山田風太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
山風明治短編選集、最終巻は、明治ものを手がける以前の、たまたま(?)明治を扱った短編を集めたもの。
しかしここで扱われている作品は、図らずも「時代の大きな事件の影で、その人生を破滅へと向かわせることになった人々の物語」が集められているように感じた。そのため、読んでて実にキツいものが多かった。
それにしても、表題作の登場人物、向畑治三郎の本当どうしようもない人生の変遷を描き、最後に「この無類に好人物の、哀れな、罪のない男の幸福な晩年を祈りたい。」と表する、作者の度量の深さに驚嘆する。それとともに、その思いを裏切るかのようなラストの"史実"にもまたどうしようもない人間のあり -
Posted by ブクログ
『太陽黒点』が非常に面白かったので、もっと騙されたいと思って購入(笑)
中編「誰にも出来る殺人」と「棺(かん)の中の悦楽」の二本立て。
共通しているのは、恋心を持て余した男の悲しみ、といったところで、
どちらも切なく、やるせないけれど、愚か者の悪あがきがシニカルな笑いを誘う。
■『誰にも出来る殺人』
舞台は昭和30年代の場末のアパート「人間荘」。
二階建てで、部屋は全部で16室。
12号室の新しい借り主が押し入れに残された厚いノートを発見し、読んでみると、
その部屋の歴代の住人の中でノートの存在に気づいた者による手記が綴られていたが、
それは単なる日記ではなく、いずれもこのアパート -
Posted by ブクログ
昭和30年代後半(=1960年代前半)の東京で、
アルバイトしながら大学に通う青年が、
金持ちの娘と知り合い、ブルジョワの毒気に当てられて、
勤労や苦学には意味がないと思い始め、
上手く立ち回って「逆玉(の輿)」に載った方が利口だ、
と考えるようになり、周囲の人間を憎悪しながら野心を燃やす
という筋立てだと思ったのだが……一杯食わされた。
なんという理不尽な苦悩、そして死(二重の意味で)!
なるほど、これは戦争体験者にしか書けないだろうなぁ。
被害者もかわいそうだし、犯人も悲しい、
じゃあ誰が悪いのだと問えば「それは君たち読者だ!」と
指を突き付けられる気が――って、あ、それじゃ某「奇書」と一