あらすじ
明治6年、征韓論に敗れた西郷隆盛は薩摩へ。明治政府は大久保利通を中心に動きだし、警察組織もまた、大警視・川路利良によって近代的な警視庁へと変貌を遂げようとしていた。片や、そんな世の動きを好まない元同心・千羽兵四郎と元岡っ引・冷酒かん八。2人は元江戸南町奉行・駒井相模守の人脈と知恵を借り、警視庁に対決を挑んでゆくのだが……。開化期の明治を舞台に俊傑たちが東京を疾走する時代活劇譚!
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他の読者諸氏も書いていらっしゃるが、幕末の動乱から抜け出ていない江戸情緒を懐かしむ人々と、地方の成り上がり者が築いた明治政府、その官権の犬たる警察との攻防劇がみごと。
ミステリー自体はあっとうならされるものではないのだが、まあ、時代劇の人情を楽しむもの。
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山田風太郎作品、初めて読みました。こんなに面白かったとは!
近代化を進める明治初年の警視庁と、御一新が気に入らない元江戸南町奉行所の面々との知恵比べ。私たちは「明治維新」により江戸から明治にスパッと時代が切り替わったように思ってしまいがちだけれど、人の心や社会というのはもちろんそんなものではなく、新しい時代と古い時代のはざまで人は揺れ動きながら日々を生きているんだな。
脇役として西郷隆盛から新撰組斉藤一まで綺羅星のごとく登場し、いい意味であっという間に読める、歴史・娯楽ミステリの連作集。
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綺羅星の如く無数の有名人を登場させ、虚実入り混ぜ語られる、ありえたかもしれないもうひとつの明治史。背後にうかがえる膨大な教養や緻密な時代考証には、ただただ圧倒される。
謎解きに”元奉行所VS警視庁”という対立構造を導入することで物語に奥行を増しているのも見事。
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とにかくツルツルッと軽快に読めてしまうのだが、この史実とフィクションを幾重にも織り交ぜるのはなんという技巧であろうか。
もともと気になっていた作家だったのだが、このたび渡辺京二の推薦からたどりついた。なるほど、渡辺京二がこれを好きだったのはわかる。汽車も横浜までしか走っておらず、銀座も煉瓦造りを建ててみたもののまだ中身が伴わない、丸の内あたりは焼け野原、元武士が刀を差して歩いている。そんな近世と近代の汽水域みたいな明治初頭が舞台になる。
また、泰三子が川路利良を主人公に新作を描いているようなので、そちらも読んでみよう。
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明治の初め 江戸が残り明治になり切れていないグレーゾーンの世界。徳川への思いが残る人たちが、明治の警察に対抗する。学校で学んだ時代背景が、生きている世界に変わる。過渡期の社会が彷彿としてくる。過渡期の私はどうしよう
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拙者、山風の明治ものクロスオーバー大好き侍なので、こちらにも手を出す。
本当は幻燈辻馬車よりこっちを先に読むべきだったかも。
とりあえず上巻を終えての感想は、
早く読み切らないと、登場人物が覚えきれない!です!
内容としては、明治の大警視の川路とその部下たち(藤田五郎もいるよ)vs江戸の警察たる奉行さまとその手下たちの推理&力技バトル。
そこにあちこちの有名人やその親が登場。
江戸と明治は本当に地続きなんだなあ、そこに大正昭和が連なっているんだなあと、まあ当たり前のことだが、それをしみじみ感じた。
明治の軍人官僚が薩長土肥だったけど、冷遇された佐幕側の藩士たちの思いは(とくに会津、越後、加賀)、改革派だったのに内ゲバで全然活躍しなかった水戸藩は、そして忘れ去られた奥羽から昭和の軍人が多く輩出された理由、と時代も人も縦横無尽で知識がぐるぐる回されていく。
冒頭に少しだけ登場する、半七捕物帖の半七にも、偶然に頼りすぎ、と一喝する山風。笑わせてもらった。
上巻では幻談大名小路と、幻燈煉瓦街面白かった。
東條英機の家が会津の能楽師だったことも初めて知る。
ラストに出た冷血漢の鳥坂は架空のキャラか。
この人の物語は、架空なのか、史実なのか、いつもなかなかわからない。
山風の視線は、江戸に置いて行かれた人々の側にある。
これからどうなっていくのか楽しみ。
たまに、あたおか性快楽マシーンみたいな女性キャラが、一ミリも感情のない道具として登場するのがキツイ。
これがまあ山風ワールドの醍醐味でそこがないと解決しない話も多いのですが、今の私にとってはそれが最大の雑音でした。
読んでいると、たんげいすべき、たんげいすべからず、とかが口癖になりそう。
ちらっと読んだ最近の漫画バージョンの兵四郎は、色気お兄さんという感じで、私のイメージと違ってて笑った。