村山由佳のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
私はまだ見ていないのですが、この『永遠。』は内山理名さんと堤真一さん主演の映画『卒業』のサイドストーリーなんだそうです。登場人物・舞台の重なりはあるものの基本的に独立したもの同士なのでどちらから手にとってみてもいいし、また二つを知ることで物語を違った角度から見ることができより一層楽しめるようになっているようです。なんでも映画と小説のコラボレーションは日本では初の試みだとか。
この本の表装・デザインは私が今まで出会ったことのある本の中でも最大級に好きなものです。上の画像ではよく見えないけれど、泡が立ち昇っているかのように見えるその表装は途切れ途切れではあるものの決して終わることのないタイトル通りの「永遠。」を感じさせてくれます。白地に薄い水色というのも洗練されていてお気に入りです。(今映ってる画像じゃないです。変わったのかなあ・・・今のも綺麗ですが)
真山さんの人柄の良さというか、不器用な一途さがすごく愛しく感じます。葉月さんの言うように口にだすとこぼれてしまうものって本当にたくさんあると思うんです。だからこそ大切な想いは胸の中にしまっておきたいのだけどそれでは相手になかなか伝わらない。それでも口にしなくても伝わるもの、感じるられるものは確かにあるのだとそんなことを思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後に自分が幸せだと思えたのは飛鳥と祥子、どちらだろう。
ふとそんなことを思いました。祥子は一馬の子(かもしれない子)を産むことで一馬を手に入れることができたけれど、一馬の飛鳥に対するほどの深い愛情を得ることはないだろう。
一方飛鳥はこの上ない愛情を受けて、また自分も心から愛せた運命の相手とも言える人に出会えたけれど、それほど愛し合っていながら祥子の元に行く一馬を止められなかった。これが運命なら、なんて皮肉な運命なのだろう。
私の目には祥子がとても強く映りました。子供を産んでからの彼女は特に。あれが母親の強さなんでしょうか。そんな祥子を見るたびに、飛鳥が傷つくのを見ているのはとても辛かったです。飛鳥が愛する人の子供を産めない自分の体をどれほど呪ったかと思うと胸が痛い。
また一馬の写真で欠けているほんのひとかけらのものとは何だろう、と考えてみました。私は一馬が "一馬" として撮った写真だと思うんです。
というのは、彼は一瞬のシャッターチャンスを逃さないためにインパラなりライオンなりになったつもりで写真を撮っています。そうすることでうまく「いのち」を写真におさめられるのだから、技術的には最高の撮り方かもしれない。けれどシャッターを押す瞬間に対象物と一体になる一馬の写真には対象物への愛情は写りません。
つまり彼の写真欠けているのは一馬の対象物への愛情のようなものではないでしょうか。最後の一色となったあの写真は、シャッターを押す瞬間も対象への愛情で溢れていたからこそ最後の一色になりえたように思います。 -
Posted by ブクログ
BANANAFISHのあとがきで、自分自身も「再生」をテーマにしてるという話を読んだことがあります。なるほどな、確かに村山さんの書く作品はそういう面が強いかもしれないと思った。
実は上巻の時から主人公が好きじゃなくてね!
こいつうっとおしいわ~と思いながら読んでたんだけど、最終的にそんなに嫌いではなくなった。
私は基本的に主人公にカッコよさを求めてしまうので、その辺を諦めてしまえばなんてことはないのかも。
話のテーマ自体はすごく好きな種類ですし、素敵な考え方、言葉が沢山詰まっているように思えました。
題名は「Every cloud has a silver lining」「どんな不幸にもいい面はある」と言う意味らしいです。能天気な格言、私も好きです。 -
Posted by ブクログ
新米の音声技師、高瀬俊太郎には、夢がある。憧れの人、木島隆文の音を超える凄い音を創りたいという強い思いだ。そんな彼を支えてくれるのは、幼なじみのピノコ。仕事が忙しく逢瀬はままならないが、メイルがふたりを結んでいる。そんな折、テレビの仕事で遭遇した女優・鏡耀子の妖しい輝きに、俊太郎は引かれていく。だが、耀子は不倫の恋に傷つき、心を失いかけていたのだ。二人の間で揺れながら、彼は少しだけ大人になっていく・・・。
あとがきでも触れられているが、メールという手段を介してしか登場しないピノコという人物に対する想像を膨らませることができて、とてもおもしろかった。
二人の女性のどちらもが自分にとって大切だと感じる俊太郎の心の在り様はわからなくもないが、ピノコや耀子にとってそう簡単に割り切れないあたり、人の心は難しいなぁと思う。 -
Posted by ブクログ
村山さんの作品は「星々の舟」に次いで2作目。村山さんは人物描写に強みを持つ作家だと思う。言葉で表すのが難しい内面の複雑な想いだとか、人生観を垣間見ることができる発言が小説の中に幾つも出てくる。
読後は前回同様、ポカポカした生温い優しさに包まれた。希望、勇気、そんなものを送ってくれる。
本書では、都会育ちの主人公祐介が失恋(この言葉だけでは不十分だとは思うが)のショックから逃げるように、田舎での生活を始め、そこでたくさんの人達と出会い逞しく成長していく過程が綴られる。
いくつか強引すぎるとも言える設定があるけれど、特に気にならずに読み進めることができるだろう。
登場人物が見せる「個性」にも注目してほしい。園主、瞳子さん、花綾ちゃん、美里ちゃん、源さん、茂市つぁん、桜ちゃん、智恵子さん。ここに挙げただけでもかなりの登場人物がいるが、誰一人としておざなりに描かれず、誰もが物語を支える立派なキャラクターとして自立している。