山田風太郎のレビュー一覧
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何冊目かの山田風太郎。ほんと素晴らしい。ほんとの物語作家だ。これを読んでしまったら、そのへんの小説なんて薄っぺらくて読めやしない。それほどに。
人間の醜さや狡猾さや情念や、様々な人間を描き出すこの物語たち。「誰にも出来る殺人」「棺の中の悦楽」の2編の短編連作が収蔵されている。どちらも面白いが、特に「棺の中の悦楽」にはやられた。序章から充分に興味を引き付ける舞台設定で幕を開け、途中のエピソードで人間の様々な在り様を見せつけ、終章でこれ以上ない皮肉で締めくくる。この苦さよ!!これこそ物語であり、小説の一つの頂点ではないかとさえ思わされた。素晴らしかった。 -
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奇抜な設定で明治という時代を描いた秀作。辻馬車屋の千兵衛とお雛の前に現れる様々な人物の人間模様を通して、依然江戸時代~幕末の遺恨を引きずっている明治10年頃の在り様が、見事なまでの活劇となって活写されている。千兵衛のヒーロー感もあって、印象としては続き物の紙芝居を見ているような感覚だった。実在の歴史上人物も多数登場し、飽きさせない。たぶん歴史の勉強にもなる(笑)。
残念だったのは、「太陽黒点」や「明治断頭台」のように物語が最後に暗転するといった趣向がなく、2作と比べての衝撃が少なかったことと、トト様とババ様の幽霊が出てくることについての理由付けと説得力が欠けていたことだ。
しかしこれ読んで、板 -
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山田風太郎といえば忍法帖。なのだけれど、あえてこれを読んでみた。かつてどこかの本屋で偶然見かけて以来、ずっと気にかかっていた本。何年か経った今再び出会って読んだのも、すべては天の巡り合わせだろうと思う。今このタイミングで読むべし、ときっと誰かが言っていたのだろう。
さて、なんの予備知識もなく読み始めてみたけれど、これはかなり衝撃的だった。わりと軽めの口調で語られる物語の滑り出しからは想像もつかないところへ最終的には連れていかれる。連れていかれてしまう。「堕落願望」「破滅願望」とでも言うべきものを描きながら、最終的には、そんな甘っちょろいこと考えてるお前らは平和ボケ野郎共だな!と糾弾されてしまう -
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沢田研二映画を若山富三郎目当てで見たのがきっかけで。
映画版とおそろしく内容が違うんですね。びっくりしました。
昭和の脂ギッシュなサラリーマンが好きそうなえろぐろシーンになんども挫折しそうになりました。これさえなければめっちゃ面白いのに!と。
十兵衛が出てくるあたりからテンポアップで一気読み。
斬新な発想ですすめられるお話に、超ワクワク!
しかし山田風太郎の作品はあまり巷の本屋さんで扱っていなくて探すのが大変です。巨大本屋さんまで行かないと……
※田宮坊太郎が講談や歌舞伎で有名だとか
宝蔵院だれそれも有名とか
十兵衛のお父さんたちの確執とか
知らないことがいっぱいでした。
こういった -
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ネタバレ魔界転生下巻。対宝蔵院まではとても面白く、先を読みたくて仕方がないほどの吸引力があるのですが、その後が、面白いは面白いものの、少し単調になってしまうのが難点かなと思います。
魔剣士対十兵衛→なんらかの理由があって十兵衛に有利な事情が生じ、十兵衛が勝つ、というのを繰り返していくので驚きがなくなってしまうのです。
特に十兵衛と関係のある又右得門や如雲斎、但馬守の扱いをもう少し工夫すればもっと面白くなったのではないか、と思ってしまいます。
そういう意味では、但馬守を実質ラスボスに据えた深作版の方が、魔剣士の扱いは良かったかなと思います。
また、柳生十人衆や三人娘など人数は多いため話の焦点が -
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山田風太郎 「戦中派不戦日記」 昭和20年 敗戦前後における自分との対話という感じ。当時の著者は 戦争肯定、玉砕上等、復讐のための復興 という思想を持っている
この本の命題は 著者の言葉「戦争の前は憤怒なり。戦争の中は悲惨なり。戦争の後は滑稽なり」にあると思う。
著者は戦後の何に滑稽さを感じたのか 特定できなかった
*死ぬべき世代(戦中派)である著者が 生きようとする姿?
*戦争責任をすべて軍人に押し付けた民衆の姿?
*科学を勉強し 軍事力を上げ 再び戦おうとする姿?
8/15 の日記 「帝国ツイニ敵に屈ス」の一言のみ
*ショックの大きさ、自暴自棄の心情を感じる
*戦争=科学→戦争の