寛永14年(1637年)10月、島原の乱が勃発。翌寛永15年2月28日、天草四郎は討ち死にし、一揆勢も全滅した。
翌3月1日、幕府軍が戦勝の祝賀を祝う戦場跡にて、由比正雪と宮本武蔵は、女人の体が真二つに裂けて、死んだはずの四郎が蘇るという、摩訶不思議な光景を目の当たりにする。
時は流れて正保2年(1645年)3月、新陰流正当を継ぐ尾張の柳生如雲斎は、田宮坊太郎の転生を目撃し、転生への勧誘を受ける。
さらには熊本にて宮本武蔵転生に立会い、心が揺れ動く。
正保3年(1646年)2月、大井川にて、宝蔵院胤瞬は、8年前に死んだとされる荒木又右衛門と邂逅し驚愕する。
さらに又右衛門に同行していた四郎と立ち会うも、長年の研鑽を積んだ槍術が四郎の超絶の忍法にまるで通じず、敗北してしまう。
3月、江戸柳生家の柳生宗矩は病んでいた。彼は紀州大納言徳川頼宜が、由比正雪たる怪しげな輩と関わり合いになっているという噂の真偽を確かめるべく、三男の柳生宗冬に調査を命じる。
しかし宗冬は謎の入道に敗れ、気を失っている間に尻に「尾」の字を刻まれるという恥辱を与えられてしまう。
入道は如雲斎、尾の文字は「尾張柳生」の頭文字であろう。宗矩は胤瞬から魔界転生の法を聞き、おりくと交わり果てる。
胤瞬もまた割腹により殉死する。1か月後、転生した宗矩は如雲斎を一蹴する。
小雪は如雲斎に転生の意思を問い、如雲斎は転生を決意。さらに小雪は森宗意軒と転生衆を大納言に紹介し、現将軍家光への反逆をそそのかす。
四郎を除く転生衆6人は、大納言に同行し紀州藩へと赴く。
大和の柳生十兵衛の元には、紀州藩の三達人の娘、お縫、おひろ、お雛の3人の女人が修行にやって来ていたが、大納言の元に招かれ、別れることとなる。
だがよからぬ噂があったことで、父兄たる三達人が調べたところ、同様に招かれた藩の娘たちは転生衆たちに虐殺されていたという事実を知る。
三達人は三人娘を十兵衛のもとへと逃がすも、転生衆に殺されてしまう。
木村助九郎は十兵衛に、既に死んでいる4人の武芸者の名と、さらに2人いることを告げて息絶える。
もちろんのこと、名を告げることができなかった2人とは、柳生如雲斎と柳生宗矩のことである。※四郎のみまだ知られていない。
十兵衛は三人娘と十人衆を連れて、巡礼姿に扮した公儀隠密という名目で紀州を回ることを頼宜に宣言、事実上の宣戦布告である。
さらにおひろの弟である関口弥太郎が合流する。一方で宗意軒は、十兵衛を転生衆に引き込むべく、クララお品を十兵衛一行へと潜入させるという策を取る。
転生衆もまた、十兵衛に順番に傷を与えて遊んで行こうと提案する。五体を刻まれた十兵衛に、転生をそそのかすという作戦である。
さらに、大納言直属の牧野兵庫頭は、独自に根来衆を投入する。こうして転生衆と柳生十兵衛の戦いが、始まった。
山田風太郎の忍法帖シリーズで最も映像化されている「魔界転生」を、「バジリスク甲賀忍法帖」「Y十M柳生忍法帖」のせがわまさきが待望のコミック化。
島原の乱で徳川軍に信徒を皆殺しにされた森宗意軒が、忍法魔界転生で天草四郎や荒木又右衛門や宮本武蔵などの剣豪を復活させ、尾張大納言頼宣に天下取りの野望を焚き付ける。
木村助九郎から尾張家を救うよう頼まれた柳生十兵衛が、転生衆に立ち向かう展開を、尾張大納言頼宣と家光をぶつかり合わせて徳川家を滅亡させようとする陰謀劇、柳生十兵衛VS転生衆のスリリングな剣豪バトル、転生衆の仲間でありながら柳生十兵衛に接触している中で自分の十兵衛への恋心と十兵衛を転生衆に落とす任務の間で葛藤するクララお品の切ない恋心を絡めて描くストーリーは、妖艶で奇想天外な忍法帖の世界を原作に忠実に描かれていて原作小説を既に読んでいても満足するはず。
宮本武蔵などの十兵衛より強い剣豪と十兵衛との剣豪バトルは、柳生宗矩と十兵衛のバトルでは宗矩が長年欲していた新陰流秘伝書をエサに相手の虚を突いたり、田宮坊太郎との対決では柳生十人衆が人間丸太となり攻撃し坊太郎のバランスを崩した瞬間を突いたり、相手の虚をどのように突くかというスリリングな剣豪バトルが楽しめる。
荒木又右衛門との対決場所が「鍵の辻」だったり、宮本武蔵との対決場所が船島だったり、キャラクターのエピソードにオマージュを捧げた部分も楽しめる時代劇アクションコミック。