イスラーム 生と死と聖戦
著:中田 考
紙版
集英社新書
良書、わかりやすいテキストだと思いました。
世界第2位の宗教人口を誇るイスラム教、第1位は、キリスト教で23億、ついで、イスラム教が18億
日本では、イスラム教に関する情報があまりにも少ない。世界を理解するためには、キリスト教と同様、イス
...続きを読むラム教もおなじくらい理解する必要がある
筆者は、東大文学部イスラム学科の1期生で、イスラム教徒、カイロ大で哲学博士、いろいろ物議をかもした方であるが、どうして日本はこういう人を
大事にできないのか、と思いました。
気になったのは、以下です。
・インジャーアッラー 神の御心のままに、自分の力でできるだけがんばるが、人間の力の及ばないところは神のお力添えそのままに という言い訳であり、謙虚な美徳とあり
・剣かコーランか 正しくは、剣か、税か、コーランか。税を収めれば無理やりイスラム教に改宗しなくても、子々孫々まで永住権がえられます。
・イスラムテロは、ジハードとはいいがたい、第一、イスラム教は、自殺を禁止している
・イスラームは、地域や民族を超えた普遍宗教であり、ムスリムには、国籍も血統も関係なく、誰でもなれます。
・ムスリムになるには、アッラーを信じるだけでいい。入信名簿もなければ、報告義務もない。だから信徒の正確な数はわからない
・ジハードとは、自分の弱い心を乗り越えるという意味がある。これを、「大ジハード」という、一方で、武力による戦闘は、「小ジハード」という。一般には、ジハードとは、小ジハードをいう
・ジハードとは、異教徒に対する戦いであり、ムスリム同士の戦いはジハードとは言わない
・イスラーム法とは、神の定めた掟のことである。イスラーム圏はイスラーム法の枠組み内で、多文化、多民族、多宗教が共存する広大な法治空間のことをいう
・神の決めた掟、イスラーム法は、アラビア語で、シャリーア、という
・シャーリアは、神の啓示の記録であり、①クルアーン(コーラン)と、②ハディーズの2つがある。
・クルアーンとは、最後の予言者であるムハンマドの言葉をまとめたもの
・ハディースとは、ムハンマドの言行を弟子たちが書き留めたもので、7300以上のハーディスがある
・イスラームは、5つの行為からなっている。①信仰告白(ラーイラーハイッラー、ムハマンドゥンラスールッラー)、②礼拝、③ザカー(浄財)、④ラマダーンの斎戒、⑤メッカ巡礼
・イスラーム法学、フィクフ。5つの範疇がある ①義務行為(しなければならない)、②推奨行為(したほうがいい)、③合法行為(してもしなくてもいい)、④忌避行為(しないようがいい)、⑤禁止行為(してはいけない)
・イスラームにおいて、ムスリムでなければいかなる義務の生じない。異教徒は、5つの範疇の外にある。ただし、イスラームを侮辱するようなことを行ってはならない
・ハラルとは、許可という意味です。ハラルのマークは、イスラーム的にOKということです
・クルアーンの中で、現世で死んだあとに天国で生きているとされるのは、実は、殉教者だけです
・イスラームには、人間に対する罪と、神に対する罪とがある
・神に対する罪とは、神だけが赦すという権利関係なので、人間はそれには関わらない。神に逆らっても、そもそも他人が非難するようなことではない
・政教分離とは、キリスト教世界で、王権と教会、カトリックとプロテスタントの宗派間対立を調停するためのもの、イスラームには、政教分離という考えはない
・政教分離をすれば問題が解決するというのは、現代の迷信だ
・ムハンマドは最後の預言者で、神の法をもたらしているもの、最後の預言者なのでムハンマドの教えは1000年たったいまでも、変わることはない
・ダル・アル=イスラームとは、イスラーム圏という意味、ムハンマドとその後継者たちが最初につくった、イスラーム国家という意味です。
・イスラームでは、神は1人、法はひとつ、預言者の1人なので預言者の代理人であるカリフもまた1人しかいない。
・1924年最後のカリフが退位したのち、現在までに、カリフが存在しないことが自体が、イスラーム法上の一番の問題である。
・カリフの再興、ダール・アル=イスラームの復元ができるかどうかが、イスラーム世界の抱える最大の問題です。
・人間が人間を支配するのはいけない、国家も民族も、人間が人間を支配するという不正を隠蔽するためのベールにすぎない。
・イスラームには教会もなければ、公会議もないし、教皇もいない。モスクとは教会ではなく、単なる祈る場所のこと、だからなにもない。
・メッカの方向に向かって祈るのも、人々がばらばらに祈ると収拾がつかなくなるため、クルアーンにメッカにむかって祈れと書いているからだけ
目次
序章 イスラームとジハード
第1章 イスラーム法とは何か?
第2章 神
第3章 死後の世界
第4章 イスラームは政治である
第5章 カリフ制について考える
終章 「イスラーム国」と真のカリフ制再興
解説―自由主義者の「イスラーム国」論~あるいは中田考「先輩」について
ISBN:9784087207644
出版社:集英社
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:760円(本体)
発行年月日:2015年02月
発売日:2015年02月22日第1刷
発売日:2015年02月22日第2刷