山田風太郎のレビュー一覧
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陸奥の爆沈をテーマにした「戦艦陸奥」他の短編小説集。文章がややレトロ調で、時代がかって
いる感はあるものの、戦時中の世相がよく描かれている。
陸奥の爆沈の原因は諸説あるが、乗組員による放火、爆破説が有力のようだ。当時の海軍では
下士官による水兵の私的制裁が日常化していたとか。これを恨んだ水兵が犯行に及んだのではな
いか、という説が有力で、結局千人以上が亡くなった。小説では別の原因になっているが、死と
隣り合わせの戦時下、ファシズムの嵐が吹き荒れる日本では、みんなまともな精神状態ではいら
れなかったのかもしれない。
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Posted by ブクログ
短編集。表題作「夜よりほかに聴くものもなし」も連作短編集だが主人公と〆が共通している以外設定に連続性はないのでどこからでも読んでいい短編集である。
どれも面白いがテーマが強すぎて小説としての枠を通り抜けている作品もある。どれも重苦しくなかなか読み進めなかった一冊。そもそも物理的に重く持ち運ぶのに苦労する点もあった。
この中で一番出来がいいのは跫音だと思う。
時点で黒幕と吹雪心中。
以下メモより
「跫音」
善人である男が発作より悪人を絞め殺した。新聞報道に追い詰められ野次馬の冷たい目、妻・愛人・依頼主にも見捨てられ発狂し世間様に申し訳ないという話。
何より怖いのは群衆の冷たい目。そこに本当の悪があるという山田風太郎が常々描いているテーマの一つ。かなり暗い。
「とんずら」
結婚詐欺師の夫と美人局の夫婦に50万という大金を騙し取られた男の話。
「不死鳥」
45歳の時15歳の少女を自分の手で育てて理想の女性を作り上げた教授が老いを自覚し"身を震わせ魂に火を灯すため"に近所の少年を性的に勧誘させるよう女性に指示をするNTRらせもの。
この女性の生命力と美しさを讃える一遍。
「吹雪心中」
ふと出会った二人が不倫旅行にでかけた先で吹雪の旅館に閉じ込められ、なんとかして脱出しようともがく内に互いのエゴが見えていきどんどんその人間性の汚らしい部分が露呈していく話。
「黒幕」
傍観して助けようともしない人への批判が強い。とてもできが良く野次馬の恐ろしさが身に迫る。
「無関係」
今のネット上で叩く人々そのものだ。この話は不注意から百数十人が亡くなった鉄道事故の被害者の家族に対して全くの無関係でありながら悪口をいい冷たく弄ぶ理髪店の家族に、これまた無関係な青年が義憤で「不注意による事故を体験させる」という嫌がらせを仕掛ける話。
この事件には関係のない野次馬の冷たいあしらいに怒りを覚えている山田風太郎のメッセージがかなり強くでている。
「夜よりほかに聴くものもなし」を通して
最終話ですべての作品がまとめ上げられ1作品として完結する予想・期待は外れた。
最終話も罰しきれずどこに罪があるのか不明確な犯罪を取り扱った連作の一部だった。
良い作品もあればあまり出来栄えの良くない作品もある。中でも税務署を扱った話は特に出来栄えがわるく税務署の批難で作品の大半を占めている。
十分面白い作品だが期待以上ではなかった。空気が重く読んでいて暗い気持ちになった。 -
Posted by ブクログ
幕末に活躍した大立者が明治の元勲となり、その妻達も大いに活躍していた時代。
だいぶ前の作品ですが、さすが山田風太郎、面白い!
若き日の山本権兵衛が陸軍中将・西郷従道の命で、大臣らの妻を訪ねて歩くという連作短編。
鹿鳴館を建てたものの、舞踏会への出席者が少なく、特に女性が足りないため、大山捨松とともに、説得してほしいというのだ。
大山巌の妻の捨松はアメリカに長く留学していたから、舞踏会もお手の物。
でも、抵抗を感じる女性も多かったんですね。
明治政府の主要な人物はほとんど、花柳界の出の女性を妻にしていました。
もと芸者とか、そういう社交に慣れた女性。
当時の政治は、欧米の見様見真似。外国から来る政治家は夫人同伴で、それを迎える方も夫婦で顔を揃えなくてはならない。
深窓の令嬢では務まらなかった、と。
登場するのは井上馨、伊藤博文、山県有朋、黒田清隆、森有礼、大隈重信、陸奥宗光、ル・ジャンドルの奥方たち。
伊藤博文は遊び人で、奥様もそれ相応の意地を見せます。
黒田清隆は暴力をふるう男だったが天才的なところがあり、おとなしくなった後は輝きがなくなったとか。
欧米に憧れて万事西洋風に暮らし揶揄されるほどだった森有礼の家庭の、思いがけない落とし穴。
ル・ジャンドルと結婚したが外国人と相容れず、子を手放した妻の切なさ。
山本権兵衛自身も、娼婦を見初めて海軍仲間と拉致したというとんでもない結婚だったのですが、熱愛ぶりには胸を打たれます。
娼婦といっても、身分を失った侍の娘がやむなく店に来たばかり。
冒険譚といってもいい様々な結婚のいきさつや、その後に起きた事件、夫婦仲のなりゆき。
現代では考えられないこだわりも面白く読めました。
明治の政治家もそれぞれに違うタイプの大物で、破天荒。
とにかく奥方たちが気丈で賢く、たくましい。
作者が女性たちの運命に深く共感し、その強さをたたえているのが印象的でした。
どれぐらいが実話で、どこまでがありそうな話で、どこからが完全な創作なのかわかりませんが。
前々から聞き知っていた事実からして、十分ありそうな話が多いのかなと思います。