山田風太郎のレビュー一覧

  • 誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション

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    「棺の中の悦楽」目当てで購入。「誰にも出来る殺人」はすでに読んでおり、これが山田風太郎得意の書簡体小説だが、「棺」はそうではない。「棺」の方が後に書かれたせいか、初期のミステリ作品に比べ、人物や場面の描き方が丁寧になっているように感じた。もしくは、これまで読んできた作品が、語り手の独白が中心のものが多かったから、そうではなく三人称で描かれることによって、そう感じたのかもしれない。個人的には、第三の花嫁に手を出せずに躊躇するところ、第四の花嫁をいたぶり、それをただ見ている無力の夫に自分を投影する箇所が面白かった。
    自分としては過去最高級に面白かったが、読書会で発表したところ、受けは微妙であった・

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    2017年06月18日
  • 甲賀忍法帖 山田風太郎忍法帖(1)

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    徳川家康の身勝手な理由によって取り決められた、甲賀と伊賀十人ずつによる忍者対決。独特な秘技を持つ個性豊かな忍者たち。奇襲・暗殺・だまし討ちと手段を選ばない非情な戦いの連続。弦之介と朧の引き裂かれた恋を絡めながら、想像を超えるスリリングな展開が続き、エンターテイメント作品として、非常に濃密な内容を持っている。
    それぞれの忍者が持っている秘技は、あまりにも人間離れしているので、サイボーグのように感じ、SFというか、マンガのようでもある。忍者の中でも、伊賀の薬師寺天膳と甲賀の如月左衛門の二人の存在が、この摩訶不思議なストーリー展開には欠かせない。薬師寺天膳は何とも下衆な野郎。読んでいる際中は、甲賀の

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    2017年02月12日
  • 人間臨終図巻 1

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    人物伝は数あるけれど人間の臨終に的を絞り、多くの事例を集めた物は、この本以外に寡聞に知らない。通常の伝記が人物の活躍に焦点を当てるのに比べ、この本は人生の下り坂を活写する。偉人であろうと死ぬ時は苦しみながら死ぬ(例外も収録されている)。改めて、人の人たる所以を突きつけられる。

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    2017年01月28日
  • 明治断頭台 山田風太郎ベストコレクション

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    文句なく面白く、夜更かし必然。
    明治初年、警察組織が手探り状態の東京。
    さしづめ警視庁キャリア組エリートたる香月経四郎と、同胞の川路利良が、怪事件を解決するミステリー。

    香月の謎解き役となるフランス美女の巫女、へっぽこ五人組の巡査ふぜい、そのほか福沢諭吉や内村鑑三など史実の逸材が続々登場。

    最初の事件のトリックはこんなんありかい!と笑ってしまった。やや時代劇風の毎回降霊で解決のパターンに飽きてくるが、読み飽きない一冊。

    最終章の結末に唖然。
    香月とフランス革命のロベスピエールとが重なった。

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    2016年12月29日
  • 明治十手架(下) ――山田風太郎明治小説全集(14)

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    善と悪、そしてその橋渡しの役目を担う主人公というわかりやすい構図。美人姉妹とのドキドキもあるし、「けだもの勝負第〜番」の流れはまるで「忍法帖」…というかなりサービス精神の強い作品。同時収録の『明治かげろう俥』は大津事件をきっかけに4人の男女の数奇で壮絶な運命を描く。かなり壮絶。『黄色い下宿人』はホームズパロ。

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    2016年12月25日
  • 魔界転生 下 山田風太郎ベストコレクション

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    エンターテイメントとして最高の読み物。

    上巻はエログロ路線が読み進めるのに厳しく、最後まで読めないかとまで考えたがどんどんおもしろくなってきて正直困った。
    とんでもない設定も勢いで納得させられてしまう。
    紀伊や柳生の風景も、虚実入り混じったストーリーも、血に足をつけた切り貼りではない作者の内から溢れ出たもの。時代物では場所・物事の描き方がコピペのように浮いてしまい、興ざめすることが多いが、山田風太郎に関してはまったくそのようなことがない。
    なるほど、これが長く読み継がれる娯楽小説というものか。

    楽しいひと時をどうもありがとう。

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    2016年12月23日
  • 笑う肉仮面〈少年篇〉

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    山田風太郎の少年向け冒険小説集。
    同じネタを使ってもちゃんと読ませる腕はさすが。
    収録中「青雲寮の秘密」だけが青春コメディ(?)で異色だけれど高校生四人のキャラが出色かつ時代を感じさせる名前の素敵さも含めて非常なる萌えでした。
    最も面白いと感じたのは表題作。
    笑顔が貼りついたような顔に手術される少年という出だしもショッキングでしたが、その後の痛快な冒険譚は魔術師の爺、盲目の美少女、賢い狼などわくわくする脇役の登場で本当に胸が躍りました。
    さすがに少年小説だからか最後は大団円!
    もっともっと読みたい少年小説集でした。

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    2016年12月05日
  • 明治十手架(上) ――山田風太郎明治小説全集(13)

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    ラノベタイトル風に言うと「超絶美人クリスチャン姉妹とひとつ屋根のした暮らし始めた俺が、十字架型武器(クロス・ウェポン)を片手に悪漢どもとバトる日々」。舞台は明治で主役が原胤昭というだけで骨格はラノベだ。面白くないわけはない。ほんといいところで上巻が終わる。いざ下巻へ。

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    2016年12月02日
  • 魔界転生 上 山田風太郎忍法帖(6)

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     柳生十兵衛が、よみがえった名剣士、田宮坊太郎、宝蔵院胤舜、天草四郎、荒木又右衛門、柳生如雲斎、柳生但馬守、宮本武蔵と闘う幻想的剣豪小説です。とにかく上巻は異常な事態が起こっていく過程、十兵衛が事件にかかわる過程など、異様な迫力に満ちていてとても面白いです。

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    2016年10月02日
  • 明治断頭台 山田風太郎ベストコレクション

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    役人の不正を取り締まる弾正台、ギロチン、妖しげな金髪美女、小悪党な邏卒、相棒にしてライバルの川路など魅力的なキャラクター、キーワードを明治初期の混乱に彩った作者自身が認める時代ミステリーの傑作。
    文字通り驚天動地のラストに刮目。

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    2016年09月02日
  • 警視庁草紙 上 山田風太郎ベストコレクション

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    他の読者諸氏も書いていらっしゃるが、幕末の動乱から抜け出ていない江戸情緒を懐かしむ人々と、地方の成り上がり者が築いた明治政府、その官権の犬たる警察との攻防劇がみごと。

    ミステリー自体はあっとうならされるものではないのだが、まあ、時代劇の人情を楽しむもの。

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    2016年02月08日
  • 柳生十兵衛死す(下)

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    比較的、地味だった上巻とうってかわって怒涛のごとく話が展開する下巻。上巻の冒頭で提示されたラストシーンに向け、一気に物語が収束していく様は本当に美しいです。まったく無駄のない構成にうっとりしました。それはそうと余談ですが、室町と慶安、それぞれの時代に入れ替わった十兵衛がいきなり予備知識なしで大問題に直面させられ立ち向かう様からは、引き継ぎやドキュメントもない炎上プロジェクトに投入されたエンジニアを想像しました…。

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    2016年02月07日
  • 柳生十兵衛死す(上)

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    慶安と室町、二つの時代の二人の柳生十兵衛。なんといってもタイムリープの鍵が「能」という着想が面白いです。忍法帖のような奇想天外な忍者たちは登場しないものの、その分主要キャラらが描きこまれ深みがあります。

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    2016年02月04日
  • 眼中の悪魔〈本格篇〉~山田風太郎ミステリー傑作選1~

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    【眼中の悪魔】【虚像淫楽】【厨子家の悪霊】【笛を吹く犯罪】【死者の呼び声】【墓掘人】【恋罪】【黄色い下宿人】【司祭館の殺人】【誰にも出来る殺人】収録。

    本格ミステリー短編9篇と、「連鎖式」の長編【誰にも出来る殺人】を収録した傑作選。探偵作家クラブ賞を受賞した【眼中の悪魔】と【虚像淫楽】、ホームズのパスティーシュで意外な事実がラストで明らかになる【黄色い下宿人】、逆転に次ぐ逆転の【厨子家の悪霊】など、いずれも良く出来た作品ばかりです。
    私的ベストは【誰にも出来る殺人】。短編一つ一つに意外なオチが用意されているので独立して読めますが、最後まで通して読んだときに全く別の構図が現れるところが秀逸です

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    2015年09月25日
  • 新装版 戦中派不戦日記

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    『敗戦して自由の時代が来た、と狂喜しているいわゆる文化人たちは彼らが何と理屈をこねようと、本人は「死なずにすんだ」という極めて単純な歓喜に過ぎない。』という文が印象的でした。

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    2015年09月19日
  • おんな牢秘抄 山田風太郎ベストコレクション

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    山風ミステリの中でいまいち知名度に欠ける本書でありますが、決して完成度が高くないわけではなく、むしろお得意の時代物とミステリとが、極めて高い次元で融合した傑作です。
    低知名度の理由は時代小説という側面ばかりが強調されて、ミステリだという認知があまりされていないからなのではないでしょうか…。
    内容は新顔の女囚人お竜が、やむにやまれぬ事情で収監された囚人たちの容疑を張らすために奔走するといったものです。対象となる6人の囚人が関わった事件はどれも奇々怪々なもので、本格ミステリ読者なら唸らずにはいられない好編ばかりです。
    そしてラストになって突如として時代小説らしい仕掛けがクローズアップされ、山風らし

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    2015年06月30日
  • 明治断頭台 山田風太郎ベストコレクション

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    異国の美女エスメラルダを探偵役に据え、香月と川路、愉快な羅卒たちが織りなす明治時代を舞台にした連作ミステリです。
    幕末が倒れ、新時代の幕開けかと思いきや、体制は未だ整っておらず、混沌とした世界が鮮やかに書かれています。
    そんな時代を背景に起きる事件は、どれも奇天烈なものばかり。それを一種の物憑き状態となった異国人巫女のエスメラルダが解き明かします。
    披露されるトリックはどれも単純なものですが、それを支える舞台、伏線が非常に良くできています。中でも「怪談築地ホテル館」は大胆なバカミス風のトリックが味わえます。
    そして本書の特筆すべきところは、事件を颯爽と解き明かしていった末に迎える、最終章にあり

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    2015年04月23日
  • 夜よりほかに聴くものもなし 山田風太郎ベストコレクション

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    本格ミステリと呼ばれるものは、動機に弱く、リアリティに欠ける。という批判が現れ、松本清張を筆頭に社会派ミステリが隆盛を築いた時代に、本格ミステリの一角を担う山風が、あえて特異な動機にのみ焦点を当てたこの連作短編集を出した姿勢に、まず敬意を表したいと思います。
    各短編の動機は、側からみれば異様、対価に見合わない、と思われるようなものかもしれません。
    しかし、あくまで外側からはそう見えるというだけであって、本人にとっては、如何ともし難い問題。人を殺してでも訴えたいものがあるということです。
    動機にリアリティなんてものは存在するのでしょうか?そもそも万人が納得するリアリティのある動機などあり得るので

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    2015年04月19日
  • 幻燈辻馬車 下 山田風太郎ベストコレクション

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    上下巻を一気読み。
    吉川英治の『鳴門秘帖』に劣らぬ痛快伝奇ファンタジー。

    下巻ではお雛の母親や宿敵の正体も明らかになる。
    新世代の体制批判の若者たちに巻き込まれていく、老馭者干兵衛。大団円では終わらず、最後が印象的。

    エンターテインメントというより歴史を題材にした政治小説とも言える。イスラムだのカルト宗教のシンパと、赤軍派や全共闘世代、自由民権の壮士、そして幕末の志士。どれも本性は同じ。

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    2015年03月30日
  • 幻燈辻馬車 上 山田風太郎ベストコレクション

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    2012年9月に上巻のみ一読。
    初読ではえげつない部分に肝を冷やしたが、再読するとほんとうにおもしろい。
    ストーリーを忘れた頃に、読み返してみたい。

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    2015年03月30日