【感想・ネタバレ】そのうちなんとかなるだろうのレビュー

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Posted by ブクログ

内田さん自身は生きづらいこともあったと思うが、どんな環境にいても自分の意思を保てる強い人だと思った。学生時代の家出の仕方もクレバーというか、本当に頭の良い人だと思う。

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2023年06月27日

Posted by ブクログ

私が尊敬する内田樹さんの自伝。
いろんなところで書いている通りの「嫌なことを我慢することができない」半生を語る。

「このまま行くと大変なことになりそうだ」というところで手を打たないといけないこと。
決断しないといけない場面は、もうすでに間違った選択肢を通過してしまっていること。
自分の体が出すサインに敏感になる必要。無理をするということは体が出すサインに自分から鈍感になるということ。そんなことをすれば、他のサインも見落として、結局ひどい目に遭うこと。

内田さんの含蓄ある言葉は、当然学問の知識にも根ざしていますが、武道の言葉、生身の身体から発せられた言葉、育児のために、大学での役割のためにと腹をくくった数、そんな裏付けがあるんだなと改めて感じ入りました。

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2022年11月10日

Posted by ブクログ

内田先生の自叙伝とは知らずに読み出す。
 
あぁ、わたしがこの先生を好きな理由がはっきりわかった。
子どもの頃の記憶で覚えている、いくつかの理不尽な仕打ちに、きちんとらNOを言ってくれるからだ。

わたしの父親は、甘やかすと人間はつけあがるからと言い、優しくしてくれなかい人だった。

その結果出来上がったのは、他人に優しくできない大人(私)だった。

幸いにもわたしは友達や恋人の人間関係に恵まれ、大人になってから甘やかしてもらえた。

だから人に優しくできる人間になったと思う。

内田先生は、絶対にそんな教えは間違ってると言い切ってくれる。
わたしにとって、それは救いだ。

自信をもって優しくしていこうと思う。

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2022年01月21日

Posted by ブクログ

敬愛する内田先生のこれまでの人生がどんなだったのか、知らなかったことも多々あり、「そうだったんだ!」とまるで人の噂話を聞くかのような、不思議な感覚にとらわれる。
それにしても、帯文の「小学校登校拒否」、「高校中退」、「家出」、「大学院3浪」、「32大学の教員公募に不合格」、「離婚」、「父子家庭12年」て、いくらなんでもちょっとあんまりじゃないかと…。

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2020年09月24日

Posted by ブクログ

「そのうちなんとかなるだろう」というタイトルから好き。
「なんだよ、ちゃらちゃら生きて楽しやがって。」って思われるような生き方がしたい。なんか最近もう無理って感じがしてきた。「入ってはいけないほうの分かれ道」に入ってしまったのだろうか。


"でも、僕は本を買ったり、芝居を見に行ったり、映画を見たり、ジャズ喫茶に行ったりするのを我慢したくなかった。そういうことを自由にやるために家を出たのだから、文化的なアクティビティにお金を惜しんではいけない。" 37ページ
本当にそう思う。

"はたから見るとつらそうでしょうけれど、本人はいたって愉快に過ごしておりました。" 73ページ
この逆で、「はたから見ると愉快に過ごしているように見えるけれど、本人は辛くてたまらない」ということもある…

"もうずいぶん前のことですけれど、思い出しても、離婚はつらいです。心身に負った傷という点では親の死よりも厳しかった。
両親が死んだときも「もういないんだな」と寂しくはなりましたけれど、それは自分の存在が否定されたような気持ちとは違うものです。でも、離婚というのは、単に配偶者が不在になるということだけではなく、自分の存在と、自分がそれまで配偶者とともに過ごした時間の意味を否定されたような気がする経験です。13年暮らした妻から、「あなたとは一緒にいたくない」と宣言されたわけですから。男として全否定されたという感じがしました。" 134ページ

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2019年10月12日

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いつもの調子で読み始めたら…

まさか、内田先生が自伝!?!!

吃驚(*_*)
でも、今まで部分的にしか知らなかった「内田樹はこうしてできた!」をご自身の解説付きで拝読できたのは、めちゃ嬉しい✨

内田先生の著書としては稀にみる速さで読めたし…( ̄▽ ̄;)

21日に大阪で行われるご講演が楽しみぃ〰️ッ‼️

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2019年08月09日

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ネタバレ

自伝部分よりも、第3章の内田流の人生訓のところに、より心引かれた。
 褒めること、認めることの大切さ。
 

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2023年02月13日

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内田さんの書く文章はスムーズに腑に落ちることが多い
なぜそうなのかがこの本を読むと少しわかる、縁や直感を大事に生きることを論じた半生記。

後書きに椎名誠の「哀愁の街に霧が降るのだ」が紹介されてた。20年以上前に読んだ、大好きな本。

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2021年05月09日

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そのうちなんとかなるという不安定さ込みのこの状況をがっしり受け止めても揺るがないように、自分の基盤を確かなものにしていく努力は必要だなと。頑張ります。

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2020年10月04日

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本の帯には、著者の破天荒な半生のトピックが
キャッチコピーよろしく書かれている。

いじめが原因で小学校を登校拒否
受験勉強が嫌で日比谷高校中退
親の小言が聞きたくなくて家出
大検取って東大に入るも大学院3浪
8年間に32大学の教員試験に不合格
男として全否定された離婚、
仕事より家事を優先して父子家庭12年

本書はまもなく古稀を迎える内田 樹 版「私の履歴書」。 大学の教員職を得るまで、かなりの苦労をしたとは耳にしていたが、採用になった神戸女学院が33校目だったとは…。それに輪をかけて驚いたのは高校中退し、大検経由の東大合格⁈

数奇な半生記でありながら、本書には運命的な出会いとかついてない人生を劇変させた出来事といった類いの感動モノの登場はなく、生い立ちから順に恬淡と進む。

その恬淡ぶりを「巷に溢れる劇的半世紀自叙伝」に対する天邪鬼の性格ゆえかと思っていたが、そうではなかった。「僕は『人生の分岐点』がまるでない人間」と坦懐。誰しもが時折思う「あのとき『あっちの道』に行っていたら、随分と人生が変わっていただろうなあ…」というアレがなかったと。

著者の「人生の分岐点」を差配したのは『なんとなく』という指針。著者曰く 生来「計画性のない人間ゆえに『人生を通じてこれだけは実現したい!』という目標を持ったことがなく、むしろ常にあるのは『なんとなく』で引き受けた仕事がきっかけになり、予測もしなかった繋がりや潜在的な資質を発見できた。

この「なんとなく」には強い指南力、「強い引き」があることを発見する。「なんとなく」には義務感・恐怖心・功名心が関与する余地はない。そこにあるのは「なんとなくなんだけど、これをやりたい」という一心。

そもそも『やりたい』という気持ちは、自分のすごく深いところに根ざしている衝動であり欲望。ゆえに、たやすく言語化できるはずがない。

ただこの言語化できないことが厄介でもある。他者に「やりたいを理由」をきちんと述べなきゃいけない風潮が社会にあり、明確性とエビデンスを求められるからだ。

とにかく重要なのは「『なんとなく』やりたいこと」を実行する『勇気』。これがないと一歩前に踏み出せない。スティーブ・ジョブズも語った『心と直感に従う勇気』については我が半生に不足を感じなかったと語る。

高校中退、大検を経て受験浪人、大学院3浪、大学教員採用32連敗…、これだけみれば十分な劣等生。縁のなかった関西で教鞭を取りながら父子家庭で娘を育て上げた後、一気に怒涛の活躍へ。謂わば「V字回復」に転じ、神戸・住吉に長年修業を積んでいる、合気道道場兼自宅<凱風館>を設け、旺盛に執筆に精励する毎日。遅咲きの「もの言う知識人」は齢七十にして、ますます意気軒高。

著者の半生を総覧し、『価値観』が凡人とは明らかに違うという一言に尽きる。著者の親が小学生時代の息子を見て「樹が嫌と言い出したら一歩も引かない」の見立て通り、「三つ子の魂百まで…」を地で行く遅咲き70年の歩み。

凡人とは、「自身の『心と直感』を本当に信じていいの?と不安に思い、『普通』という極めて曖昧な物差しを常に当てている人のこと」なんですね。読後感はああ、僕は典型的な凡人であることを再認識した一冊。

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2020年05月02日

Posted by ブクログ

流れに任せて生きていていくとか起こったことをとりあえず信用するとか
引き寄せ系の本やブログで見ていいな、そうしてこうと思ってたけど
改めて力強く肯定してもらった感じ
何があろうと自分である限り行き着くところは同じ。直感に従って生きていく。
身近なとこだと会社の異動とか結婚とか
いいやこうだからこうしたいんだ!!と明確な目的や理由を持って突き進もうとしないで
あはい、いいですよぐらいで依頼が来たら乗っかってその先でどんどん自分の資質を見つけて生かしていけばいい感じに生きていけると思う

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2020年02月11日

Posted by ブクログ

内田さんは軽く柔らかい言葉で語られるけどなかなか深いことを書いてらっしゃるんですよねー。
こういう考え方、表現の仕方ができたらいいなぁ。

それにしても内田さん、モテるやろね

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2019年12月05日

Posted by ブクログ

自分自身となんとなくよく似ている部分というか、
経験したことや、思っていたことが若干
共通感が多少なりとも感じました、
なので、この人の本がすきなのだろうともいました。
大阪の北野高校の周りの雰囲気が、著者が書かれている
日比谷高校にあったものとも同じような気がします。
また、道筋の選びかた。人生の苦悩の選択なんてものは
なくて、なんとなく行きたい方向に行く。どちらかを
選ぶ苦悩があった場合は、その時点ですでに間違った
ということ。というのは非常によくわかる。

人を批判するのではなくほめる。
いいサービスを受けようと思うと、いいものを享受しようと
思うと、その人をほめるのが一倍いいというのは
”はっ”とさせられた思いがしました。

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2019年09月16日

Posted by ブクログ

初めて読む内田さんの本が、自叙伝でした。でも、考え方とか感じ方とか、自分と似ている部分があって、自分を少し正当化したりしました。

P97 「武運の勘所」→自分が「天職」に出会うきっかけ
 →本当にそう思います。
  私も、色々な人とのご縁やお世話になって
  本当に有意義な生活を暮らすことができていて
  感謝してもしきれないほどです。

  ありがたやありがたや、なむなむ。

P149 マインドの切り替え

ルーチンをこなすことができたら、自分に満点を与え、
少しでも時間が余ったら、それは「贈り物」として
ありがたく受け取る。

その「贈り物」の「余暇」に本を読んで
翻訳をして、論文を書く。

そこで達成されたものは「ボーナス」の
ようなものだから、あれば喜ぶけれど、
なくても気にしない

家事育児のせいで、研究時間が削られた、
子供のせいで自己実現が阻害された、
という考え方はしない

P154 ★狭間

あらゆる仕事には、

「誰の分担でもないけれど、
       誰かがしなければならない仕事」

が、必ず発生する。

誰の分担でもないのだから、
やらずに済ますことはできるけれど、
誰も引き受けないと、
いずれ取り返しがつかないことになるので、
厳密な議論をして担当を決めるよりは、

「あ、オレがやっておきます」

と言って、さっさと済ませてしまえば
何も面倒なことは起こらない。

★★★
相手に期待せず、押し付けず、全部自分でやる。
だから、相手がしてくれたら、
「あぁ、ありがたい」と、感謝する気持ちになれる。

人間を疲れさせるのは、労働そのものではなく
労働をする「システム」を設計したり、管理したり
合理化したりすること

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2019年08月18日

Posted by ブクログ

思想家にして武道家のウチダさんらしい半生。
安田講堂事件直後の東大キャンパスの話など
興味深い。

いちばん、共感したのは、働き盛りのときに
父子家庭生活をしていたところ。

仕事できる時間をボーナスと捉える発想が
学内行政に時間をとられるようになってからも
生きたという話は、いろいろ考えさせられた

武道(人生)の極意は、「いるべき所にいて、なすべきことをなすこと」、直感(なんとなく)を信じることなど、
お馴染みのウチダ哲学の原点がよくわかる。

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2019年08月03日

Posted by ブクログ

内田樹さんの自叙伝。
嫌と感じるものは一切妥協せずに拒否し、計画性がない人生を過ごされたが、なんとかなっている人生。
クソ真面目に人生を過ごしてきた者からすると本当に羨ましい限りである。
後悔は2つあり、何かをしてしまった後悔と、何かをしなかった後悔がある。その内取り返しがつかないのは何かをしなかった後悔であると。これは身に染みて感じる内容である。
失敗してもいいからとにかくアクション。これが人生の幅を広げ、成功する方法であると改めて感じた。

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2020年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

筆者の半生を綴ったエッセイ。
ウエブ マガジンのロング・インタビューを元に構成してあるそうだ。

学生運動について、時々モノクロ写真で見たり
フィクションのスパイスとして出てきたりして知っている程度だったので
当時の肌感覚で書かれているのが興味深かった。

師弟関係について、
弟子を伸ばすために言うことと潰すために言うことは表面上似ていて
識別が難しいという件もとても興味深い。

武道家は勝敗や強弱を競う境位を離脱し、
いるべき時に、いるべきところにいて、なすべきことをなす人間になることが修行の目標であり、
道場は楽屋、一歩外に出たところが本番の舞台というのは
共感するところだった。
実践するのはなかなか難しいが。

「侍は用事のない所に行かない」。
いなくてもいいときにいなくてもいいところにいればトラブルが起きるからというのは
確かにそのとおりではあるのだが
侍でも旅好きな人はいたわけで人それぞれではあるのだろう。

稽古に無理してこなくて良いというのはちょっと意外に感じた。
一般的には、怠けた精神を叩き直すと言いそうなのが武道のイメージではないだろうか。
ただ、自分も剣術道場に通っていたが師匠はとても優しく
仕事で全く稽古に来られない場合でも
「今の世の中仕事があるだけありがたいから」とニコニコしておられた。

体が行きたくないとアラームを出しているのにそれを切って出かければ
アラームを切ってるからセンサーも働かないので
思いがけない災厄に巻き込まれる。
自分も普段自分の直感や本能のようなものを大事にしようと心がけているが、
やはり現代社会で生きるにはそればかりでやってもいけない。
もちろん本文にあるとおり、それで体を壊しても誰も責任をとってくれないので、
自分でバランスをとってうまくやっていくしかない。

決断をくださなければならない状況は、
今悩むべき問題ではなく今までしてきたことの答え というのは
厳しくも成程と思った。確かにその通りだ。
今悩むことではない、悩んでも遅いことであり
大抵の場合どんな問題でも決断して前に進むしかない。

丸暗記ではなくフランス語話者から世界はどう見えているかを教える
というのは、生徒さんが羨ましいなと思った。
言語教育だけに限らず、理由を教えずに
「いいから俺の言うとおりにしろ」という上の人間というのは多いもので、
そうなると言われたことを言われたとおりにしかできず応用も聞かないし
なんの面白みもなくなるのだ。
日本の学校は勉強を強制することで英語嫌いを作り出している。
本当にそうだと思う。

人間を疲れさせるのは労働そのものではなく、
労働システムの設計や管理、合理化というのも、本質としては近いのだと思う。
つまらないことはやりたくない。
楽しくないのに無理にやれば効率も悪くなる。

そして批判することは何も産まない。
才能あるひとの魅力はある種の無防備さと不可分であり、
批判されて警戒心が高まり欠点は補正されても魅力が高まることはないし、一度傷つけられると無防備さは回復しない。
人に才能を発揮して欲しいなら過去の業績に評価を下すよりこれから創り出すかも知れない傑作に期待するべき。
人を育てる立場にある人は、こうした考えでいて欲しい。

離婚なさったときに義理のお父様が、
娘は勘当した、君とこれからも親子の付き合いを続けていきたいと
連絡をくれるというのはなかなかあることではないだろう。
初めの心証は悪かったようなのに、そこまでの信頼関係を築けるというのはすごい。

人間が同じである以上右左どちらにいくか悩んでも
行きつくところはそれほど変わらない。
悩んでいるときは一大事だと思っているが、結局は道筋が変わるだけで
行き着くところは似たようなものなのかもしれない。

SNSは匿名という話は度々論争が見られるが
これは一概には言えないと自分は思っている。
匿名性があるから誹謗中傷が多い、本名で使えばいいと言うが
自分の場合はFacebookの方が酷いことを言っている人が多いし
Twitterでも名前にしている人は所謂”意識高い系”で頓珍漢なことも多い。
本名じゃないから駄目というより、自分の発言に責任を持つかどうかである。

話をシンプルにしろ、良いか悪いかどっちだ なんて人が多いが
子供の言い分であり、
複雑なものは複雑なまま扱うのが大人の作法 というのは
面白い言い方だなと思った。
複雑なまま取り扱って「なんとかする」。
できるようになったわけではない、そういう技術があると知ったから、
死ぬまでに若者の時代を少しでもよくするよう努力する。
この考え方もとてもよくわかる。
としをとってくると、遺すということを考えるようになるものなのだろう。

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2019年11月05日

Posted by ブクログ

20190922 内田先生の自叙伝。なんとなくと言っているが結局は直感を信じて生きてきたという話。自分に置き換えて考える必要はない。若い人なら一つの生き方として参考にできるところを参考にするために読むと良いかも。

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2019年09月22日

Posted by ブクログ

一時期どっぷりはまって片っ端から著作を読んでいた。最初に読んだのは「ためらいの倫理学」だったかな。こんなに腑に落ちる論考を読んだのは、岸田秀「ものぐさ精神分析」以来だと思ったのを覚えている。(「ものぐさ~」はロングセラーだそうだ。今でも名著だと思う。)どんどん出版されるのをいつ頃まで追いかけていただろうか、神戸女学院を退官されて、凱風館を建てられたあたりから、さしたる理由はないが読まなくなったように思う。

これは「自伝」だというので、ちょっと興味が湧いて、久々に読んでみた。小中高の学校時代の話が詳しく書いてあって面白かった。やっぱりずいぶんとんがった少年だったんだなあ。一方、東大時代のことは、他のもので読んだことがあるが、ここではわりとあっさりとした書き方。結構ハードな学生運動家だったらしいが、運動よりも周辺のさほど緊迫感のないエピソードの方が多かった。それはそれで面白かったけれど。

離婚後の娘さんとのふたり暮らしについては、ある程度具体的に触れられていた。当時としてはずいぶん珍しい父子家庭だったと思うが、ここで家庭を優先して学者としては「雌伏」の時期を過ごしたことが、後の爆発的な文筆生活につながったとあり、なるほどなあと思ったのだった。

気軽な聞き書きの形ではあるけれど、読んでみるとやはり、フムフムと思うくだりがいろいろある。以下はその抜き書き。

「SFは1950年代のアメリカに誕生した新しい文学ジャンルです。背景にあるのは、原子爆弾の発明によって核戦争による人類の滅亡というシナリオに現実味が出て来たという歴史的事実です。人間が自分たちを豊かにするために創り出したテクノロジーによって人間が死滅するという不条理が現実になりつつあったのです。でも、伝統的な文学形式はそのような非劇的なまでにナンセンスな現実を叙することができなかった。SFはほとんどそのためだけに発明された特異な文学ジャンルだったのだと僕は思います。ですから、SFはその荒唐無稽な娯楽性にもかかわらず、底にはある種の絶望感が伏流していました」
これには膝を打った。そう、SFには、底にか芯にか空気にかはわからないが、絶望感があると思う。もう誰かが言っていることかも知れないけど、私は目から鱗が落ちた。

「批判を受けたせいで魅力が増すということはないんです。 というのは、才能ある人の魅力というのは、ある種の「無防備さ」と不可分だからです。一度深く傷つけられると、この「無防備さ」はもう回復しません。その人の作品のなかにあった「素直さ」「無垢」「開放性」「明るさ」は一度失われると二度と戻らない」
これも同感。才能が世に出るや、すぐさま何かと叩かれる現代は不幸な時代だと思う。

一番胸にしみたのは、終わりの方で紹介されていた、スティーブン・ジョブズの言葉。
「いちばんたいせつなことは、あなたの心と直観に従う勇気をもつことです。あなたの心と直観は、あなたがほんとうはなにものになりたいかをなぜか知っているからです」
内田氏が書いているように、心と直観に従うにはとても「勇気」がいる。でも本当に、心と直観は「なぜか」私のことを知っているのだ。

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2019年09月03日

Posted by ブクログ

内田樹さんの意外な生き方に触れることができます。内田ファンは一読の価値ありです。心に残った文章を紹介します。「いるべきときに、いるべきところにいて、なすべきことをなす」日々悩みの多い毎日ですが、この文章に出会って、毎日がシンプルになりました。

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2019年08月14日

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