山田風太郎のレビュー一覧
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後に監獄の改良に努めた薩摩出身の若き有馬四郎助の物語。北海道月形の樺戸集治監の看守に着任した四郎助と、虐待異常者たちともいえる看守長たち、そして1000人を超える囚人たち。耶蘇教教誨師の原胤昭や医師の休庵先生。そして売られてきた酒場の女たちが時に絡む。
囚人たちの話を聞く四郎助は、監獄で起こる様々な事件をきっかけに囚人や看守たちの人生を誰かれの口から聞いていく。その人生や事件がそれぞれ強烈で破格なのだ。
しかし犯罪者たちの人生だ。殺人や強姦、裏切りが酷い。更に血飛沫が飛ぶ。それでも人情噺や男女の話を交えて、時にほろりとさせる。
のちに愛の典獄と呼ばれ、キリスト教徒となつた有馬四郎助は、上巻は聞き手に甘んじているが、下巻での活躍が期待される。これは怒涛の前フリだと思わ
れる。下巻では耶蘇教の神の奇跡 が起きるのか!
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ネタバレ自分内の山田風太郎ブームでこれに手を出す。
作者本人のお気に入りだったとか。
舞台は明治のごくはじめ、維新から間も無く、まだ社会がしっちゃかめっちゃかだったころ。
薩長土肥が支配する政府の腐敗も進む頃。
それらをなんとかするべく、邏卒(警察)を整えつつある、のちの大警視・川路利良をサブ主人公にして、架空の人物で美形青年・香月経四郎(史実の佐賀藩士・江藤新平の愛弟子である香月経五郎の兄という設定)が、捕物をする連作。
古来の弾正台を復活させ、水干姿で魔を斬る香月と、政府にパイプを持ち真面目実直な川路のコンビ。
フランスから断頭台を持ち帰り、ついでに首切り一家サンソン家の娘、エスメラルダも連れ帰る香月。
エスメラルダがイタコをして、香月とともに解決をみせる不思議な形式。
(最近、泰三子先生のハコヅメではないほうの漫画「ダンどーん」でもイケてる主人公だった川路がここでも活躍。飛ぶが如くの冒頭でみんなの心に焼きついたオモシロ人物。川路好きだ。)
弾正台と断頭台の言葉遊び。
川路と香月、どちらが多く、市井のトラブルを推理解決できるか、とお題が登場し、連作で解決していく。
ここから始まる香月と川路のワクワク捕物勝負!
…かと思いきや。
ええええーーー、終幕まで読んで仰天。
これはすごい。確かにすごい。
えっ、本当にこれ、このまま行くの?と何度も思った。
◯◯たちが1人ずつ退場する様は、まるで90年代のアニメ、セーラームーンの無印の最終盤のセーラー戦士、死す…!の回を彷彿とさせる。
やーーーーばい。これはヤバい。
エスメラルダも気の毒だけど、縫さん可哀想すぎるよ。
駆け抜けて駆け抜けるラストに言葉も無かったです。押忍。
明治になったから、と言って、何が変わるわけでもない。
江戸は江戸だし、山田浅右衛門が小伝馬町で斬首して小塚原に骸を捨てる。
何より人の心はそう簡単には変わらない。
明治の、のちの西南戦争にむけて、いろんな人物の運命の糸がより合う示唆も劇的でいい。
幕末の動乱、その後の混乱もずっと続いていたんだなあと思う。
いろんな人物がちらほらと顔を出す本作、遊び心も満載で面白い。
明治に詳しい人なら、もっともっと楽しめただろうな。高橋お伝、二葉亭四迷、内村鑑三ほかにもたくさん出た中で、準レギュラーぽく活躍した岸田吟香が面白かったです。岸田劉生の父で、さまざまな事業を興した立志伝中の人らしい。
ところで、エスメラルダのセリフ、全面カタカナはやはり読みづらい。
大事な推理ものの披露シーンなのだから、漢字+カタカナがよかったなー。 -
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ネタバレずっと読みたかった作品。
最初は久々の明治もので読みにくかったけど、展開の巧みさにどんどん引き込まれてあっという間に読んでしまった。いや、むしろ読み終わるのが惜しくて最後の方はわざと読むペースを落としたほどである。
山田風太郎作品の好きなところは、話のおもしろさ、飛び抜けた発想、読者を飽きさせない巧みな展開などはもちろんだが、何より風太郎独特の清々しくて切ない物語の閉じ方である。読後感をあえて言語化するなら、「卒業式の朝」だろうか。新しいスタートを感じさせる清々しさの中に、二度と手に入らない大切なものを失ってしまったような切なさがある。
本作もやはり、そのような終わり方で、心に残るものがある。そして、明治という、混乱した世の中で必死に生きていく人々の姿が鮮やかに描かれている。
心に残る一冊だった。 -
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ネタバレ※誰にも〜は廣済堂版で先日すでに読んだので、ここには、評判をきいて手にとった、同時収録の棺のなかの〜の感想を書きます。
すごく面白かった!
主人公が特殊な状況にいるのに、わりと普通の感覚を失わないので、そこに好感が持てた。
期日までに大金を使い切る、というテーマはインド映画にもあったなぁ。人間の夢だよね。
この場合は破滅的な理由から始まるので、主人公は鬼気迫る想いなんだけど、3年の期日はけっこう長くて、そのあいだに、感情が動く様子も面白い。
自棄になって、けっこうすぐに本心を明かしてしまったりする。
6人の花嫁たち、そのドラマ。どの女たちも一種の理想だし、みんな最後にはあっぱれの覚悟を見せてくれる。
主人公よりよほど男前なわけ。
速水の顛末は想像がついたけど、最後の台詞のどんでん返しは最高だな!
山田風太郎のストーリーテラーとしての力をこれでもかと見せてくれた本作、むちゃくちゃ気に入りました。
面白い設定だなーー。
この1500万は、今で言えば億単位なんだろうね。
男のロマンであるところの幻想的な、女と金と時間。
この世は淡い夢のようなものだ。
ラストで現実に叩き落されるさまは痛快でもあるし悲哀でもある。
オチの書き方も素晴らしかった。大満足。 -
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当初は、へー、という程度だった。
山風が推理物書いてるんだあ、松本清張以降に社会派ミステリが流行ったからこんなムードなんだあ、と思った。
三話目あたりから、いやこれは単なる社会派ミステリじゃないなと思った。
やっぱり山風が書いたらぐっと引き込まれるし、短編なのにすごい長編を読んだかんじになる。
書き方がうまいんですよ。
60年代の作品なので、さすがに古いというところもあるけど、日本人の本質は何も変わっていない。
犯罪の中抜き、声無き傍観者である大衆の持つ卑怯性、SNS自殺そっくりの状況など、普遍的な怖さがある。はっきり言えば日本人社会の怖さを書いている。
そういう意味では山風らしい。
この世は黒いし、これでもかと現実を突きつけるけど、八坂の逡巡の決め台詞に毎回少しの清々しさがある。
うまいんだよねー。
半七捕物帳の昭和版みたいなかんじ。