村山由佳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2026/06/13
南房総の町の古民家で暮らす主人公のハナ。
2度の離婚を経験し、現在は幼馴染で恋人のトキオと遠距離恋愛中だ。
庭のたくさんの植物と共に紡がれる大人の恋愛小説。
作品の中で、若い頃の恋愛は不自由だったと書かれている。
将来のこと、出産のこと、家族のこと…考慮することがたくさんあるから。
そこにはとても共感した。
でも50代になって、ただシンプルに好きだと思える人と共に生きるというのは、どういう感じなんだろうなぁ。
しかも、古民家でたくさんの植物に囲まれて、自然を感じながら暮らす毎日はとても自由で憧れてしまう。
特にいいなと思ったのは、庭を通じた近所のおじいさんとの交流。
「庭はひとを繋ぐ。」
ご近所付き合いは避けられがちだけれど、人と人が程よい距離感で交流を深めることはとても心地よいことなのだろうなと思う。
恋愛小説ではあるけれど、人が季節と共にただ生活を営む姿が、とても印象的な作品だった。 -
Posted by ブクログ
読破後はなんとも形容し難い感情になった。
後を引くような、登場人物の気持ちに少し寄り添えるようになって、すっきりするような、不思議な気持ち。
テーマは重い、苦しい、悲恋。いじめ、性的虐待、戦争の負の歴史である慰安婦への扱い、兄弟愛。
扱うテーマはどれも重く、人間の綺麗ではない部分を容赦なく描いていた。
外から見れば普通の家族。でも内側では皆が傷や孤独、弱さを抱えていて、崩壊寸前のまま生きている。
本作は短編集で、各登場人物の視点から物語が繰り広げられる。その人格を形成した理由、出来事が本人の目線から語られる。誰しもが苦しい局面があり、読んでいるだけで気分が悪くなる。
そして、人は見えている一面だけでは決して測れず、多面体なのだと痛感した。誰かを簡単に決めつけてはいけないのだと思う。
登場人物たちは嫉妬や依存、執着や逃避など、弱さや汚さを曝け出している。けれどそれが妙に生々しく、いっそ清々しい。欠点のない人間なんていなくて、人は欠けたまま生きていくしかないのだと感じた。
筆者の言葉で印象に残ったのは、「幸福とは呼べぬ幸せも、あるのかもしれない。」
幸福と幸せの違いについて調べてみた。
幸せの意味: 日常的な感情や主観的なよろこび。性質: 一時的な感情(嬉しい、楽しいなど)。
幸福の意味: 満たされていて、恵まれている状態。性質: 客観的・持続的。特徴: 個人の感情だけでなく、健康、経済的な安定、人間関係などが良好に保たれている状態を指します。
なるほどなー。間違いないな。
人生は順風満帆だけが正しい形ではなく、人によって幸せの形は違う。苦しみや歪さの中にも、その人だけの確かな幸せがあるのかもしれない。
そして、この物語に『星々の舟』というタイトルを付けた村山由佳さんがすごい。
傷つきながら漂う登場人物たちを、星として表現。また個々では、孤独で不完全でも、集まれば星座となる。また、舟で人生という大海原をそれぞれ漂っているのだなと。
正しく順当に生きることだけが美しいわけでないのだから。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの巻でまたあんまり話が進まなくなったので、なかなか読めなかった。
かれんの母(勝利の叔母さん)は手強い。言ってることがもっともすぎて、この母親とはちゃんと議論できないと丸め込まれて終わりだなと思った。
でも一方で、なんでこんなに過保護な母親が少なからずいるんだろうとも思う。
娘の一人暮らしが心配なのは分かるけど、かれんももう25歳だし、いずれ絶対に親元を離れる。もし親が世話をし続けた結果、自分のことが自分でできない高齢の子供を生み出してしまったら、それこそどう責任を取るつもりなんだろう。親は子供より長生きしない可能性が高いのに、なんで親が死んだ後の子供の生活は心配にならないんだろう。歳を取ってから新しいことをさせることの方が、よっぽど残酷だと思わないのかな?
結婚して家を出るにしても、夫が四六時中そばで妻を見てくれる訳でもないし・・・
それとも、娘を心配しているフリをして、実は自分のことが一番大切で、自分自身の不安を払拭するためだったりする?
と、かなりいい年した娘の一人暮らしを良く思わなかった過干渉な自分の母を思い出してしまった。
あぁでも、かれんが自分のルーツについて知っていることをついに叔母さん達に告白した場面、本当に泣く。愛されて大事に育てられて、子供もそれを感じることができるって、なんて良い親子関係なんだろうって。なんて幸せなことなんだろう。
終盤のクリスマスのシーン、いつものラブラブな感じで終わるのかと思いきや、かれんが意外にも勝利の地雷を踏んで勝利がついにキレるというプチ修羅場が。
私が勝利でもイラっとするなとは思った。勝利が気を遣って引き留めてこないのを分かっていて、引き留めてこないってことはそんなに心配じゃないのかなとか、違う人を好きになっても仕方ないとか・・・えぇぇ・・・!
この辺りからかれんの魅力がよく分からなくなってきた。以前、勝手に自分たちの関係や出自を他の人に話されるのが嫌そうだったのに、かれんも断りなく同僚に話してるし・・・!
かれんが真っ先に言うべきだったのは、勝利に無理しないで本音を言って欲しいと言うことだったと思う。5歳も年上なら、かれんの方が精神的に少し引っ張ってあげるぐらいはできると思う。
というか勝利もそうだけど、相手をひっそりと思いやって勝手に気を遣うっていうのは、それはもう独善的というか、相手に伝わっていない前提で考えるべきだし、相手に何も期待してはいけないと思う。「言葉で伝える」という作業を省いているのだから。
だからどちらか片方でも我慢したり耐えたりし続ける関係はいつか破裂する。今回お互い言いたいことをぶつけ合うことになったのは、そりゃそうなるだろうなと思うし、でも少し前進したと思う。
あとやっぱりあとがき大好きだなぁ~~!もう私は作者と作者のあとがきのファン。なんで私が思っていることや迷っていることが書いてあるんだろうといつも思う。
小説には作者の経験が大いに反映されていることも分かった。
2000年代前半より前から、終身雇用や同じ会社で三年は働けという考えに疑問を持っている人ってやっぱり聡明で先見の明がある人なんだろうなと思う。
でも一方で、職を転々としたり小説家を目指すにしても、頭が良いからこそ成し遂げられることなんだろうなとも思う。賢いからこそ何社も渡り歩けるし、小説を書いても初めから良いところまでいける。そもそも全体のエネルギーが高いから賢いのだと思う。
だから世の中には同じように夢を追っていてもどうにもならなかった無数の屍の上に、成功者がいることは忘れてはいけない。諦め時の見極めって難しい。
赤ちゃんポスト、私も最近またネットニュースで目にして「この言葉って公式なん?今でもメディアが使ってるのなんかモヤっとする、だって人間とポストを結びつけるなんて無神経すぎる」と思ったばかり。自分が「ポスト」に入れられていたと聞かされたら、しかも両親がいる人間に言われたら、どう思う?
よく頭の良さ・IQの差がありすぎると言葉が通じないと聞くけれど、それだけじゃないと思う。
普段から言葉に関心があるか・語彙力があるか・理解力があるか・・・によって同じくらいの知能でも噛み合わないのではと思っている。
相手により詳しく丁寧に伝えたい人と、より短くストレートに伝えたい人。抽象的な言葉を理解する人としない人。語彙力があるから優しい言葉で言い換えられる人と、ないから尖った原石のまま人にぶつける人。寛容な人と余裕のない人。
人を一人も傷付けずに笑いを取ったり上手く伝えられる人ってすごいなと思うし、私にはとても羨ましく思う。
20260514 -
Posted by ブクログ
女性の官能小説。
描写がとてもリアルで読んでいて恥ずかしい気持ちと、どこか清々しい気持ちも。
主人公の奈津はとことん性欲が強かった。
ここまで強かったら大変だろう。
セックス依存症なのかと思ったけれど、
きっと奈津はそれだけではなく愛されたい欲が強いのではないかと思った。
言葉で愛されたい。
軀をぐちゃぐちゃに愛されたい。
私を見て欲しい。
満足させて欲しい。
そんな欲が止まらないのだろう。
そして、1人じゃ満足しない。
途中から旦那はどこにいったのだろうと思ってしまったが、性欲の強い女の心境を覗けた気がして面白かった。
2026.5.9(土) -
Posted by ブクログ
全体的に「言葉によらない心の交流」が描かれており、読みやすい文体で独自の世界観を表現した短編集。
個人的にはあまり好みの話ではなかったが、話によってテイストが異なり一冊で色々なストーリーが楽しめた。
■晴れた空の下
あらすじ:病気で認知が曖昧になっている女性が、自分を忘れられるのが怖いからと、先生に今までの人生で楽しかったことを話していくが……。
感想:切なく悲しいけれど深い愛のお話。女性が伴侶と共に歩んできた幸せな半生が語られ、微笑ましく思っていると後半の急展開で感動して涙が出た。
■同じ夢
あらすじ:記者の女性はとあるバンドマンから犬の世話を任される。以前飼っていた飼い犬によく似たジョンに女性は惹かれていって……。
感想:ありのままを愛し合うお話。
女性が美女と野獣の喩えを用いて「そのままの姿であればこそ愛し合える」と思っているのが、上辺だけの軽薄な愛を貪るバンドマンと対比になっていて強いメッセージ性を感じた。
■世界を取り戻す
あらすじ:小さな出版社で働く副編集長の九美は二児の母である。仕事と家庭を両立させるべく日々を過ごしていたが、老眼が段々と進行してきて今の眼鏡が合わなくなってきた。動物病院でのインタビュー、大御所の作家との打ち合わせの中で九美の生活に変化が起こり……。
感想:怖がらずに殻を破れば、きっと世界は明るい。
九美はワーママであるため周囲の人との関係性に複数の名前がつくことが多く、アイデンティティがそうした複数の自分で構成されているため自分の正体が時折分からなくなる。そんな中、老眼の進行と仕事で遭遇するハプニングがきっかけで自分を変えようと決心し一歩を踏み出す希望に溢れた話だった。
何気ない日常生活の出来事が連なって九美を次第に変えていく流れが自然で、静かな物語として完結しているのが美しく感じられた。
■グレイ・レディ
あらすじ:主人公は籠。編まれたときから記憶があり、様々な持ち主?の手を転々とし最後にとある女性の所有物に落ち着くことに。彼女と過ごした日々を振り返りながら籠は……。
感想:籠視点の語りが斬新で面白かった。命を持たない籠だからこそたどり着けた結末は愛着を持てば物とも心が通じるのかもしれないと思わせてくれる温かみがあり、他の短編と比べて読後感が一番良かった。
■乗る女
あらすじ:幼い頃に乗馬を習っていた父子家庭の主人公は、就職を機に一人暮らしを始め再び馬に乗る機会を得る。馬の飼育場で出会った黒澤さんと親しくなるうちに、子馬の名付け親になってほしいと言われレラと名付けるが……。
感想:主人公の心の傷とその回復の過程が描かれたと思ったらまた喪失経験があり、物語全体としての雰囲気は暗めだった。にも関わらず、主人公が馬と心を通わせているときの無上の喜びが尊いものとして読者の心に残るほっこりした読後感だった。
■訪れ
あらすじ:自分史の作成代行を生業とする主人公は、父の自分史を作成してほしいという依頼人の自宅を訪れる。戦争経験者である依頼人の父が話し出した内容とは……。
感想:読んでいる最中どう「愛」に繋がるのかと思っていたら最後の展開できちんと愛に繋げていて、見事なハッピーエンドに安心した。
若干の性的倒錯要素が含まれている箇所が個人的には好き。 -
Posted by ブクログ
オーディブルで。広告代理店勤務のバリキャリウーマンの妻に、自宅で開業している美容師の夫。休みも、人生に対する考えも違うように思える二人だが、双方に婚姻関係を継続させる意思はあり、そのため、妻は夫が雇った若い女性アシスタントにもやつき、夫は仕事を理由に妻が外泊をするのにもやつく。そしてそうなる自分に対して、苛立ちを抱えている。絶対にうまくいくわけない組み合わせなのに、結婚当初は互いに愛し、家庭を築こうとしていたなんて、恋愛っておそろしい。妻が外で活躍することに対して、夫はコンプレックスを抱え、妻は引け目を感じる。妻が家庭に縛られていたころの古い価値観であり、ばからしいと思うのだけれども、いまだ根強くある。こういう感覚が、本当に一ミリも、心の底からないっていう人って、いるのかな?
下世話だなーとは思うけれども、人の家庭の事情を知るのって、おもしろい。この夫婦がどうなるのか、続きを早く知りたいのに、下巻の配信は六月だって。 -
Posted by ブクログ
Twitterで見かけて気になったから読んでみた!
「愛」を愛という言葉なしに届けてくれる短編集。
ものすごく、感想を言語化するのが難しい。心の中にほわほわと温かい気持ちが溜まって、じんわり沁み入ってくる感じの話。人間じゃなくても、動物でも、物でも、愛がある。
『グレイ・レディ』がとても好きだった。人間じゃないからこそ、死は二人を別たない。
『乗る女』も好き。メインは馬だけど、人間にも愛がある。明るい未来を想起させる終わり方で、このあとどうなったのかな…と余韻があってとても好きだった。この後どうなったんだろうと思わせる話って、めちゃくちゃ良いよね。