山田風太郎のレビュー一覧

  • 明治断頭台 山田風太郎ベストコレクション

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    自分内の山田風太郎ブームでこれに手を出す。
    作者本人のお気に入りだったとか。

    舞台は明治のごくはじめ、維新から間も無く、まだ社会がしっちゃかめっちゃかだったころ。
    薩長土肥が支配する政府の腐敗も進む頃。

    それらをなんとかするべく、邏卒(警察)を整えつつある、のちの大警視・川路利良をサブ主人公にして、架空の人物で美形青年・香月経四郎(史実の佐賀藩士・江藤新平の愛弟子である香月経五郎の兄という設定)が、捕物をする連作。
    古来の弾正台を復活させ、水干姿で魔を斬る香月と、政府にパイプを持ち真面目実直な川路のコンビ。
    フランスから断頭台を持ち帰り、ついでに首切り一家サンソン家の娘、エスメラルダも連れ

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    2023年11月07日
  • 銀河忍法帖

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    ネタバレ

    「女精酒」や「はがね麻羅」「淫霧」といった官能的造語、男と交じ合う妖艶な女たち、戦いで咲く凄惨な血の華…忍法帖定番のエログロをしっかり盛り込みながら、相反するせつない純愛で最後グッと胸を締め付ける筆の名人芸にため息。
    伊賀の精鋭忍者たちをバタバタと倒し、敵の妾たちの科学兵器を物ともせず抱きまくる豪放磊落な強さを発揮する反面、惚れた女には滅法弱く従順になってしまう六文銭の鉄の快男子ぶりが一番の魅力だったなぁ。
    正体を明かした後の展開と覚悟が更にカッコよくて、男と女の一途な宿命の決着の儚く美しい余韻にシビレる。

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    2023年10月15日
  • かげろう忍法帖 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(1)

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    なんとなく覚えてたのでたぶん再読。
    「忍者明智十兵衛」5…出世と入れ替わり
    「忍者石川五右衛門」4…淀君の鈴を盗む
    「忍者向坂甚内」3…没落した姫を守護する赤蜘蛛
    「忍者撫子甚五郎」3…関ヶ原での偵察合戦
    「忍者本多佐渡守」5…権謀術数の歴史と継承
    「忍者服部半蔵」3…不出来な弟
    「『今昔物語秋』の忍者」3…エッセイ
    「忍者帷子乙五郎」4…紙で魚をおろす

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    2023年10月05日
  • 警視庁草紙(下) ――山田風太郎明治小説全集(2)

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    ずっと読みたかった作品。
    最初は久々の明治もので読みにくかったけど、展開の巧みさにどんどん引き込まれてあっという間に読んでしまった。いや、むしろ読み終わるのが惜しくて最後の方はわざと読むペースを落としたほどである。

    山田風太郎作品の好きなところは、話のおもしろさ、飛び抜けた発想、読者を飽きさせない巧みな展開などはもちろんだが、何より風太郎独特の清々しくて切ない物語の閉じ方である。読後感をあえて言語化するなら、「卒業式の朝」だろうか。新しいスタートを感じさせる清々しさの中に、二度と手に入らない大切なものを失ってしまったような切なさがある。

    本作もやはり、そのような終わり方で、心に残るものがあ

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    2023年09月26日
  • 誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション

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    ※誰にも〜は廣済堂版で先日すでに読んだので、ここには、評判をきいて手にとった、同時収録の棺のなかの〜の感想を書きます。

    すごく面白かった!
    主人公が特殊な状況にいるのに、わりと普通の感覚を失わないので、そこに好感が持てた。
    期日までに大金を使い切る、というテーマはインド映画にもあったなぁ。人間の夢だよね。
    この場合は破滅的な理由から始まるので、主人公は鬼気迫る想いなんだけど、3年の期日はけっこう長くて、そのあいだに、感情が動く様子も面白い。
    自棄になって、けっこうすぐに本心を明かしてしまったりする。

    6人の花嫁たち、そのドラマ。どの女たちも一種の理想だし、みんな最後にはあっぱれの覚悟を見せ

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    2023年09月15日
  • 警視庁草紙‐風太郎明治劇場‐(3)

    無料版購入済み

    口だけは達者や

    基本的に江戸と明治の狭間で苦労する事になった女性たちへの鎮魂歌なんだな

    山田風太郎はそもそも女性が苦労する話ばかりか

    #ダーク #ドロドロ #ドキドキハラハラ

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    2023年08月29日
  • 警視庁草紙 上 山田風太郎ベストコレクション

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    とにかくツルツルッと軽快に読めてしまうのだが、この史実とフィクションを幾重にも織り交ぜるのはなんという技巧であろうか。

    もともと気になっていた作家だったのだが、このたび渡辺京二の推薦からたどりついた。なるほど、渡辺京二がこれを好きだったのはわかる。汽車も横浜までしか走っておらず、銀座も煉瓦造りを建ててみたもののまだ中身が伴わない、丸の内あたりは焼け野原、元武士が刀を差して歩いている。そんな近世と近代の汽水域みたいな明治初頭が舞台になる。

    また、泰三子が川路利良を主人公に新作を描いているようなので、そちらも読んでみよう。

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    2023年08月08日
  • 忍法八犬伝 山田風太郎忍法帖(4)

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    かなり以前に読んだ記憶があるが・・・
    まったく覚えていない。もしかして「南総里見八犬伝」と混同しているかも・・・(薬師丸ひろ子主演映画があったね)

    忍法帖のなかでも傑作と言っていた人がいたが、まさにその通り。これは面白かった。里見八犬伝ではなくその子供らの八犬伝。忠義の在り方が父親の時代とは違えど、村雨さまに対する忠義は、昔の伏姫に対する父親となんら変わらない。
    「俺は、このために生きてきたんだ。だから死ぬ!」
    かっこいい八犬士!!

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    2023年07月06日
  • 夜よりほかに聴くものもなし 山田風太郎ベストコレクション

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    当初は、へー、という程度だった。
    山風が推理物書いてるんだあ、松本清張以降に社会派ミステリが流行ったからこんなムードなんだあ、と思った。

    三話目あたりから、いやこれは単なる社会派ミステリじゃないなと思った。
    やっぱり山風が書いたらぐっと引き込まれるし、短編なのにすごい長編を読んだかんじになる。
    書き方がうまいんですよ。

    60年代の作品なので、さすがに古いというところもあるけど、日本人の本質は何も変わっていない。
    犯罪の中抜き、声無き傍観者である大衆の持つ卑怯性、SNS自殺そっくりの状況など、普遍的な怖さがある。はっきり言えば日本人社会の怖さを書いている。
    そういう意味では山風らしい。
    この

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    2023年07月01日
  • 人間臨終図巻 4

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    アイディアの勝利。
    転倒と風邪に注意。
    大往生が理想。痛みは不要。緩和ケア。
    みんな死ぬんだから、大丈夫、と言う安心感。
    ボケたくないとは思う。ボケても自分なのだが、自我が失われた状態でありたくはない。
    筒井康隆の解説。

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    2023年06月20日
  • 同日同刻――太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日

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    戦争は正義と悪との争いではない。国家の暴走によって民の命の尊厳を踏みにじる愚挙でしかない。その真相に気付かない民に責任は無い。社会や情報の偏重によって洗脳に近い状況へ追い込んでいく怖さが、様々な人びとの言動で如実に伝わる。その後の悔恨や不条理はもちろんある、時を経て人びとは変わりゆく。ただし歴史は変えてはならない。敗戦から学ぶべきものは残していく、美談などと都合の良い解釈では社会はよくならない。加害と被害を重ね合わせて事実を見定める書籍として暫し黙考する。

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    2023年06月07日
  • 幻燈辻馬車(上) ――山田風太郎明治小説全集(3)

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    元会津藩士の老馬車御者を一応の主人公としつつも、多種多様な出自と職業を持つ人たちが微妙に関わりながら登場する。
    まさかの嘉納治五郎が姿三四郎を弟子にしており、大山巌の妻 捨松に横恋慕しているなんて、創作と史実の境界なんて意識せずに描き放題ですね。他にも幽霊と剣士を戦わせてみたり、山田風太郎氏ならではの自由な作風がとても楽しいです。

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    2023年05月19日
  • 警視庁草紙‐風太郎明治劇場‐(2)

    無料版購入済み

    兵四郎の旦那より
    早くも警視庁の杖五郎や藤田らが目立っているような気がしないでもない
    牡丹灯籠は悲劇的に終わった

    #ドキドキハラハラ #ドロドロ #切ない

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    2023年04月29日
  • 警視庁草紙‐風太郎明治劇場‐(1)

    無料版購入済み

    新三郎が、刺されてからも女に怨み言を言わず
    自決したという事にしてみせたのが小気味よく感じられてしまった

    #切ない #ドキドキハラハラ #カッコいい

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    2023年04月29日
  • 甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1)

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    忍者が多すぎです。総勢20名!!
    最初、名前が覚えられず難儀しました。名前もそうですが伊賀?甲賀?この人どっちだっけ?となります。
    また、やっと名前と所属部署(?)覚えたら、退場ですか。

    でも引き込まれる物語です。
    「そんなん、あるわけないっしょやぁ」と忍者の技に突っ込みながら後半は一気読みでした。

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    2023年04月21日
  • 甲賀忍法帖 山田風太郎ベストコレクション

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    超能力者バトルものの元祖。
    現在あるありとあらゆる漫画やラノベに直接的、関節的に影響を及した作品である。
    設定として面白かったのが忍者たちに不具者が多いという所。見世物小屋で次々と現れるビックリ人間的な面白みがありアングラ的な暗い欲望を刺激するものがある。
    あとは、女性に対するストレートな肉欲である。ここまでストレートだと逆に笑ってしまった。
    この小説が古びてなお輝きを失っていないのは上記の2点が白眉であり、あとに続くものがいない(あるいは時代の趨勢により書けない)からなのかもしれない。

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    2023年02月12日
  • Y十M(ワイじゅうエム)~柳生忍法帖~(1)

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    柳生十兵衛、会津の暴君に挑む
    悪逆の会津藩主・加藤明成と配下の会津七本槍により、惨殺された堀一族。生き残りの堀一族の美女7人は、指南役に柳生十兵衛を迎え、七本槍と加藤に復讐を挑む。
    せがわまさきが、「柳生忍法帖」を漫画化。
    沢庵和尚に頼まれ堀一族の美女7人の助太刀に立ち上がった柳生十兵衛。彼が堀一族の美女7人に軍略や武術を教え、いかにして腕では劣る堀一族の美女が会津七本槍を倒すかを、相手の裏をかきつつチームプレイで倒していくバトルの連続は、前作の「バジリスク甲賀忍法帖」よりもスリリングで、飄々としながらも義に熱い柳生十兵衛の陽性の男の魅力もあって、スカッとする後味です。妖婦おゆらの妖艶でツンデ

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    2023年02月08日
  • バジリスク~甲賀忍法帖~(1)

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    徳川3代将軍の世継ぎ問題を決着させるため、十人対十人で忍法殺戮合戦をして、生き残りを賭けることになった甲賀と伊賀の忍者たち。憎しみ合う両家にあって、甲賀弦之介と伊賀の朧は深く愛し合っていた。
    山田風太郎の「甲賀忍法帖」を稀代の漫画家せがわまさきが原作の世界観をそのまま漫画化。
    水墨画のような独特なタッチで忍法帖の登場人物に命を吹き込み、多彩な忍法を使う忍法バトルを躍動感あふれるタッチで見事に漫画化しています。
    女の髪を武器にする忍者、かまいたちを武器にする忍者、昆虫を操る忍者、顔を変える忍者、そして忍法を破る破眼の術を使う忍者、忍法を術者に返す忍法を使う忍者など、凄腕の忍者たちが相手の隙を突き

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    2023年02月06日
  • 八犬伝 下

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    戯作者・馬琴の壮絶な人生が明らかになった実の世界。特に白内障によって隻眼となったうえに、残る一眼にも侵食した後の、漢字を知らない亡き息子の妻・お路の凄まじいまでの気力に感動した。そのおかげで八犬伝は未完の大作とならずに済んだ。まあ、馬琴の微に入り細を穿つ文章は冗長だ。しかし、完成したからこそ今に伝わったとも思える。そして、著者はその冗長さを排して、読者に八犬伝の面白さを伝えてくれた。終盤の幼犬士・犬江親兵衛の活躍は、まさに桃太郎のような微笑ましい一篇に仕上がっていた。

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    2023年01月31日
  • 警視庁草紙(下) ――山田風太郎明治小説全集(2)

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    初代警視総監である川路大警視と、最後の町奉行 駒井相模守という対照的な二人を中心に綴られる明治初期の物語。
    川路大警視については、警視庁のポリスミュージアムで警察サイドから見た功績を学んだことがありますが、味方を変えれば目的のためなら手段を選ばない意思と強さと謀略の凄まじさは、ある意味ではこの時代だからこそ必要だった人だと改めて思い知りました。
    明治が舞台だけあって少し読むのに集中力が必要かなところがありますが、とても中身の濃い作品でした。

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    2023年01月25日