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Posted by ブクログ
『健全な身体に狂気は宿る』
日系大企業から外資系企業に転職し、まず聞かれたことが「あなたのDifferentiatorは何か?」ということだった。そして、海外から来た上司や英語話者によって、Differentiatorと強みは同義ということにも衝撃を受けた。差異がそのまま強みになる。あなたにとって何が人と違うところなのかという問いを突き付けられ、あなたにしかできないことはなんですかと聴かれることは初めてであり、爽快だった。本書でも、自分のミッションを考えるときは、自分が他の人とどう違うかということを考えると言う点があり、先述の考えに非常に近いなと感じた。さらに、もう一歩踏み込んで、自分自身の謎があるからこそ、生きる意味があり、何かを創造する源泉があるということは面白かった。常に自分自身への謎を持つことが良い。
私自身、性別を問わず、好きなタイプの人は一見物静かだが、話始めると熱いという人物だが、そういう人々は、絶えず疑問を持っているケースが多い。あまり疑問を持たないようなところに疑問を持ち、悶々としている。悶々とはしているが、なぜなんだろうと常に謙虚な姿勢で日々過ごしている。だからこそ、物静かに見える。しかし、一見話始めるのは熱いなと感じるのは、彼らにとってその疑問を解消しなければ、動けない、生きていけないような根源的な疑問だからだろう。薄っぺらな仮説とか、ビジネスアイデアとはレベルの違う、この問題を解かなければどうにもこうにも生きていけないという重さで、疑問に立ち向かっている。そう言う人間の熱量が低いわけもないのは当たり前だろう。
時折、仕事のモチベーションについて考えるときがあるが、やはりそれは疑問なのだと思う。人と話せば話すほど謎が深まり、なぜそうなのかと考えるからこそ表現しようとする。わかり切った仕事はいくら稼げてもおもしろくない。自分自身に置き換えれば、自分はリスク認知度が異常に低いように思う。保険の営業をかけられても常に疑ってしまう。人々が保険に入らない理由を常に考えている。未来はよくわからないし、リスクなんで考えたくもない。リスクシェアをする共同体にわざわざ身銭を切ってい入る価値があるのかわからない。だから、この仕事をしているのだと思う。営業には2つのタイプがあって、自社商品やソリューションを盲信して、その熱量で押し切る人もいるが、一方で、常に自社商品に入る必要があるのかと考え続ける人がいる。前者も後者も強い。前者で上手く行っている人は、自分の熱量で押し切れる人を探すのが上手い。当たりはずれが激しいので、数を打ちまくり、感覚を磨いている。一方で、後者は数を打つことはできない。ただ、長期的に多くの人が納得するような解決策を出せると思う。なぜなら、その商品の要否を誰よりも考えた経験や引き出しがあるから、いかなる質問にも答えられるし、いらないときはいらいないと言うので信頼はされる。(営業としては失敗だが)。しかし、頼られる存在になることで、長期的な関係性は築くことができる。
とりとめのない話になってしまったが、いつもそうなのだが、内田老師の本は、脳にドライブをかけ、何かを書きたいと思わせる伝染力がある。
<以下、引用(一部)>
信仰というのは、自分と言うのは自己決定・自己実現によって主体的に構築したものではなくて、超越者によってこの世界に送り出された被造物であると言う意識のことですから。ぼくが生まれてここにいることも、いつか死ぬことも、僕には選ぶことができない。そのことには何かの意味があるはずだ。自分がこの世に送り出されてきたのはどのようなミッションを果たすためなのだろうと発想するのが信仰ですからね。
では、私の使命は何かという風に考える人は、自分が他の人とどう同じかじゃなくてどう違うかということを考えますでしょう。これは私以外の誰にもできないことなんじゃないかとか、ここは私以外には誰も行きそうもないところではないか。
自分自身に対する無知というものがあって、その欠落こそが、いわば創造の泉みたいなものなんですから。
(中略)人間は自分について「知らない」からこそ生きていける。自分自身の核に無知がない人は、ものを作ることができないんですよ。
コミュニケーションとは分かり合うこととは次元が違うことなんですよ。コミュニケーションというのは、深まれば深まるほどわからなくなっていく。わからないから「もっと知りたい」と思う。わからない人だからこそ、経緯やイフの気持ちが深まっていく。自分自身についてだってそうなんだから。自分自身と五十何年つきあってきて、ますますわからなくなってきた。(中略)自分が何を考えているかわからないから、本を書いたり、こうやって人と話したりして、自分の考えを知ろうとしているわけでしょ。自分の考えていることを知っていたら、本なんか書きませんよ。退屈で書けません。
Posted by ブクログ
内田樹と春日武彦の健全な肉体に狂気は宿るを読みました。
生きづらさの正体、という副題のついた、生き方についての対談集でした。
章毎のテーマは、世代論に逃げ込むな、「自分探し」はもうやめよう、人間はわかりあえっこない、個性とこだわり幻想、健全な肉体に狂気は宿る、まずは身体に聞け、と現在喧伝されている生き方の解説やコミュニケーションについての解説に真っ向から対立する主張が述べられています。
春日武彦の精神病の臨床医療の現場からの意見と内田樹の身体の発する信号を聞いて行動しようという主張とがかみ合って面白い読み物になっています。
アメリカの契約社会で育ったコミュニケーションの方法は、日本の以心伝心の文化には合わない、という意見は納得します。
キャリアとは自分で形成するものではなく、他の人が必要とするものを提供し続けていくものだ。
自分だけの秘密を持つことが出来るということが大人の条件だ。
未来が予測可能だと考える人は、取り越し苦労をしてしまう。
精神科に来る人はこだわりとプライドと被害者意識の3点セットが多い。
自分探しは自殺行為である。
などなど、奥深い警句が書かれています。
Posted by ブクログ
すっかり内田樹にハマッています。
内田氏の著書は、(勝間氏などの書く)ビジネス書及び自己啓発書と比較しながら読むととても面白い。結構正反対の事を言っていたりする。それなのに、双方に説得力があったりするのが不思議に感じる。
けれど、総じて感じるのは「内田氏のほうがより大人だ」ということ。なんだか懐が深い感じがする。勝間氏らの書くビジネス書が、分かりやすく明確に伝えるために切り捨てている(一見どうでも良さそうに見える)部分を、丁寧に掬ってあげているのが、内田氏の書なのではないか。
だから僕のように「若さをエネルギーにいろいろな自己啓発本を読んだけれど、大体同じことを言っているしもうそろそろ飽きたなあ」と感じ出した人は、是非内田樹を手にとって欲しい。「人生って深いんだなあ。」と思うこと請け合いですから。
Posted by ブクログ
2022/05/12
個人的にモヤモヤしてたことがそうか…って腑に落ちたりした。対談だから読みやすい。
読んでよかったー。
・「常識は原理にならない」っていう文章が特にそうかぁと思ったしすごくよかった
p.138 『規制力はあるけど攻撃力は小さいし、権力的になれない。これは人間を動かすときに非常に
有効な手段なんですね。言いたいことは言えるけれど、相手の立場もちゃんと確保してある。
常識的な人間というのは、だからすごくいいんですよ。人を徹底批判することがないし、罵倒したり愚弄したりすることもない。だって、そんなの「常識的じゃない」から。「そんなに人を責めるなんて、非常識じゃないか」と言えば常識人は絶対黙りますから。
春日 たしかに、わたしが思者と話していても、結局のところ、常識なんだからうまくやりなよ、という話にいくわけですもんね。ただ、常識というのを「思考停止」だとか、「長い物には巻かれろ」的ないい加減な発想だというふうに取りたがりますから、そうじゃないんだということをいかに伝えるかという問題なんですね。
内田 あらゆるものが原理主義になる可能性がある中で、唯一常識だけが原理主義にならないということが常識の強みなんです。マルクス主義にしても、フェミニズムにしても、キリスト教にしても、間違えると原理主義になってしまう。でも、常識だけはならない。「常識の名において断罪する」ということができないんですから。「何かの名において人を断罪する」というのは常識的に考えていかがなものか……というふうに考えちゃうのが常識人なんですから。』
Posted by ブクログ
内田樹を活字で読んだのは初めてかもしれない。精神科医の春日武彦との対談(というか、春日のあとがきに書かれているように「話に花を咲かせた」、あるいは内田という独特の思想を持った患者を春日が医療面接している、というのが適切か)。話のテーマは色々と移り変わるが、普段から自分がぼんやりと抱いていた思いが言語化されていて「あーそういうことか」と納得する場面が多かった。特によかった節を挙げると、『中腰で待ってみよう』『自ら「変人」の不シールドを張る』『ことばの力は身体感覚を変える』『身体は賢い』、そしてタイトルにもなっている『健全な肉体に狂気は宿る』。
今はどうやっても結論が出ない問題を、明日死ぬかもしれない自分が、今すぐになんとかする必要はなくて、出来る範囲のことをやりつつ変化に対応できる状態で待と、意外となんとかなる。そして、こうなってほしい、と思うことは、具体的にイメージすれば必ず実現の方向に近づく、というあたりは、そのとおりだなぁ、と思った。
もっと読んでみたいお二方である。
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