欲はとんでもない。
そう思っていた。
でも、ただ性欲が強かっただけではないのかも。
愛に飢えていたというか。
自分のことを大事にして欲しかった。
自分のことをもっと想って欲しかった。
心から愛してくれていれば、守ってくれれば、
身体を重ねなくても安心できたのかも。
そんな風に感じた。
そして登場する男がまあなんともクズで。
つい不倫してしまう奈津も奈津なのだが。
でも、大林はとことんクズだった。
こうやって人は暴力的になっちゃうんだろうなと。
自分だってそうしたくないんだろうけど、気づいたら相手を責め立ててしまい‥。
それでも自分を選んで欲しいという気持ちが強くあるから、『あの人とは別れるから』って言葉が、その言葉だけが欲しくて。
でも不安が強くなっちゃうから、「お前が悪いことをしたよな?俺を傷つけたから、俺のいうこと聞けるよな?」みたいな上から目線が出てきてしまうのかなと思った。
2026.9.19(土) -
Posted by ブクログ
人生の後半をひとりで生きようとしていた小説家のハナ。
喪失も挫折も知って辿り着いた、バツ2アラフィフ女子、最後の恋。
それは、はつ恋の相手であり、心身を委ねる深さも初めての恋。
大人のための恋愛小説。
……まあ、多少は思いました。
結婚を2回失敗して、それでも自分で稼げて、人生の後半でまた恋ができる女性って、私の周りにはいないなあと。
でも、それではあまりに侘しい。小説にならない。それもまた、ならなくはないけれど。
恋を求める気持ちはわかる。
でも、好きな人が来るといそいそ料理をするというのは、私はもう無理かなあ。先日のお盆で、いつもより多めの食事を作り続けただけでも、もう十分でございます。
そんな現実感を挟みながら読んでいると、この小説が描こうとしているのは、単純な「人生最後の恋」ではないのだと思えてきた。
家族も、親も、子どもも、それぞれの仕事も、これまでの人生も。
それらを捨てるのではなく、それぞれ収まるところへ収めたうえで、残りの人生を生きていく。
『はつ恋』が『ハルメク』2017年5月号から2018年10月号まで連載された作品だと知ると、なおさら腑に落ちる。
『ハルメク』は、人生後半を迎えた女性の「これから」を応援する生活・人生情報誌。
そう考えると、ここで描かれる「幸せ」は、若い頃のように恋だけが人生の中心になることではないのかもしれない。
いろいろなものを抱え、いろいろなものを諦め、それでも自分の人生を自分で引き受ける。
そのうえで、言いたいことを言えて、心も身体も委ねられる相手がいる。
それは確かに、人生の後半に訪れる幸せなのだろう。
そして「はつ恋」というタイトル。
ツルゲーネフの『はつ恋』を意識したものなのかは、作者自身の明言を確認できなかったけれど、もしそうなら面白い。
少年が初めて知る恋ではなく、人生をひと通り生きてきた女性が、もう一度「初めて」を知る恋。