【感想・ネタバレ】呪いの時代のレビュー

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Posted by ブクログ 2015年09月07日

「呪い」の言葉に満ちたこの世界を、もっと幸福な世界に変えていくためのポイントは、「祝福を与えること」と「贈与を活性化すること」の二つだという。
「私たちの意識を批判することから提言することへ、壊すことから創り出すことへ、排除することから受け容れることへ、傷つけることから癒すことへ、社会全体で、力を...続きを読む合わせて、ゆっくりと、しかし後戻りすることなくシフトして行くべき時期が来たと私は思っている。」(p285、あとがきより) という内田先生の主張は、シンプルで力強く、しかも温かい。それはとても難しいことだけど、単なる理想論や観念論ではなく、そうすることが一人一人を、そして世界をもっと幸福なものに変えていくためのベターな道筋だと、この本を読んで深く共感した。

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Posted by ブクログ 2014年12月01日

ネットで人をdisることについて。ガダラの豚読んで呪いのあり方に興味を持ったので。いつもながらわかりやすくて共感できる内容だけどタイトル通りの内容は1章と2章だけなので1章と2章だけ切り出して300円ぐらいで売ってほしい。

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Posted by ブクログ 2014年05月21日

ちゃんと理解できていなかったからかもしれないけど、難しい本だった。
全体を通して、今問題視されている様々な現象に関して、政治的な観点から原因を探って議論している印象、特に一貫したテーマはないように思った。
特に気になったのは、
・人間の記号化による9.11同時多発テロなどの犯罪
・「天職」という概念...続きを読むによる転職ビジネス
・原発を「荒ぶる神」として鎮める
という話だった。
ネガティブな話題が多かったけど、過ぎたことに対してポジティブに向き合う姿勢がいいと思った。
意識したわけではないけど、この人の著書は二冊目だった(一冊目は生物の福岡教授との対談)ので、この人の本は俺に合うのかも。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2014年05月19日

アカデミズムの浸透か、政治家の欺瞞か、批評屋が跋扈し、体制をあっさり覆すことに賛成の手があがる時代。
滋味深い提言が並ぶ。

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Posted by ブクログ 2014年03月16日

自分が漠然と感じていることを、簡潔かつ分かりやすい言葉で表現している。この人の思考に触れららることに感謝^o^

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Posted by ブクログ 2013年12月14日

やはり本書は、内田樹さんの本でいちばん好き。
テーマも比較的バランスよく、読みやすくまとまっているように思います。
呪い、婚活、贈与、知性の使い方など、共感できる話が多い。
内田さんの本がなんでおもしろいかって、ほかの方たちが突き詰めないようなところまで「自分の頭で」考えているからなのでは、と思いま...続きを読むした。
本書は、何度も何度も読み返して、内田さんの感覚をつかんでいきたいところです。

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Posted by ブクログ 2012年12月22日

 いやぁ、面白かった。内田樹の面目躍如の文章だった。贈与論に対してまとまった考えが述べられていて、今までの知識が整理されてよかった。知的のんびり状態を満喫できた。

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Posted by ブクログ 2019年08月11日

ちょこっと、今個人的に、ドロップアウトしていて、本を読み漁ってて、出会得てよかった本。
語彙が豊富なので、よくわかる。
私的には今抱えてるしこりが
聴き手の判断力や知性を信頼して、敬意を抱いて語れなくなる呪いにかかってるからということに気付けた。
自分のこと、"たかだかこんな奴だけど、嫌じ...続きを読むゃない"と自分をよしよしして、人に許せる自分を取り戻さなあかん。呪いがかかってないか、日常的にチェックもいるな。

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Posted by ブクログ 2018年11月18日

久々のウチダ本は相変わらずの切れ味。
ワタシは内田センセイが以前から唱えている「贈与論」には強く共感している。考えてみると、先輩から「お前が先輩や上司の立場になったらおごってやれ。金はそうやって回る。」と言われていつもおごってもらったり、アントニオ猪木が「笑顔は施しだ」と言っていたり、先日読んだ『モ...続きを読むリー先生との火曜日』でモリーが「ほんとうの満足は『自分が人にあげられるものを提供すること』によって得られる。」と言っていたのも、実は根っこは贈与論なんだと思う。贈与万歳。これからも贈与できるものは贈与しよう。

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Posted by ブクログ 2018年11月12日

日本のことを捉え直すに役に立つ好著。エッセイ的に色々な角度から日本という国を見つめ直すことができる。オバマの章にあった、アメリカを覇権国家たらしめている、根底の話が面白かった。アメリカにあって、ヨーロッパにないもの。こういうことも踏まえていかないと、日本という自分の国を理解するにあたっても、誤った理...続きを読む解をしてしまうと思った。英語が要らない日本という国の章も必読と思う。

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Posted by ブクログ 2017年07月02日

鬱々としていた頃に読んでいた本。自分でも世界を呪いながら、不特定多数からの敵意のようなものが世に満ちていることに辟易としていた。著者の勧めるように身体感覚を取り戻すことを心がけるようにし、そうこうするうちに本自体を読まなくなってしまったという、私に転機をもたらした一冊のうちの一冊。

今の私はかつて...続きを読むほどビッグワードは使わないし、何かお得なことが/面白いことが/特別なことが 起きないかなぁ〜というモノ欲しい気持ちが薄れ、感謝と他者への祝福とが自然にできるようになった。

呪いの時代なのはきっと変わっていないのだろうけど。

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Posted by ブクログ 2015年08月21日

思考の厚さ、を感じた。
得難いヒントが多くあったが、閉じれば忘れてしまうだろう自分。本も映画も、いいものは繰り返し味わうべし。

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Posted by ブクログ 2014年09月13日

なかなか読んでいて難しい論述である。
それでも、難しすぎるわけでもなく、興味深く読みました。身の周りで起きていることをもっと注意深く、感じ、分析し、考えていくことが大事だよなと改めて思いました。

・ネット社会での誹謗、中傷、言葉の暴力がいわば呪いと化して人を蝕んでいる社会構造
・お金を回すことで経...続きを読む済が潤う。回すためには贈与の精神を強化する
・お祭りや宗教儀式は、単なる習慣でなく、それゆえに「恐れ」を身近に感じ、忘れないためのシステムとしての役割を果たしている

どっかの雑誌の連載エッセイがベースになっており、テーマは散漫な印象、言い換えればバラエティに富んだ話題で楽しいとも言えますが。

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Posted by ブクログ 2014年07月12日

内田樹さんの名前は最近ネットでよく見かけるのだが、著書を読むのは初めだ。しかも、初めての電子書籍。
内田さんは学術論文も書かれているようだが、このようなごく分かりやすい一般向けの書物を、徹底的にわかりやすく書いている。そのへんのタコ兄ちゃんにでもわかるような文章なので、普段学術書を読んでいる私にして...続きを読むはちょっと「あまりにも簡単すぎる」という感じを否めない。
しかも、全体の構成もちょっと甘いようだ。「呪いの時代」というタイトルどおりの内容なのは最初の方だけで、あとはまったく違う方向に話が展開していく。書かれた言葉=エクリチュールというよりパロール。博識なおじさんが若者に、多少酔っ払いながらうんちくをたれているような話しっぷりである。
最初の方の、ネットにはびこる憎しみの応酬について指摘している部分が最も共感できた。
「ネット上では相手を傷つける能力、相手を沈黙に追い込む能力が、ほとんどそれだけが競われています。もっとも少ない言葉で、もっとも効果的に相手を傷つけることのできる人間がネット論壇では英雄視される。」
このへんは2ちゃんねるの類の掲示板や、Twitterでのやりとりをそのまま表していると思う。
そして『ほんとうの私』という幻想のイメージが「肥大した自尊感情」として現代人の心に巣くっている、という第1章の指摘は優れている。
しかしその後、話は散漫に広がっていく。福島原発事故に関する話もなかなか面白かった(賛同できる部分が多かった)けれども、全体としては、少し賛同できるが他の多くの部分は首肯できない、という感想だった。
たとえば「これからは間違いなく贈与経済の時代になる」という確信は何に根拠があるのか。人類学の知のひとつの結晶として「贈与経済」という主題があることは私も理解しているが、「これから、近い将来」そんな経済体制の時代になるなどということは全く考えられない。中沢新一氏でさえ、理想として贈与経済を語ったものの、それが現代社会に復活するとまでは、明確には断言できなかったと思う。
私としては、資本主義経済を経て贈与経済に移行するなどということは絶対に起こりえないし、夢想しても意味はないという気がしている。
ともあれ、意見は部分的にしか一致しないとはいえ、わかりやすく書かれ、かつ、読者にいろいろと考えさせる本だし、総合評価としては良質な本だと思った。

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Posted by ブクログ 2013年01月14日

いま、ここ、の自分をカッコにくくること。等身大の、たいしたことのない自分を愛すること。生きる上で学ぶことが多い本。

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Posted by ブクログ 2013年01月06日

数ある(著者の)著作の中でも、わりに好きな主題(「呪詛」と「贈与」)であったため、面白く読めた。ものすごく大雑把になるが、他者や外部に対する敬意がそこに底流しているからこそ、なかなか気持ちよく読めるのだと思う。最近普通に生活をしていて、どのように他者に対して敬意を払えるかということが、自分の中で自覚...続きを読む的になっている。敬意を払うというのは、何も相手の言うことを何でも尊重するとか、争いごとを避けるためのマナーとして(だけ)の行為の話ではない。お互いの”知的パフォーマンスを活性化"させたいがために、敬意を払いたいのだと思う。それは最終的に「正解」を求めたいからとか言うよりも、単純にお互いのパフォーマンスを上げることが気持ち良いから。但し(ビジネスにおける)「正解」を求める姿勢も決して過小評価してはならないため、そこの折り合いをどう付けるかがサラリーマンとして、あるいは集団生活を営む上で大事なことなのだと思う。これからも悩んでいきたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年12月15日

「呪詛」と「贈与」を主題にした『新潮45』での不定期連載の内容と、 東日本大震災で露呈したグローバル資本主義と日本的システムの問題点に対する考察をまとめた一冊。
以下、印象に残ったところ。

◇子供たちに「身の程を知らせる」という学校教育の重要機能
一方で本の後半では、有事に対応出来る&quo...続きを読むt;フツーじゃない"人材を育てる重要性を 説いている。
あれ?矛盾してね?と思った瞬間、ハッとした。「身の程を知る」事と、「フツーの人間になる」事を混同していた・・ 。
「身の程を知る」とは「出来る事と出来ない事を認識する事」であって、別に
「出来る事を抑制してフツーになる事」ではない。
だから「無限の可能性を説く事」と「身の程を知らせる事」は矛盾しない。
教育は子供たちに、 「君たちは何でも(any)出来る。けど何でも(every)出来る訳ではない」 と説く必要があるんだな。

◇「国誉め」
詳細に書けば書くほど実物の美しさを描ききれず、記述すればするほど固定化や定義化は遠のき、"リアル"の無限性と、自分の記号化能力の限界を感じる、と言う話。

◇大人になるとは、「人間が複雑になる」こと
真の共生とは「感情移入」ではなく、自分の構成ユニットを増やすことで「この他者は部分的に私と同じだ=私自身だ」と認める事、と言う話。

◇「街づくり」に霊性を取り入れる
勿論、神威によって街が蘇生するのではなく、「神の威徳というのは、そのようなものが存在し、活発に機能していると信じる人間が作り出す」んだけれども、と言う話。

他。
・「過記号化」が持つ危険性
・レヴィナスが守った神への信仰
・原子力は「荒ぶる神」
・存在しないものを存在するかのように擬制することの効力

様々なトピックについて書かれているのですが、通底しているのは、下記2点かと。
-「ほんとうの私」を受け容れ、自責を引き受けなければ、物事はうまく行かない
-存在しないものを存在するかのように信じる事に効力がある

いやー、面白かったです。

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Posted by ブクログ 2012年11月07日

いつもの語り口いつも言っていることでそういえば以前に読んだ内容と思いつつも結局通読してしまうのは結局著書の考え方に同意していてかつ誰かにその内容を伝えようとしてもまだ消化しきれてないことが原因なんだろうと思う。この人の周辺についても埋めていかないとと思う。

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Posted by ブクログ 2012年11月04日

批判や自説を説くことに終始し、破壊をめざす「呪いの時代」をどう生きるか。その問いに対して、筆者は、呪いを解除するには、あまりぱっとしない「正味の自分」を、真の自分として受け入れ、けなげに生きる自分を祝福することと説く。自分を愛するということを考えさせられた。

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Posted by ブクログ 2012年10月25日

本の中で象徴的な「ギルティフリー商品※」をこう説明してくれている。

「誰もが「私は存在することそれ自体によって、何か罪を犯しているのではないか」という有責感を、
程度の差こそあれ抱いている。その心の隅にある「疚しさ」を標的にして「この商品を買うとその疚しさが緩和されますよ」とささやきかける」
こと...続きを読むによって商品を売り付ける新手の商法だということ
行き詰った今の市場経済で、消費行動の動機づけにはもってこいだ。。
そりゃ近所のスーパーに行けば、こぞってみんなエコバッグ使ってるわ。

「商品購入を通じて自分が趣味がいいとか、
知的であるとか、成熟しているとか、
政治的に正しいとか、さらには「地球に優しい」とか、
そういうことを他人のみならず、
自分に対しても証明しようと思ったら、
買わなければならない商品のリストはエンドレスになる他ない。
(だから購入欲を原理的に無限にできる巧妙で悪質なマーケットが作れる)」

「地球環境なんたら」だの「地球の気持ちを考えた云々」とかうたったものが
なぜあんなに気味悪いとを感じていたか理由がわかった。

※「ギルティフリー」guilty freeというのは「有責感のない」ということである。
自分が購入した商品はその製造過程・流通過程・廃棄過程のどこにおいても
「悪いこと」(熱帯雨林の破壊とか、有害物質の垂れ流しとか、第三世界住民の収奪とか、
産業廃棄物による環境破壊とか)に加担していないので、
それを購入した自分の手が白いことにほっとするような商品がギルティフリーであるらしい(たぶん)。(内田樹の研究室」より)

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Posted by ブクログ 2012年09月30日

★4.5
「呪詛」から「贈与」へ。
今の時代を生きる上で、本当に大切にしたいものを再確認できた気がする。過去から学ぶ視点もすごく勉強になる。

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Posted by ブクログ 2020年07月15日

相変わらず面白かった。ブログで書いたものを寄せ集めて作ったパターンの本ではなく、硬めの雑誌に連載したものをまとめた本のようなので、論調も硬めで、論理構成も一層しっかりしている内容が多かった気がする。
最近に書かれたものなので、今という時代にフォーカスした、タイムリーな話題が多く、それがまた面白いとこ...続きを読むろだった。
これまでの本で言っていたことと重なる内容もいろいろとあるのだけれど、そういう場合でも、また、同じ事を角度を変えて説明しているので、より理解が深まった気がする。

【面白かった話し】
・思っていることを完璧に表現することが可能な日本語という言葉が母語であることは例外的に幸せなこと。
・万人が必ず「この結婚は失敗だったかも」と思うような構造になっているということ。

「呪い」は破壊することを目指します。何かを創り出すための「呪い」というものはありません。どうして破壊することが優先的に選択されるかというと、創り出すより破壊する方が簡単だからです。はるかに簡単だからです。ですから、「変化」の絶対値だけを取れば、破壊の方が創造よりもはるかに大規模で印象的な出力をもたらします。
10年がかりで築き上げた信頼関係でも壊すのはわずか10秒で十分です。100年かけて築かれた都市が一夜で灰燼に帰すのと同じです。あるものを破壊するのに要するエネルギーは、それを創り出すために要したエネルギーの数百分の一、場合によっては数百万分の一で済みます。
ですから、身の丈に合わない自尊感情を持ち、癒されない全能感に苦しんでいる人間は創造的な仕事を嫌い、それよりは何かを破壊する生き方を選択します。(p.17)

この「呪いの時代」をどう生き延びたらいいのか。その答えの一部はすでに書きました。それは生身の、具体的な生活のうちに捉えられた、あまりぱっとしないこの「正味の自分」をこそ、真の主体としてあくまで維持し続けることです。「このようなもの」であり、「このようなものでしかない」自分を受け容れ、承認し、「このようなもの」にすぎないにもかかわらず、けなげに生きようとしている姿を「可憐」と思い、一掬の涙をそそぐこと。それが「祝福する」ということの本義だと思います。(p.36)

俚諺に「李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず」という言葉があります。「すももの木の下では冠のひもがほどけても直してはならない(すもも泥棒だと思われるから)。瓜の田で沓が脱げても取りに行かない(瓜泥棒あだと思われるから)」という「公人のたしなみ」についての教訓です。それが教えるのは公人というのは「推定有罪」の心構えでいなければならないということです。何もやましいことをしていなくても、他人からみて「泥棒」に見えるような所業をしたら、それは「泥棒をした」のと同じ意味をもつ、ということです。そんなの理不尽だと言っても始まりません。それが一般人から権利を受託され、税金の使い道を決められ、個人情報を占有できる公人であることの「有利」さとトレードオフされり「不利な条件」だからです。(p.76)

日本の知識人は特権的な言語状況にいる。現にこれを書いている僕だってそうです。僕は学術論文もエッセイも全部日本語で書いています。それで言いたいことはだいたい言える。日本語には僕の言いたいことを受け止める語彙や構文が存在しないというような言語の限界を僕は感じたことがありません。もちろん、僕の言語表現にはさまざまな不足や欠点がありますが、それは日本語そのものではなく、運用者である僕個人の責任であって、僕の個人的努力によって、それらの瑕疵は修正可能です。そして、そのように母語運用の自由に支えられて書かれた僕の文章は、すぐれた翻訳者を得れば、だいたいのニュアンスを保持したまま、英語やフランス語に置き換えることができるはずです。
母語だけで学術論文が書けるというのは、これは19世紀末の列強による植民地化の恐怖が切迫するまで近代化を先送りしてきたアジアの一小国としては、まことに例外的な言語状況であると言わなければなりません。(p.88)

人間のほんとうの知的能力は母語の運用において際立ちます。でも、母語についてはどういう訳か人々は「みんな同じようにできる」と思い込んでいる。だから、母語運用能力の巧拙や適否について話題にするということはしません。(p.98)

あらゆる結婚は(と申し上げてよろしいでしょう)「これは失敗だったな」という感覚を当事者たちにもたらします。必ず。だから、ご心配には及びません。僕たちは配偶者の選択において、必ず間違いを犯します。そして、後になって「なんで、こんな人と結婚しちゃったんだろう・・」と虚空を仰ぐことになる。「婚活」ビジネスは、この「失敗の不安」を煽り立てて、それがあたかも致死的なものであるかのように思い込ませることで、「より多くの出会い」への需要を生み出している。僕はそれが「よろしくない」と申し上げているのです。「仲人」たちの仕事はまさにその反対です。仲人の結婚後のアフターケアは主にこの失敗の不安を「標準的なこと」として笑い飛ばすことにあります。誰でも、どれほど愛し合って結婚した夫婦でも、必ずどこかの時点で、「結婚に失敗した」という不安にとらわれる。そのときに、その不安をまっすぐぶつけることのできる相手がどこかにいた方がいい。(p.118)

「天賦の才能」という言葉がありますね。それは自分に備わっているさまざまな能力や資質を「天からの贈り物」だと感じることです。贈り物だから、むろん返礼義務があります。
例えば、世の中には10万人に一人といった割合でしか存在しない優れた頭脳を持っている人がいます。それはすばらしいことです。でも、才能の絶対量は評価に値しません。その才能を賦与されたことにどれほど深い返礼義務を感じているのか、それが人間的な意味での才能の評価基準です。天賦の才能を豊かに持ちながら、それを自己利益のためにだけ排他的に使用する人間を僕は人間としては評価することができません。ぜんぜん。(p.184)

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Posted by ブクログ 2023年10月28日

ー 私たちが共同体として生きてゆくために必須の資源を「社会的共通資本」と呼ぶ。大気、海洋、森林、河川といった「自然資源」、交通・通信・上下水道・電力といった「社会的インフラストラクチャー」、司法、医療、教育といった「制度資本」がそれに当たる。これらはどのようなものであれ、政治イデオロギーやマーケット...続きを読むに委ねてはならない。専門家が専門的知見に基づいて、管理運営しなければならない。「森林をこうした方が金が儲かる」とか「医療はこうする方が政治的に正しい」というようなことを言わせてはならない。政治的正しさや市場的価値は所詮「脳内」の現象である。平和で安全な場所でなら、いくらでも論じるがいいし、人々がそれでつかみ合いの喧嘩をしても私は与り知らない。だが、大気や森林や、水や食べものや、裁きや癒しや学びは「生身の人間が集団として生き延びる」ために必須のものである。それは、フェアで合理的な管理システムのもとに、価値中立的な立場を貫く専門家によって運営されていなければならない。どのような政治的な正しさとも費用対効果とも無関係に、純粋に専門的な見地から、国土の安全と国民の幸福だけを配慮する人々によって管理運営されねばならない。 ー

12年前の作品なんだけど、今読んでも違和感はない。
何となく積読本にあったので読んだだけだけど。

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Posted by ブクログ 2023年08月20日

女性へ告白する際に「今付き合ってる人いる?」と聞くのが卑怯だという話があったが、個人的には「それくらい許してやれよ」と思った。相手に彼氏がいるかどうかは素朴に気になるのが当たり前だし、質問する男性は別にそこまで深く考えてないのでは?「女性が強くなった」現代では告白したことをネタにされ周囲に言いふらさ...続きを読むれて自分の身が危うくなるリスクもある。
お見合い婚を肯定するくらいなら、交際の始まりがその程度の優柔不断であることくらい目を瞑ればいいのにと思う。「男女平等」が正しいとされているのに、世の中の殆どの女性はそのような優柔不断なアプローチ「すら」自分からはしようとしないのだから。
またこれは筆者ではなく本書に登場する女子大生についてだが、草食男子が「弱者を装うことで利益を得る」ことに関しても、女性という生き物がその総本山のようなものなのに、いざ男が同じことをすると批判するというのも自己矛盾だなと思った。

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Posted by ブクログ 2018年10月28日



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【要約】


【ノート】
・ハッとさせられる知見や洞察、しかし、相変わらずところどころでなんか鼻につく内田節。自分にとってはちょうどいいテキストなのかも知れない。

・「呪い」についてのセンセーの洞察にやられちゃって買い求めた本書だが、呪い自体についての言及はそれほど多くは...続きを読むない。ただし、色々な形質での呪いについて言及してはいるけど。その意味では、第1章と第2章がタイトルに即応した本書のコアだと思った。

・最終章でポパー「開かれた社会とその敵」を題材にしていたとはすごいすごい。あまりよみこまずに、自分で読んでから照合させてもらおう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2017年11月21日

レヴィ・ストロースものかとタイトルから連想したのだが、ほぼ関係ない。人生教訓系ビジネス書に近い。とはいえ筆が達者なので、興味をそらさない。震災以降ヒステリックになり、知識人に見られた類型的独断表現がややみられる。いわく「やらないよりいいリスク回避のために疎開しなさい」

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Posted by ブクログ 2015年01月03日

中盤までは、様々な社会的問題を取り上げ著者なりの切り口で解説しており非常に面白い。
後半、思想本になってしまい残念。

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Posted by ブクログ 2013年11月17日

なんかすごい怒ってんなーってぼんやりしつつ読んだけど、結婚ってシステムとか大人になるって感覚とかの一考察は現実的で冷静な面白さがあった。

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Posted by ブクログ 2013年07月01日

 一番印象に残ったのは、9章の『神の言葉に聴き従うもの』です。ユダヤ教に関して、私がずっと疑問だったことの回答がありました。
 厳しい戒律を2千年以上守って暮らしてきたのに、神の助けなく600万もの人が虐殺される。民族存亡の危機に、いま救世主が現れずにいつ現れるの?大戦後にイスラエルが建国されたこと...続きを読むをプラス加点したとしても、周辺国からは攻められっぱなしで、落ち着く暇もありません。そんな神さん、私だったら、とっくに見限ってるわ、とずっと思っていました。
 それをレヴィナスという哲学者は、「ホロコーストは人間が人間に対して犯した罪である。人間が人間に対sて犯した罪は人間によってしか購うことはできない。それは神の仕事ではなく、人間の果たすべき仕事である。」と言って説得したそうです。さすがフランス人、大学のセンター試験に哲学の科目があるだけのことはある、と頭の良さに感心しました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年11月14日

「漫画の絵の部分は表意文字で、吹き出しが表音文字である」(養老孟司)

漢字は外来の記号体系であり、
「かな」は、それを土着の言語のための音声記号に流用したものである。
外来の言語を図像情報として、土着の言語を音声情報として、脳内の2か所で並列処理している。そんな思考をしている言語集団は日本人のみ...続きを読むである。

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