【感想・ネタバレ】妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクションのレビュー

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Posted by ブクログ

 中国の古典をもとに、美姫たちが織りなす凄惨隠避な怪事件を描く伝奇ミステリー。

 読み応えのあるボリュームでしたが、一気に読まされてしまいました。

 展開は、探偵もののミステリーという形はとっているものの、それだけだけくくれない、まさに奇書を作者がさらにアレンジして一大奇書に仕上がっていると思います。

 形式は連作短編で、どれも淫靡な世界が描かれており、怖いもの見たさから目が離せませんでした。

 人間の業の深さを感じずにはいられませんでした。

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2021年09月04日

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ネタバレ

初めて読む、忍法帖シリーズ以外の山風作品。

絶世の美女だけど恐ろしいほど嫉妬深く、あの手この手でライバルたちを葬っていく主人公・潘金蓮。
ただの毒婦かと思いきや、主への愛情は誰よりも深いし、度胸も愛嬌もあって、読むほどに魅力的になっていく。
読み終えた頃にはすっかり虜になって、殺されてもいいからこんな女に会ってみたい!と思ってしまった。

潘金蓮以外の女性もそれぞれが他人には負けないチャームポイントを一つずつ持ってて、色とりどりの愛憎劇が楽しめた。
その上、奇想天外なミステリー小説としても読めて、山風の懐の広さに脱帽。
是非他のミステリー作品も読んでみたい。

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2013年09月25日

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グロテスクだが読んで良かったと心から思える本。現実性という意味では無理のあるところもあるが、そんなものもねじ伏せてしまうぐらいの迫力がある。
水滸伝や金瓶梅を読んでいるとより感動が大きいので事前に読んでみるのをおすすめ。

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2013年08月18日

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ネタバレ

金瓶梅を種本にしたミステリー。

いつも殺人犯が同じ、というミステリーは見たことがない。きっと書いたとしても妖異金瓶梅のパクリと思われてしまうからだろうと思う。

金蓮のキャラが立ちすぎて怖い。足がでかいと言い返したいがためだけに2人殺したり、いい肌の臭いのする妾をクソまみれにしたりと、全体では自分が勝っているのに、他人に優れた部分がひとつでもあることが我慢できない、まさに女人大魔王。

一番怖いのは、すべての行動の動機は西門慶への純愛から生まれていること。

金瓶梅の原作は途中で投げたが、水滸伝はまた読みたくなってきた。義でつながる異能の悪党どもという話はこころが踊る。それ忍法帳シリーズだった。

もともと水滸伝のスピンオフが金瓶梅と解説を読んで知った。

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2013年06月23日

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恐ろしい一冊。
個人的オールタイムベストランキングに入る。
ミステリとしてこの趣向は考えたことあるけど、それをこれほどの出来で達成する人は他にいるのかしら?

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2013年06月05日

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山田風太郎作品が好きで購入。
己の欲望に忠実に行動する潘金蓮には、最初こそ「嫌な女!」と思わされるのですが、一遍読み終わる頃にはどうやら此方も彼女に魅了されるのか「仕方のない人だなぁ」と応伯爵と一緒に苦笑してしまいます。
応伯爵のキャラクターもとても魅力的で、探偵小説好きとしてはとても楽しめる一冊でした。

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2013年05月16日

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ネタバレ

中国四大奇書のひとつ「金瓶梅」を基にした連作短編ミステリー。
怠惰で醜悪で妖艶な欲望渦巻く魅惑の世界で、ユニークなトリックが披露される良質な一冊です。

探偵役が決まっているだけでなく、本作では犯人役も毎回同じ人物に決まっているのがおもしろい。
同じ人物が事件のきっかけを作り、同じ立場の人間が被害者となり、同じ犯人が罪を犯し、同じ探偵役が真相を見抜くという展開の繰り返しですが、毎回凝ったトリックとエロティックな展開がおもしろく飽きやマンネリはありませんでした。

最後は作者にまんまとしてやられて脱帽。

【赤い靴】どろどろとした女たちの愛憎劇も楽しいですが、両足を切断された二人の死体、足フェチの男、夢遊病の女と事件も不気味で楽しいです。見取り図が添えられたロジカルで良質なミステリー。しかし何よりも動機が凄い。

【美童と美女】濃厚すぎて胃もたれしそうなエロティシズム。女同士、男女だけでなく男同士の嫉妬も絡まって愛憎、欲望がぷんぷんと臭いたってます。西門慶は本当に最低な人間なのですけれど、どこまでも欲望に忠実な姿に何故か憎めない。

【閻魔天女】このトリックで西門慶のアレを利用したのにはびっくりしました。そんなばかな。西門慶って凄いんだな。

【西門家の謝肉祭】色欲に溢れかえっていた西門家に食欲まで加わって欲望の濃密さにむせ返ります。なんとなく予想できた展開ですが、食道楽の夫人の旺盛な食欲を思い出すと、豚とか牛とかを連想してなんとも言えない気持ちになりました。

【変化牡丹】金蓮が体張ってます。入れ替えトリックは他にもありましたが、これが一番無理やり。

【銭鬼】色欲、食欲と出て金銭欲です。あんな殺され方は嫌だな。

【麝香姫】今度の相手をどうするかと思えばよりによってあんな方法をとるとは…。西門慶可哀そう…。「わたしは悪い女なのかも」とかいってる金蓮が可愛いです。

【漆絵の美女】意気消沈している西門慶に一人づつ声をかけている場面がおもしろいです。あんなに女がいながら真に心に寄り添って慰めたのが伯爵で、我らが金蓮は何を言うのかと思えば爆弾発言しました。かっこいい。「美童と美女」が悲惨な話だったのでここで救いがあるかなと思いきや、もっと後味が悪かった。

【妖瞳記】これはトリックは分かりやすいですが、それよりも品のある美しい女性の秘密の趣味というのが良いです。麗華さん好き。

【邪淫の烙印】ゾオラ姫がかわいい。このトリックはおもしろい。怪僧との対決も楽しいです。

【黒い乳房】このへんにくるとあの人の存在感が大きくなって信用できませんのでトリックは気付きやすい。西門慶が聴覚や嗅覚もコントロール出来る超人になってて笑いました。

【凍る歓喜仏】愛する男にこの策略を巡らせた金蓮は凄い。西門慶がああすることを見通していたということを気にも留めないほどの愛情ですが、純愛と同時に利己愛です。西門慶は最後まで彼らしくて良かった。

【女人大魔王】このトリックはすごいです。状況をも巧みに利用し全て自分の思い通りに事を運ぶ。金蓮の執着と怜悧さが際立っています。

【蓮華往生】淫婦と呼ばれた金蓮がこんなにも愛に殉じた最後を遂げるとは。金蓮と伯爵の二人が主要な役割を務めてきた展開であったのに、この二人の関係がこんな形で終わったことに胸が痛みます。

【死せる藩金蓮】春梅の真の姿と金蓮との関係は分かっていたつもりでしたが、その情念の深さには驚きました。一つの街を滅ぼすほどの動機、その方法、共にとんでもないです。
「死せる藩金蓮」というタイトルながら、彼女を愛した誰もが死んだ彼女を「生きている」としているのが金蓮の凄さを物語っていたようです。

金蓮には多くの人物が想いを寄せていますが、その中でも武松という豪快な男は金蓮の相手としては遜色ないです。しかしあえてこのビッグカップルではなく伯爵を中心に据えているのが、金蓮を取り巻く人間模様を俯瞰的に見せ、かつ哀愁漂う切ない幕切れを演出しました。
他の何を犠牲にしても欲しいものを手に入れようとした金蓮と、結局誰も犠牲に出来ず何も手に入れられなかった伯爵という二人の愛し方は全く正反対であったように思います。
連れ去られる金蓮を見送るときの、自由人である伯爵には似合わない執着と愛情が哀しすぎる。

これだけ欲望にまみれたばかばかしくも凄まじい男と女の愛憎劇で、淫婦・藩金蓮という強烈なキャラクターを描きながらも、最後には一人の男の一途な愛情で締めて感動させてしまう作者の手腕に敬服です。

【人魚燈籠】登場人物が違いますが「邪印の烙印」と同じ真珠盗難事件です。しかし別の展開をみせており、わたしはこちらの方が好きでした。

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2012年08月30日

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全部は読んでいないものの山田風太郎作品が好きで手に取った本。忍法シリーズが基準だったので文体が「普通」。でも、読み応えはありました。
金瓶梅といえば中国の古典らしいですが、金蓮が悪女な一方、真っ当。むしろイッちゃってるのは西門慶。
そして応伯爵が悲しい!!

ざくざく人は死にますが、忍法ではなく、「嫉妬」というのが話としては好感が持てました。

また、この本を知る大分前には【異説金瓶梅】という舞台を観まして、登場人物が役者さんたちのイメージで読めたのも、この本にのめり込んでしまった理由かと思います。

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2012年07月21日

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自分の欲望の為なら殺しも厭わない、欲望に果てが無くて、底無しに愛を欲する女魔王。
にも関わらず男女問わずに、その心を捕らえて離さない、非常に蠱惑的な魅力を持つ潘金蓮に飲まれた~。
飲まれた胃の腑から這い上がれないよ。

その金蓮に囚われの放蕩物な応伯爵が探偵役と言うのも、面白かった。
決して、外に漏らさない代わりに欲を少しだけ満たしてもらう。
だから、彼は欲を満たして欲しくて、また謎を問いてしまう。
凄い蟻地獄。
何回読んでも、その度に囚われてしまうんだろう。
あぁ~面白かった。

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2012年06月30日

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アクロバティックなミステリの極致。潘金蓮をめぐる武松、鳳春梅、そして応伯爵の「愛」のかたち。なんど読んでも、読むほどに、うちのめされる。

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2012年06月26日

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この趣向で本作以上の作品は出てこないのではないだろうか?

短編それぞれのトリックや動機の凄まじさもさることながら、キャラの魅力が存分に発揮され、後半にかけて特異な物語へ変貌するキーとなっている。味わったことのない深い感情へと誘います。

エログロ盛りだくさんであり本格ミステリ。と一括りには出来ない美しさに気付くのであった。

華文ミステリが身近なこともあるし、ぜひ今のミステリ読者も読むべき。このテーマは現代人にこそ響いてほしい。

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2018年10月29日

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ネタバレ

犯人はヤスならぬ潘金蓮。

浅学菲才の身ゆえ『水滸伝』の武松の名こそは知っていたものの彼の伝で語られる豪商西門慶とその第五夫人潘金蓮はとんと知らず、まして水滸伝と並んで中国四大奇書とされる『金瓶梅』がそのスピンオフ小説でありタイトルの「金」がその潘金蓮の金だと知ったのは本作の読後の事であった。

て本作はその『金瓶梅』をベースにその官能性を失わぬまま大胆にアレンジした16篇からなる短編連作ミステリーである。

作中で度々「稀代の大淫婦」「妖婦」「毒婦」だの散々な…恐らく水滸伝や金瓶梅そのままの評で呼ばれる潘金蓮が傍から見れば些末な出来事で癇に触れ、その相手を死なせる、死ななくとも酷い目に遭わせ、それを西門慶の幇間であり悪友にして本作の探偵役である応伯爵がトリックを見破りながらも彼女にべた惚れであるがゆえに役人に突き出すような真似はせず見逃し、潘金蓮が婀娜と微笑んで幕を閉じる短編が11と続く。
3篇目ともなると事件の動機となる定型化されたやり取りに「あっ…(察し)」となり、案の定な事件が起きてハイハイ犯人は潘金蓮潘金蓮ワロスワロスとなる。フーダニット?ホワイダニット?何それ美味しいの?

…が、しかし。12作目から物語は怒涛の展開を見せ始め、短編連作と思われた本作は実は一本の筋の通った長編であり(一本の長編と番外編の短編一作と言っても差し支えない)狂気とエログロはただひたすらな愛情であり、そして愛欲と憎悪が渦巻き果てはソドムとゴモラと化す「金瓶梅」とは潘金蓮だけを指す訳ではなかったのである…。

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2018年10月04日

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