あらすじ
アロマオイルを纏(まと)った肌をぶつけ合い、のぼり立つ匂い。調香師との情事は、私に長い愛人生活を終わらせる予感を抱かせた。あの光景を目にするまでは――(「アンビバレンス」)。年上の人妻経営者に持ちかけられた三か月間の恋人契約。俺に抱かれ、女の喜びを感じると話していた彼女は、なぜ突然いなくなったのだろう(「バタフライ」)。記憶と熱を一瞬で呼び覚ます特別な香り。五編の恋愛小説集。
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Posted by ブクログ
文章から香りが匂い立つようだった。自分に似合う香水・・・、私も探し続けています。「オー・ヴェルト」の二人はこれからどうなるのかわからないけど、こんな素敵な恋をしたい。「サンサーラ」の母親怖い。子犬に病気があるからって、ああまで豹変できるか?健康な犬でも年取ってきたら平気で捨てそう。
Posted by ブクログ
香りをテーマにした恋愛短篇集。
嗅覚を表現した言葉の数々、その多彩な表現のバリエーション、記憶との結び付きなど、、さすがでした。
読んでいるうち、嗅覚に贅沢な刺激がほしくなり、香水を纏って、その世界観を感じながら読み進めました。
印象的だった作品
「アンビバレンス」
調香師の安藤との、精油を使ったシーン。
『オレンジの木の下に咲き乱れる花々のような。旅したこともないはずの地中海の風に吹かれたような。かの思えば、深い森の奥、苔のしとねに身を横たえたかのような…。』
『悩みも吹き飛ぶ明るく幸福な香りから、高貴さお愛くるしさを併せ持つ優雅なそれへ。また少したつと、くらくらと眩暈がするほど蠱惑的な香りに…』
「サンサーラ」
骨董屋の店主の安心できる香り。
『かすかに麝香のよくな沈香のような、何と言い表せばいいのだろう、深い森や苔や土を連想させる香り』
輪廻。悠久の時など生きられない。
『もしかして、私にとって今生はすでに、初めてのものではないのだろうか。もう何度も生まれ変わって、そのたびに、香りを頼りにこの人を探していたのでは…』