村山由佳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレどうしても「直木賞」が欲しい!
売れっ子作家の天羽カイン
その激しさがちよっと苦手、と思いながら
編集者の千紘に自分を重ねて読んでいた
私にも似たような経験があったから。
私は編集者ではないし、相手も作家ではないけれど
その人の作る世界観が大好きで、その世界観を少しでも良いものにしたいと全力で伴走していた時期があったから。
最後は四度目の正直で「直木賞」を獲って終わるのかと思いきや…
あの問題の部分
実は最初にその部分を読んだとき
あまりにも自分の心に響いて
これはブクメの「渾身の一行コミュニティ」に書き込もうとメモに取っていた部分だった。
そこを千紘が書き換えないかと提言した部分も、その後さらにやっぱりこうした方が、と再提言した部分も…
私ならどちらが良いと思うだろうか
何度も何度も読み直した。
改めて、作家さんが一冊の本を纏めるまでの苦労が、ほんの少しだけわかった気がした。
どんな作品も、産みの苦しさにも似た、何度も何度も繰り返しを重ねているのだろうな
最終的にまとまった本になるまでに、変えられた部分は永遠に陽の目を見ることはない。その作業の苦しさとか悩みとか葛藤が、波のように押し寄せてきた。
天羽カインが下した結論。
つくづく不器用で真っすぐな人だな、と思う。
それでも彼女の結論に異議はない
自分の作品としてのプライドなのだろう
それでこそ、プロなのだ
最後の最後
受賞したのは…
たぶん、あの賞なんでしょうね
それが
この作品を明るく輝かせていたと思う
千紘とカインは
この後はもう
一緒に仕事をすることはないのかな…
そこはとても残念
確かに千紘がやってしまったことは
どうしたって許されないことだし
絶対にやってはいけないことだったけど
でもその部分以外にも
千紘の助言で書き換えた部分はたくさんあったのだと思うし
二人が心を合わせて伴走できたからこそ素晴らしい作品になったのだと思うから
まぁ
分岐点というものはあるんだよね
いろいろ考えてしまった。
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Posted by ブクログ
めっっっちゃ面白かった。これは迷わず★5!!
「今度こそ直木賞を獲れるのか!?」という期待と不安が入り混じる展開も、そしてあの終わり方もすごく良かった。読んでいて何度も手元がびくりと震えるほど、終始ゾクゾクワクワクしながら読んだ。
主人公の天羽カインは、かなり強烈な人物像。本を出せばたちまちベストセラー、本屋大賞受賞歴などがあり、すでに「成功者」であるにもかかわらず、何がなんでも「直木賞」という権威ある栄誉が欲しい、自分は一流の作家であると文壇に認めさせたいという獰猛で執念深き欲求がある。直木賞を逃すたびに次の作品ではさらに磨きをかけていく姿勢、そして読者や書店を何より大切にする気持ちと行動にものすごく惹かれた。
一方で、使用人や出版社の人間への威圧的・傍若無人な態度には、さすがに引いてしまう部分も。また、後半で冒頭部分だけ明かされる最新作「テセウスは歌う」では、いきなり女性同士の生々しい性愛描写が出てきたので、かなり面食らってしまった。
全体としては、文学賞の価値や位置づけ、選考の過程、作家と編集者の力関係などが詳しく描かれており、「出版業界ってこういう世界なのか」という社会見学的な面白さがあった。
読む前は「直木賞が欲しい人の話かぁ〜本屋大賞3位だし読んでみよ」くらいの軽い気持ちだったのに、読み終えた今は、本当に読んで良かったと思う。素直におすすめしたい一冊。 -
Posted by ブクログ
初めての村山由佳さん。バレエの話とだけ認識して読んでみた。
若い2人の編集者がバレエの振り付け師にインタビューをする。
そこで語られるのは凄惨な戦争の経験。
過去と現在、久我氏と翠の話を行ったり来たりするのだが不思議と読みやすいし、誰の視点の話でも中弛みする事なく引き込まれる。
続きが読みたくて仕方なくなり、結構分厚いから時間がかかるかなと思っていたのに3日で読んでしまった。
戦中戦後の話は本当に恐ろしく臨場感に溢れていたけれど、それはイメージでしかなく、経験した人達が昔はそこかしこに居たんだな…と改めて認識した。
他の作品も読んでみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
村山由佳さん、初でとても良かった。
近すぎて遠い存在だった幼馴染のトキヲとの、はつ恋。お互いに人生の紆余曲折を経て、酸いも甘いも経験して、再会して、人生を一緒に編むようになる。
『汝、星のごとく』に似ていて、学生時代のまだ恐れを知らない眩しすぎる恋愛とは程遠いけれど暖かくて大木の幹のような恋愛。
月毎の草花や旬の食べ物、季節の移ろいを感じるも良し、大人の恋愛小説として、関西弁のトキヲにときめくのも良し。
個人的には認知症を患った母と、取り残され着実に老いてゆく父とハナの家族の描写がとても好きだった。哀愁たっぷりで鼻がツンとするような切なさがあるけれど、リアルで暖かくてホッとした。
「彼があのトキヲであるからこそ、父親だって素直に甘えられるし、リラックスしていられる。何もわかっていないように見える母親でさえ、そうだ。ぱっと見はいかにもむくつけきトキヲに、こんなにも安心して肩を預けているのは、その二つの手がもっとずっと小さかった頃に自分の肩の上にあったのを、どこか心の深いところで覚えているからかもしれない。」
「特別な日のとっておき、などと構えなくても、人生には特別でない一日なんかないのだから、毎日、気分の上がるものを選んで、着て、めいっぱい使う。使われるのがモノの使命だ。使命を全うさせてやらずにとっておくだけでは、それこそもったいない。」 -
Posted by ブクログ
本書は、戦争や戦後のシベリア抑留の悲惨さを強烈に記している。
男性バレエダンサーと一人の女性看護士が紡いだ物語。
運命と簡単に言ってはならない、時代に翻弄されながら生き延びた二人。何も罪のない若者達が、こんなに悲惨な目にあっていたんだと改めて痛感した。
現代と過去の記憶で場面が切り替わるストーリーで、悲惨過ぎて目をつぶりたい場面も多々あったが、次々変わる展開が気になって時間を忘れ読み耽った。
第二世界大戦中、日本は何をやったのか、日本国民はどうだったのか、シベリア抑留とは?戦争後も?ソ連とはどういう国だったのか、色々考えさせられた。
未來永劫、戦争の悲惨さは語り継がれていかなくてはならないと感じた。 -
Posted by ブクログ
村山由佳さん著「DANGER」
現時点での著者の最新作にあたる作品。
この作品、凄く丁寧に作られている。
まず文字のフォント。
過去と現在(現在と言えど1990年代)の二時代が平行して描かれていく中で書体のフォントを使い分けしながら、ある局面では全ての行の段を上下一文字ずつ排除する事で、どの時代の誰目線の物なのかと強調している。
物語もさることながら、この1冊に絡む校正校閲や出版社の方々のアイディアと力量が凄いと感じさせられた。
物語も素晴らしい。
戦争が大きく関わる物語。
当然生死が一番大きく関わってくるのだが、その時代のその土地での日本軍の生き方、女性の生き方、現地人やロシア人の関わり等々。
戦争が終わったにも関わらず、内地にいた一般人達が味わったであろうその屈辱や痛み、苦しみ、悲しみが凄く伝わってくる。
戦争を題材とした小説は結構読んできているがこの作品は一味違う。
戦争が終わり、自分達はどうなってしまうのか?
遠く離れた土地で異なる言葉や文化、同じ境遇の仲間も徐々に失っていく中で果たして日本に帰れるのか?
捕虜として暮らす生々しさ。
辛さ、寒さ、貧しさ、不安さ…
極僅かに、時に感じられる喜びの瞬間…
もし自分がその立場だったらと想像してみても、自分自身の実体験としっかりと落とし込む覚悟すらないことに気付く。
とんでもない過酷さであり環境下だ。
この作品の異質さを強く感じさせられた。
そもそも捕虜として囚われたその時代を生々しく描いた作品は意外と少ないのではないだろうか?
そしてタイトル、果たして「DANGER」とはなんだろうか?
過去に戦争に携わった方々の生身の言葉に触れ、戦争を知らない世代が戦争がない時代に生きている事に幸せを噛み締める。
それは知見を得て比較してこそ強烈に噛み締められる幸せの味。
何一つ知ろうともしないで幸せを語る人は見る人から見れば的外れ。時に「DANGER」だろう。
幸せに対義する、正反対にあるものを知らない、知ろうともしないのだから幸せという言葉自体の意味が軽い。
正反対の物を知れば知るほど幸せという物に対して深さでの比較ができ、幸せと感じられる味わいも格段に違うだろう。
そうした辛い経験をした方々に対して、または幸せの対義を知っている方々に対して、自身の理想論的な幸福論を振りかざす、その浅はかな心や言動がなによりも「DANGER」なのではないだろうか?
自分のこじつけかもだがそう感じた。