山田風太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
再読
最高潮の東京空襲から大転換へ
昭和二十年で作者が消えてなくなるわけではないのだけれど
その後も全部読んだあとで読み返すと
この日記作品の面白みは急速に薄れていく
個々人の紆余曲折はありながらも戦中の日常から
戦後の平和な日常への切り替わり
戦後生まれだからと戦中を暮らす人々と何も変わらない一方で
時代は確かに誰かが動かして転がっていく
自分は平均だとは思っても平凡だとは思っていない皆がつくる大衆がそれを映しているのであり
そのまったく理性的でなく流れ行く先徒ならぬ景色は
それでいて文明技術の変化を表層直ちに受ける
一身にして二世を生きるような転換期にそれは見えるようであり見えないようでもある -
購入済み
快作
バジリスク以来のファンですが、柳生シリーズも期待にたがわず面白かったです。一太刀で勝負が決まるような緊張感は独特ですし、緩急のついた構成といい、キャラクターの立ち具合といい、素晴らしい出来だと思います
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Posted by ブクログ
山田風太郎といえば娯楽時代小説の大家。
近年は「甲賀忍法帖」が「バジリスク」のタイトルで漫画化・アニメ化したことでも記憶に新しい。
四郎助の赴任直後から監獄では度々不審な事件がおきる。
囚人が有り得ない不可能状況から脱走を図る。横暴な看守が変死を遂げる。
呑んだくれのアイヌ医者、人間の良心を信じ続ける神父。
それら多彩な人物に囲まれ囚人と触れ合ううちに、四郎助の心境にも徐徐に変化が芽生えていく。
なんといっても牢屋小僧がめちゃくちゃかっこいい。ほれます。野卑で狡猾、過酷な苦役と折檻にもめげず不敵な笑みを浮かべ続ける男。
そこはかとなく不気味な存在感で他を圧倒し、極悪人ぞろいの獄でも一目置かれる隻眼の囚人。
個性的な登場人物たちの中でも彼のキャラは異彩を放ってます。
収録作の中でいちばん好きなのは「邏卒報告書」。
元巡査の囚人・畑寺。根っから善良で真面目な畑寺が地の果ての獄で再会したのは、自分を騙し裏切り続けた親友・高戸。
同じ枷に繋がれた二人は元親友同士でありながら姑息な高戸は何度も畑寺をそそのかし、その友情に付け込んで美味い汁を啜っていた。
高戸の裏切りがもとで巡査の職と最愛の妻子までも失い、地の果ての獄に送られた畑寺を待っていたのは元部下で現看守の堂目の凄まじい虐待。
しかし根っからお人よしな畑寺はそこでも元親友を庇い続け……
全部説明しちゃうとアレなんで、これはとにかく!読んで下さい。
騙され裏切られすべてを失った冴えない中年男、畑寺。
友人を破滅させておきながら反省の色はさっぱりなく、今また畑寺を踏み台に脱獄計画を練るこりない高戸。
最後の最後で畑寺が上げた台詞が、もうね……胸が熱くなる。涙がこみあげてくる。
あの台詞を叫ぶまで畑寺が経てきた人生が走馬灯のように過ぎって、活字がぼんやり滲む。
傑作です。おすすめです。
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Posted by ブクログ
ネタバレ「棺の中の悦楽」目当てで購入。「誰にも出来る殺人」はすでに読んでおり、これが山田風太郎得意の書簡体小説だが、「棺」はそうではない。「棺」の方が後に書かれたせいか、初期のミステリ作品に比べ、人物や場面の描き方が丁寧になっているように感じた。もしくは、これまで読んできた作品が、語り手の独白が中心のものが多かったから、そうではなく三人称で描かれることによって、そう感じたのかもしれない。個人的には、第三の花嫁に手を出せずに躊躇するところ、第四の花嫁をいたぶり、それをただ見ている無力の夫に自分を投影する箇所が面白かった。
自分としては過去最高級に面白かったが、読書会で発表したところ、受けは微妙であった・・
あらためて考えればやはり山田風太郎は娯楽小説の域を出ないのだろうか?いや、そうでないと思う。主人公は決して特異な人物として描かれてはいない。むしろどこにでもいる、「誰にも出来る」、「誰にも起こりうる」こととして描かれている(こんなに破天荒な内容に思われても)。「誰にも出来る殺人」にあったように、人は殺し合い犯しあい歴史をつくってきた存在で、人間とは生まれながらに愚かなのだ、教育では如何ともし難いのだ、と山田風太郎じしん、わかっていながら、やはり愛すべきものとして人間を描いているのだと私は考える。 -
Posted by ブクログ
徳川家康の身勝手な理由によって取り決められた、甲賀と伊賀十人ずつによる忍者対決。独特な秘技を持つ個性豊かな忍者たち。奇襲・暗殺・だまし討ちと手段を選ばない非情な戦いの連続。弦之介と朧の引き裂かれた恋を絡めながら、想像を超えるスリリングな展開が続き、エンターテイメント作品として、非常に濃密な内容を持っている。
それぞれの忍者が持っている秘技は、あまりにも人間離れしているので、サイボーグのように感じ、SFというか、マンガのようでもある。忍者の中でも、伊賀の薬師寺天膳と甲賀の如月左衛門の二人の存在が、この摩訶不思議なストーリー展開には欠かせない。薬師寺天膳は何とも下衆な野郎。読んでいる際中は、甲賀の方に肩入れしている自分がいた。
甲賀と伊賀に分け隔てられた忍者の宿命、ふたりの恋の結末に哀愁を感じた。