東畑開人のレビュー一覧
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東畑さんといえば、先ごろ『聞く技術 聞いてもらう技術』がすごく売れた。
気取らない語り口が印象的だった。
本書は、その東畑さんが若かりし日の話。
沖縄で職を失い、自分の拠って立つはずの臨床心理学との関係を捉えなおすために、沖縄のスピリチュアル世界に飛び込み、フィールドワークを敢行した、その記録である。
たしかに、心という見えないものを癒すとは一体どういうことなんだろう。
誰が癒されたと判定するのか。
どうなったら治ったと判断できるのか。
心理学にもなじみがない自分には、そこから謎だらけ。
それをこの著者は、精神医学、臨床心理学といったアカデミズムの権威をもったものから、宗教、街中のスピリチ -
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東畑氏はこれまで、「日本のありふれた心理臨床」などを通じ、純粋な学問的実践からは程遠い、日本のリアルな心理臨床の肯定的な理解と評価を目指してきました。
今回の一冊では、さらにそこから一歩踏み出して、私たちが一庶民として、また一社会人(援助職)として何気なく行なっている「ふつうの相談」にまで触れ、専門職としての実践との接点や差異について触れています。
補遺の「中断十ヶ条」もいい味を出していて、これまでの東畑氏の著作と結びつけながら理解をすると、心理専門職のやることから、一庶民としてやっている「ふつうの相談」まで、「相談する」「話す」ということそのものへの理解へ繋がっていくように思えます。 -
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プロセスの一端を知っている(担っているとは言えない)ので、
客観的な感想を言えば、
「わかりやすい」。
私たちが抱いてきた違和感や傷つきや、
疎外感や怒りも含めて、
言語化しながらどこまでも論理的であろうとするところが、
限りなく臨床的だと思う。
一方で、
精神分析にそこまでの葛藤を抱いていない臨床家には、
わかりやすさが危うさにもなるのではないか。
手軽に、深く思考できないことを自己肯定できる手段になる気がする。
それは、
実際にそういう臨床家を見てしまったからだ。
でも私が感じたその感情ですら、
権威主義との同一化になりうるのかもしれない。
ここから一層、
内省と客観視を深めたいと思 -
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読み出してから、これは一般向けの本ではないのだと気がついた。心理療法に携わる人たちを読者に想定した、心理療法論の論文であった。それでも、東畑さんのこれまでの著作はどれも非常に興味深く、そうか!と思うところが多々あったので、素人にはわかりにくいところもあるだろうけど読んでみようという気になった。で、やはりおもしろかったし、何というか勉強になった。
心理療法論と言えば、大学で教えられ書店に研究書が並ぶあれこれが思い浮かぶ。精神分析・ユング心理学・認知行動療法・人間性心理学などなど。著者は本書で、そうした「学派的心理療法」や一般に行われている折衷的な「現場的心理療法」と、そうした専門家の扉を叩く前 -
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ネタバレ本の中に「この論文は」と書いてあるとおり、論文チックで内容が難しい。
ふつうの相談とは。
「人と人がつながること。人が人を支えること。これが普通の相談の根源で響いている」
普通の相談ややり取りによって相手が楽になったり何かしらのほっとすることがあればいいなあと思った。こういう何気ないやり取りっていつか詳細に調査されるんだろうか。
・この本は、専門家、メンタルヘルス・ケアに関心を持つ読者、一般市民に向けて、ふつうに相談したり相談に乗ったりすることが、心にとっていかなる治療的意味を持つのかを書いてある
・球体の臨床学。それは人と人とがつながること、人が人を支えることについての基礎学である。 -
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オムニバス形式で内容は若干まとまりを欠いているように思えるが、学びは多く、今後は個人のカウンセリングだけでなく、組織や社会を巻き込んで広い視点から臨床実践を考えて行く必要があるなと思った。価値に沿った実践ということで、セラピストの価値とクライエントの価値、セラピストの所属する組織の価値などは、それぞれどこまで擦り合わせていけるのだろうか。単に、雇う側と雇われる側の関係だと、そこまで意識されないのかもしれない。ただ、臨床をしていく上で、組織の制約を受けているなと感じることは多々ある。心理的安全性の話もあったが、こういった側面からの組織改革が個人的に興味を惹かれた。
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初めて理解した。臨床心理士と公認心理師の違い。ベースが学派か臨床か、の違いかあ、なるほど。
本書の内容はとても学術的で小難しい面も多々あるけれど、でもいちいち納得。いちいちわかる。自分の臨床経験にいちいち合致する。
中井久夫の個人症候群の話とか、熟知性のなかで起こる治療とか、臨床現場にいる人なら感覚的に腑に落ちる話。
受けている著者のセミナーの質問コーナーでも、まあとにかくいちいち「わかる〜」とつくづく思えた。この納得感が、実際に現場で対人援助をしている人たちに猛烈に受け入れられ、だから著者は人気があるのだろうな。この「わかってもらった感」、ここが彼のカウンセラーたる所以か。
そして何 -
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Posted by ブクログ
現在2023年4月末。先日、まもなく新型コロナが5類になることが正式決定されたとニュースで流れた。
この本に掲載されているインタビューや手記は2020年。コロナ禍がいよいよ始まり、おそらく世界中の誰もが、今まで非日常と思ってきたことを日常的なものとしなくてはならないという不安に覆われはじめてきた、そんな時期の発言だ。そのような意味では、更に数年後、コロナ禍を振り返るための格好の史料となりうると思った。
この本の中で多くの識者たちが言及していたと思うが、人間にとって一番厄介なのは、人間の心の中に生じる差別、偏見、批判なのだ。どのような状況下にあっても生じるこの心の動きに、私たちはどのように打ち勝 -