あらすじ
アロマオイルを纏(まと)った肌をぶつけ合い、のぼり立つ匂い。調香師との情事は、私に長い愛人生活を終わらせる予感を抱かせた。あの光景を目にするまでは――(「アンビバレンス」)。年上の人妻経営者に持ちかけられた三か月間の恋人契約。俺に抱かれ、女の喜びを感じると話していた彼女は、なぜ突然いなくなったのだろう(「バタフライ」)。記憶と熱を一瞬で呼び覚ます特別な香り。五編の恋愛小説集。
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Posted by ブクログ
久々に本を読むのでリハビリ!と思って短編集買ったら最後の話で自分の体験談と重ね合わせて泣きそうになってしまった。匂いって人間の記憶に一番深く紐付いてるらしい。
Posted by ブクログ
香りをアクセントにした大人の恋愛小説です。
「アンビバレンス」 「オー・ヴェルト」 「バタフライ」「サンサーラ」 「TSUNAMI」
これら5つの短編が収録されています。
愛人関係、母親との確執など穏やかな内容ではないのに村山さんにかかると静謐な空気感を感じます。
登場人物がそれぞれの短編にリンクしていたり、ペットが重要な役割を果たしていたり どの短編も楽しみながらサクサクと読めます。
時に切なく少しエロティックで、それでも穏やかな凪に包まれた感覚の素敵な短編集でした。
Posted by ブクログ
文章から香りが匂い立つようだった。自分に似合う香水・・・、私も探し続けています。「オー・ヴェルト」の二人はこれからどうなるのかわからないけど、こんな素敵な恋をしたい。「サンサーラ」の母親怖い。子犬に病気があるからって、ああまで豹変できるか?健康な犬でも年取ってきたら平気で捨てそう。
Posted by ブクログ
香りに纏わる恋愛小説集ということで読んでみた。村山由佳さんの文章はなめらかなのに、内容はくっきりしていて、そのギャップが心地よくて好き。何か衝撃が残ったわけではないものの、千早さんの解説も含めて豊かな読書時間だったなぁという後味。
Posted by ブクログ
2016(平成28)年刊。
この村山由佳さんの名を書店の店頭でよく見かけるのだが手に取ってみるとどうも官能系なのかもしれないと勝手に思っていたが、ちょっと試しに読んでみたこの短編集は、恋愛小説集として悪くなかった。
全編に漂っている情感はどちらかというとドロッとしているというか、粘液的というか、つまりカラッとしたものではないが、重さが厭味っぽくなってはいない。それなりに女性的な感性を窺うことが出来た。
「匂い」が全編に渡るモティーフとなっており、それも面白かった。
Posted by ブクログ
村山由佳さんの恋愛小説を、定期的に読みたくなる。
自分も大人になったからか…結構同調してしまうことが多いです。
短編集で、それぞれ読み切りだけど少し繋がっているのも面白い。
私はバタフライが一番面白く感じたかな〜!
Posted by ブクログ
村山由佳さんっぽいなーと思いながら読みました。香りに対しての表現の仕方とかさすがだなと。
いま目の前にいる人と感じる香りより、ふと香って来たときに記憶が呼び起こされるようなそういう話も読みたかったです。
「TSUNAMI」の最後の3行に、なぜか心をグッと掴まれました。
Posted by ブクログ
再読
匂いっていいよね
つらいきもちもそうだけど嬉しい気持ちも呼び起こしてくれる
時折知ってる香りをかぐと、いろんな感情が呼び起こされる
それがまた生きてきた軌跡なんだろうなぁと思う
Posted by ブクログ
香りをテーマにした恋愛短篇集。
嗅覚を表現した言葉の数々、その多彩な表現のバリエーション、記憶との結び付きなど、、さすがでした。
読んでいるうち、嗅覚に贅沢な刺激がほしくなり、香水を纏って、その世界観を感じながら読み進めました。
印象的だった作品
「アンビバレンス」
調香師の安藤との、精油を使ったシーン。
『オレンジの木の下に咲き乱れる花々のような。旅したこともないはずの地中海の風に吹かれたような。かの思えば、深い森の奥、苔のしとねに身を横たえたかのような…。』
『悩みも吹き飛ぶ明るく幸福な香りから、高貴さお愛くるしさを併せ持つ優雅なそれへ。また少したつと、くらくらと眩暈がするほど蠱惑的な香りに…』
「サンサーラ」
骨董屋の店主の安心できる香り。
『かすかに麝香のよくな沈香のような、何と言い表せばいいのだろう、深い森や苔や土を連想させる香り』
輪廻。悠久の時など生きられない。
『もしかして、私にとって今生はすでに、初めてのものではないのだろうか。もう何度も生まれ変わって、そのたびに、香りを頼りにこの人を探していたのでは…』