内田樹のレビュー一覧
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2008年から2013年にかけて、雑誌『AERA』(朝日新聞出版)に連載された著者のコラムをまとめた本です。
この連載について著者は「あとがき」で、900字という分量は書くのにいささか工夫がいると述べており、そのコツとして「冒頭であるテーマを提示して「今日はこんな話をします」といったときに読者が「じゃあ、こんなあたりに話が落ち着くのかな」と予想した通りには絶対に書かないということです」と述べています。たしかに他の論者には見られない議論の進めかただと感じる一方で、いかにも内田樹らしいと思えるようなところに着地しているようにも感じます。
時事ネタが中心ですが、そのなかでもやはり政治について発言 -
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『コロナと生きる』 内田樹&岩田健太郎
内田老師の新刊であり、ダイヤモンドプリンセス号の一件で有名となった岩田氏の対談である故、購入。
本書は3回に渡って行われた内田老師と岩田氏の対談をまとめたもので、感染症における専門家である岩田氏の話は非常に面白い。そもそも、日本において感染症の専門家は極めて少ない。理由は二つあり、一つは根本的に日本で医師になる場合、産婦人科や整形外科等多くの専門分野に分かれることが原則であるからである。丸山眞男よろしく、タコツボ化している日本の医科では感染症医学の様なある種の分野横断的な専門家を輩出しにくい仕組みとなっている。もう一つが、シンプルに日本が今まで -
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「二〇二〇年の東京オリンピックって、もし何とか開催できればその後一〇年国はもつ。もし開催できないというところまで追い込まれると、もう五年しかもたない。そういう嫌な感じがするんです。」
なんていうヒリヒリするような発言が続出する。
日本は戦後、「対米従属を通じた対米自立を目指す」という捻れた形で政策を作ってきた。しかし、アメリカはもちろん自国の国益を優先するので、いつまで経っても対米自立ができない。
また、敗戦の否認をしており、どこか韓国・中国という近隣諸国を見下しているところがある。
仮に中国が尖閣諸島に攻め込んだとしても、アメリカは日本の防衛をしないだろう。アメリカはそのような事態にならな -
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内田樹、平川克美、名越文康という気心の知れた三人が、「居場所」というテーマからはじめてさまざまな話題について自由に論じあっている本です。
平川は荏原中延に喫茶店を開き、名越はそこの常連客となっています。一方内田は、自宅を兼ねた道場「凱風館」で武道の指導をおこなってきました。本書では、彼らのこうした「居場所」がそこにいる人びとにとってどのような意味をもっているのかということが語られています。さらに議論が進むにつれて話題はひろがり、グローバリズムの問題やネトウヨの心理、師をもつことの意義など、多岐にわたります。
著者たちの議論にすべて同意することはできませんが、一見したところ極端な主張に見える -
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むかついて人を殺したり、売春やドラッグに走る者は、利己的なのではなく、自己がほとんどなくなっている。
中年のオヤジとは、不愉快な人間関係の中にとどまっているうちに、耐えることが自己目的化し、自己の存在証明が凝縮されてしまった人間のこと。
終戦直後に日本の政治や経済を牽引していたのは、明治20年代、30年代生まれの人々。これらの世代は、日清戦争から第二次世界大戦までを生き延びたリアリストだから、日本に根付かせようとしたのが民主主義だった。
都会で生活すると、視覚的にも聴覚的にも刺激が多すぎるので、自己防衛のために知覚の回路をオフにしている。その結果として、外部で起きていることに対して鈍感に -
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マルクス入門編として読んでみた。
感想としては、(かなり噛み砕いて書いて頂いていることは伝わったけれどもそれでも)難しいということ。
ただ、この本の目的はマルクスに興味を持つことにあるので、目的は達成された。
私が感じたマルクスの凄さは、論理的に正しいことだけを言わずに、倫理観も兼ね備えていたこと。裕福な家柄に育つも、貧困層の労働環境を想像し、フェアではないことに対して怒りの声を上げる情熱的な人物であることが非常に伝わった。
また、様々なものの考え方を伝えてくれることで人の心を軽くしてくれる要素もある。例えば、人は中身の人間性ではなく、「なにを生産し、いかに生産するか」が大事であることなど(心 -
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内田樹、白井聡による日本の政治社会についての対談。
前半は2016年当時の政治について、後半は日本社会の状況について語る。
日本は政治的には米国の属国であり、安部政権になって益々米国追従の立場が強くなった。そういう意味では、日本はまだ独立国とは言えない。また社会は幼稚化が進んで、物事を深く考えなくなっている。マネー信仰が強くなり、金軸で人を評価する風潮により階級意識が発生。マスコミやメディアのマネー情報に流されてしまう。金が全てなので、それが無いと精神的に参ってしまう。高齢者も若年層も考え方が幼稚化し、精神的な貧困化が進んでいる。今後の日本社会では、経済的な発展が期待できないのだから、経済発展