あらすじ
右傾化する世界、日本社会を覆う反知性主義、親米保守という矛盾など、現代日本に潜む戦後史の問題の本質を縦横無尽に語り尽くす。文庫化にあたり、安倍政権の終わりとアメリカ大統領選、東京オリンピックを中心とした新たな対談を追加!
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Posted by ブクログ
(2016/1/10)
最近内田さん、白井さんの本をよく読ませていただいているが、
この対談で新たな発見をしたのが
「破局願望」、「自己破壊衝動」。
アメリカの属国ということは何度も読んできたが、この概念は新しかった。
坂の上の雲を追いかけて上ってきた明治日本がなぜ大東亜戦争で破滅の道を歩んだか。
幕末に賊軍とされた東北勢などが薩長を追いやって権力の座に就き、それまでの明治維新日本を
壊した、という。
また、今の日本。戦前の天皇をアメリカにおきかえ、アメリカに褒められること、ご褒美をいただくことに
期待して一所懸命やってきたが、なかなか認められない。
そりゃそうだ。天皇と違って、アメリカは自国のことしか考えない。
いっそアメリカの51番目の州になるほうが大統領になるチャンスも生まれ、よい。
それが出来ないのは天皇制があるからと、アメリカ通を自慢する人が威張れなくなるから。
そうした矛盾だらけの日本を破壊したいという願望があるのではないか、
だから突っ走る安倍さんをとめないのでは。
あたかも老舗の二代目、三代目が街の復興を邪魔するように、、、
原発も同じだよなぁ。
なんてカタルシスにとんだお話し。
こういう見方が出来る、ということは知っておいたほうがいい。
今の日本、皆知ってか知らずか、単純な方向に突っ走りすぎる。
単なる対米追従では……
このお2人の対談本は続けて読みました。ナチス占領下のフランス・ヴィシー政権に関連するエピソーや、アベ政権にまつわる諸々などが印象に残る本でした。
1年延期して開催した東京オリンピックも無駄でしたし、大阪万博も同様でしょう。
薩長政治に対する恨みつらみも分かりますが、やはり長いだけだったアベ政権、褒めるところは何一つなく……2度にわたり、病気を言い訳にしての退陣で終わりました。
アベ周りで贔屓されて出てきたのが例外なく碌でもない、というのも象徴的で、その劣化コピーがまだ居座っています……。
Posted by ブクログ
・戦前日本の指導者層が退出せず、戦後も引き続き指導者層にとどまったことから、アメリカに対してモノが言えなくなった。以降、「永続敗戦」の歴史が始まっているとする。
・戦後日本がとった戦略は、「対米従属を通した対米自立」であるとする。これを「のれん分け」と表現するのが非常にうまいと思った。
・敗戦をうまく総括できないことから、東アジア諸国との関係もいまだにこじれる要因となっている。東西冷戦や日本の突出した工業力等を背景に、東アジアは日本に文句も言えなかったが、1990年くらいから潮目が変わってきた。
・終戦時に15歳前後で、間もなく徴兵という世代は、祖国のため米国に必ず勝つという思いを胸に終戦後は経済戦争を戦った。しかしそういった世代が1990年に退出したことにより、日本経済は「背骨を失った」。
たしかに、日本経済が長期停滞に入った時期と重なるので、ひとつの考え方として面白いと思った。
Posted by ブクログ
白井先生は初めて知った。過激な話もままあるが、読んでいて正論と思えることが大部分。
反米マインドあたりは面白かった。
ルサンチマン、ぱんとサーカス、神輿は軽くてパーがいい、知らない言葉もかなりあった。
歴史的事実の隠蔽の構造の章でフランスの右翼化について言及しているあたりは、なるほど感があった。
Posted by ブクログ
単行本で読んだのが 2015年
あれから もう七年経った
哀しいことに
ここで 言い募られた
「こんな国になってしまった」は
まだ そのまま
いや
ますます 悪く加速している気がする
Posted by ブクログ
日本戦後史論 内田樹×白井聡
白井氏の提唱する永続敗戦レジームなどの新しい概念があり、面白かった。日本は、歪な戦後史を辿っているという認識のもと、現代の諸問題を読み解いていく。戦後、アメリカの冷戦対応に伴い、日本は戦前の官僚体制を温存したまま、戦後を迎えた。そして、東条英機をはじめとする戦犯の首を挿げ替えただけで統治機構を温存させたまま戦後レジームが形成される。その際、白井氏が「敗戦の否認」と呼ぶような、敗戦へのごまかしを進めてきた。ごまかしとは何かと言えば、日本は米国に負けたという感覚を少しずつ減らしていくというもの。これはなるほどなとも思ったのであるが、普通、戦争に負ければ臥薪嘗胆として次は必ず米国に勝つと、日本独自の国家の在り方を考えるはずである。しかしながら、日本は米国に歯向かうというオプションを最初の段階からなくしていた。これは主権国家の敗戦後の姿ではなく、属国化の過程で起こるべき現象である。戦後、日本は米国との歴史的な同化を通じて、アジアへの戦争責任もまた否認した。戦前の日本は軍部という悪玉に支配されており、戦後の日本は米国との同化を通じて浄化されたという認識は、戦前と戦後日本のシームレスなつながりを無くしてしまった。永続敗戦レジームは、この敗戦に否認を通じて敗戦の戦略的な無反省を招き、本来の主権国家としての戦後の在り方を模索しなかったことに起因する歪な精神構造を指していると思われる。ただ、内田老師も補足していたが、この敗戦の否認を行わず、対米経済戦争勝利を信条とした世代が、1920年代後半~1930年代前半生まれの世代であると。彼らの世代は、大日本帝国と運命を共にすることを心の中で誓いながらも戦争時は13歳~16歳程度と、若すぎて徴兵されなかった面々である。私の祖父は1931年生まれで、まさにこの世代であるが、戦後、学制改革直後に旧東京商大・現一橋大学に入学し、卒業後は出光興産で定年まで勤め上げた。祖父は私が7歳の時に亡くなってしまったため、詳しいことは聞くことができなかったが、出光興産が対米戦争の敗因を資源の調達とするという反省から出光佐三に興された企業であることを踏まえると、敗戦の否認ではなく、臥薪嘗胆として次回は米国に勝つとする心持があったのではないかと邪推してしまう。しかし、その後の世代においては、このような心持はないのではなかろうか。以前、私が好きなDJの小林克也氏の自伝を読んだが、1941年生まれの彼の青年期には、既にアメリカ文化は根付いており、親から家訓の如く教えてもらわなければ臥薪嘗胆とした心持があるはずもなく、米国文化をニュートラルに好んでいたのかと思う。このように、1940年以降に生まれた世代は、敗戦の否認というある種のプロパガンダの中で育ってきているため、1996年生まれの私にしてみれば、全く実感がわかないものである。しかしながら、我々が日本という国により一種のアイデンティティを与えられ、パスポートをはじめとする多くのベネフィットを得ている以上、日本が嘗て犯した過ちには無反省であることはあってはならないし、頭を下げることに違和感はない。話がそれたが、現代における諸問題を永続敗戦レジームという術語をもって説明している本書は非常に興味深い書のひとつであった。
Posted by ブクログ
- パトリオットかつコスモポリタンであることを目指す
- 次は勝つために徹底した敗因分析が必要
- 日本は敗戦を否認した
- 中国への負債感を抱える日本
- ゴジラは近代化により抑圧されたものの象徴
- 日本人にはリセット願望がある
- 本土決戦すれば天皇制は廃止されていた。本土決戦派は実はそれを望んでいた
- 日本のモデルはシンガポール
- 政府の長期的政策は都市一極集中で地方は棄てる
- 対米従属を通じて対米独立を求める日本=のれん分け
- フランスヴィシー政権は対独協力政権であり枢軸国
- フランスの移民や極右の問題は敗戦の否認
- 韓国は発展したけど住みにくいからアメリカへ。日本は住みやすいから出て行かない
- 天皇制は異界に触れるものが存在した方がいいという経験から要請される
- 玉虫色の言明は自分の仮説を修正する機会を自分で禁じることになるので避ける
Posted by ブクログ
対米従属を徹底することにより、日本がいかに特殊な国かということが分かった。私たちが日常生活を送る分には特に何も感じないけれど、歴史が残したものは想像以上に大きく、それを自覚することは大切だと思う。このようなことは本来学校教育で教えられるべきであり、そうすることが日本の未来を変えていく為には必要なことだと感じた。