村山由佳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最初は猟奇的な殺人が題材のエログロな話かと思っていたが、読み進めるたびに「どうも違うぞ」と気づいた。「定」という1人の少女が世間を騒がせた「アベサダ」になるまでの彼女の人生を、彼女と関わった様々な人々の目線から読者に伝えている。定は自分のことを理解してくれる人を求めていた。本を読み終わったとき、その読者、多くの人が定を理解する人になっていることを彼女はどう思うのだろうか。本を読んで作者の意図に気付いたときは鳥肌が立った。
作者の物語の書き方にも魅せられた。話し言葉で物語を繋いでいくから、ついつい語っている人に引き込まれてしまう…480ページも苦ではなかった。
人を愛することは、苦しい事だと思う -
Posted by ブクログ
最近の政治家のかざす「愛国心」には心底嫌気がさしている。その理由を、この対談のなかでお二人が言語化してくれた気がする。
「過ちを過ちとして認めることからしか、国への本当の思いも生まれない(村山由佳)」「今は、過去の歴史に学ぼうとするような政治家が皆無に近くなってしまって、戦争への警戒心や、ヘイトが悪いことだという意識が弱くなってきているのが、とても恐ろしい(朴慶南)」
↑こういうことを、日本人はもっと重く受け止めるべきなんじゃないかな…。そういう人間としての努力が、日韓関係だけではなく、イスラエルやロシアの戦争に対する解決の糸口になるのだろうと思うのだけど。
猫エッセイや『風よあらしよ』を読 -
Posted by ブクログ
同性の親に対する屈折。
果たして親としての愛なのか?
どうなのか?
教育か、躾なのか調教か、はたまた虐待か?
ボーダーはルールをいくら作ったとて、判断し切れるものではない。環境の違い。
環境が違っていた者同士が一つの家庭を営み始めるのが家族の最小単位であれば、どこまでがどこまでの範疇か。それぞれに委ねられる。
範囲が決まっていたとしても、定まった数値にはならない。昔の体重計が、体重を指し示す赤い針が中央に固定され、目盛りが動くように。
うまい例えが思いつかない。
この物語に書いてくれたことは、少なからずどの家庭でも起こり得ること。少なくとも、自分自身の子供時代に置き換えてみて、かなりな -
Posted by ブクログ
ネタバレ凄まじいお話でした。
どこまでが史実で、どこからがフィクションなのかも分からず夢中になって読み進めました。
アングラエログロの「アベサダ」ではなくてみずみずしい一人の女性の輪郭が、吉弥の目線と彼女を取り巻く人々、そしてお定さん本人の視点を通して書き上げられていて、酷い女だとも思うのに彼女に魅入られていきます。
吉弥とお定さんの二人の心の通わせ方には胸を捕まれた思いでした。
そして吉弥自身の想いの行く末が見えたことによって想いが通じ合うという感情がよりリアルに感じられ、事件の日の彼女の想いも一段と際立つ。
村山由佳さんの文章の持つエネルギーが力強くて生き生きとしていて、まるで映画を見たように情景