小池真理子のレビュー一覧
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ネタバレ角川ホラー文庫だったので、手に取りましたが、怖い要素は少な目でした。
短編集だからと目次から摘まんで読んでみたら、時系列でつながっているお話もあったので、順に読む方が分かりやすいです。
死者の想いと触れ合う物語たち。読んでいて、死者と生者の境界線の揺らぎを感じ取れました。読み終わった後は、古い友人と再会した時のような、嬉しさ、寂しさと懐かしさが綺麗に混ざったような気持になりました。これがノスタルジーでしょうか。
---13編の中から何個かあらすじと感想---
『死者と生者をつなぐ糸』
あらすじ:私は14年ほど前、いるはずのない場所で、母の形をした何かとすれ違う。
こういう奇妙な体験がいく -
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急逝した親友の愛人から寄せられるアプローチに揺れる主人公の様子を著した「エリカ」は、彼女が抱く微妙な感情の動きが仔細に表現され、数々のサスペンスものを手掛けてきた作者ならではの心理的描写が際立つ。登場人物の関係性はアントニオーニが監督した「情事」にも通じ、シネフィルの小池真理子があの映画をモチーフとしたように思えなくもない。本作の主題とも言える「愛の不毛」を撮り続けたフィルムメーカーがアントニオーニであることを考えれば、両者の繋がりが見えてくる
世の中に溢れる数多の「愛」のなかに、まやかしではない真実の「愛」は一体どれくらい存在するのか。永遠に手には入らないと知りながらも、それを求めて止まな -
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全体のペース配分を上手く調整してゲームを作っていく先発完投型のピッチャーが長編小説の書き手とするならば、ショートイニングで自分の持ち味を最大限に活かし、チームを勝利へと導くクローザーは短編小説の書き手に例えられるかもしれず、前者と後者とでは、心構えや準備に始まって様々な部分で結構な違いがあるはずだ。そう考えると、数々の優れた長編を手掛ける一方で、短編の名手とも謳われる小池真理子は誠に稀有な才能を有す作家と言っていいのかもしれない
表題作「妻の女友達」は89年に日本推理作家協会賞(短編部門)を受けたもので、エッセイストとして文壇にデビューした著者が、謂わば作家として評価された初めての小説。一見 -
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別に不倫を美化するわけでもないし、肯定する気もないが、本作における志摩子と正臣の、常識や世間体に対して真っ向から抗う「本気」の姿勢には、或る種の潔さが窺え、四十路を過ぎて尚、まるで10代の若者みたいにストレートな気持ちで人を愛せるふたりがとても羨ましく思えた。彼らのベクトルが、死を選ぶといったネガティヴなものではなく、ポジティヴな生のパワーに満ち溢れていたのが特長的で、それを象徴するかのようなラストシーンは印象深い
密かな関係が段々と露わになり、やがてお互いの家庭へと波及していく様子はとても生々しい。志摩子の存在に惹かれ溺れる正臣の言動が実にリアルで、小池真理子が男のサガを描ける数少ない作家 -
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小池真理子さんのホラー短編集。
「面」
「森の奥の家」
「日影歯科医院」
「ゾフィーの手袋」
「山荘奇譚」
「緋色の恋」
それぞれ、ホラー部分だけでざわざわではなく、全作品に男女関係(多くは男性の不貞)のざわつく感情と共に読ませてくださいます。
しかもこのうちの何作かは、見える方だったらしいお母様からの言い伝えがあるらしく、再びざわざわ。
そして、何が怖いか書ききらないところが、よろし。
解説の東雅夫さんの肩書きにアンソロジストとあり、アンソロジーを編纂する者という言葉があるらしい。
確かに最近アンソロジーが増えた。増えすぎて重複している作品も見かけるけれど。
東さんは、「時代の評価が定まった -
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大人の愛、日常に潜んでいそうな心かき乱される7つの短編からなります。
◾️鍵
死んだ夫から見つかる鍵をめぐる物語。夫への愛おしさと次の世界への旅立ち。ドキドキします。
◾️木陰の家
愛人へのくるおしい心と父親への思い。複雑に絡まり、虚しさが込み上げてきます。
◾️終の伴侶
何の面白みがなくて別れた夫との結末。人生の最後に孤独であることへの慟哭に感動です。
◾️ソナチネ
ピアノ練習曲ソナチネ演奏中におこる熱情。心の動き、燃え上がる激情の描き方、臨場感が凄いです。ここで終わり?と言いたくなる短編。
◾️千年萬年
マッサージを巡る女性の抑えられない気持ちが詳細に描かれていますね。性描写までいかないギ -
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【2024年10冊目】
ホラー小説のアンソロジー!1作目から怖くて、「どうしよう寝れない怖い」となりましたが、いろんな作家さんのホラー小説が味わえて、結果オーライでした!
1番怖かったのは、やはり「浮遊する水」でしょうか。「仄暗い水の底から」も拝読したことがあるので、多分読んでるはずなんですが、当然のように覚えてなくて、恐怖再来でした。今でもCM覚えてます、蛇口から髪の毛出てくるやつ。あれようお茶の間に向けて流してたな。
「猿祈願」もぎょっとする話で、あんまり想像しないようにして読みました。因果応報なのだろうか、でも子どもに罪はないのに…。
「影牢」はさすがの宮部みゆきさん!といった文体