内田樹のレビュー一覧
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いつも以上に?アグレッシブな内田樹を読めて、ちょっとヒヤヒヤしつつ、面白かった。
選挙を終えて、さて、そろそろ「この状況」を振り返らなくてはならないよな、と誰もが少しずつ思い始めている。
結局、日本のコロナ禍における対応はどうだったのか?そして、私たちには何をしてきたのか?
でも、と内田樹は言う。
恐らく、それを知っていて答えるべき人たちは皆、記憶喪失にかかるだろうね、と。
施政者たちは手と手を取り合い、無言を貫く。
一方、私たちはそんな政治を諦めながら、お互いにルール違反を犯していないかを見張り合い、SNSで拡散することは脅迫のレベルにたどり着いた。
でも、そこに認められる善は、あまりにも一方的で個人的に歪められたものでもある。
自分よりも富める者への憎しみ、のような。
そこで、市民としての振る舞い、大人としての振る舞いを身につけることが求められる。
自分が社会の一員だと認識し、スマートに行動する機会は、けれども、どんどんと先回りするサービスに、取って代わられているようにも思う。
今の日本社会に最も欠けているものは「親切」だと書かれていて、私はなるほど、と思ってしまった。
そして、それを教えることを担う場所も人も、少しずつ分断され、役に立たないものと見做されてしまっている気がする。 -
Posted by ブクログ
つまり、予定調和的な混乱や破壊が起きてそれに対処できる才能を持つ者よりも、予測できない事態が起きた時にそれからの方向性をきちんと掴むことができ、それを世に示せる才能を見出すことのできるのが、武道ということなんだろうな。こういうことを考えているもしくは考えられる人、そしてそれを実際に使える人がどのくらい世の中にはいるのだろう。
この自分が、そうなれるかは全然わからないけど、何かしら武道を、この齢五十を過ぎた身体で、心で、始めようと思うのは無謀かもしれないが、今までそんな使い方ができると思っていなかった体の一部が、ある日突然できるようになるというような経験をしてみたい。それはもちろん、仕事も生活も人間関係も全てにおいて。 -
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ネタバレ問い
・なぜ、共同体論が必要なのか
答え
・消費社会の行き過ぎた進展とともに家族が解体され、格差社会が出来上がった。同時に、学校教育も解体され、われわれの子供の世代の学力は極めて低い状態のまま、われわれは老後という弱者に転落する時代を迎える
以下、現代の日本社会の特徴
父親が没落し、母親による家族支配と呪縛がもたらされるようになった。
・父と息子の葛藤はドラマにならない
・圧倒的な支配力をもつ母親が誕生した
・母親の育児戦略は「弱者デフォルト」
・母親の「父親兼任」はきつい
拡大家族論
・賢い男は「家族内序列2位」を選ぶ
・人を傷つけると全能感が味わえる
・ヴァーチャルが実で、リアルが虚な人たち
・連帯する能力の有無が生死を分ける時代
消費社会が進むことで、家族が解体していったといえる。
・「こども」の数が異常に増殖してしまった
・強者には支援する義務が、弱者には支援される権利がある
格差社会は階級社会とは異なる。
・子供が年収で大人を値踏みする社会
・社会的に要請された「身の程知らず」
・「フェアな競争社会」には落とし穴がある
学校教育に希望を託した時代は終わり、資本主義は、貧富格差の拡大を願っている
以下、こうした社会において生きる知恵
コミュニケーション能力とは、相手の体温を感じられるところまで近づくこと
弟子という生き方は、楽だ。
・努力と報酬が相関しない。
・ほんとうの人間的能力は「事後」にしかわからない
・四十代以上は、師弟関係が理解できない
・質のよい情報をフォローする
・自分に居着かない開放感がある -
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日本戦後史論 内田樹×白井聡
白井氏の提唱する永続敗戦レジームなどの新しい概念があり、面白かった。日本は、歪な戦後史を辿っているという認識のもと、現代の諸問題を読み解いていく。戦後、アメリカの冷戦対応に伴い、日本は戦前の官僚体制を温存したまま、戦後を迎えた。そして、東条英機をはじめとする戦犯の首を挿げ替えただけで統治機構を温存させたまま戦後レジームが形成される。その際、白井氏が「敗戦の否認」と呼ぶような、敗戦へのごまかしを進めてきた。ごまかしとは何かと言えば、日本は米国に負けたという感覚を少しずつ減らしていくというもの。これはなるほどなとも思ったのであるが、普通、戦争に負ければ臥薪嘗胆として次は必ず米国に勝つと、日本独自の国家の在り方を考えるはずである。しかしながら、日本は米国に歯向かうというオプションを最初の段階からなくしていた。これは主権国家の敗戦後の姿ではなく、属国化の過程で起こるべき現象である。戦後、日本は米国との歴史的な同化を通じて、アジアへの戦争責任もまた否認した。戦前の日本は軍部という悪玉に支配されており、戦後の日本は米国との同化を通じて浄化されたという認識は、戦前と戦後日本のシームレスなつながりを無くしてしまった。永続敗戦レジームは、この敗戦に否認を通じて敗戦の戦略的な無反省を招き、本来の主権国家としての戦後の在り方を模索しなかったことに起因する歪な精神構造を指していると思われる。ただ、内田老師も補足していたが、この敗戦の否認を行わず、対米経済戦争勝利を信条とした世代が、1920年代後半~1930年代前半生まれの世代であると。彼らの世代は、大日本帝国と運命を共にすることを心の中で誓いながらも戦争時は13歳~16歳程度と、若すぎて徴兵されなかった面々である。私の祖父は1931年生まれで、まさにこの世代であるが、戦後、学制改革直後に旧東京商大・現一橋大学に入学し、卒業後は出光興産で定年まで勤め上げた。祖父は私が7歳の時に亡くなってしまったため、詳しいことは聞くことができなかったが、出光興産が対米戦争の敗因を資源の調達とするという反省から出光佐三に興された企業であることを踏まえると、敗戦の否認ではなく、臥薪嘗胆として次回は米国に勝つとする心持があったのではないかと邪推してしまう。しかし、その後の世代においては、このような心持はないのではなかろうか。以前、私が好きなDJの小林克也氏の自伝を読んだが、1941年生まれの彼の青年期には、既にアメリカ文化は根付いており、親から家訓の如く教えてもらわなければ臥薪嘗胆とした心持があるはずもなく、米国文化をニュートラルに好んでいたのかと思う。このように、1940年以降に生まれた世代は、敗戦の否認というある種のプロパガンダの中で育ってきているため、1996年生まれの私にしてみれば、全く実感がわかないものである。しかしながら、我々が日本という国により一種のアイデンティティを与えられ、パスポートをはじめとする多くのベネフィットを得ている以上、日本が嘗て犯した過ちには無反省であることはあってはならないし、頭を下げることに違和感はない。話がそれたが、現代における諸問題を永続敗戦レジームという術語をもって説明している本書は非常に興味深い書のひとつであった。 -
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手軽に読めるエッセイだけど噛めば噛むほど味がでる書物(あとがき)なのが、内田先生らしい良書です。
この方、物凄く頭の良い方だと思うので、権威ばって難しく書こうとすればいくらでもできるのでしょうけど、どうやら無知蒙昧なバカな子供(私も含め)を啓蒙することをご自身の天職とお考えのようです。本書のテーマの一つに、「修行や学びは成し遂げた後になって初めて回顧的に理解できるように構造化されている」ということで、本来は、「分かってる人たち」と「分かりようもない人たちたち」に分断されているばずなのですよね。低いレベルに居着いている我らには、文字通り想像もつかない世界があり、そこは本来隔絶されてるのだけど、そこをできるだけ分かりやすく架橋しようとして不思議なサービス精神を発揮しておられ、なかなかこういう人はいない(だから人気)と思うのです。
内田先生には多くの著作があるのですが、「学び」を語らせると真骨頂で、根っからの教育者なのだろうと思いました。
あと、瞑想の章で、「自我は額縁であり、必要なときには着脱できなければ危機を生き延びることは難しい。その訓練が瞑想なのだ。」とありました。
レベルが異なる話かもしれませんが、コロナ禍で大量発生している歪んだ自我の洪水を見るにつけて、「生き残れない集団なんだな我々は…」と感じています。 -
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内田樹 最終講義 教育、大学、組織、日本が生き延びるための処方箋を語った講義録。良書だと思う
結論としては、共生原理による社会、直観の重要性とそれを引き出す組織づくり、ブリコラージュ(ありものの使い回しで急場をしのぐ)に生き延びる術を見出している。教育の市場原理を批判し、人文学の意味、教育者が負うリスク、子どもの成熟プロセスなどを論じている
一番強く否定していたのは 教育投資(教育にかかった費用より、その教育により得た賃金や地位が高ければ、教育は成功とする考え方)。教育を投資と考えるのは、教育の自殺であり、使用禁止用語にすべきという主張。その通りと思うが、親がお金を、子が時間を 投入して、その見返りを子が受ける行動を投資とされると 親が子にすることの大半が投資となってしまうのでは?
古典文学など 人文学の意味や効果(直観力〜存在しないものから何かを感じとる能力)をわかりやすく伝えた文章は素晴らしい。大学サイドの人たちも 学生や一般の人たちに文学の意味を積極的に伝えるべきだと思う
子どもを成熟させるために、大人たちの異なる価値観をわからせ、矛盾を経験させるという考えは 学校の先生では難しい。親が中心になると思う
組織力
*人間は自分のためでは力がでない〜自分の成功を共に喜び、自分の失敗を共に苦しむ人たちが多いほど〜知性のパフォーマンスは向上する
*人を見る目とは その人がその組織に置いた時、どのような働きをするか想像する力
*組織には メンバーが標準化しないように異物(違う視点、違う基準で良否を判断する人間)が必要
共生原理の社会
*ずらして、かぶらないようにする
*競争相手を押しのけて奪い取る生き方をしない
教育者が負うリスク
こちらが 人に教えたいと言って始めた以上〜誰かが扉を開けるまで、待っていなければならない
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大学時代に中世ヨーロッパ史を専門としていて、キリスト教の考え方や歴史はある程度勉強していた。その中で、現代日本においてイスラームを信仰する人というのはどのような感覚・価値観を持っているのか非常に興味を持っていた。そのため、本書を通してムスリムの考え方の一端を窺い知ることができて良い体験ができたと思う。内田氏中田氏の考え方や主張は極端だなと感じる部分もあったが、中東情勢を西洋的日本価値観で見ていた自分にとって、新たな知見を与えてくれた。中東情勢は非常にややこしく腑に落ちないな〜と言う人は読んでみると理解の助けになるかもしれない。自分がどの考えを選択するかは置いておいて、自分にない知見を得ると言うのは良いものだなあと思わせてくれる一冊だった。
2021年3月