山田風太郎のレビュー一覧
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陸奥の爆沈をテーマにした「戦艦陸奥」他の短編小説集。文章がややレトロ調で、時代がかって
いる感はあるものの、戦時中の世相がよく描かれている。
陸奥の爆沈の原因は諸説あるが、乗組員による放火、爆破説が有力のようだ。当時の海軍では
下士官による水兵の私的制裁が日常化していたとか。これを恨んだ水兵が犯行に及んだのではな
いか、という説が有力で、結局千人以上が亡くなった。小説では別の原因になっているが、死と
隣り合わせの戦時下、ファシズムの嵐が吹き荒れる日本では、みんなまともな精神状態ではいら
れなかったのかもしれない。
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Posted by ブクログ
短編集。表題作「夜よりほかに聴くものもなし」も連作短編集だが主人公と〆が共通している以外設定に連続性はないのでどこからでも読んでいい短編集である。
どれも面白いがテーマが強すぎて小説としての枠を通り抜けている作品もある。どれも重苦しくなかなか読み進めなかった一冊。そもそも物理的に重く持ち運ぶのに苦労する点もあった。
この中で一番出来がいいのは跫音だと思う。
時点で黒幕と吹雪心中。
以下メモより
「跫音」
善人である男が発作より悪人を絞め殺した。新聞報道に追い詰められ野次馬の冷たい目、妻・愛人・依頼主にも見捨てられ発狂し世間様に申し訳ないという話。
何より怖いのは群衆の冷たい目。そこに本当の -
Posted by ブクログ
幕末に活躍した大立者が明治の元勲となり、その妻達も大いに活躍していた時代。
だいぶ前の作品ですが、さすが山田風太郎、面白い!
若き日の山本権兵衛が陸軍中将・西郷従道の命で、大臣らの妻を訪ねて歩くという連作短編。
鹿鳴館を建てたものの、舞踏会への出席者が少なく、特に女性が足りないため、大山捨松とともに、説得してほしいというのだ。
大山巌の妻の捨松はアメリカに長く留学していたから、舞踏会もお手の物。
でも、抵抗を感じる女性も多かったんですね。
明治政府の主要な人物はほとんど、花柳界の出の女性を妻にしていました。
もと芸者とか、そういう社交に慣れた女性。
当時の政治は、欧米の見様見真似。外国から -