山田風太郎のレビュー一覧
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敗戦日記の金字塔ともいえる『戦中派不戦日記』、本書はそれに先立つ昭和17年から19年までの日記。山田風太郎、20歳から22歳の日々。
上京は昭和17年8月。日記を付け始めるのはその3カ月後。欠かさず付けているわけではない。でもしだいに、日記はほぼ毎日、内容もかなりしっかりしたものになってゆく。「あとがき」では、「自分との対話」をしてみたかったのだろうと書いている。
前半は沖電気の社員、後半は東京医専の医学生。副題「滅失への青春」に示されるように、時代は重く暗く、どうにもならない状況に向かいつつあった。しかしそれにしても、風太郎青年はがつがつとよく食べる。同じく読書についても貪欲。そして五反田、新宿や神田周辺をよく歩き回っている。
「あとがき」には、この日記以前の個人的状況が述べられている。父母の死、義父との不仲、学業不振と素行不良、家出……戦中や敗戦直後よりも、そちらのほうが精神的にきつかったようだ。日記は自立と成長のための補助具だったのかしれない。 -
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山田風太郎、23歳、東京医専の医学生。その彼の昭和20年の日記、700ページ。授業と空襲、空腹と疲労、買い出しと疎開、そして所感と思索……日々起こったことを綴っているだけなのに、その完成度の高さに驚嘆する。本も読み続けている。医学書、科学書、哲学書、小説など、数えてみると150冊あまり。これにも驚かざるをえない。
東京大空襲や城南大空襲は知っていたが、爆撃機(B29)や戦闘機(P51)がほぼ連日連夜飛来していたとは! 驚いたのは、空襲や死が日常になると、ほんとうに危険になる間際まで逃げることなく、日常の生活を送り続けるようになったこと。最たるは、未明に東京大空襲があったその日、新宿の医専にたどり着くと、予定通り「胎生学」「組織学」「生物学」の試験が行なわれていた!
7月から10月まで、東京医専は信州飯田に疎開。そこで敗戦を迎えた。軍医として戦地に赴くことを覚悟していたのだから、コンフリクトは尋常ではない。一方で、それとは無関係に、季節は移ろいゆく。心のなかの葛藤と飯田の自然の情景、その対比的な描写が印象的。
将来妻となる女学生(13歳)との鶴岡での出合い、飯田を去るにあたって開催した医専の学芸会の盛況ぶり――暗いトーンのなか、それらだけ二輪の花のように明るい。 -
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ネタバレ面白かった〜伊賀も面白かったけど、甲賀も面白かった。ぐんぐん引き込まれてあっという間に読み終わってしまった。
バトルロイヤル、もう少しそれぞれのキャラクターについてや戦いが掘り下げされても良いかもと思ったけど、そうすると人数も多いし冗長になってしまうんだろうなあ。
女性キャラの造形が男性が性的魅力を感じられるキャラのみになっているのは苦笑だし、全員が全員性的に描写されててはあ、、って感じ。と言いつつやっぱり陽炎と、朧が好きだったなあ。最後もハッピーエンド(?)で大変好みでございました。
弦之助と朧が最後言葉を交わさないのも良い。
…と、甲賀弦之助ははじめてさけぶと、朧の刀でみずからの胸を刺しつらぬいて、水にたおれた。そして、すでになかば水にひたった朧を抱きしめると、ふたりのからだは、しずかに水にながれ出した。…
やっぱり心中というと、水だよなあと。これについてはしっかり考えないといけないわけですが。 -
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ネタバレ山田風太郎の『八犬伝』の下巻。
虚と実が入り交じる作りが面白い作品だが、上巻とは打って変わって下巻では実の部分が面白くなっていく。
実の部分というのは滝沢馬琴の生活の方である。
数年毎にプラっと訪れる葛飾北斎に『南総里見八犬伝』のプロットを語ったり、そんなオジサン二人がおしゃべりばかりしている様を眺めて激しく愚痴る滝沢馬琴の妻のお百がいたり、そんなお百と馬琴の子どもで医者になった宗伯、そして宗伯の妻のお路などの生活が記されていく。
特に面白くなるのが宗伯が亡くなり、馬琴の眼が見えなくなってからだ。
『南総里見八犬伝』をついに語ることが出来なくなってから、馬琴はお路に執筆の手助けを頼む。しかし、お路はひらがな以外は学んだことがないため、漢字の作りを一から教えることになる。
馬琴とお路の執念で『南総里見八犬伝』は記されていく。
この実の部分が面白くなっていく。
逆に虚の部分は物語が一段落してしまったこともあって、親兵衛登場あたりからはそこまで惹かれなくなっていく。
そしたら解説で、親兵衛登場あたりまでが『里見八犬伝』のピークだと記されていて、なるほどなあと思った。それも踏まえて虚と実が入り交じる作風にしてあるんだろう、と感じた。 -
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『八犬伝』が映画化するということで手に取った本。
山田風太郎作品は忍法帖シリーズを中心にいくつか読んでいるが、どれも良い意味で荒唐無稽で面白い。
これぞジャパニーズニンジャ! ジャパニーズサムライ! みたいな部分もあり、エロもグロもあり、涙とアクションもある。
『八犬伝』もファンタジー、伝奇要素を絶妙に織り交ぜながら紡がれている。
その『八犬伝』の虚の部分に、この物語を書いた滝沢馬琴周りの実の部分が交互に描かれていく。
上巻は虚の部分が面白かった。
まるで漫画やゲームのパーティが集まるかのように個性豊かな登場人物たちが何かに導かれるかのように集まっていく。
そこに敵の手も迫ったりと、盛り上がり続ける展開であっという間に読んでしまった。
ちなみに映画は原作の良さの100分の1も伝わらない。
何なら原作が端折られすぎてて、原作を読んでないとよくわからない気がする。
余りにも酷い出来だった。映画を観るチケット代で原作買ったほうが絶対良い。 -
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やはり『風太郎八犬伝』最高! 歌舞伎舞台の奈落で、馬琴と鶴屋南北が対峙するシーン、虚実論争の面白いこと面白いこと。「虚の世界」の方は、やはり次々と犬士が現れてくる上巻と比べるとやや落ちるものの、犬江親兵衛再登場のシーンの驚きや親兵衛のキャラクターが楽しいてたまらん。そして馬琴の完全主義の凄まじさよ!登場人物の人生構築、物語の緻密な構成、伏線回収の執念! 登場人物たちの善悪の清算。よくぞそこまで丹念に描けることよ。 逃げる扇谷定正を追う犬山道節の足を止めさせた河鯉父子のかごを取り巻く青い炎の正体が分かったところで「うひゃあ!」言うたわw そして最終、語る盲目の馬琴と懸命に筆記するお路の姿に落涙。
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映画公開前に予習しておこうと(なんせ忘れているからね)、平成元年の文庫本(よくぞ置いておいたものだ)を引っ張り出して再読。馬琴の手による『八犬伝』の部分を「虚の世界」、それを執筆する馬琴と物語の筋をきかされる葛飾北斎とのやりとり等を「実の世界」として交互に配置。面白いのなんのって! 馬琴と北斎の人物造形、やりとりの楽しいこと楽しいこと。こちらの方が面白いかと思いきや、八犬士達の因縁の絡み具合出逢い、八犬士達が窮地に立たされ、それを逃れていく筋の展開、こちらは馬琴の構想によるのだろうが(たぶん。原作読んでいないから定かではない)めためた面白い! 多分原作では長々とあれこれ微に入り細を穿って描いているんだろうが、スピーディに息もつかせぬよう描いていく山田風太郎の筆致もすごい! さすが天才老人! 下巻も楽しみ♪
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はぁ、ものすごいものを読んだ。
今、胸の中に何かが次々と湧き出していて、破裂せんばかりの風船さながら胸がパンッパンに膨れ上がっているのに、この感情を表現できない。これは、なんと言うのだろう、充足感? いやどんな言葉にも当てはまらない。言葉が陳腐すぎて狭すぎて、どの言葉にも収まらない。
下巻でも、「虚の世界」と「実の世界」が交互に進んでいくのですが、最後の章で両世界が冥合いたします。鬼気迫るラストは、これは作中で使われている言葉ですが、まさしく〈神秘荘厳〉としか言えません。なんと苦しい人生か。
馬琴さんの墓前で、お疲れさまでしたと何時間でも手を合わせたい、そんな気持ちです。絶対滝沢家の人間にはなりたくないけど。そして、「南総里見八犬伝」と馬琴さんの人生を、こんな壮大な物語に仕立ててくれた山田風太郎さんに、深く感謝いたします。
最後に、八犬士を出現順に並べておきます。
第一の犬士、犬塚信乃、「孝」の珠、
第二の犬士、犬川荘助、「義」の珠、
第三の犬士、犬山道節、「忠」の珠、
第四の犬士、犬飼現八、「信」の珠、
第五の犬士、犬田小文吾、「悌」の珠、
第六の犬士、犬江親兵衛、「仁」の珠、
第七の犬士、犬村大角、「礼」の珠、
第八の犬士、犬坂毛野、「智」の珠。
本作を読んでわかったけど、「八犬傳」を原文で読破するのはやっぱり大変そうだなぁ……。
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今年の夏は暑かった。尤も私には敬愛する作家の山田風太郎の「戦中派」シリーズの日記をついに読み始めた夏として刻まれるかもしれない。
本来は「戦中派虫けら日記」から読み始めるべきかもしれないが、編集者外題によると、生前風太郎が確固たる意思を持って出版した唯一の日記と言うことなので、本作から読み始めるのも良しとするべきかもしれない。ホントは「虫けら日記」がどこに埋もれているのか発見できなかったのだが笑
「不戦日記」は、まだ何者でもなかった山田風太郎(誠也)が、終戦の年一年間に何を見て何を感じたのかが、冷徹な観察眼と自らの深い思索を通して克明に記されており、読んでいてなんともヒリヒリとする感じと、更に重苦しい想いにも囚われて正直読み進めるのが辛く感じる時もあった。
とは言いながら、庶民は明るく逞しく生きている側面もあるし、思ったより戦局そのものも正しく理解している。何よりも誠也青年の読書量には目を見張るべき物がある。一体どこから本を手に入れてたのだろうか。
終戦の日を境に、ガラッと変わる日本人や、腑抜けの軍幹部連には激しい憤りを露わにする件は、のちの作家風太郎のイメージとはかけ離れているような感じも受けるが、困窮、悲惨、落胆、憤怒、混乱、必死、自棄、空虚等に満ち溢れた世相を体験する事無しには、あの忍法帖に見られる徹底したエンターテイメント性は成し得なかったのかもしれない。
現在もウクライナやガサでは、悲惨な毎日が繰り返されている。今こそ今一度読まれるべき本である。 -
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滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』は、千葉県民としてはぜひとも読んでおきたい物語。だから岩波文庫のボックスで買ってあるのですが、なにしろ原文でございますので敷居が高く、まだ踏み込めずにおります。
そこで、この山田風太郎の『八犬伝』。滝沢馬琴が葛飾北斎に、「こんな物語を書こうと思ってるんだけど、どう?」と話して聞かせている、というのが大筋。なので、『南総里見八犬伝』そのもの(虚の世界)と、江戸にいる馬琴&北斎の物語(実の世界)が交互に進んでいくという、一冊で二度おいしいお得なご本となっております。
上巻では、「虚の世界」では安房の滝田城城主里見義実の危機から始まって、八犬士のうち6人の犬士が出現、そして7人目だろうと思わせる人物が登場したところまで。「実の世界」では、馬琴が47歳、北斎が54歳の時点から7年間が描かれております。
べらぼうにおもしろい。「虚」パートでは、出来事も人物も、無関係だと思わせておいて実はみぃんなつながっていたりするので気が抜けません。無駄な話が一切ない。登場人物が多く、読んでいると系図が欲しくなるので人物名や関係をメモしておくことを強くおすすめします。
また「実」パートでは、虎タイプのどっしり馬琴と、竜タイプのしなやか北斎、正反対の2人が良いコンビです。武士気質のカタブツ馬琴をおもしろがって見ている北斎、という図がほほえましく、会話に笑ってしまったりも。
上下巻を左右に並べると、カバーイラストがつながって一枚の絵になるところも良いですな。
それでは下巻へいざゆかん!
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明治に復活した、役人の不正を糾す役目の弾正台。大巡察としてその任に当たる香月と川路が遭遇する数々の奇妙な事件を解決するのは、金髪碧眼のフランス人巫女・エスメラルダによる降霊術だった。レトロな雰囲気の中で斬新な謎が繰り広げられる連作ミステリです。
時代ものという雰囲気が強く、実在するさまざまな人物が登場する歴史小説としても読めるのかと思ったら。謎解きシーンが降霊術って! なかなかにぶっとんだ設定なのですが、それが案外違和感もなく面白いのが凄いです。死者の魂に語らせる解決編はまさしく圧巻。派手なトリックも圧巻。そしてすべての事件を通じての仕掛けにもまた度肝を抜かれます。異色だけれど、ミステリとしてはしっかり本格でした。
やはり「怪談築地ホテル館」のトリックのインパクトが一番かな。恐ろしいような、ちょっと笑ってしまうようなトリックでした。「遠眼鏡足切絵図」は、実在のあの人が登場したあたりで真相の一部には気づくことができたものの、それでもこちらもインパクト大。どれもこれも凄まじいです。