復讐を決意した謎の女、朱鷺に惚れ、ひょんなことから協力を申し出た風来坊、通称・六文銭の鉄。そんな二人に大久保長安率いる科学忍法を使うくノ一集団と、伊賀の手練れが襲いかかってくる中、前代未聞の逃避行と暗殺舞台劇の幕が上がる──。
まず主人公である六文銭の鉄がカッコいい。野生児のルパン三世のような3枚目キャラであり、動物的な反射神経と雄臭い絶倫の下半身で物事を片付けていく様は爽快感がある。とりあえず見つけたら敵の妾を犯しまくるインモラルな作風ではあるものの、敵のくノ一も色香を武器に挑んでくるわけで、山田風太郎世界観においては当たり前のように性技や交合すらも立派な戦いであり生存戦略の一つなのだ。
敵はモーニングスターや伸縮ロッドのはがね摩羅、7連発拳銃のリボルバーといった武器に始まり、果ては火炎放射器に硫酸といった科学忍法を使う異形異様の集団ながら、主人公の六文銭は基本的に素手かつ単独で戦うというバランス感覚が見事である。身体ポテンシャルの高さもさることながら、鹵獲した敵の武器を使って窮地を打開するなど、ありものと肉体で解決する様は非常に男らしく、加えて風体もふんどし一丁、時には全裸で戦うという裸一貫の男ぶりが魅力である。
そしてそんなくノーや忍者たちとの死闘は、変に長引くこともなく、武器や能力の相性、地形、出会い頭のシチュエーションによってあっさりと決着がつくことも多く、そこに実力差は関係がない。生き残りをかけた真剣勝負の世界では運不運の要素も大きく、たとえ強くても無様な死に様をする無情さこそが山田風太郎の美学であるとも思う。そして一見コミカルな冒険活劇ながら、主人公の謎が明らかになる後半でこそその余韻は尾を引いて残り、結末は一抹の寂寥感がある。冒険であり、異能力バトルであり、そして真っ当なロマンスだった。