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”誰カガ罰セラレネバナラヌ”――ある死刑囚が残した言葉が波紋となり、静かな狂気を育んでゆく。戦争が生んだ突飛な殺意と完璧な殺人。戦争を経験した山田風太郎だからこそ書けた奇跡の傑作ミステリ!
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Posted by ブクログ
法月綸太郎さんと若林踏さんのトークライブ、ワットダニットの回で話題にのぼった本。 とある青年の堕落劇かと思いきや…… 冒頭と真相をうまく繋いだこと、とある人物の怪演技首を捻りながら、しかし、どんな高尚な理由をつけたとしても結局は「羨望」なのかもしれないなと。氷河期世代を起点にその上下世代に向け...続きを読む、鬱屈とした感情を育てている人はいるのではないか。物語の本当の主人公の予備軍はたくさんいると私は思う。
これほどまで怨念に満ちて、それでいて間接的な殺人があるだろうか。さきの戦争そして戦争後の「幸せな」時代への呪詛。 15歳で日中戦争、19歳で太平洋戦争を経験した著者のミステリー。 この本は一生の記憶に残る。 「太陽黒点」、太陽でもっとも低温のシミのような場。
この小説の魅力は、最後の真犯人の独白シーン、この迫力に尽きる やはりミステリは、種明かしシーンがいちばん盛り上がらないとね あらすじ等は目にしないで読むことをすすめます(ネタバレに配慮しないあらすじ紹介もあるので。廣済堂文庫のほうはあらすじでネタバラシしてます要注意)
ああ素晴らしい。 純文学かと見紛うほどの綺麗な文体とストーリー展開。 しかしそれでいて本作は第一級のミステリでありノワール小説なのだ。 いままでこんなにも規模の大きい◯◯◯殺人(読めばわかる)は見たことない!! この結末だけをとって、やれリアリティがないだの、実現不可能だとか言うのは全くの見当違...続きを読むいだろう。 作者がやりたかったのはこの結末ではなく、この時代に行きた人達の慟哭を文字にして伝えることではないだろうかと僕は思うのだ。 その過程でミステリの体裁をとってしまっただけのこと。 まぁ、そこが山風らしいのだが… 正直、平成生まれの僕は登場人物たちの気持ちを理解できたとは言えない。 きっと不可能だろう。 しかしこれだけは確実に言える。 本書は傑作であると。
昭和30年代後半、苦学生の鏑木はバイトで訪れた屋敷で社長令嬢と出会う。鏑木は特権階級への反抗の意思から、彼女に近づくのだが…… 他の本や映画のalwaysではこの時代は貧しくても希望があった時代だとか、頑張ればそれが給料に反映された時代だとか、どこか希望的な側面で語られやすいのですが、この小説...続きを読むに出てくる登場人物たちは、将来への希望をなくしていたり、時代に疑問を持っていたりしています。 敗戦からおよそ10数年、復興や高度経済成長のイメージが強い時代ですが、その時代の暗部というか、語られにくいところを見事に描き切った作品だと思います。 中でも印象的だったのが鏑木が将来への希望を持てない様子でした。先に書いたようなイメージの強い時代だったので、この時代にこういう若者がいたのだな、という意外な気持ちが浮かんでくるとともに、とても感情移入してしまいました。彼と同年代で、現代も希望が持ちにくい社会であるからかもしれません。 青春小説としても一級品の出来! 特権階級に近づくため自分を見失っていく鏑木を心配する容子の描写も感情表現もとても上手く引き込まれました。また自分を見失っていく鏑木の描写も読んでいて切なかったです。 そして最後に明らかになる狂気の存在……。時代の闇を凝縮したような黒さを感じるとともに、でも一方でとてつもなく痛切な叫びを聞いたような気にもなりました。この狂気と叫びの前には何者も無力にならざるを得ない、そんな風に感じてしまいます。 読後はしばらくぼーっとなってしまいました。それだけ、この叫びが自分の中におおきなしこりを残したのだと思います。幕引きも鮮やかでした。その後について語りすぎないことで、読後の深く切ない余韻が心にじっくりと沁み渡っていったように思います。
再読。苦学生・鏑木明はアルバイト先で社長令嬢・恵美子と出会い……。 甘く切ない恋愛小説風の流れをある独白によって一転させ、物語の真の構図を浮かび上がらせる手腕が見事。そこに込められた戦後日本への怨念も戦中派の著者ならでは。 やっぱり廣済堂文庫のネタバレはひどかったなぁw
やっと、初山風。期待も大きかった半面、乱歩や横溝あたりを殆ど楽しめない自分には、きっと山風も…みたいな不安もあったりして。で結果、概ね感じた不安の通りだった。やっぱり自分、古めかしい会話とかを根本的に受け付けないのですね。古い貞操観念とかも含め、基本的に自分とはあまり相容れない世界観でした。
山田風太郎といえば忍法帖。なのだけれど、あえてこれを読んでみた。かつてどこかの本屋で偶然見かけて以来、ずっと気にかかっていた本。何年か経った今再び出会って読んだのも、すべては天の巡り合わせだろうと思う。今このタイミングで読むべし、ときっと誰かが言っていたのだろう。 さて、なんの予備知識もなく読み始め...続きを読むてみたけれど、これはかなり衝撃的だった。わりと軽めの口調で語られる物語の滑り出しからは想像もつかないところへ最終的には連れていかれる。連れていかれてしまう。「堕落願望」「破滅願望」とでも言うべきものを描きながら、最終的には、そんな甘っちょろいこと考えてるお前らは平和ボケ野郎共だな!と糾弾されてしまう。すでに古くさくて大時代的な物語という印象もあるけれど、現代では及びもつかない時代への憎悪を残す一冊だった。江戸川乱歩の「芋虫」を思い起こしたのは短絡的だろうか。最終章の語りは圧巻です。
昭和30年代後半(=1960年代前半)の東京で、 アルバイトしながら大学に通う青年が、 金持ちの娘と知り合い、ブルジョワの毒気に当てられて、 勤労や苦学には意味がないと思い始め、 上手く立ち回って「逆玉(の輿)」に載った方が利口だ、 と考えるようになり、周囲の人間を憎悪しながら野心を燃やす という筋...続きを読む立てだと思ったのだが……一杯食わされた。 なんという理不尽な苦悩、そして死(二重の意味で)! なるほど、これは戦争体験者にしか書けないだろうなぁ。 被害者もかわいそうだし、犯人も悲しい、 じゃあ誰が悪いのだと問えば「それは君たち読者だ!」と 指を突き付けられる気が――って、あ、それじゃ某「奇書」と一緒か(笑) 直接の関係はないけれど、そういえば、 山田風太郎と中井英夫は同年生まれの人だったと思い出し。 ところで、解説でも詳しく触れられていないが、 二転三転して決定したというタイトルは「磁場」のイメージからだろうか。 【付記】 読んでいる間、人間椅子の同タイトル曲が頭の中をグルグル回っていたが、 詞の内容は本書と特に関係なさそうです。
ラストの独白が全ての小説ではあるがそのほかの登場人物のその後も知りたかった。前半ひたすら落ちぶれていくキャラクターにページをめくる手が重くなった。
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