山田風太郎のレビュー一覧
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若き医学生、山田誠也青年による、運命の昭和20年の記録。何に驚くといって、この過酷な世界の中で、ほとんど毎日何かしらの本を読んでいることである。案外戦中派の人達の中には「あの頃が一番本を読んだ」という人が多いらしい。一種の現実逃避だったのかもしれない。ところで、この日記は日々をライブとして記録しているのかと思ったら、実は出版にあたって少し編集しているところがあったらしく(後に出た「焼跡日記」におなじような記述が見られる等)、それに気付いた時にはちょっとだけ興醒めした。とはいえ、若かりし頃の作者の冷静と情熱がひしひしと伝わってくる事には変りはない。しかし、これほど知的探究心に富み、怜悧な洞察力を持った青年が、戦後「うんこ殺人」などという、中島らも氏をして「このミス」で「未読だがタイトルだけで一位」と言わしめる作品を生み出す小説家になろうとは、まさかの運命の変遷を御神もご覧じろ、といったところか。
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約10年前、『ドグラマグラ』とともに、カリパクされ、買い直した作品。
久々の読み返しにも関わらず、その面白さは抜群。
若かりし頃、山田風太郎の忍法帖モノに手を出したが、頓挫したのも懐かしい思い出。
この作品は全九編からなる短編集。
前半なかばからの素広平太博士、三部作(各話には関連性なし)。「紋次郎の職業」の性的作品は個人的に大好物。
はたして、素広平太博士三部作中の「満員島」のように制慾帯を造らずとも、現実の政府は、子どもを育てるのに金が掛かるようにして、爆発的人口増加を防いだ。一方で、素広博士が危惧した高齢化は厳しい現実のモノとなった。
また、最後の「黄色い下宿人」はホームズ作品へのオマージュである。
このように、作品の振り幅の大きさ、着眼点、展開。どれも最高。
★★★★★評価、文句なし。
現在、入手が容易でないのは、残念なかぎり。 -
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昭和30年代後半、苦学生の鏑木はバイトで訪れた屋敷で社長令嬢と出会う。鏑木は特権階級への反抗の意思から、彼女に近づくのだが……
他の本や映画のalwaysではこの時代は貧しくても希望があった時代だとか、頑張ればそれが給料に反映された時代だとか、どこか希望的な側面で語られやすいのですが、この小説に出てくる登場人物たちは、将来への希望をなくしていたり、時代に疑問を持っていたりしています。
敗戦からおよそ10数年、復興や高度経済成長のイメージが強い時代ですが、その時代の暗部というか、語られにくいところを見事に描き切った作品だと思います。
中でも印象的だったのが鏑木が将来への希望を持てない様子でした。先に書いたようなイメージの強い時代だったので、この時代にこういう若者がいたのだな、という意外な気持ちが浮かんでくるとともに、とても感情移入してしまいました。彼と同年代で、現代も希望が持ちにくい社会であるからかもしれません。
青春小説としても一級品の出来! 特権階級に近づくため自分を見失っていく鏑木を心配する容子の描写も感情表現もとても上手く引き込まれました。また自分を見失っていく鏑木の描写も読んでいて切なかったです。
そして最後に明らかになる狂気の存在……。時代の闇を凝縮したような黒さを感じるとともに、でも一方でとてつもなく痛切な叫びを聞いたような気にもなりました。この狂気と叫びの前には何者も無力にならざるを得ない、そんな風に感じてしまいます。
読後はしばらくぼーっとなってしまいました。それだけ、この叫びが自分の中におおきなしこりを残したのだと思います。幕引きも鮮やかでした。その後について語りすぎないことで、読後の深く切ない余韻が心にじっくりと沁み渡っていったように思います。 -
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うーん、すげえ。いややっぱすげえ。「何も言わなくても絵だけで凄い」漫画。『バジリスク』は徹底的にナレーションを廃してたけど、これはナレーションをも効果的に演出している感が。
ここにきて「わかりやすすぎる転生衆のビジュアル」が効果的になっている気がする。正直、転生衆と言っても生前最盛期の力+α程で、人間の物理的限界を超えるようなケレン味溢れる超能力を持っているわけではない。しかしあの「霧の中の魔軍」の迫力!正直、ケレン味が溢れすぎる物語にどっぷり使っている現代人には、(真面目な時代劇でも良いんですが)やはり絵的に派手なほうがいいと思うんですよ。原作だって、当時にしてみたらそれなりに無茶苦茶な話だったんじゃないでしょうか?
あとツインテール! -
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甲賀と伊賀に、互いに憎しみを抱く忍者の里在り。孫の竹千代と国千代のどちらを三代将軍の座につけるのか、迷いあぐねた徳川家康は、それぞれの一族から選ばせた十人づつを闘わせ、どちらが生き残るかによって後継者を決めようとする。折りしも甲賀と伊賀の棟梁の孫である弦之介と朧は、愛し合い、因縁を断ち切ろうとしていた。しかし運命に押し流されるように、血で血を洗う死闘が始まる。
次々と繰り広げられる奇想天外の忍法。なんじゃこりゃ、と思う間もなく、ストーリーに絡め取られて夢中になって読んでしまう。一種のSFだと思えば良いのかも知れない。読み物としてはかなり楽しめた。 -
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ネタバレ初めて読む、忍法帖シリーズ以外の山風作品。
絶世の美女だけど恐ろしいほど嫉妬深く、あの手この手でライバルたちを葬っていく主人公・潘金蓮。
ただの毒婦かと思いきや、主への愛情は誰よりも深いし、度胸も愛嬌もあって、読むほどに魅力的になっていく。
読み終えた頃にはすっかり虜になって、殺されてもいいからこんな女に会ってみたい!と思ってしまった。
潘金蓮以外の女性もそれぞれが他人には負けないチャームポイントを一つずつ持ってて、色とりどりの愛憎劇が楽しめた。
その上、奇想天外なミステリー小説としても読めて、山風の懐の広さに脱帽。
是非他のミステリー作品も読んでみたい。