あらすじ
政治家の失言、ネット上の罵詈雑言、就活や婚活の壁……他人を呪うことは、自らを呪うこと。「ほんとうの私」なんてどこを探してもいない。ぱっとしない「自分」だけど、そろそろ受け容れて、もっと自分を愛そう。そして、他人にも祝福の言葉を贈ろう。時代に蔓延する「呪い」を解く智恵を語る、ウチダタツル的・新“贈与論”。
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Posted by ブクログ
「呪詛」と「贈与」を主題にした『新潮45』での不定期連載の内容と、 東日本大震災で露呈したグローバル資本主義と日本的システムの問題点に対する考察をまとめた一冊。
以下、印象に残ったところ。
◇子供たちに「身の程を知らせる」という学校教育の重要機能
一方で本の後半では、有事に対応出来る"フツーじゃない"人材を育てる重要性を 説いている。
あれ?矛盾してね?と思った瞬間、ハッとした。「身の程を知る」事と、「フツーの人間になる」事を混同していた・・ 。
「身の程を知る」とは「出来る事と出来ない事を認識する事」であって、別に
「出来る事を抑制してフツーになる事」ではない。
だから「無限の可能性を説く事」と「身の程を知らせる事」は矛盾しない。
教育は子供たちに、 「君たちは何でも(any)出来る。けど何でも(every)出来る訳ではない」 と説く必要があるんだな。
◇「国誉め」
詳細に書けば書くほど実物の美しさを描ききれず、記述すればするほど固定化や定義化は遠のき、"リアル"の無限性と、自分の記号化能力の限界を感じる、と言う話。
◇大人になるとは、「人間が複雑になる」こと
真の共生とは「感情移入」ではなく、自分の構成ユニットを増やすことで「この他者は部分的に私と同じだ=私自身だ」と認める事、と言う話。
◇「街づくり」に霊性を取り入れる
勿論、神威によって街が蘇生するのではなく、「神の威徳というのは、そのようなものが存在し、活発に機能していると信じる人間が作り出す」んだけれども、と言う話。
他。
・「過記号化」が持つ危険性
・レヴィナスが守った神への信仰
・原子力は「荒ぶる神」
・存在しないものを存在するかのように擬制することの効力
様々なトピックについて書かれているのですが、通底しているのは、下記2点かと。
-「ほんとうの私」を受け容れ、自責を引き受けなければ、物事はうまく行かない
-存在しないものを存在するかのように信じる事に効力がある
いやー、面白かったです。
Posted by ブクログ
レヴィ・ストロースものかとタイトルから連想したのだが、ほぼ関係ない。人生教訓系ビジネス書に近い。とはいえ筆が達者なので、興味をそらさない。震災以降ヒステリックになり、知識人に見られた類型的独断表現がややみられる。いわく「やらないよりいいリスク回避のために疎開しなさい」