東畑開人のレビュー一覧
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『居るのはつらいよ』で「ケア」と「セラピー」の違いに目を開かれたのだけど、本書で本格的に「どこかにいる理想のセラピスト(わたしの場合、河合隼雄)」は、一種のファンタジーみたいなものなんだなと断ち切れた気がする。
専門家ではないので、きれいに説明はできないけど、純粋に学派的な臨床心理学を追究している人から見たら、現場に即して形を変えたり、「無意識」や「深層心理」に触れることなく、日常的なやりとりや現実的なアドバイスで困り事を解決に導こうとするやり方は、邪道だと思われがちだ。
でも、そうではない、というのが本書の主張。
真ん中にあるのはあくまでも「ふつうの相談」で、そこには専門家だけでなく、友人 -
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問題点も含めて、新しい視点をくれる本だった。
自分自身、精神的な病を抱える母が、スピリチュアルに傾倒していく姿を間近で見ており、当事者としてではないが、本の内容に身に覚えがあることも多かった。
そして、なおかつ、ここは問題点でもあるかもしれないのだが、そうした当事者の姿を、あえて軽く、明るく書いてくれていたので、最後まで読み進められた。
私の母も、野の医者になりかけたのだが、私も含めた周囲がそれを受け入れることはなく(できず)、結局その後、病がより大きな波となった時期に、数ヶ月の入院生活と、薬物療法によって、病を調整することとなった。
入院直後は、薬物の影響か、病の転調か、抜け殻のように話さな -
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良書。
精神分析を専門に勉強してきたわけではないため、臨床的な介入の中で精神分析を行うことはまずないが、それでも事例の見立てに精神分析的な観点を取り入れることがしばしばあり、そのやり方を洗練させるためのヒントが本書にはあったように思う。これまで真似事でやっていた見立てを、どの部分に着目して精緻化していく必要があるのか勉強になった。
たしかに精神分析的アプローチとは異なる部分も多く、実践のしやすさが一つのポイントになっているが、今後、精神分析的アプローチへと切り替える場合のことを考えると、自己開示の扱い方や中立性についての問題をどれくらい意識して実践できるかがその後の展開の鍵となるだろうし、そ -
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ありふれた心理療法について、臨床心理学および心理臨床学の歴史と医療人類学と筆者の事例を軸にしながら語られたもの。日々の臨床を真摯に成していくことは大前提だけれど、臨床の知のありふれた一粒を抽出すべく、ありふれた事例研究を書こうと思わせてくれる。妥協と交渉により合金の心理療法しか提供できないけれど、そこには個別性の極みが確かにあり、そこから『心理学すること』と『関係すること』を丁寧に紡ぐことで普遍的な物語となる。その時の自分に可能な範囲で精度の高いものをまとめる。できればどこかでおずおずと発表する。そう決意をさせてくれる一冊。私の師匠も、年に一度は事例をまとめて発表すると、それをご自身に課し今も
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勉強しようと思い手にとった1冊だが、読んでみると面白かった。
「カウンセリングとは何か。」
1冊の本でまとめるには壮大なテーマで、そもそも言語化できるものなのか…?と疑問に思った。
いち一般人としては、なんとなく話を聞いてくれるところ。いち医師としては、時間をかけて患者さんの柔らかいところに触れるところ。そんな漠然としたイメージでしかない。
そのため、専門職の方がどのように捉えて、どのように言語化しているのかわくわくする気持ちを持ちながら読み進めた。
ユーザーの状況に応じて変化するのはもちろんのことではあるが、さまざまな介入で日常生活を立て直して「いかに生き延びるか」に焦点をあてるカウンセ -
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印象に残ったのは、「人と人を結びつけるのは、ジョッキーの強さではなく馬の弱さである」「幸せとは、複雑な現実を複雑に生きることである」「人生は、働くことと愛することであり、人間関係は、シェアとナイショであり、それぞれがそれぞれの面を支える」という部分。
新自由主義に移行する中で、私たちの人生は大きな船に乗った航海から小さな船を1人ずつ漕いで進む航海に変わった。この両方にもまた良い点悪い点があり、また、昔の価値観と今の価値観にもそれぞれ良い点悪い点がある。本書に登場する様々な心の二項対立には、いずれも良い点悪い点がある。本書に通底する「も」の考え方を持って船のバランスをとっていくことが大事だと思 -
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【印象に残ったポイント】
☀︎孤立しているとき、心は現実を見失うが、他者がそばにいるときには、心には現実を見つめる力が戻ってくる。
☀︎人と人とが素直に打ち明け合い話し合うことが、個人的な文学=自分らしく実存することを可能にする。
☀︎[ついてきてくれるなら行きましょう]聞いてくれる他者が安定して居るとき、人は自分の過去を俯瞰して振り返り、古い物語を捨て、勇気を出して変化する。こうして個人的な物語を作っていく。
心の強さと弱さ、不思議を感じるとともに、人は究極的には孤独である一方で、それぞれが自立して自分の物語をつくっていくためこそ他者の存在が不可欠であり、誰かがいることで自分が変化する勇気 -
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◆ 説明モデルとは : 解明・説明・提案がセットになったもの
◆アセスメント=謎解きこそがカウンセリングのコア
◆ カウンセリングというのは基本的には時間を味方につけるための営みです。即座に物事を解決するのにはあまり向いておらず(頑張るときもありますが)、時間の力を使って、心や状況が少しずつ変化していくことを後押しする仕事です。
◆初回カウンセリング
(1)問題歴ー過去を遡る
(2)モチベーションー未来とつながる
(3)リソースー現在を確認する
経済的リソース、社会的リソース、心理的リソース
◆破局度の評価
(1)火急性/不急性
(2)外部性/内部性
(3)現在性/歴史性
◆カウンセ -
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ケアには様々な種類があって、相手によっても違うし相手の状況によっても必要なことは変わってくる。
そしてまずケアする側が元気じゃないと。心に雨が降ってる時は誰にだってあるからこそ、そこに傘をさせるような人になりたい。ケアは成果として見えにくいとあったけれど、信頼関係につながって良いことが巡り巡ってくるといいな。
先日仕事が大変だった時に上司にケアしてもらった。話を聞いてもらって一緒に考えてくれて、楽になるようにまわりに働きかけてくれた。追い詰められていたけど段々と回復してきたから、今度は自分がケアする側になりたいと思う。ほどよくおせっかい。まずは身体と環境のケア。
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Posted by ブクログ
本書は、身近な人のこころのケアをしている人に向けての一冊です。
突然雨が降ってくるように、身近な人がある日突然具合が悪くなったら‥‥身近な人に巻き込まれて自分も一緒に雨の中を歩むことになったらどんな風に言葉をかけ、ケアをしてあげればいいのか、という一冊。
私はケアをする側として読み始めたのですが、どうにも集中できない。それはどうしてかというと、ケアされる側の気持ちにどんどんシンクロしていってしまうからなのです。
晴れている時(元気な時)ではなく、雨の日(問題を抱えている時)にはこんな風に感じてしまう、こころの中ではこんなことが起こっているという説明を読んでいると、過去の私の記憶がチクチクしてし