【翼】 村山由佳さん
父親は自殺し、母親からは「おまえは疫病神だ」と
ののしられて育った真冬。
彼女は自分とかかわった人間が不幸になるコトを恐れ、
他人とうち解けるコトを避け、ダレにも心を開かずに育った。
今、彼女は日本を離れニューヨークで暮らす。
そのニューヨークで大学教授のラリーに見初められ、
彼の真摯で誠実な人柄に少しずつ心を開いてゆく。
ラリーには前妻との間に出来た子どもティムがいた。
ティムは前妻に虐待され、心に問題を抱えた子どもだった。
やがてラリーとの結婚を決意する真冬だが、
彼女に悲劇が襲う。
結婚式の当日、式後に真冬とラリーが新居へ戻る途中
ラリーは強盗現場に居合わせてしまい、殺されてしまったのだ。
真冬はやはり自分が疫病神だと思いこんでしまう。
ラリーの葬儀はラリーの田舎で行われた。
彼の父親は観光みやげと牧場を営む事業家だった。
ラリーの葬儀の席で、真冬は白人とインディアンの混血児
ブルースと出会う。
彼もまた白人とインディアンとの境界線で悩んだ経験を
持つ青年であった。
ラリーの実家で、真冬は彼の複雑な家庭環境を知る。
☆
心に問題を抱えた真冬とティム。
彼らと同じ次元の悩みを持っていたブルース。。
彼らは似たもの同士だった。
自分の立つべき位置が分からず、自ら翼をたたみ
精神を殻の中に閉じこめることで、自らが傷つくことを
最小限に抑えようとする彼らが、大地の声を聴き
自らの足で地を踏みしめ、自分のあるべき場所へと
戻ってゆく。
最後に真冬もティムも自分の意志で自分の進むべき道を
見つける。
何かを手に入れようと思えば、
何かを手放さなければならない。
別れはそのための儀式のようなものだ。
最後で、ブルースがマイケルを助けるため、
永年連れ添ったパンチ(犬)に「(噛んでいる口を)放せ」
と命令するくだりには涙腺を刺激されました。
良い本でした。こういう最後にいい余韻を残して終わる本が
やっぱり好きだな。