村山由佳のレビュー一覧
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日本におけるクラシックバレエの黎明期に併せ、終戦を迎えた後のシベリア抑留という過酷な環境で生きた人々を描いた大作だ。
私は全く知らなかったのだが、1919年(大正8年)にロシア革命によって鎌倉の七里ヶ浜に辿り着いたエリアナ・パヴロヴァ女史は、この地にバレエ・スクールを設立し、日本のバレエ界の母と言われているとのことだ。
母ナタリア、妹ナデジダと共に日本に帰化し、多くの日本人門下生を育て上げた。
その1人に、フィクションではあるが男性バレエダンサー・久我一臣が大きな存在として描かれる。
13歳からエリアナのもとでバレエを学び、その後に世界的振付家となった久我一臣。
その久我の人生を、編集者の水野果耶と記者の長瀬一平がインタビューするところから物語は始まる。
インタビューの目的は、バレエに関する話を聞き出す筈だったのだが、久我が重々しく語る話は、満州で生活していた日本人が戦後にソ連軍に追われ敗走した日々に続き、バレエの本場の国で体験した筆舌に尽くしがたいシベリア抑留の体験だった。
満州へ移住した日本人たちの悲劇は、終戦数日前に突如参戦してきたロシア軍が迫ってくる前に国民を守るべき関東軍は民間人を見捨て、いち早く満洲国から撤退し、とりのこされたことから始まった。
民間人は独力で敗走しなければならない立場に追いやられてしまったのだ。
その中には看護を手伝うために動員された看護隊員だった少女たちの存在があり、ロシア軍に追い詰められた状況下で彼女たちが味わう悲惨な体験が綴られている。
久我は衛生兵だったこともあり、看護隊員の少女達とも接点があり、少女達と「生きて日本に帰ってまた会おう」と言葉を交わすのだが、その望みは希薄なものだった。
表題『 DANGER 』の意味は、最後の最後に種明かしがされ、涙を誘われながらも私は救われる思いがした。 -
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ネタバレなんだかすごく良かった。
設定はよくありそうな内容で、いじめが原因で学校に通えなくなった雪乃のために父が会社をやめ、田舎の実家のもとで農業を始める。特出したことがあったわけではないんだけど、すべてがちょうどいいと感じた。
いじめの話はそもそも好きじゃないのだが、描写もやりすぎず、雪乃の心を表すのに必要なだけ表現している。村の人からよそ者扱いされるのも、やりすぎず、でも寄り添いすぎず。普通に夫が勝手に会社辞めて田舎に娘連れてくなら妻もキレるよね、でもそれもお互いの気持ちが伝わるのに必要な分だけ描き、無駄な喧嘩はしない。雪乃はお母さんが自分のことを恥ずかしいと思っているのではと不安を募らせるが、村の人達の前で雪乃を庇ってくれたお母さんの行動で、その不安が溶けていく。
あと最後、学校に通えるようになってみんなに歓迎されるみたいなシーンもなくて、あくまで一歩踏み出したところから、数カ月後に飛ばすのもいいと思った。語りすぎない、寄り添いすぎない、でも少しずつ人が回復していく様子がよく伝わる一冊だった -
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真珠店に勤務する32歳の真奈。
仕事も充実しており、年下の彼氏もいて半同棲生活を送っていた。
そんな時に出張先のタヒチで元彼と再会。
付き合っていたのはだいぶ前の話なのに‥会うたびになぜか、惹かれていってしまう。
あの時の熱い気持ち。
素でいられる自分。
そんなことが、頭から離れない。
でも‥
私には結婚する予定の彼氏がいる。
彼を大事にしないと。
私は彼に愛されている。
そんなことを無理やり頭に並べて、元彼のことを一生懸命頭の中から消そうとする真奈の様子を見ていると、まるで昔の自分を見ているかのようだった。
彼氏は優しい。でも今はその優しさが逆に苦しいものになる‥そんな気持ちも伝わってきた。
浮気をしたわけじゃないのに、彼氏といるのが気まずかったり。
でも彼氏と一緒に″いなきゃ″というような姿が鮮明に描かれていて、さすが村山由佳さんだなぁと思った。
こんなにも刺激を求めて、自分の気持ちに素直になって、感情的に行動する真奈を少しだけかっこいいと思ってしまった。
元彼に惹かれるのがなんかわかるなぁ。
狂うように恋愛をした過去もいい思い出です。
2026.10.20(火) -
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作家の村山由佳さんが渾身の思いで書いたのが伝わります。書きながらも苦しかっただろうな、と案じるほど壮絶な内容がここに記されています。戦争とバレエダンサー。満州国にいた日本人女性たちのあまりにも残酷な運命。
シベリア抑留者や満州引き揚げ者が辛い体験をしたのはある程度知っていますが、本書はその闇の部分をつまびらかにしていきます。特に日本人女性の受けた傷みを。
当時と現代を交互に行き交いながら。
昭和20年8月15日は終戦日であるにも関わらず、満州にいた日本人たちはその日から、“もう一つの戦争”が始まったのですね‥。
日本が侵略した満州という外地で敗戦を迎えた日本人は8月15日に立場が逆転したことを克明に記しています。
ソ連軍の蛮行。日本軍の裏切り。
その忌まわしい記憶を知らないまま風化してしまうより、村山さんの手で知ることが出来て良かったと思います。バレエという芸術とリンクさせた膂力に脱帽です。
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ネタバレ『大人の割り切った関係』というメッキが剥がれ落ちる瞬間
上下巻を通して描かれるのは、女の業だけでなく、男たちの見苦しいまでのエゴと滑稽さだ。 特に印象的なのが岩井という男。最初は「誰と寝ても自由」「束縛もしない」と、物分けのいい大人の余裕を見せる。しかし、いざ奈津が本当に他の男と関係を持ち、しかもその男にのめり込んでいくと、隠しきれない醜い嫉妬とプライドの崩壊を隠せなくなる。
「割り切れる」なんていうのはただのポーズでしかない。実際は自分が一番の特別でありたいだけであり、その基盤が脅かされた途端に態度を一変させる。自分が傷つくのも、手元が寂しくなるのも耐えられない。
男の所有欲や「他人の男の方が良かった」と言われたときの惨めさ、そのドロドロした感情を制御できずに自爆していく姿は、痛々しいほどリアルだ。
結局、本当に割り切って付き合える人間などどこにも存在しない。
奈津の側もまた、承認と愛を混同し、都合の良い関係のぬるま湯に溺れていく脆さを抱えている。
綺麗事では済まされない人間性の醜さや、自滅するまで抱え込むしかない生々しい情念を、誤魔化すことなく真っ向から突きつけてくる重厚な傑作。 -
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「どうしても直木賞が欲しい」というキャッチフレーズに惹かれて読み始めた一冊。
周囲の反応は気にしない、自身の小説とその読者だけを愛するカインの気持ちがひしひしと伝わってきました。
時には関係者に罵詈雑言を浴びせるカインの性格から、その多くがカインとの仕事に一定の嫌悪感を持つ中、編集者の千紘はカインを尊敬し、一緒に過ごす時間が増えるにつれ、いつしかカインを危険なほどに崇拝していく。その結果、会社の同僚・上司の忠告をただただ煩わしいとさえ感じ、全能感のようなものを感じながら、独断で文章の付け足しを行ってしまう。削除したはずの文章の付け足しに気づいたカインは、やっとの思いで受賞した直木賞を辞退することになる。
念願の賞を受賞した喜びを感じることができず、唯一信頼していた人物への怒りと悲しみを覚えたであろうカインの心情を考えると、胸が苦しい気持ちになりました。1文を付け足さなければどうなっていたのか、2人で心の底から受賞を喜ぶことができたのか、その世界線も見てみたかったと思わされました。
本編の流れと違う部分でも、小説家と編集者の関係性や賞の選考過程、サイン会の裏側まで知ることができ、満足度の高い一冊でした! -
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面白い。そして、圧巻。
戦争とバレエ。まさかこの二つが、ここまで深く結びつくとは。
戦争の描写は生々しく、痛々しい。読んでいて辛くなる場面も多い。現代を生きる私たちには想像も及ばないほど熾烈で過酷な世界。しかし、そこで描かれる人間の姿には、時代を超えて変わらない人間の本質が見える。人はなぜ争うのか。人間の尊厳とは何か。あの時代に何が起き、何をすべきだったのか。そして、今を生きる私たちには何ができるのか。戦争の悲惨さを描くだけにとどまらず、人間の業や歴史の教訓、そして現代を生きる我々の責任にまで思索を促す。過去への省察は、必然的に現在への問いへと転じていく。
一方で、バレエの描写もまた圧巻だ。美しさだけでなく、身体の躍動や舞台の空気までもが、見事な筆致を通して伝わってくる。夢を追い求めるダンサーの葛藤、苦悩、挫折。その姿を通して、ままならない現実の厳しさと、それでもなお失われない希望の輝きを感じさせてくれる。
読み終えて、ただ面白かったという言葉だけでは到底足りない。心を揺さぶられるとともに、戦争の歴史やバレエの奥深さをさらに深く知りたいという思いに駆られた一冊だった。
今年読んだ本の中で、最も人に薦めたい作品。 -
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「なにこれ」
最初の印象。
内容的にこんなもの出版してもいいのか。
これを出した著者と編集者、出版社の覚悟もすごい。
村山さんが朝井さんにかけた言葉
(と朝井さんが仰ってた)
「誰にも知られたくないことを書きなさい」
これは出版業界とかの情報的なことじゃない。
PRIZEに書かれていたのは
自身の内蔵。ある意味気持ちの悪い、人に見せるものではない
恥ずべきところを高解像度で余すことなく。
それを伝えきるための努力を惜しまず、
一文字、句読点ひとつひとつ妥協なく、
最も適切な順番、選択は何か。過不足はないか。
まさに這いずり回りながら。
という執念さえ感じさせてくる。
私が小説に求めるものが、
ことごとく高濃度で精製されてる。
学べるところが多すぎる。
なにこの村山さん。
もしかしてこの人、
他の小説もこんな傑作なの?
怖さすらある。畏敬の念。 -
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shintak5555さんの本棚から
いや5多いわ!ひろみ郷か!( ゚д゚ )クワッ!!
明確な理由付けはないのだが、恐らく一生読むことはないだろうな枠の作家村上由佳さん
だったんですが…シンさんが大絶賛だったので読んでみることにしました
おもんなかったら今後シンさんのコメント欄は全て暗号文で書き込もうと思ってましたが、大丈夫でした!
よく考えたら自分の方がダメージ大きかったんですが、大丈夫でした!
めちゃくちゃ面白かった!
そりゃあそう
あのshintak5555555さん大絶賛だもの!おもんないわけがない!杞憂でした!あ、あまりの嬉しさについむつかしい言葉使っちゃいました
ごめんて
バレエと太平洋戦争ですって
何がどうなるとバレエと太平洋戦争が繋がんねん!思って読み始めましたが、見事に繋がってました
いやむしろ切っても切り離せないっていうか
もうね、わいもまだまだ浅いね
だからごめんて
バレエと言えばロシアやもんな
そして結局ロシアとも戦争やったわけで、それはもう繋がるわね
凝縮されていると言っても過言ではない
「踊る」ってどういうことやねん!ってことだと思うの
まぁ「踊る」ことだけに限らんけどさ
なんて言うかあれよ
そう魂よ!
戦争っていとも簡単に魂をへし折ってくるのよ
ほんとはめちゃくちゃ優しい人なのに、戦争となると簡単に敵を殺しちゃったりする
優しさ故にってのもあるかもしれん
でもほんとのほんとに心のど真ん中にある魂って戦争でも変えられんてことでもある
ぜんぜん正反対のこと言ってるな
でもぜんぜん正反対のことが成立しちゃうのもまた戦争なのよな
つまりもう戦争なんてすな!ってことやねん
わいにこれ以上むつかしいこと考えさすな!
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ネタバレ行き過ぎた執念は執着となる。
内々に燻る執着の火は、いずれ激しく燃やし尽くす業火となって、その身を燃やし尽くす。
だけど、炎は他者が触れるべきものでも、ましてや共有できるものでもない、己だけのものである。
天羽カインの直木賞への熱量は、まさに執着の域に達していただろう。
ヒステリックでパワハラ気質。前時代的な考えも抜けきれない人間性を、なかなか好きにはなれない。正直、一緒に仕事はしたくない。
それでも、"我が子"を通して読者と関わる姿はどこまでも真摯で、だからこそ最後の選択が胸を打った。
「あなたを、許さない」
作中作『テセウスは歌う』の言葉から取られた最後のメッセージ
二人の関係への終止符を打つ言葉であると同時に、ある意味では、千紘の新しい"船出"への言葉なのかも……なんて、想像をすればするほど膨らんでいく素敵な言葉だ。
彼女は望んだプライズを手にすることはできなかったけれど、
作家としてのプライドを守り抜いたその姿勢には敬意を示す。
できることなら天羽カインの次回作を手に取ってみたいものだ。 -
Posted by ブクログ
村山由佳さんのエックスが好きだ。あまりにも村山さんを愛するねこちゃんの写真が流れてきて、はっきりと立場を示したNO!の投稿や、穏やかだけど張りのある、豊かな暮らしぶり、微笑ましくて愛おしい"背の君"とのやりとりをみて、ぜんぜん知らなかった彼女のことが、大好きになった。
その村山さんが、いつか書かねばと思い書いた、という、DNGER…なんとなんと…恋愛文学の第一人者!である村山由佳さんとの…はじめましての小説。
なんども、くやしくて、ぶるぶる震えてしまった。平和ボケ、ってこういうことなんだろうな、と、思いながら、その軍靴の音がせまりつつあるこの不安定な社会をおもう。
小説がもつ、魔術。リアルで起こるマジックリアリズムを思う。やっぱりこういう物語を読むと、文学には、社会を、世界を変える力があると、強く思った。
おいコーもぜったいよみたい!
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Posted by ブクログ
村山由佳さんの魅力、全開!!
したたかに凛とした女性を描くのが、ほんと上手い!
あとね、
個人的に村山由佳さんの描く主人公の入浴シーンがむっちゃ好きなんです
余計な感情や溜まった疲労がそぎ落とされ、解放感に満ちていて…
分かってくれるひと、いるかなぁ〜。
この物語の主人公・天羽カインは好きになれないし、むしろ嫌いなタイプだけれども…(笑)
名だたる賞は欲しくなっちゃうよねぇ~
そりゃあ、そうだ
その気持ちは、じゅーぶん理解できる
読み手にできることは、作家と作品に対して、感謝と敬意を胸に抱くことしかできないけど、出版社、販売者、作家さん
本当にいつもいつもありがとうございますm(__)m