【感想・ネタバレ】明治断頭台 山田風太郎ベストコレクションのレビュー

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風太郎の本領発揮

新旧入り交じって混沌とした明治初年を舞台としたケレン味たっぷりの作品である。1万円札の人 福沢諭吉を始めとして川路利良 東郷平八郎などなど著名人物を次々と登場させて活躍させる、面白くないはずがない という一大エンターメント作品である。さらに、ギロチンにフランス美女 と次々と登場させるが、同じ作者の「忍法シリーズ」のように忍術 魔術 なんでもありという荒唐無稽にまでは陥っていない所が良い。いずれにしても、風太郎の本領発揮 といえる作品である。

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2022年12月08日

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ネタバレ

文句なく面白く、夜更かし必然。
明治初年、警察組織が手探り状態の東京。
さしづめ警視庁キャリア組エリートたる香月経四郎と、同胞の川路利良が、怪事件を解決するミステリー。

香月の謎解き役となるフランス美女の巫女、へっぽこ五人組の巡査ふぜい、そのほか福沢諭吉や内村鑑三など史実の逸材が続々登場。

最初の事件のトリックはこんなんありかい!と笑ってしまった。やや時代劇風の毎回降霊で解決のパターンに飽きてくるが、読み飽きない一冊。

最終章の結末に唖然。
香月とフランス革命のロベスピエールとが重なった。

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2016年12月29日

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役人の不正を取り締まる弾正台、ギロチン、妖しげな金髪美女、小悪党な邏卒、相棒にしてライバルの川路など魅力的なキャラクター、キーワードを明治初期の混乱に彩った作者自身が認める時代ミステリーの傑作。
文字通り驚天動地のラストに刮目。

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2016年09月02日

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異国の美女エスメラルダを探偵役に据え、香月と川路、愉快な羅卒たちが織りなす明治時代を舞台にした連作ミステリです。
幕末が倒れ、新時代の幕開けかと思いきや、体制は未だ整っておらず、混沌とした世界が鮮やかに書かれています。
そんな時代を背景に起きる事件は、どれも奇天烈なものばかり。それを一種の物憑き状態となった異国人巫女のエスメラルダが解き明かします。
披露されるトリックはどれも単純なものですが、それを支える舞台、伏線が非常に良くできています。中でも「怪談築地ホテル館」は大胆なバカミス風のトリックが味わえます。
そして本書の特筆すべきところは、事件を颯爽と解き明かしていった末に迎える、最終章にあります。
個々の解決したかに思われた事件が、伏線として機能し、1つの物語が浮かび上がってくるのです。
ここで明かされるとある人物の思惑は、山風だからこそ書き得た、この時代だから成立する、凄まじいものになっています。
やはり天才か、山田風太郎!

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2015年04月23日

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明治初期を舞台とする連作短編集です。第1話と第2話は謂わばプロローグで、主に登場人物及び舞台の説明です。本格的な話になるのは第3話からで、それぞれ奇怪な事件とその解決が描かれています。
そして最終話では驚愕の真相が待ち受けています。怒涛の展開と何とも言えない余韻の残るラスト!間違いなく傑作といえるでしょう。

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2013年08月29日

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明治初期を舞台に、水干姿の美青年&薩摩弁鮮やかな侍のコンビが金髪碧眼巫女の口寄せによって謎解きする。一つずつの事件を描いた短編にちりばめられた疑問が、最終話で一気に収束するタイプの連作もの。

時代の熱さなのかな、登場人物それぞれ(主役の二人はもちろん、加害者被害者、ダメ邏卒たちに至るまで:終盤はむしろ胸熱であったけど)がそれぞれの方向に突っ走る様は爽快でもあり、最終話ではもの悲しくもあり、読む側のテンションを上げてくれる一冊でした。

山風先生はここまで読んだのが忍法帖を少し、柳生十兵衛少し、短編少しだったのですが、幕末妖人伝が面白かったのと、ミステリー小説だという話だったので(昔ミステリー好きだったので)この本を手に取りました。
ちょうおもしろかったー! レビュー的なことは他の方のものが詳しく、そのとおりと思いましたので書かないけど、ほんと面白かった。他の明治物も読みたいと思わせられました。つーか読む。

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2013年06月16日

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ネタバレ

政治の安定しない混迷の明治期。
日本がどのようにどこへ向かうのか手さぐり状態の「空白の時代」が舞台です。
役人の不正などを取り締まる為に復古された警察機構「弾正台」に所属する香月経四郎と川路利良を中心とした連作ミステリとなっています。

このコンビが奇怪な事件を次々と解決していくわけですが、その方法がおもしろい。香月を慕って来日したフランス人美女エスメラルダは、なんと修行の成果により死者を呼び出すことが出来、事件の度に被害者を呼び寄せては「自分は誰々にこんな風に殺された」と教えてくれるのです。推理もへったくれもありません。
しかし各話のトリックは凝っています。歴史上の人物達がちらほらと登場したり、当時の逸話も挟まれていて楽しいです。

ユニークな展開におもしろおかしく楽しんで読んでいたので、最後の展開には度胆を抜かれました。
とんでもなく秀逸なミステリ小説でした。


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【断正台大巡察】警察としての役割である邏卒の5人が、人々から小金を巻き上げてやりたい放題。小物っぷりが憎めません。香月と川路に出会う話で、最後はぞっとしました。邏卒の「日本がどうなろうとしったこっちゃない」というセリフが妙に印象に残っていましたが、この言葉も最後に繋がっていて驚きました.

【巫女エスメラルダ】香月と川路の正義の政府についての論争や、エスメラルダを巡っての香月の態度も大きな伏線になっています。

【怪談築地ホテル館】このトリックは非常に楽しかったです。築地ホテル館という舞台も趣があり、この時代とこの場所ならではという感じがします。
死者を呼び寄せる描写もばかばかしくも恐ろしい。
邏卒たちの小悪党っぷりが活かされてます。

【アメリカより愛をこめて】このトリックを弄する前提の壱岐守の行方に関してはおもしろいです。この事や幽霊騒ぎという経緯があるからこそ、このありえないトリックもまさか、と思わせてくれました。
ここでの俥の合体も、後で登場する戦車に似ています。
壱岐守の人を食った逃亡の足跡とその後の彼の人生を知ると「アメリカより愛をこめて」というタイトルがとても洒落ているように感じます。

【永代橋の首吊人】まさかまさかのトリックでした。これはおもしろい。容疑者は2人。しかしどちらにも犯行は不可能という状況が一転する一大トリックです。
谺国天の策謀は実際にあったことのようですが、それに対する川路と吟香の解釈の違いも興味深いものでした。実直な薩摩人の川路ですが、こういった所にも彼の思想が見えています。
谺国天が都合よく船まで行ったことや、すぐにお店を出てしまったことなどの「想定外」が、後に大きな意味を齎していてうまいです。
吟香というのは掴みどころのない魅力的な人物ですね。

【遠眼鏡足切絵図】一見関係のない事件が次々と起こりますが、それが繋がっていくのは見事です。この話はそんな偶然が都合よく、とも思うのですが、それも作者の想定の範囲でした。いつの間にかいなくなった俥夫にもきちんと触れられているのに、誘拐騒ぎで忘れていました。

【おのれの首を抱く屍体】首の入れ替えトリックにはすぐ気付くと思いますが、その痕跡や証拠がなく、しかも最後まではっきりしないまま終わってしまいました。これまでの話すべてに、曖昧だったり偶然だったりする事があってそれが後々繋がっていくわけですが、本作ではそれが明示された終わり方でした。

【正義の政府はあり得るか】ここで明かされた真相には驚愕です。川路が最初から香月の危険性について述べていますが、それがこんな展開に繋がるとは。
そして、最初から自分で言っている通り「正義の政府はあり得ない」という考えのもと、西郷の提案を呑んだ川路という男の人間性もまた見た気がしました。
しかしなにより驚いたのは邏卒たちです。彼らもまた明治という時代に生きる一人の人間であったのだと今更ながら気付かされる思いです。最初のケチな小悪党の印象をがらりと変えて、ひた走る最後の彼らの姿には胸が熱くなりました。

エスメラルダは最後まで謎の人物でした。彼女がなぜ毎回お縫に語りかけていたのかも気になります。
エスメラルダは経四郎の狂気に加担しましたが、経四郎を平穏の愛で包むことが出来るお縫に、彼女もまた親愛を持っていたのかもしれないと想像しました。

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2012年11月22日

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ネタバレ

自分内の山田風太郎ブームでこれに手を出す。
作者本人のお気に入りだったとか。

舞台は明治のごくはじめ、維新から間も無く、まだ社会がしっちゃかめっちゃかだったころ。
薩長土肥が支配する政府の腐敗も進む頃。

それらをなんとかするべく、邏卒(警察)を整えつつある、のちの大警視・川路利良をサブ主人公にして、架空の人物で美形青年・香月経四郎(史実の佐賀藩士・江藤新平の愛弟子である香月経五郎の兄という設定)が、捕物をする連作。
古来の弾正台を復活させ、水干姿で魔を斬る香月と、政府にパイプを持ち真面目実直な川路のコンビ。
フランスから断頭台を持ち帰り、ついでに首切り一家サンソン家の娘、エスメラルダも連れ帰る香月。
エスメラルダがイタコをして、香月とともに解決をみせる不思議な形式。
(最近、泰三子先生のハコヅメではないほうの漫画「ダンどーん」でもイケてる主人公だった川路がここでも活躍。飛ぶが如くの冒頭でみんなの心に焼きついたオモシロ人物。川路好きだ。)
弾正台と断頭台の言葉遊び。
川路と香月、どちらが多く、市井のトラブルを推理解決できるか、とお題が登場し、連作で解決していく。
ここから始まる香月と川路のワクワク捕物勝負!
…かと思いきや。


ええええーーー、終幕まで読んで仰天。
これはすごい。確かにすごい。
えっ、本当にこれ、このまま行くの?と何度も思った。

◯◯たちが1人ずつ退場する様は、まるで90年代のアニメ、セーラームーンの無印の最終盤のセーラー戦士、死す…!の回を彷彿とさせる。
やーーーーばい。これはヤバい。
エスメラルダも気の毒だけど、縫さん可哀想すぎるよ。
駆け抜けて駆け抜けるラストに言葉も無かったです。押忍。

明治になったから、と言って、何が変わるわけでもない。
江戸は江戸だし、山田浅右衛門が小伝馬町で斬首して小塚原に骸を捨てる。
何より人の心はそう簡単には変わらない。

明治の、のちの西南戦争にむけて、いろんな人物の運命の糸がより合う示唆も劇的でいい。
幕末の動乱、その後の混乱もずっと続いていたんだなあと思う。
いろんな人物がちらほらと顔を出す本作、遊び心も満載で面白い。
明治に詳しい人なら、もっともっと楽しめただろうな。高橋お伝、二葉亭四迷、内村鑑三ほかにもたくさん出た中で、準レギュラーぽく活躍した岸田吟香が面白かったです。岸田劉生の父で、さまざまな事業を興した立志伝中の人らしい。

ところで、エスメラルダのセリフ、全面カタカナはやはり読みづらい。
大事な推理ものの披露シーンなのだから、漢字+カタカナがよかったなー。

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2023年11月05日

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ネタバレ

 『死刑執行人サンソン』を読んで、本書を読み返したくなった。文春文庫版をようやく発掘してひもとく。
 星5つでもよいのだが、山風の明治ものは傑作がひしめいているので、『幻燈辻馬車』や『地の果ての獄』に比べて星4つにとどめておく。
 サンソン家の末裔の美女が巫女姿で口寄せをする。ライトノベルを先取りしたような趣向に唸ってしまう。
 もともと推理作家として出発した山風の、特にミステリ色の濃い連作小説。ノックスの十戒を持ち出すまでもなく超自然的な謎解きは禁じ手なれど、全体を貫くトリックが最後の最後で暴かれる。まさに大団円。

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2021年04月23日

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ネタバレ

明治を舞台に弾正台の役人である香月経四郎と川路利良が虚実混交で繰り広げられる連作短編ミステリ。各章がそれぞれ謎の提示→巫女による解決、と言う構造を取っていますが、ラストに各章其々をミステリとする構造です。

犯人は探偵役の香月の自作自演(エスメラルダを巫女として仕立てた)、と言うオチなのですが、当時は新鮮だったんだろうな、と。

それと、いわゆる"ハウダニット"を固定化させると言う手法も使われています。この人のミステリは矢張りイロイロ盛り込まれていて意欲的。

木田元さんと言う人が書いた解説が良かったです。理想主義(香月、江藤、西郷路線)と現実主義(大久保、川路路線)の対立。新政府は前者を採択し、本書は後者の儚い抵抗であった、と言う物語基軸です。

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2023年10月06日

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