東畑開人のレビュー一覧
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単行本が出た時にあ読みたいかもと思ったもののずっと後回しにしていて、今般文庫化されたのを書店で見つけ遅ればせながら読みました。
で、とても面白かった。学術・読み物(エッセイ)・ユーモアのバランスがとてもいい。解説の辻村深月さんが『お守りみたいだ』と書かれていたのもすごく納得でした。本作も含め自分が好きになった小説やエッセイに対する気持ちもまさにそれでした。
浮世離れすることでしか根源を問うことはできないという大学院生時代のエピソードは自分の学生時代の友人との深夜の議論や、大学生の自分の子どもとの真剣な話でも感じたことだし、別れや何かを失うときに私たちは幾分クレイジーになるというのは思い当た -
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10年ほど前に心理学に興味を持って、心理カウンセラー系資格の通信講座を受けたことがある。
教材を読み進めうちに、”これって心理学っていうかスピリチュアルでは?”と胡散臭い気持ちになって辞めてしまったのだけど、この本を読んで、改めて心理学とスピリチュアルは紙一重な部分があるなと思った。
実際にスピリチュアル系の施術で元気になる人もいるのだから、それはそれでいいと思うし、誰にでも効果があるような完璧な心の治療法なんてないよな。
私自身、人生で一番落ち込んだとき、占いに行って話を聞いてもらい号泣しスッキリしたこともあった。
元々占いを信じてないのでその後通うことはなかったけど、救われたのは事実で -
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コロナウイルスが世界を震撼させたとき、菅首相の言葉は、メルケル首相の言葉のようには自国民に響かなかった。なぜか?
菅首相の言葉は「聞いて」もらえなかった。国民に不自由を強いる緊急事態を詫びたメルケル首相の言葉は「聞いて」もらえた。著者は言う。「話を聞いてもらうためには先に聞かなくてはならない。」聞くことが聞いてもらうためには重要で、聞いてもらうためにも聞くことが重要だ。どちらから始めてもいい。両者はグルグルと巡り続ける。あまりにも自由で孤立しやすい現代社会に蔓延する病魔はコロナウイルスだけではない。「聞けない」「聞いてもらえない」という悪循環が目下、流行中だ。そこから抜け出して「聞く」「聞い -
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著者作「コラージュ」を前書きと目次の次に持ってくるところにセンスを感じる。
得体の知れない匂いのする題名のわりに、この本のテーマは明確だ。「野の医者と、私たち臨床心理士の違いはないにか?」大学では、心理学や現代医学が絶対的な真理であるという考えの中で心理学を学ぶ。しかし、本当にそうなのか。「現代医学はいくつもある文化の一つなのではないか。沖縄に偏在するスピリチュアルな治癒者が、沖縄文化の産物であるのと同じように。」この問いは、著者の沖縄でのフィールドワークの中でだんだんと形作られ、やがて一つの答えが生まれる。「現代医学は野の医者を嘲笑することはできない。形は違えど、どちらも数ある文化の一面だ -
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ネタバレ①Information (客観的な情報)
聞くの本質
→「何かあった?」と尋ねてみる
→どうしてもそう言えない時は、聞いてもらうから始める
聞いてもらうの本質
→「ちょっと聞いて」と言ってみる
→今はそう言えない時、聞くことから始める
聞く、聞いてもらうは循環している
聴くよりも、聞く方が難しい
→心の奥底に触れるよりも、懸命に訴えますのありがとうられていることをそのまま受け取る方が難しい
何故人の話を聞けないのか?
→まず自分の話を聞いてもらえてないから
→相手との関係がギクシャクしているから
心にとって真の痛みは、世界に誰も自分のことを分かってくれる人がいないこと
→聞くことが -
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ネタバレ【行動認知療法はストア派哲学だった】
認知の仕方、考え方に介入するこで行動の変容を促すような現代の治療法である行動認知療法(CBT)。20世紀ごろから科学的、臨床的に発展してきたこの治療法のようですが、まさにストア派哲学の教えに多くの点で通ずるところがあるということが本書を読んでわかりました。
これまで、マインドフルネスなどは東洋哲学が起源だとの認識が一般的にあったかと思いますが、著者はこの本により、西欧にも同じような考え方の起源があり、またそこから今日の行動認知療法へのインスピレーションを得られるのでは、との動機で本書を書かれたようです。
古代哲学は、医療であったこと。哲学者は、 -
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面白かった。
アメリカではADHDと診断されてリタリンを処方され治療プログラムを組まれる子が、沖縄ではマブイを落としたと言われマブイグミと呼ばれる魂を込め直す作業をするかもしれないし、アフリカの狩猟民の世界では勇敢な狩人とされるかもしれない。
健康って何だろう。治療って何だろう。そんなことを考えさせられる本だった。
この本の結論としては、
・なにをもって「治癒した」といえるのかは、治療法によって異なる。
・「治癒」とは、ある生き方のことで、特に「心の治療」とは生き方を与えること。
・治療とはある文化の価値観を取り入れて、その人が生き方を再構成すること。
・治癒も生き方もひとつではない。臨床心 -
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とても良かった。
1年くらい前にに山崎さんの「精神分析の歩き方」を読んで分からなかった「力動的心理療法と精神分析的心理療法の変遷」についてや、「精神分析的心理療法を行うにしても、自我心理学の知識も大事だよね」と言ってくれている感じが、そうだよねと。いろいろとすっきりした。
本の内容としては、
「ユーザーが現実適応できるように、精神分析理論に基づいて、(心の奥の幽霊の声についてはとくに触れずに、でも治療者が心に留め置いて)ユーザーの自我を支持すべく対話をしてくれる心理療法」の本。
そういう心理療法の実際の流れを2つのケースで書き記してくれて、その時治療者は何を心に留め置き、どう考え、持ちこた