内田樹のレビュー一覧
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市場経済の原理を適用すべきでない分野(本書いうところの社会的共通資本)、例えば教育とか地域コミュニティとかについての内田節は共感できるところが多い。これらの分野では、等価交換ではなく、敢えてオーバーアチーブする人が一定程度の割合で存在することで社会が維持されるというのはおっしゃるとおりかと。
クレーマーになって相手に頭を下げされて一時的に快感を得ても、その代償に周りから次第に遠ざけられ、社会的評価を失い、下層社会に落ちていく、だから、いい人でなければ階層の上位には行けないんだという構図は、岡田斗司夫や佐々木俊尚の主張にも通じるものがあるね。
政治的なイシューでは共感できない部分もあるが、こうし -
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本書では、主に日本の共同体が戦前と戦後でどう変化したかについて述べられており、現代に求められるものについての内田さんの考えが示されている。資本主義経済システムの要請からくる反家父長制によって旧式のあらゆる共同体が解体され、個々人に分割されてしまったこと。親子関係しかり、学校教育しかり。経済学科で学ぶ身としては、簡単なミクロ経済モデルを扱う際に登場する「合理的経済人」、つまり「経済活動を行うにあたり完全に合理的であり、自己の利益を最大化するために行動する」と仮定された存在を思わず考えてしまった。この考え方には、人は「この商品は同種の商品の中で最もすばらしい」とか、「このスーパーよりもあのスーパー
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内田樹さんと、ムスリムでイスラム学者の中田考さんの対談本。
イスラーム文化圏のことは高校・大学でも習ったし、すでに聞き覚えのあることも少しはあったけど、中田さんご自身がムスリムというのがよかったのだろうな、新鮮でした。
相手の人格や内面云々じゃなく、砂漠で飢えている人がいたらとにかく食べ物あげるでしょ、という感覚が面白かった。すごく生命と直結してる、生きていくための法なんだなぁ、イスラームの教えって。この人たちは政治も学問も経済も、全部神様との約束がベースなんだから、政教分離や国民国家なんてのは押しつけても仕方ないように思う。それにしても、現地の人にしてみればタリバンのが米軍よりはよかったか -
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現在67歳以下のすべての日本国民は、自分たちが安全保障についても、国防構想についても、「アメリカの許諾抜きで」政策を起案できないということが常識とされる環境に生まれてからずっと暮らしている。
属領に生まれた属領の子たちである。
それが「自然」だと思っている。それ以外の「国のかたち」がありうるということを想像したことがない。というか、想像することを制度的に禁じられている。(p.209)
匿名であることによって得られた発言の自由は、それがどのような個人によって担われているのかが公開されていないことによって、信頼性を損なわれる。
この「言論の自由と信頼性のゼロサム関係」について、匿名の発信者はあま -
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内田樹さんと鷲田清一さんの対談が最初と最後にあり、そのあいだに、両者それぞれ2,3編の短い文章が収められている。
正直に言うと鷲田さんの論説はさほど面白くなかった。やはり内田さんの方が冴えているように見える。
同胞愛と同義であるような愛国心は不可能である、という前提をまず受け入れなければならないとする「愛国心論」ともいうべき『大人の「愛国論」』、ネットに飛び交う他者攻撃の言葉の鋒を「呪い」と定義する『呪いと幻論』が非常に良かった。かなり共感できた。特に後者は、ネットを覆う憎しみの嵐を適切に分析して、『呪いの時代』なんかよりも短い文章できっちりと論じている。すべてのネット民にこの文章を読んでもら -
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【面白かった話し】
・かつては、母親が子どもの実態を把握していて、把握をしていない父親が決定権を持つという構造だったが、今は母親が実態を把握しつつ決定的な影響も持つという構造になっている。母親は子ども以上に的確にその能力を判断し、将来の夢も打ち砕いてしまうがために、閉塞感があふれてしまっている。
・日本は安全で豊かな社会であったために、ネットワークに属さずに孤立して生存が出来るが、安全性に問題がある社会では、ネットワークに属しているかどうかが「格差」どころではなく「生存可能性」に差が出てきてしまう。
・ほんとうの人間的能力は事後的にしかわからないというのが、少し前の時代では通用していたが、 -
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(以下引用)
豊かさと親しみは食い合せが悪いんです。金ができるとみんながだんだん排他的になる。でも、まだ日本全体が貧しくなってきて、共和的な貧しさの知恵の必要性を感じ始めている。いつの時代がいいとか悪いとか、一概には言えないと思います。個人が原子化して、親族や地域社会が崩壊したのは、日本が安全で豊かになって、一人でも暮らせるようになったことの代償なんですから。それ自体は言祝ぐ成果なのです。(P.89)
この三種類の社会制度資本(自然資源、社会的インフラ、制度資本)は、専門家によってクールかつリアルな専門的知見によって管理運営されなかればならない。私念や私欲が介在してはならない。当たり前のこと -
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内田樹さんの名前は最近ネットでよく見かけるのだが、著書を読むのは初めだ。しかも、初めての電子書籍。
内田さんは学術論文も書かれているようだが、このようなごく分かりやすい一般向けの書物を、徹底的にわかりやすく書いている。そのへんのタコ兄ちゃんにでもわかるような文章なので、普段学術書を読んでいる私にしてはちょっと「あまりにも簡単すぎる」という感じを否めない。
しかも、全体の構成もちょっと甘いようだ。「呪いの時代」というタイトルどおりの内容なのは最初の方だけで、あとはまったく違う方向に話が展開していく。書かれた言葉=エクリチュールというよりパロール。博識なおじさんが若者に、多少酔っ払いながらうんちく -
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今のじぶんに必要な本だった。
全体的にすごく感覚的な話で、そこがいい。読みながら腑に落ちたり、ときどき人生観というほど大袈裟なものではないにせよ、考え方を180度変えてしまう出合いがあるけれど、これもそのひとつだった。たまに360度変えるものもあるけれど。
なるほどかわいげ。言葉になる前のものをセンサーとして感じ取れることも、その場その場で選びとる(センス?穂村弘言う所の)も、心身の健康と、パフォーマンスをいちばんいい状態に維持するには、じぶんが機嫌良くいられる環境に身を置くことが何よりも大事だと痛感。逆にそれさえあれば、あとはどうとでもなる場合が多。これはもう、感覚としてわかっている。 -
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この本を読んでの感想…じゃないかも。
この本は読んでよかったけど。
私は、大人かなぁってよく思う。
自分でもびっくりするような小さなことにイライラしてしまったり、八つ当たりではないけれど、人に冷たくするような態度をとってしまったり
心に余裕がないときに、
自分の行動、今のは正しかったのかなぁなんて、
よく考える。わたしは、プライドが高いのかなぁ。
それで、とても悲しい気持ちになる。
「あんたはさ、そこにいるだけで目立つわけ。だからやっかみの対象にもなるし、あんたがいくら目立たないようにしようとしたって、そうすればそうするほど目立つのよ。人に気を使うとかそんなことしても無駄っ -
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歴史的大敗となった自民党→民主党の政権交代について。渋谷陽一さんの雑誌SIGHTでの内田樹と高橋源一郎の対談。自民党について語ってくださいから始まり小沢一郎はナロードニキだとか「金で買えないものはない」とかいう絶頂期に出てきた言葉は田吾作だとか。政治について自分はどちらよりだからどちらが正しいと思うとかいうありきたりな対談ではなく(そんなもの苦痛で300ページも読めない)日本の政治、システムについてを「言葉」の側面から口語的に語られた対談。
いや、かなり笑いました。笑い事じゃないんだろうけど。最初は笑い事でいいのかな。
これ、ちょうど2011年の3月11日の直前までの対談。あの大地震で、それま -
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5/10うてなの先生が貸してくださった。
内田せんせいが光岡先生の話を聞いて「分かりません」と言うところが2カ所くらいある。
分かりませんと言えるせんせいを見習いたい。
さて、前半はあまり印象に残らなかったのだが、後半、引き込まれる。
日本は「知識基盤社会」を提唱しているが、数値化されパッケージされた知識や情報を社会活動のベースにするのは危険だと。知識や情報が重んじられ過ぎると、潜在的な感覚で「これはまずい」と感じたことがだんだんぼやかされてしまう。と内田せんせい。
この流れで、光岡先生が知識や情報は過去知だから、未来の確定にはつながらない、感覚のみが一寸先を読むものだ、という話をされる