内田樹のレビュー一覧
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十年ちょっと前に発刊された、
内田樹さん初の単著作がこの本でした。
おもに、ご自身のサイトで発表されていた
エッセイや論考などを集めたものだそうで、
内容は単純化されていない難しいままのものではありますが、
語り口が柔らかなので、念入りに読むと
ちゃんと読解できるものが多いと思います。
それでも、僕なんかは「前景化」なんてわからない言葉でしたし、
「プラグマティック」や「パセティック」なんかは、
意味を忘れてしまっていてWEB検索しました。
そういう労をいとわないで、時間をかけて読むことができる人には、
とても質の高いリターンがあるでしょう。
戦争、性、審問の語法、物語、という四部構成ですが -
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【何故読みたいか?】
世界の情勢を知りたいから
内田樹さんの本だから
視点を変えて世界を観たいから
【ファーストインスピレーション】
読みやすい。
世界を騒がせている、イスラームのことを知りたくて読み始めたが、グローバル資本主義が目指す世界観、それに対抗するのが「食文化」という内田さんの視点に驚く。
金貨は貴金属だから、ある程度もっていると邪魔になる。は(笑)だけど、納得。紙幣は記号だからじゃまにならない。だから、増殖する。
「クロスボーダ」は国家に滅ぼされる。例)東インド会社。ならば、グローバル企業もいずれは国家に滅ぼされる運命か?
イスラーム教だから、特殊な教義があるわけじゃない。ご -
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ネタバレチェック項目6箇所。サービスを標準化したほうがいいと思っている経営者が多いし、客も判で押したようなサービスを求めるでしょ、でもさ、何だかよくわかんない状況になった時に「どうしましょう?」て訊いた時に、「わかりました、私が何とかします」って即答できるのが、本当のホスピタリティじゃないかな。彼らはミニマムを訊いてくるわけですよ、一番少ない学習努力で単位や卒業証書を手に入れた学生が一番スマートな学生だと思われている。集団をバインドするのは弱者なんだよ、なのに、うっかりさんとか、ドジであるとか、仕事の能率が悪いとか、不器用であるとか、なんだか抜けているとか、そういう人を切り捨てて、効率良くいこうって考
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内田樹を活字で読んだのは初めてかもしれない。精神科医の春日武彦との対談(というか、春日のあとがきに書かれているように「話に花を咲かせた」、あるいは内田という独特の思想を持った患者を春日が医療面接している、というのが適切か)。話のテーマは色々と移り変わるが、普段から自分がぼんやりと抱いていた思いが言語化されていて「あーそういうことか」と納得する場面が多かった。特によかった節を挙げると、『中腰で待ってみよう』『自ら「変人」の不シールドを張る』『ことばの力は身体感覚を変える』『身体は賢い』、そしてタイトルにもなっている『健全な肉体に狂気は宿る』。
今はどうやっても結論が出ない問題を、明日死ぬかもしれ -
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ネタバレ子どもに教育を与えるのは、子ども個人の生活を向上させるためではなく、すべての世代を含めた集団維持のため、という理論に納得。
──学びというのは自分の手持ちの価値観では考量できぬもののうちに踏み入ることです。具体的な知識や技術を学ぶことではなくて「自分にはそれが何を意味するかわからないもの」に敬意と好奇心をもって接近する作法を学ぶことです。──
内田と釈の講義録だが、第二部の釈は鈴木大拙に関する概説という感じで、内田ほど独特の考察がない。しかし、グループホームの運営など社会活動家としては評価できる、学者肌でない。釈は対談を見るに、内田にあまり強烈なつっこみをしないので相性がいいのだろうな、と -
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デトックスに読みました。
「家庭における父親の居場所」というものに、とても納得してしまいました。
システム的に、父親の居場所と言うものはない。
でも、家庭で自ら機能することを放棄している父親を30年以上見続けていると、
それでいいのかと、
私はどうにかできないのかと、
とても苦しくなります。
父親は、嫌いです。
でも、父親を、不憫に思っています。
どうにかしたいと、
だって、どうにかできる方法を見つけなきゃ、
私が前に進めないからです。
でもそのためには、
父が変わろうとしてくれなければ、
もう私には打つ手立てがありません。
人に変わることを願うことほど、
傲慢 -
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なかなか読んでいて難しい論述である。
それでも、難しすぎるわけでもなく、興味深く読みました。身の周りで起きていることをもっと注意深く、感じ、分析し、考えていくことが大事だよなと改めて思いました。
・ネット社会での誹謗、中傷、言葉の暴力がいわば呪いと化して人を蝕んでいる社会構造
・お金を回すことで経済が潤う。回すためには贈与の精神を強化する
・お祭りや宗教儀式は、単なる習慣でなく、それゆえに「恐れ」を身近に感じ、忘れないためのシステムとしての役割を果たしている
どっかの雑誌の連載エッセイがベースになっており、テーマは散漫な印象、言い換えればバラエティに富んだ話題で楽しいとも言えますが。 -
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内田樹のためらいの倫理学を読みました。
内田樹の初期の評論集でした。
最近読んでいる内田樹の評論では主張がわかりやすく書かれていますが、この本の内容は初期のホームページに書かれていた内容と言うことでレヴィナスやラカンの論文も引用された堅い内容となっています。
なぜ私は戦争について語らないか、なぜ私は性について語らないか、なぜ私は審問の方法で語らないか、それではいかに物語るのか-ためらいの倫理学、という4つの章に分けて書かれています。
自分は被害者であるから他の人を審問する権利がある、という主張に対してどのように対応すべきか、という議論が面白いと思いました。 -
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市場経済の原理を適用すべきでない分野(本書いうところの社会的共通資本)、例えば教育とか地域コミュニティとかについての内田節は共感できるところが多い。これらの分野では、等価交換ではなく、敢えてオーバーアチーブする人が一定程度の割合で存在することで社会が維持されるというのはおっしゃるとおりかと。
クレーマーになって相手に頭を下げされて一時的に快感を得ても、その代償に周りから次第に遠ざけられ、社会的評価を失い、下層社会に落ちていく、だから、いい人でなければ階層の上位には行けないんだという構図は、岡田斗司夫や佐々木俊尚の主張にも通じるものがあるね。
政治的なイシューでは共感できない部分もあるが、こうし -
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本書では、主に日本の共同体が戦前と戦後でどう変化したかについて述べられており、現代に求められるものについての内田さんの考えが示されている。資本主義経済システムの要請からくる反家父長制によって旧式のあらゆる共同体が解体され、個々人に分割されてしまったこと。親子関係しかり、学校教育しかり。経済学科で学ぶ身としては、簡単なミクロ経済モデルを扱う際に登場する「合理的経済人」、つまり「経済活動を行うにあたり完全に合理的であり、自己の利益を最大化するために行動する」と仮定された存在を思わず考えてしまった。この考え方には、人は「この商品は同種の商品の中で最もすばらしい」とか、「このスーパーよりもあのスーパー
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内田樹さんと、ムスリムでイスラム学者の中田考さんの対談本。
イスラーム文化圏のことは高校・大学でも習ったし、すでに聞き覚えのあることも少しはあったけど、中田さんご自身がムスリムというのがよかったのだろうな、新鮮でした。
相手の人格や内面云々じゃなく、砂漠で飢えている人がいたらとにかく食べ物あげるでしょ、という感覚が面白かった。すごく生命と直結してる、生きていくための法なんだなぁ、イスラームの教えって。この人たちは政治も学問も経済も、全部神様との約束がベースなんだから、政教分離や国民国家なんてのは押しつけても仕方ないように思う。それにしても、現地の人にしてみればタリバンのが米軍よりはよかったか -
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現在67歳以下のすべての日本国民は、自分たちが安全保障についても、国防構想についても、「アメリカの許諾抜きで」政策を起案できないということが常識とされる環境に生まれてからずっと暮らしている。
属領に生まれた属領の子たちである。
それが「自然」だと思っている。それ以外の「国のかたち」がありうるということを想像したことがない。というか、想像することを制度的に禁じられている。(p.209)
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