あらすじ
東京を騒がせる怪事件の影で、知略によって警視庁を出し抜いてきた元江戸南町奉行の一派。業を煮やした大警視・川路はとうとう直接対決に踏み切る。同じ頃各地では、反政府派の叛乱により不穏な空気が漂っていた。そんな中ついに西郷蜂起す、との報が入る。その裏に隠されていた大からくりとは? そして近代化を巡る争いの帰趨とは…。華やかな明治に潜む闇の中を流浪するものたち。その哀切を描く、山風明治群像劇の一大傑作。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
無数の有名人、パロディ、刊行当時の時事ネタを注ぎ込んで語られる山風流明治史。下巻では、上巻でコケにされ続けた警視庁側の逆襲がついに始まる。生き生きと描かれた明治に生きる人々の姿、特に権力に抗う側の人々の生きざまに胸が熱くなる。ひとつの時代の終わりを感じさせるラストの切なさも素晴らしい。
Posted by ブクログ
すごすぎる。嵐の中で必死にしがみついてゴールにたどり着いたような感覚だった。
どこまで史実なんだ?と思うものが大体史実でびっくりさせられる。
とくにむささび吉五郎の、吉田松陰の手紙を島流しにあってもずっと持っていた、(河鍋暁斎のすんごい絵はオトリだった)という逸話が面白かった。
河鍋のところはフィクションだとしても。
ずっとフンワリと対峙してきた、もと江戸奉行の駒井の御隠居様と兵四郎vs草創期の明治警察・川路とその部下たち(けっこう極端な過去を持つ人もたくさんいた。刀を失った人々のいく先がここになりうるとも言えるなあ)。
別に正面からの対戦でもなかったけど、こんな形で決着がつくとは。
消えゆく江戸と明治の対比も面白いけど、川路という人の悲劇や二面性に迫った内容が面白く読めた。
明治断頭台でもサブ主人公だった川路は山風のお気に入りなのかな。
私も、飛ぶが如くの冒頭で、ヨーロッパ列車内で××してたシーンからずっと川路が大好きです押忍。
故郷薩摩の大好きな先輩たる西郷と、直属の上司の大久保が袂を分かったこの悲劇。
西南戦争がもたらす大きさよ。
明治、たった十年で、もうこの揺れ具合。
明治維新というものがいかに、めちゃくちゃで、やぶれかぶれだったか。
その裏で辛酸を舐めた人々のその後。
特に朝敵となった東北側での苦労がなん度も描かれる。
それが太平洋戦争向かった軍人たちを多く輩出した土地であるというのも、なんとも胸が痛い事実だ。
川路率いる警察がうじゃうじゃスパイをばら撒いているのもなんとも怖い。
上巻に比べて、内容がまとまってきて、読みやすかった下巻は、激動のラストもあの寂しげな余韻も、本当に面白かった。
浅井警部はなぜあの道を選んでしまったのかも含めて、明治という、まるでハリボテのような巨大な像の影に隠れていった人々を、ちゃんと物語に残そうとした山風のあたたかさを思う。
ちなみに自分用メモ
警官たちの身元は
加治木直武→史実?よくわからず
藤田五郎→新撰組の斎藤一
今井信郎→龍馬暗殺?の京都見廻組
菊池剛蔵→桜田門外ノ変の海後嵯磯之介
油土杖五郎→創作キャラ
そういえば、上巻だったか、将軍のお庭番vs天皇のお庭番とか面白い工夫だなあと思った。あのキャラはさすがに創作か?
ますます山風の明治ものがたくさん読みたくなった!
上巻では半七捕物帳に厳しかった山風。
半七は大正時代の作品だもんなあ。
警視庁草紙は74年の作品だそうです。確かに半七はずいぶん昔のことですね。
Posted by ブクログ
面白かった。
敵の正体がはっきりしてくる下巻の方が読み応えがあるね。
描かれている人たちは何も悲しい。
でも巻末までの読後感は決して暗くなくスッキリしたものだ。作者の本はいくつか読んでいるけど個人的にはこのシリーズが最高だと感じているよ。
Posted by ブクログ
時は流れる。古いものを含みつつ、新しいものを生み出しながら。自分の位置を測りつつ、己の行く道を決めて行かなければならない。大警視や元南町奉行のような深謀遠慮は持ち合わせていないけれど。