内田樹のレビュー一覧
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2008年から2013年にかけて、雑誌『AERA』(朝日新聞出版)に連載された著者のコラムをまとめた本です。
この連載について著者は「あとがき」で、900字という分量は書くのにいささか工夫がいると述べており、そのコツとして「冒頭であるテーマを提示して「今日はこんな話をします」といったときに読者が「じゃあ、こんなあたりに話が落ち着くのかな」と予想した通りには絶対に書かないということです」と述べています。たしかに他の論者には見られない議論の進めかただと感じる一方で、いかにも内田樹らしいと思えるようなところに着地しているようにも感じます。
時事ネタが中心ですが、そのなかでもやはり政治について発言しているものが目を引きます。大阪府の知事と市長を務めた橋下徹の「改革」について、あるいは民主党政権から自民・公明連立政権への移りゆきについて、そのときどきのネタに言及しながら、この国の「知性」の先行きに対する著者の不安が、ほとんど諦めに近いようなことばをまじえつつ、記されています。全体を通して興味深く読みましたが、気分が上向きになるような話はすくなかったように思います。 -
Posted by ブクログ
『コロナと生きる』 内田樹&岩田健太郎
内田老師の新刊であり、ダイヤモンドプリンセス号の一件で有名となった岩田氏の対談である故、購入。
本書は3回に渡って行われた内田老師と岩田氏の対談をまとめたもので、感染症における専門家である岩田氏の話は非常に面白い。そもそも、日本において感染症の専門家は極めて少ない。理由は二つあり、一つは根本的に日本で医師になる場合、産婦人科や整形外科等多くの専門分野に分かれることが原則であるからである。丸山眞男よろしく、タコツボ化している日本の医科では感染症医学の様なある種の分野横断的な専門家を輩出しにくい仕組みとなっている。もう一つが、シンプルに日本が今まであまり感染症で痛い目を見ていないという事実がある。CDCを立ち上げる喫緊の理由がなかったというところが実情らしい。
印象的であったことは、やはり医療制度と新自由主義の相性の悪さというところがコロナで浮き彫りになったという点である。これも一つの見方に過ぎないが、アメリカにおけるパンデミックの原因の一つは無保険の貧困層が医療機関に行くことが出来ず密集して暮らしている部分がクラスター化し、感染のエンジンとなってしまっているというものである。感染症は皆平等に医療を受けられるような社会でこそせき止められ、医療が手を差し伸べられない階級がいる限りにおいて収束は困難を極める。このような医療が手を差し伸べられない領域を生み出してしまったのが、まさしく新自由主義的な医療制度設計に他ならないという談である。医学においてはヒポクラテスの誓いというものがあり、何人にも平等に医学の施しをなさねばならないとされている。しかしながら、新自由主義とこの概念は矛盾する。その矛盾が今回のコロナで浮き彫りになっている。
脇道にそれるが、神学と法学と医学は大学の原点ともいえる学問である。これらに共通する概念は皆「平等」であることに気づいた。何人も神の前では平等であり、法の下に平等であり、医学も平等に行き渡らねばならない。これは中世の人々が処世術として得た実感なのだろう。法・信仰・医は平等でなければならないという実感である。
もう一つ印象に残ったのが、政権が国民分断を煽ることの意味である。国民国家の原点に立ち返ると、国民に分断を煽ることは、自殺行為である。しかし、国民分断を煽ることは短期的にではあるが、政治的な熱狂を引き出すことができる。国民国家として全ての集団に平等に便益が与えられる仕組みを作ると、多くは全国民が同程度に不満足な仕組みしか作れなくなる。その様な解を出すためには国民から信頼される人望や、国民を纏め上げるビジョンを持った政治家がいなければならないが、なかなかそのような政治家は現れないゆえに、国民分断を煽るような禁じ手に頼らざるを得ない。といったロジックであるが、これまた難しいと感じた。政治家には人望やカリスマ性があることはうなずけるが、人間性ばかりにフォーカスされることはやはり危うさがあるだろう。9月中旬に発足した菅内閣は近年まれに見る平民宰相ともてはやされ、内閣支持率の支持の理由に最も多いのが人柄というものである。特に菅氏の人格を否定するつもりはないのだが、内閣支持率の支持理由が人柄というのはいかがなものだろうと感じる。人柄なんて国民にわかるのだろうか。やはり、政治家である限り政策に共感するということが支持理由のナンバーワンでしかるべきではないかと考えるのだが、上記の内田老師の話では、国家という極めて長い時間を射程にした虚構の政治戦略を語る上では、どの集団も同程度に不満足な政策を、人望でなんとか納得してもらい、ちょっと泣いてもらうことが正しいとされるようにも受け取れる。そう考えると、そのような優れた政治家と呼べる存在はやはりどの集団も同程度に不満足な政策を提示するはずなので、どの集団にも支持されないことになる。パラドックスじみた話になってしまい頭がこんがらがってしまった。まあ内田老師曰く、葛藤は知性の養分とのことなので、もう少し葛藤して生きてみようと思う。
人と違うことをして生きる。コロナにおいて、相性が悪いのは、同調圧力であるとのこと。
動物や虫はそれぞれ食べるものや生きる場所、起きている時間などのエコロジカルニッチを追い求めて今の形になる。コロナで密を避けよという号令は人々が改めてエコロジカルニッチな生存戦略を立てるべくしてなされた啓示かもしれない。 -
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「二〇二〇年の東京オリンピックって、もし何とか開催できればその後一〇年国はもつ。もし開催できないというところまで追い込まれると、もう五年しかもたない。そういう嫌な感じがするんです。」
なんていうヒリヒリするような発言が続出する。
日本は戦後、「対米従属を通じた対米自立を目指す」という捻れた形で政策を作ってきた。しかし、アメリカはもちろん自国の国益を優先するので、いつまで経っても対米自立ができない。
また、敗戦の否認をしており、どこか韓国・中国という近隣諸国を見下しているところがある。
仮に中国が尖閣諸島に攻め込んだとしても、アメリカは日本の防衛をしないだろう。アメリカはそのような事態にならない程度に日中関係を維持したい。
日本はそのような状況の中、アメリカの利益にも国益にもならない政策を進めており、自滅を望んでいるように見える。
といった内容の対談。対談形式の本には珍しく、盛り上がっていることがわかる。 -
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内田樹、平川克美、名越文康という気心の知れた三人が、「居場所」というテーマからはじめてさまざまな話題について自由に論じあっている本です。
平川は荏原中延に喫茶店を開き、名越はそこの常連客となっています。一方内田は、自宅を兼ねた道場「凱風館」で武道の指導をおこなってきました。本書では、彼らのこうした「居場所」がそこにいる人びとにとってどのような意味をもっているのかということが語られています。さらに議論が進むにつれて話題はひろがり、グローバリズムの問題やネトウヨの心理、師をもつことの意義など、多岐にわたります。
著者たちの議論にすべて同意することはできませんが、一見したところ極端な主張に見えるような議論であっても、そうしたものの見方があるのか、と気づかされることがしばしばで、たのしみながら読むことができました。 -
日本人にとって聖地とは何か
- カート
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試し読み
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むかついて人を殺したり、売春やドラッグに走る者は、利己的なのではなく、自己がほとんどなくなっている。
中年のオヤジとは、不愉快な人間関係の中にとどまっているうちに、耐えることが自己目的化し、自己の存在証明が凝縮されてしまった人間のこと。
終戦直後に日本の政治や経済を牽引していたのは、明治20年代、30年代生まれの人々。これらの世代は、日清戦争から第二次世界大戦までを生き延びたリアリストだから、日本に根付かせようとしたのが民主主義だった。
都会で生活すると、視覚的にも聴覚的にも刺激が多すぎるので、自己防衛のために知覚の回路をオフにしている。その結果として、外部で起きていることに対して鈍感になってしまう。
反対者や敵対者を含めて集団を代表することが公人の仕事。反対者や敵対者を切り捨てて、自分の支持者たちだけを代表する人間は、公人ではない。
かすかな信号を聴きとるために、そっと耳をそば立てるときに、人の身体は一番柔らかく、一番軽く、一番透明になる。人間が一番無理なく、リラックスしている状態は、外部から到来する声に静かに耳を傾けている時。茶を点てるのも、香を焚くのも、美味を味わうのも、音楽を聴くのも、書物を読むのも、どれもめざしているのは、聴くということ。 -
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マルクス入門編として読んでみた。
感想としては、(かなり噛み砕いて書いて頂いていることは伝わったけれどもそれでも)難しいということ。
ただ、この本の目的はマルクスに興味を持つことにあるので、目的は達成された。
私が感じたマルクスの凄さは、論理的に正しいことだけを言わずに、倫理観も兼ね備えていたこと。裕福な家柄に育つも、貧困層の労働環境を想像し、フェアではないことに対して怒りの声を上げる情熱的な人物であることが非常に伝わった。
また、様々なものの考え方を伝えてくれることで人の心を軽くしてくれる要素もある。例えば、人は中身の人間性ではなく、「なにを生産し、いかに生産するか」が大事であることなど(心の中でどう思っていても、善行することが何より大切)
まんまとマルクスをしっかり学んでみたくなったけれど、難しそうなのでもう少し入門編を読んでみようかなという感じ。。。
読解力が欲しいですね。。 -
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内田樹、白井聡による日本の政治社会についての対談。
前半は2016年当時の政治について、後半は日本社会の状況について語る。
日本は政治的には米国の属国であり、安部政権になって益々米国追従の立場が強くなった。そういう意味では、日本はまだ独立国とは言えない。また社会は幼稚化が進んで、物事を深く考えなくなっている。マネー信仰が強くなり、金軸で人を評価する風潮により階級意識が発生。マスコミやメディアのマネー情報に流されてしまう。金が全てなので、それが無いと精神的に参ってしまう。高齢者も若年層も考え方が幼稚化し、精神的な貧困化が進んでいる。今後の日本社会では、経済的な発展が期待できないのだから、経済発展しないことを前提に
どのような社会にすべきか考えるべきと言う。
様々な事例を取り上げていて、議論の内容は面白かった。日本の社会の問題点を指摘しているように思うけれど、昔から似たような識者による議論や指摘はあって、
その繰り返しのような印象もあった。(どこかの本で読んだことがあるような、、という感じ)
識者が理想を掲げても、政治の当事者ではないので影響力はほとんど無い。いくら過激な言葉で議論しても、理想を実現させるのは難しいと思う。
読んでいて、なんだかそういうもどかしさを感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2019.12.15
【感想】
なるほど、そんな考え方があるのかあ、となる本
結婚に対して「キラキラしたもの」「憧れ」という認識があったのだけれど、
「今よりも不幸にならないように結婚する」
「結婚は社会契約である」
の言葉たちが少し冷静にさせてくれた
そして自分がパートナーに多くを求めすぎていると反省
「よくわからない人」と共に生活していることは感動的なのかそうかそうか…
【印象に残った言葉】
目の前にいる人よりもっとましな相手がいるんじゃないか(略)というのは「自分はこの程度の人間じゃない」という自負の裏返しです。(P24)
→耳を塞ぎたくなる人多そうだなあ(笑)
配偶者が変われば、あなたは別の人になる(P35)
→たしかに彼が本当のわたしを引き出す!なんてありえないよな、ぜんぶ本当のわたしかあ
人間というのは、自分の判断の正しさを証明するためなら自分が不幸になっても別に構わないと思う、(P117)
→そうなのかもしれない、変な備えと変なプライドは捨てたい