山田風太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
山田風太郎 著「妖説太閤記(下)」を読みました。
秀吉は、信長を葬り去り、お市の方を引き取った勝家を倒し、ついに天下をとる。お市の方の忘れ形見ちゃちゃ姫と交わるべく、男女の秘技を見せつける。そして、肉欲・殺戮・侵略などあらん限りの欲望をさらけ出すのだった。日本人の憧れの存在の裏の姿を作者独自の歴史観で描いた作品。
上巻では、竹中半兵衛、黒田官兵衛の二人の軍師の力を借り、さまざまな知恵を振り絞って、目覚ましい出世を成し遂げていくなど、秀吉の明るく魅力的な部分がかなり描かれていたのに対し、下巻は、ついに天下を手に入れながらも欲望にとらわれてしまう悲しい運命の秀吉像が描かれています。
-
Posted by ブクログ
山田風太郎 著 「風来忍法帖」を読みました。
豊臣の大軍勢に対し、わずか数百人の手勢を率い、北条方の小城・忍城を守る美貌の麻也姫。その麻也姫を守って、敵の忍者と命を賭けて戦う7人の香具師(やし)たち。
この7人の香具師たちは、一癖も二癖もある一筋縄ではいかない荒くれどもで、はじめは麻也姫を襲うおうと姫に近づくのに、いつの間にか、命を賭けて姫を守るはめになってしまいます。
ここら辺の展開がなんともうまく、さすが山田風太郎ここにありといった感じです。
姫を守るため、敵の無敵の忍者にも、悪知恵を使いながら、命を落としてまで、立ち向かっていく様は、男の生き方として、憧れを感じて -
Posted by ブクログ
ネタバレ昭和30年代東京。
苦学生ながらも容姿淡麗、頭脳明晰、可愛らしい恋人もいる鏑木明は、ひょんなことから富裕層の集まるパーティーに参加。そこから彼の人生の歯車が狂いだします。
それまで平穏に過ごしていた明が、富裕層との格差に打ちのめされて野心を抱き、自分を失っていく様が滑稽でもあり恐ろしい。
高度成長期を迎えようとしている日本で、しかし将来に希望を見いだせない戦後を生きる若者の苦悩を背景にした、恋愛小説でもあります。
出来ればなんの前知識もなくいきなり作品世界に浸ってほしい小説です。
山田風太郎という作家自身を知るのにも、彼の書く小説がどういうものなのか知るのにも良い1冊だと思います。
読め -
Posted by ブクログ
ネタバレ政治の安定しない混迷の明治期。
日本がどのようにどこへ向かうのか手さぐり状態の「空白の時代」が舞台です。
役人の不正などを取り締まる為に復古された警察機構「弾正台」に所属する香月経四郎と川路利良を中心とした連作ミステリとなっています。
このコンビが奇怪な事件を次々と解決していくわけですが、その方法がおもしろい。香月を慕って来日したフランス人美女エスメラルダは、なんと修行の成果により死者を呼び出すことが出来、事件の度に被害者を呼び寄せては「自分は誰々にこんな風に殺された」と教えてくれるのです。推理もへったくれもありません。
しかし各話のトリックは凝っています。歴史上の人物達がちらほらと登場した -
Posted by ブクログ
徳川家光の治世。
御公儀隠密として徳川家に仕える甲賀、伊賀、根来の三派を、最も優れた一派のみにまとめるという大老・土井大炊頭の命から、遠大なる物語が幕を開けます。
大炊頭のとんでもない命令によって三派による忍法合戦、全面戦争が始まるかと思いましたが、三派それぞれを代表する三人の忍者が、査察人の前で忍術を披露するという事務的な幕開けでした。
正直、査察の場面で披露された三人の忍術にはふ~んとしか思わなかったのですが、後に実戦や姦計で使われるとこれらの忍術の恐ろしさがどんどん分かっていき、同じ忍術が状況によってバリエーションを増やしていくのがおもしろいです。ただびっくりするような忍術というだけで -
Posted by ブクログ
ネタバレ中国四大奇書のひとつ「金瓶梅」を基にした連作短編ミステリー。
怠惰で醜悪で妖艶な欲望渦巻く魅惑の世界で、ユニークなトリックが披露される良質な一冊です。
探偵役が決まっているだけでなく、本作では犯人役も毎回同じ人物に決まっているのがおもしろい。
同じ人物が事件のきっかけを作り、同じ立場の人間が被害者となり、同じ犯人が罪を犯し、同じ探偵役が真相を見抜くという展開の繰り返しですが、毎回凝ったトリックとエロティックな展開がおもしろく飽きやマンネリはありませんでした。
最後は作者にまんまとしてやられて脱帽。
【赤い靴】どろどろとした女たちの愛憎劇も楽しいですが、両足を切断された二人の死体、足フェチ -
Posted by ブクログ
ネタバレ山岡荘八の「柳生宗矩」という正真正銘正統派の後なので、破天荒な柳生が読みたくて山田風太郎を選択。
忍法とあるけれど、印を結んでドロンは登場せず、せいぜい敵首領の銅伯が修法を使い、体を鉛のように変化させる程度。風船になって空を飛んだり、他人に化けるというような現実離れした忍法は登場しない。敵の7人はそれぞれ武器を手に真っ当に勝負を挑んでくる。
対するは我らが十兵衛。
ではなく、7人の女性。武家の妻や娘たちとは言え、武芸にはほど遠い彼女たちが、十兵衛の指南を受けて武術を体得し、復讐を遂げていく。
十兵衛が手出しをしない、というルールを作ったのが秀逸。これで立ち会いはスポーツ化し、勝ち抜き戦の様